― レビュー ―
必死に都市開発してもよし,ノンビリ眺めつつやるもよしのA列車最新作
A列車で行こう7
Text by UHAUHA
2005年03月04日

 

■美しいグラフィックスは必見 A列車最新作が登場

 

美しいグラフィックスで甦った,A列車で行こう最新作「A列車で行こう7」。今もなおシリーズナンバー1の人気を誇るA4の,直接の後継作だ。鉄道会社経営,子会社経営,株売買まで掌り,巨大都市建設を目指せ
 鉄道経営シミュレーションとして登場した初代「A列車で行こう」が発売されてから,今年で20周年を迎える。さまざまなプラットフォームで登場したA列車は,新作が出るたびに時代の流れに合わせてゲーム性を変えてリリースされてきたが,その中でも知名度,支持率が高く,A列車の顔というべき作品が「A列車で行こう4」(以下,A4)だ。A4の面白さは,鉄道経営だけでなくマンションやオフィスビルなど子会社の建設と経営,株取引や税金の支払いなどを包括しており,総合的な都市開発と会社運営を楽しめるところにあった。
 今回,A列車発売20周年を迎えるにあたり,多くのプレイヤーのA4復活希望の声に応え,A4直接後継となる「A列車で行こう7」(以下,A7)が登場したというわけだ。筆者もまた熱烈なA4ファンとして,このA7を楽しみにしてきた一人である。

 ゲーム画面は,A4と同様の斜め見下ろし画面。グラフィックス周りが大幅に強化され,1600×1200ドットの高解像度をサポートした3D処理による,画面の拡大縮小回転が可能だ。広域表示では都市上空を雲が流れ,雨や雪などの天候変化,昼夜の時間帯変化,季節の移り変わりなどが,リニアシミュレーションにより滑らかに切り替わる。これは一見の価値あり。
 ただし,引き替えにハイスペックマシンを求めてくる。自分のマシンでどんな感じで動作するかは,「こちら」の専用ベンチマークソフトが参考になるだろう。ゲームプレイはできないが,実際に自分のマシンで動いている様子は十分参考になるはずだ。

 

鉄道を開通させて人を運び込み,資材運送を済ませると地域が活性化されて道路や住宅地が建設され始める やはり黒字経営のほうが気分が良い。苦労して黒字にしても,都市作りを急ぐと簡単に赤字経営に逆戻り 都市開発で赤字になるのは目に見えているので,ゲーム開始直後に株を買ってしまうのも手かもしれない

 

時間帯,天候,季節は,リニアシミュレーションにより自然に変化。ちなみに筆者は夜景を眺めるのが好きだ 約12年ビフォー・アフター比較。とりあえず駅と線路を設置して列車を走らせ,しばらく放置してみた。建築物の99%は他社物件で,勝手に建設されたもの。現実的な時の流れを感じさせる一面

 

 

■A4からの変更点を検証しつつA7を見てみよう

 

列車ウインドウを開かなくても特定列車の運行状況を"情報カード"として画面上に常に表示しておけるようになった。乗車数,乗車率,日売上累計,日経費累計のほかに走行状態も常に把握できるのが便利
 用意されたマップは,"田園風景を持つ臨海都市" "温泉郷からリゾート都市へ" "運河が隔てた二つの都"の三つ。どのマップも,全体のごく一部分だけ発展している状態だ。そのマップの中に,駅や線路を使い鉄道インフラを整備しつつ,都市を発展させていく。
 何もないところに鉄道を通しても利用客は望めず,まずは建築に必要な資材を運送し,活性化の兆しが見えたところで周辺にマンションやオフィスビル,デパート,遊園地などを建てて地域の活性化を促進させていく。登場する全100種類の車両(パッチでさらに新車両が追加された)から好みの列車を走らせ,利用者の見込める時間帯に電車を走らせるようにダイヤ調整して,多くの利益を得ていくわけだ。
 それにしても,正直いってマップが三つというのはあまりにも少ない気がするが,いずれ追加マップがリリースされることを信じたい。

