レビュー
アクションの面白さと熱中度は,シリーズの中でも最高峰
ゼルダの伝説 スカイウォードソード
「スカイウォードソード」は,据え置きゲーム機向けとしては,2006年に発売された「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」以来,実に5年振りの新作となる。
ちなみに「トワイライトプリンセス」は,当初ゲームキューブ(GC)向けに開発されていた作品で,Wii版とGC版の両方が発売された。Wii版のリンクは右利き,GC版のリンクは左利き(※ゲーム内の世界がすべて左右反転している)という違いがあったので,両方を買い求めた強者もいるのではないだろうか。蛇足だが,GC版は現在でも「任天堂オンライン販売」で購入が可能だ。
「スカイウォードソード」は剣を使った濃密なアクションがウリで,プレイにはWiiリモコンプラス(またはWiiリモコン+Wiiモーションプラス)およびヌンチャクが必須となるので,気をつけてほしい。
ちなみに,WiiリモコンプラスとWiiリモコンは同じ重さなので,Wiiリモコン+Wiiモーションプラスと持ち比べてみると,かなり軽く感じられる。エンディングまでの長丁場を快適にプレイしたいのなら,Wiiリモコンプラスの購入も検討してみるといいだろう。
「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」公式サイト
今度のゼルダは学園もの(?)ながら,ファンならプレイ必須の奥深い物語が描かれる
本作で筆者がまず驚いたのが,シリーズ初の“学園もの”が設定に採り入れられているところだ。
「スカイウォードソード」の舞台は,“スカイロフト”と呼ばれる空に浮かぶ島で,主人公のリンクは,スカイロフトの騎士学校に通っているという設定。
ヒロインのゼルダは,“姫君”ではなくリンクの幼なじみで,しとやかで心の強いしっかり者というヒロインらしい性格だ。キャラクターデザインも,ブロンドで前髪パッツンの少女と,過去シリーズとは少し趣が異なっている。
本作のプロローグは,騎士として空を自由に飛ぶための“鳥乗りの儀”を迎えた当日,竜巻に巻き込まれて雲海の下へと消えたゼルダを探すため,リンクが冒険の旅に出る,というものだ。
意外(?)にも,この設定がしっくりはまっていて,学生という設定のリンクにも違和感は感じなかった。念のために書いておくが,ストーリーそのものは学生生活を描いた内容ではなく,バリバリのファンタジーものなので,シリーズファンはご安心を。
また,これまでのほとんどのシリーズ作品同様,本作も他作品と直接のつながりはないので,「ゼルダの伝説」を遊んだことがない人でもとくに気にせずプレイできるようになっている。
ファイは,「ゼルダの伝説 時のオカリナ」におけるナビィや,「トワイライトプリンセス」におけるミドナのように,リンクの冒険を手助けしてくれるナビゲーター的な存在。“今すべきこと”をアドバイスしてくれたり,敵キャラの特性などを的確に教えてくれたりする。
彼女はリンクを“マスター”と呼び,感情の抑揚がないクールな受け答えをするキャラクターなのだが,フィギュアスケート選手のように水面を華麗に滑ったり,リンクが奏でるハープのメロディに合わせて唄ったりと,意外にお茶目な面も見せてくれるのだ。
そのほか,物語を彩るキャラクター達は皆個性豊かで,リンクやゼルダも含め,キャラクターのルックスは全体的に濃いめで,なかなかいい味を出している。ちなみに,筆者のお気に入りは,リンクにライバル意識を燃やし,昭和の学園ものに出てくるような取り巻きを引き連れた番長気取りの“バド”である。
リンクと一体化できる“チャンバラアクション”
たとえば,「トワイライトプリンセス」でWiiリモコンを振るアクションは,GC版でAボタンを押すのと同じ役割にとどまっていたが,「スカイウォードソード」では,Wiiリモコンプラスの動きがゲーム画面のリンクの腕と連動している。プレイヤーがWiiリモコンプラスを上に向ければリンクが剣を真上にかかげ,下に向ければ下段に構えるのだ。
