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●Preview#47
Hitman 2:Silent Assassin

Text by 奥谷海人


■Agent 47が帰ってきた! Hitman第2作では日本の忍者と対決!?

 まるでゴルゴ13のような"仕事人"が主人公のアクションゲーム「Hitman:Codename 47」は,アイデアそのものは良かったにも関わらず,敵の思考ルーチンやカメラワークなどの問題点が指摘され,大成功には至らなかった。その失敗から学んだデンマークのIO Interactive社が制作する第2弾が,「Hitman 2:Silent Assassin」である。

 ストーリーは,相変わらずハードボイルドだ。
 前作で大きな仕事を終えた主人公のエージェント"47"は,稼業から足を洗って自分の犯した罪を悔いるために,世界で唯一信頼できる友人,ビットリオ(Vittorio)神父を訪ねてシシリア島にある古い修道院に立ち寄った。ところが,ビットリオが影の世界で暗躍するロシアンマフィアの一党に拉致されてしまう。そして47は,友人の身の安全を守るため,この組織に命じられるままに仕事をこなしていくことになる。
 前作を知らない人のために説明しておくと,47は暗殺者として育てられた特殊なクローン人間だ。隠密行動を駆使して敵地に潜入し,指示された相手を抹殺するのが人生のすべてという冷血な男である。変装が得意で,ボディガードやレストランのシェフはもちろん,プロポーズに行くかのようにベレー帽をかぶり花束を手に持って敵のアジトのわき道を歩いたり,医者のふりして検死をしたりと,必要であれば何にだってなれるのだ

 舞台となるのはロシアのサンクト・ペテルブルグや日本,マレーシア,ヌーリスタン(アフガニスタン)などで,全21ミッションが用意されている。シチリア島の修道院には主人公のアジトとしての役割もあるので,何度も行き来することになるようだ。
 ちなみに日本では三つのミッションが発生する予定で,ヤクザが行き交うお屋敷,雪の降る北国,そしてニンジャも出没する古城でのアクションが用意されている。




■新たに作り直された思考ルーチンでゲームの雰囲気が格段に向上

 Hitman 2は,前作と同じように大量殺人も行えるが,よりステルスを多用した知的なゲームプレイに重点が置かれている。
 ミッションの目的は,出てくる敵をことごとく倒していくものや,ターゲットのキャラクターを一人だけ仕留めるものなどさまざま。本作はマルチプレイヤーゲームのようなランキングシステムを搭載していて,ミッションの目的をうまく達成するほど評価が高くなるのである。これによって,従来の平面的なゲームプレイから脱却している。
 ゲームの序盤はアクションに比重がおかれたミッションが多く,例えばロシアの元KGBや将軍を暗殺するという内容になっており,そのためにはどのような手段をとってもいい。

 敵の思考ルーチンの向上は,このゲームの面白さを飛躍的に高めている。NPCは前作よりもずいぶん賢くなっていて,周囲の状況の把握がうまくなった。例えば,本作でも倒した敵の衣服を剥ぎ取ってプレイヤーキャラクターに着せることができるのだが,とあるミッションで暗殺を予定している相手のお抱え運転手に変装していると,本物の運転手と顔見知りのボディガードが気付いてしまうことがあるのだ。もちろん,手に銃を持ったまま近づいていくなどもってのほかで,ガードマンの周囲を走り回っているとエスコートを申し出てくるなど,プレイヤーの奇怪な行動が敵に不審を抱かせるようだ。
 また,前作ではいつも禿げ頭をさらけ出していた47も,今回からは帽子やフードで全身を隠せるようになっている。これには理由があって,とくに日本など東洋のミッションでは,顔を出しているとすぐに相手に気付かれてしまうようである。




■すべての面において前作を凌駕するボリューム

 前作を遊んだ人ならお馴染みのダイアナなど,個性的なNPCキャラクターが多く登場する。中東を舞台にしたミッションでは国連軍兵士もいて,たまに47を不審者と判断して発砲してくることもあるが,日本のヤクザのようなキャラクターとは違ってプレイヤーが撃ち殺すべきではないNPCだ。

 ゲームエンジンは,前作で開発されたGlacierエンジンのアップグレード版で,3Dグラフィックスの描写能力に力を入れて改良されたようだ。プレイヤーキャラクターのアニメーションもスムースになっており,ゲーム中のムービーもダイナミックな演出が見られる。実際に敵キャラクターの行動を影から見張っている気分になるシーンや,車から降りるときに車体がグラッと揺れるなどシーンなど,細かい部分で丁寧に作られている印象を受ける。テクスチャも非常に細かく,室内のマップで見事に生かされているのはもちろん,屋外レベルも非常に充実していて,雪の降る中でのアクションなどバラエティに富んだ風景で楽しめる。
 問題の多かったカメラワークも調整されており,敵に囲まれたときやスナイパーモードでは,第1人称視点が役立ちそうだ。もちろん,これまで通り敵の背後から忍び寄って羽交い締めにするのは第3人称視点のカメラのほうが楽しく,ガードマンやピザの配達人を襲撃しての変装プレイも健在である。

 Hitman 2で追加された機能の中でも,プレイヤーにとって一番嬉しいのはゲーム中でのセーブ機能ではないだろうか。前作ではミッション終了時にしかセーブできず,途中で失敗すれば最初からミッションをやり直さなければならないかったのが不満点だった。大きなマップでは途中から生き返ることができたものの,すでに周囲の敵がプレイヤーキャラクターの存在を知っているため,結局難度が高くなってしまっていたのだ。そのため「(15時間もあれば終わってしまいそうな)少なめのボリュームを隠すためにセーブ機能をなくしたのでは?」という揶揄がファンから相次いだほどで,これが前作のボトルネックになっていたのだ。本作では,一つのミッションの中で最大2回のセーブができるようになったことで,プレイヤーの要求に敏感に反応した形となった。

 Hitman 2で用意されている武器は,サバイバルナイフ,スナイパーライフルから,ガラット(絞首具)やマシンガンまでさまざまだ。音の静かなクロスボウもあるし,武装用の防具を着込んだ敵でも仕留められる50mmのライフル銃もある。また,双眼鏡やナイトスコープ,サイレンサ,時限爆弾などの小道具も豊富になっているようだ。
 賞金による武器購入のシステムは改められ,1度見つけた武器はすべてコートの下に仕込んでおくことができ,銃弾があればいつでも使用可能になった。これにより,そのミッションを達成するためにどんな武器を持っていくかは重要ではなくなり,よりプレイヤーの戦略性や遊びやすさが尊重されている。GPS(グローバル・ポジショニング・システム)のような装置で,広大な屋外マップでも自分の位置が確認しやすくなったのもありがたい。

 音楽は,ブダペストのシンフォニーオーケストラが担当しているだけあって,非常に重厚だ。マルチプレイヤーモードやマップエディタがないのは寂しいが,本作ではシングルプレイヤーモードでも満腹感が十分に感じられる作品になっているのではないだろうか。欧米では,9月中の発売が予定されており,もちろん日本でもアイドス・インタラクティブがリリースする予定である。