 さて使える駅は,田舎駅,高架駅,地下鉄駅,操車場の4種類。各駅とも5両駅,7両駅とホームの長さを変えることや,ホームは1〜5番線まで1本単位で拡張できるようになった(A4では1→3→5と3段階)。高架駅は高さ設定により10段まで重ねて設置でき,これまでにない奇妙な駅を作れるのが面白い。線路についてもターンアウト,サイディング,シングルクロス,ダブルクロス,クロッシングといった切り替えポイントが使えるため,用途に応じて使い分ければ多くの列車を制御できる。
 目新しい"操車場"は休日専用列車などを停車させておけるようだが,正直にいうとマニュアルにも詳しい説明がなく正しい使い方が分からず,設置費用も安いため貨物専用駅として多用してしまった。A7は複雑な要素を持ったゲームなのだが,マニュアルがちょっと説明不足すぎるように思われる(これについては後述する)。

 列車運行で一番重要な,A列車の神髄ともいえるダイヤ設定を見ていくと,ダイヤ設定は駅単位だけでなく各列車ごとにホーム単位で設定できるようになり,1時間停車,通過,対向通過待,追越待,到着待,停車,折返などのほか,発車時刻を設定して最低10分間隔での運行が可能となっている。
 かなり細かくダイヤ設定ができるため,うまく機能させるには試行錯誤が必要だが,複数の列車を制御できたときには例えようのない嬉しさがある。……はずなのだが,2005年3月2日時点(Version 1.00 Build 0.47)ではダイヤ設定に不具合があるようで,設定した時間通りに列車が発車しないことが多々ある。正直,この不具合は見過ごせないレベルのものなので,パッチなどによる早期解決をお願いしたい。

 個人的には,1時間停車だけでなく30分,2時間,3時間といった一定時間停車設定もできるといいかなと思った次第。またダイヤ設定やポイント設定は各駅,各ポイントを"列車ごと"に設定するため,ルート全体が見えにくい。例えば「レイルロード・タイクーン」では各列車ごとに「〜駅で停車,〜駅通過,〜駅停車(折り返し運転)」という具合に駅間を指定するだけで,途中にあるポイントなど気にすることなくルート全体を通した設定が可能なため,各車両に完璧なダイヤ設定を与えられた。とくに多くの車両を走らせる本作では,そういった全体を通したルート設定も欲しかったところだ。

 都市の発展に欠かすことのできない資材は,A4では工場や港にストックされている資材は自由に使えたが,本作では必ず貨物列車で別の資材置き場へ運送しなければ使用できなくなった。工場付近で使用したいときも,近くに別の駅を作って短い距離を運送しないと資材は使えない。しかも利益が発生するのは工場や港にある資材が運搬された瞬間のみで,余った資材をマップ外へ運んでも売り上げにならず,貨物列車は走らせれば走らせるほど運行費だけかかる使い勝手の難しいものになっている。工場の生産タイミングに合わせて貨物列車を走らせるなどしないと,利益は出ないだろう。

 本作の難しさでもあり面白さでもあるのが,鉄道会社と子会社をどう経営していくかだろう。鉄道で多くの収益を得ても,子会社経営が赤字では相殺されて利益は出ない。子会社をたくさん建てて黒字になっても,資産税で利益を全部持っていかれることが多々起こる。いかにバランス良く鉄道経営,子会社経営をし,税金対策をしていくかが経営者としての腕の見せ所となる。また株や子会社売買もできるため,もっとマネーゲーム寄りの部分でも楽しめる。
 ただし本作にはゲームオーバーがなく,赤字になっても株の購入ができないだけでゲームは続けられる。そのため,神経が図太い人なら資金をまったく気にせずにプレイ可能だ。A4では赤字になるとゲームオーバーになるため,決算時期になるとバランスシートを眺め資金繰りに頭を悩ませたものだが,あの嫌な汗が出る緊張感がなくなったのは少々残念。

 