剣を上から振り下ろす,横に薙ぐ,斜めに斬るなど,リンクが剣を振る角度も,プレイヤーがWiiリモコンプラスを振る角度や向きに則っている。さらには,手首をひねるとリンクの剣を持つ角度が変わり,このギミックを利用した仕掛けまで用意されている。
ちなみに,攻撃などでWiiリモコンプラスを振る際,きちんと刃筋が補正されるので,剣の側面で敵を叩くようなことはない。
戦闘では剣を振る角度や向きが非常に重要で,どう剣を振れば確実にダメージを与えられるか,敵の姿をよく観察して見極めるのも本作の楽しみの一つとなっている。
たとえば,手に持った武器でガードをしてくる“ボコブリン”には,ガードしていない方向から斬る必要があるし,地面を這うクモの“スタルチュラ”は,下から斬り上げて,弱点の腹を攻撃しないと倒せない。スライム状の“チュチュ”は,横から斬ると上下に分裂するが,重力によって再び融合してしまうなど,敵ごとに,剣の使い方による攻略方法が変わってくるのだ。
また,敵との戦いでは盾を使った防御も重要となる。縦の動きはヌンチャクと連動しており,ヌンチャクを小さく振るとリンクが盾をかまえる。
この際,敵の攻撃に合わせてタイミング良くヌンチャクを振ると,攻撃を弾き返すことができる。この“盾アタック”に成功すると,敵がよろけて大きな隙が生まれたり,一部飛び道具を弾き返せたりするので,戦闘がだいぶ楽になるはずだ。
なお,盾には耐久力があり,攻撃を受けるたびに耐久力が減っていくのだが,盾アタックの入力に成功したときは,耐久力が減らない。耐久力ゲージがゼロになると盾が壊れてしまうので,積極的に盾アタックを狙っていきたいところだ。
Wiiリモコンプラスを使った操作が快適なのも特筆モノだ。ゲーム中,Wiiリモコンプラスを大げさに振る必要はなく,斬りたい方向に軽く振る程度で認識してくれる。
Wiiリモコンをセンサーバーに向け続けたままプレイする必要もない。Wiiリモコンプラスを手元で少し傾けるだけで,マウスのように画面上のポインタを動かせるのだ。また,十字ボタンの下を押せば,そのときWiiリモコンプラスが向いている方向をセンターにセットできるので,寝転んだままでも問題なくプレイできるだろう。
謎解きは,「ゼルダの伝説」シリーズらしい凝りに凝った仕掛けが満載
今回の場合,いわば空がフィールドで,地上がダンジョン的な位置付けとなる。地上のマップは迷路のようになっていて,さらにその奥に複雑なダンジョンも存在しているという具合だ。
「スカイウォードソード」では,リンクはロフトバードという大きな鳥に乗って空を移動し,雲海に開いた穴から地上の世界へと降り立つことになる。リンクはただロフトバードに乗って大空に飛び立つのではなく,スカイロフトからダッシュで飛び出し,体を大の字に広げて自由落下しながら,口笛でロフトバードを呼んで飛行に入るという演出が採られている。これが,何度も繰り返したくなるほど爽快で心地良いいのだ。
リンクは赤いロフトバードに乗って大空を飛び回る。飛行時はWiiリモコンプラスをひねるようにして旋回し,下に傾けて下降する。リモコンを振れば,ロフトバードは羽ばたいて上昇する |
姿を消してしまったゼルダを探して,リンクは地上へと降り立っていく。雲海から立ちのぼる光の柱の根元に向かってダイブ! |
また,「ゼルダの伝説」といえば,ときには意地悪なほど難解で,それだけに解けたときには爽快な謎解きが特徴の一つだが,「スカイウォードソード」でもそれは健在である。
プレイ中は,「これだけの新しい仕掛けをよく考えたな」と思うほど,斬新な謎解きが次々と現れる。また,プレイヤーに対して,謎解きのプロセスを順序立てて直感的に身につけさせるレベルデザインは,これまで以上に見事なものとなっていた。
