今回id Software社でインタビューを受けてくれたのは,(右上の写真左から順番に)シニアプログラマーで,Medicine Manというハンドル名でもお馴染みのジム・ドーズ(Jim Dose)氏,id Software史上初めてGame Designerという肩書きを持つマル・ブラックウェル(Mal Blackwell)氏,そして,フィジックスを担当するプログラマーのジャン・ポール・ヴァン=ワヴァーン(Jan Paul Van Wavern)氏の3氏である。
forGamer.net(以下,4GN):先ほど,DOOMIIIの映像を見せてもらいましたが,あのムービーはどのようなスペックのマシーンを使ってデモされたものなのでしょう?
Dose:あれは,Penium4/2.2GHzのコンピュータにATI RADEON8500を搭載したシステムで行いました。
4GN:今回は,かなりのハイスペックを要求するとのことですが。
Blackwell:最低でもGeForce 3を奨励しています。GeForce2 GTSなどでも動かないことはないと思いますが,プレイするのはツラくなるかもしれませんね。「QuakeIII:Arena」では,比較的ロースペックなマシーンでも快適にネットワークが楽しめるように限界まで煮詰めて設計されたものですが,対称的にDOOMIIIは,素晴らしいグラフィック性能を誇示できるシングルプレイヤーゲームにするために限界まで煮詰められたものなのです。
4GN:デモで見た画像は,すべて一つのレベルだったのでしょうか?
Blackwell:いや,あれは三つ……いや,四つのレベルから構成されているかな? 今回はムードを統一することに力を入れたので,一つなのだと思ったのでしょう。シングルプレイヤーモード全体では,少なくとも25レベル以上にはなるでしょう。
4GN:全体的に室内レベルで構成されたムービーだったわけですが,屋外との比率に関してはどうなりますか?
Dose:ほとんど室内レベルとなりますね。とはいえ,ゲームエンジンが屋外レベルに弱いということじゃないですよ。冒頭で,宇宙船が寄航するときに空から街が見渡せたでしょ? あれは,全部一つのマップになっていて,つなぎ目なんてないんです。だから,もし遠くに敵がいるときなんか,点のようにちっちゃく見えるんですよね(笑)
Blackwell:「バイオハザード」のようなサバイバルホラー系のゲームを意識して制作しているのは事実ですし,ゲームに室内レベルが多いのは,そういう密室の世界での恐怖感を演出するために必要なことなのです。
4GN:フィジクスモデルについては?
Van Wavern:ここまでグラフィックス的にリアリティのあるものを作り出しているのだから,物理効果もそれに見合ったものにしよう,と。例えばほかのゲームでは,このテーブルの上にあるコーラの缶を撃つと,いつも同じような跳ね方をしますが,DOOMIIIではその動きも物理計算にしたがっています。デモムービーでも,死体が階段や椅子からズレ落ちるのがありましたけど,あれはああいうアニメーションを元々用意しているのではなく,リアルタイムで引力や位置などの条件を元に動いているのです。
4GN:デスアニメーションも無限にある?
Van Wavern:いやいや。もう"アニメーション"という概念さえなくて,物理的な表現が結果としてアニメーションになっているようなものなんです。
4GN:ゲームエンジンのライセンシングはしています?
Dose:現在は,Raven Software社の「Quake 4」は予定されていますけど,それ以外はまだ話しを進めている状態にもありません。今回で一般公開は初めてというのもありますし,まだエンジンのさまざまな部分で調整を行っている段階だからです。
4GN:マルチプレイヤーモードについてもお聞かせ下さい。
Dose:まだ,マルチプレイヤーモードに関しては何も考えていないんです。id Softwareの歴史の中でも珍しいとは思うのですが,今回はシングルプレイ専用ゲームであることを念頭に作っていますから,現時点ではマルチプレイヤーモードは白紙の状態なんですよ。だからといって,何もやらないというわけじゃなくて,今はシングルプレイヤーモードにフォーカスしているというわけです。
4GN:MODコミュニティへのサポートも行っていくのでしょうか?
Blackwell:正式なレベルエディタを,ゲームに添付させるつもりです。
4GN:βテストの予定は?
Dose:ゲームの発売日を"2003年"としてしか発表していませんからね。まだまだテスト段階でもないんですけど,オープンβの予定はなく,すべてインターナル(Activisionとid Software社内のテスト部門)で行うつもりでいます。
DOOMIIIに関していえば,今までのid Softwareのアプローチとは大きく異なり,シングルプレイヤーモードに重点を置きながらも,日本のコンシューマゲームの影響を受けるなど,柔軟なゲーム作りをしているように思われる。
id Softwareに在籍する開発者も,10人から16人へと膨らんでおり,これまでの反逆児的なゲーム作りへの姿勢も,いくぶんかは丸くなっている気もする。しかし,依然としてこの小さな開発元がPCゲーム業界の流れを大きく変える力を持っているのも事実で,今後リリースされるであろう新情報にも注目していきたい。(Okutani)