Kimの韓国最新PCゲーム事情#62 - 02/13 19:49


Kimの韓国最新PCゲーム事情#62

「RAGNAROK Online」の父,Kim Hak Gyu氏インタビュー(2003/2/13)

Text by Kim Dong Wook特派員

 韓国でGravity社を設立し,話題のMMORPG「Ragnarok Online」の開発に携わった,Kim Hak Gyu氏とのコンタクトに成功,インタビューを行いました。彼の近況や今後のことなど,直接Ragnarokとは関係のない話が多いですが,ぜひ一度ご覧ください。



 日本のプレイヤーにも有名なKim Hak Gyu氏は,Gravity社を設立後,MMORPG「Ragnarok Online」を開発およびサービスインした人物。2002年9月に突如Gravity社を退社後,現在にいたるまでマスコミなどとの接触を絶っていた。今回のインタビューは,海外メディアとしては氏の退社後初めてとなるものだ
 "微妙な話題で今改めて話したいことでもないし,退社にまつわるあれこれには絶対に触れないでほしい"という条件がついてしまったが,とにもかくにもこちらの質問には答えてもらえた。

forGamer編集部(以下,4G)
 こんにちは。お久しぶりです,Kimさん。Gravity社を退社後数か月たちますが,その間は何をやってたんですか?

Kim Hak Gyu氏(以後,Kim)
 自宅で休養しながら,プログラマーとしての勉強を再開しています。会社設立後は忙しくてできなかったことを,今実現しているといった感じです。
 先日は,日本のコミックマーケット展示会(編集部注:いわゆるコミケ)にも行きましたよ。Ragnarok関連のブースを見て回っていたら,私の写真が飾ってあるブースがあってびっくりしました。私は日本語ができないので,そのブースの人達とおしゃべりができなくて,とても残念でした。

4G
 そういえば,最近は日本語の勉強に力を入れているという噂を聞きましたが?

Kim
 今のように,時間を取れるときでなければ外国語を学ぶのは難しいですからね。
 それで,今は日本語を勉強しているところです。なぜ日本語かというと,プレイステーション2のゲームなどを攻略した日本の雑誌を読んでみたいということと,日本の方と会う機会も多いものですから,彼らと自由に話し合えたらいいなという気持ちから日本語を学ぶことにしたのです。

4G
 プレイステーション2のゲームもプレイするんですね。では,特に機種やジャンルは限定しないので,今までプレイしたゲームの中で,一番面白かったと思うものは何ですか?

Kim
 個人的に面白くてよくプレイしたゲームというと,「Starcraft」「鉄拳TAG TOURNAMENT」「beatmania」シリーズなどですね。どれも完成度が高いうえに,何度プレイしても楽しいという,中毒的な要素をもっていますね。

4G
 格闘ゲームもやるんですね。ところで昨今,ゲームの技術はどんどん進歩しています。ゲーム開発者の一人として,未来のゲームはどのようになると思いますか?

Kim
 今までのゲームというのは,限られたハードウェア性能の下で最大のリアリティを得るために多くの部分を犠牲にしてきましたよね。例えば,キャラクターを自由に動かすために,背景は動かないというように。
 しかし,現在ではハードウェアの性能は飛躍的に進歩し,さらに今後もこの進歩は止まらないでしょう。我々ゲーム開発者達も既存の固定概念を捨て,進んだハードウェアの性能をフルに生かせるようなテクノロジーの開発を行っていく必要があると思います

4G
 現在では"オンライン"というキーワードが,ゲーム業界全体を覆っています。Kimさんは,オンラインによるゲームプレイというものをどのようにお考えですか?

Kim
 私の個人的な考えではありますけど,"インターネットによるオンラインでのプレイ"という点について,どのようにゲームで活用していくかというさまざまな実験的な試みが,これからも続けられるのではないでしょうか。ちょうど,魚が何千何万という卵を産んでも,そのなかのホンの数個しか生き延びられないという状況のように,変わったゲームや実験的なゲームがどんどんと発表され,その中の一握りだけが生き残り,メインストリームとして成長していくのでしょう。
 ですから,今現在大変な人気があるとしても,その人気はいつまでも続くものではないでしょうね。このことはいままでの地球の歴史を見ても分かると思います。絶滅するのはあっという間ですから。

4G
 Kimさんは,ご自身のホームページでゲーム開発の初心者などを相手に,ゲーム開発に対するさまざまな討論を行っていますね。彼ら開発者の多くが,Kimさんが開発したゲームをプレイしていたゲーマーだったようですが,先輩としてゲーム開発を志そうとしている人達に何かアドバイスはありますか。

Kim
 本当にゲームを作ってみたいと思うなら,ただ単にゲーム開発だけをするのではなく,"創業者"としての心構えも持ってもらいたいですね。創業者としての心構えを著したベストセラー本の「Good To Great」の著者は,その中で次のようなことを延べています。

・自分の得意とする分野で最高になることができるだけの実力
・一生を費やして専念できるだけの情熱
・実力と情熱を,それだけでは終わらせずに富に還元できるメカニズムの発見

 ゲーム会社に就職して仕事をするようになっても,親しい仲間達とゲーム開発をしていたとしても,創業者としての心構えを持っているかどうかで,その後に大きな違いが出てくるものだと思っています。

4G
 なるほど。ところで,今後のKimさんの予定はどうなっているのでしょう。

Kim
 こういうと変に思われるかもしれませんが,とくに何も決めていません。確かに新しいゲームを作ってみたいとも思いますが,まだその時期ではないようです。もう少し,失業者の特権である自由な時間を楽しみたいと考えています

4G
 forGamerの読者や,日本のファンたちにメッセージをお願いします。

Kim
 いつの日か,きっとまたみなさんにお会いできると思います。そのときまで皆さんお元気で!

■Kim Hak Gyu氏プロフィール

年齢:31歳(1973年生まれ)
専攻:西江大学校 数学科を中退
1994年:Team "Gravity"設立
1995年:「Lars the Wonderer's」発売(MS-DOS版アクションRPG)
1997年:「ANT MAN 2」発売
1998年:Gravity社設立
2000年12月:「Arcturus」発売
2001年11月」「Ragnarok Online」オープンβサービス
2002年7月:「Ragnarok Online」日本サービス開始
2002年9月:Gravity社から退社


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