「ゼルダの伝説」シリーズにおける謎解きは,直接的な言葉としてのヒントが少ないため,答えを閃かないと行き詰まってしまうように見えることも多い。
しかし,新しく手に入れたアイテムが,直後の謎解きで重要な要素として盛り込まれていたり,ボスキャラクターを倒すために必要なギミックとして仕込まれていたりと,“言葉以外の形”でヒントが隠されていることが多いのだ。
さらに本作には,謎解きのヒントを映像で見られる,“シーカーストーン”というお助け要素が用意されている。謎解きが「ゼルダの伝説」の醍醐味の一つでもあるので,できれば見ないでプレイすることをお勧めしたいのだが,どうしても先に進めないという時は利用してほしい。
がんばりゲージは,ダッシュ移動,ツタを登る,重いものを持つといったアクションや,回転斬りなどの一部の技を使うと減っていく。これがゼロになるとリンクが疲弊して,ゲージが回復するまでの一定時間,行動が大幅に制限されてしまうのだ。
このゲージの存在によってリンクの行動に緩急が生まれると同時に,プレイヤーは緊張感を味わいながら冒険をすることになる。
たとえばゲームの中盤以降で行くことになる“サイレン”の世界では,敵から逃げながらアイテムを集めていくという試練が課される。剣や盾はおろかアイテムさえ使うこともできないこの場所では,いかに敵から逃げるかは,がんばりゲージをどう使いこなすかにかかっているのだ。
このようにダンジョンの構造やゲーム中の仕掛けに,新要素が紐付けされた仕掛けが存在しているのは,いかにもゼルダシリーズらしい設計といえるだろう。
このほか,「スカイウォードソード」には,ダウジングやアイテムのアップグレードといった要素,ボスと連続で戦う荒修行やクリア後の「辛口モード」など,これでもかというほどの内容が詰め込まれている。
剣を使ったダウジングによって,ゼルダの居場所などを知ることができる。目的の方向に剣を向けると,中心のカーソルが反応する |
本作を象徴するアイテムの一つ“ビートル”。リンクの腕から発射される甲虫型の飛行アイテムで,スイッチにぶつけてオンにしたり,手の届かない場所にあるアイテムやルピー(お金)を回収したりできる |
1つだけ注意してほしいのが,「勇者の詩」というイベントについて。任天堂の公式サイトでも告知されているが,プレイするイベントの順番によっては,ゲームを先に進められなくなることがある。
回避方法も書かれているが,症状が発生してしまった場合は,Wiiをインターネットに接続して「ゼルダの伝説スカイウォードソード データ修復チャンネル」をダウンロードしてセーブデータの修復を行ってほしい。なお,インターネット接続環境がない場合は,セーブデータ入りSDカードかWii本体を任天堂に着払いの宅配便で送付すれば,修復を行ってくれる。
2011年に25周年を迎えたゼルダシリーズは,作品ごとにそれぞれ違った魅力があり,どれが最高傑作とはなかなか言いづらいのだが,ことアクション面に関しては,「スカイウォードソード」が群を抜いて面白いと筆者は主張したい。シリーズをすべて遊んできた,筋金入りのゼルダファンでも,本作を最高傑作として挙げる人が多いのではないだろうか。
また,ネタバレになるので詳細は割愛するが,本作で描かれるストーリーは,「ゼルダの伝説」ファンを自称するなら絶対に押さえておきたい位置付けになっているのだ。……ミンナニハナイショダヨ。
本作は,エンディングまで最低でも30〜40時間はかかるであろうボリュームのある作品で,その面白さから抜け出すのは困難だ。気がついたら数時間経過していたことが何度もあり,本当にやめどきを見つけられないくらいのめり込んでしまった。睡眠やほかの趣味の時間を削ってでもプレイする価値はあると断言しよう。
「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」公式サイト
- 関連タイトル:
ゼルダの伝説 スカイウォードソード
- この記事のURL:
キーワード
(C)2011 Nintendo