自社,他社を問わず物件情報の利益率に注意したい。自社物件で利益率が悪ければ,撤去も考えたほうがいい 駅単位以外にも,ホーム単位でダイヤ設定が可能になった。ここまで使いこなす人は相当なダイア設定マニア ポイントも列車ごとに設定が可能。何番の列車に対して行うのか把握しておかないと間違うこともシバシバ

 

サテライトビュー(左上)で,マップ全体の開発状況が分かる。現在の天気と8時間後の天気予報も表示される 駅,線路,ポイントを組み合わせて実験した。実用性は低いが,激しい線路構成を試せるのも本作ならでは 新幹線が開通すると地域の活性化が促進される。駅を設置したり好みの新幹線を走らせられないのが残念

 

 

■心ゆくまで楽しみたいのに,ちょっと不具合が多すぎ?

 

1兆円超えの大赤字経営でもゲームは続けられる。超高層ビルを乱立させて赤字の上乗せてみた。大量に資材が必要なので,貨物列車で周辺の資材置き場にどんどん運送すべし
 ところで,この「A列車」という複雑なシステムを持つゲームにおいて,マニュアル(冊子,オンラインマニュアルを含め)には最低限のことしか書いていない。A4経験者でさえ戸惑うこと,分からないことが多いのはいかがなものだろうか。あまりにも,何も書かれていない。
 チュートリアルもないし,A列車シリーズを初めてプレイする人やA5以降からプレイしたという人は「何をしていいのか分からない」「黒字にする方法が見えてこない」という事態に陥りそうだ。この面白さを味わえずにプレイするのを諦めてしまう人が多いことは容易に想像でき,非常にもったいない。
 というわけで,当サイトの週刊連載記事「A列車で行こう7 絶景エクスプレス」にて黒字経営にするヒントなどを紹介しているので,参考にしつつコツをつかんでチャレンジしてみてほしい。

 また,原稿執筆時点(3月2日現在)では,ゲーム中で大小さまざまな不具合が判明している。発売日当日に多くの修正を行うパッチが登場したものの,それでもすべての問題は解決されていない状況だ。
 前述したが,とくにA列車のウリでもあるダイヤ設定にもおかしな部分があり,筆者は8時に発車時刻を設定したのに0時に走り出すというのを確認している。最初は正常に動いているのだが,いつの間にかズレが生じたりと,これでは安心して複雑なダイヤ設定を組めるはずはなく,それを楽しみにしていたプレイヤーは苛立ちを隠せないだろう。

※2005年3月4日深夜にリリースされたパッチ「Version 1.00 Build 053」(詳細は「こちら」)の修正項目に,ダイヤ設定の件が含まれていました。編集部もまだ未調査ですが,追記/修正の必要があると判断されれば,後日反映させます。

 ほかにも,資材はあるのに高層ビルがいつまで経っても建設中のままだったり,正直,何が不具合で何が不具合でないのかさえ分からなくなってきているのが現状だ。もう少し発売日を遅らせてでも安定化したほうがよかった気もするが,今となっては早急に修正パッチで直ることを期待するしかない。

 何はともあれ,A4の直接後継作ということもあり,A7発売の発表があってから発売されるのを心待ちにしていたファンも多いと思う。実際にプレイしてみると,A4より進化した点,あまり変わっていない点,逆に使いにくくなったりスケールダウンした点なども見えてくるが,幸いなことに根幹的なゲーム性や面白さは継承されており,プレイしていて素直に面白い。筆者はレビューを書くにあたり毎日プレイしているが,ついつい時間を忘れてプレイしてしまい,睡眠時間が削られるという予想通りの状況になっている。

 鉄道網を構築し,何もない田園風景に道路ができて住宅が建ち並び,さらに手を加えていくと大都会へと変貌していく様子を眺めているだけでニンマリできる。自由気ままに都市開発をする,実在する都市を作り上げる,単線で鉄道網を構築する,複雑なダイヤを組んで行き交う列車を眺めて「オレって凄いなぁ」などと自分に酔いしれる……プレイヤーのやり方一つでいろいろな楽しみ方ができるだろう。興味のある人はぜひプレイして,自分なりの箱庭を作り上げてほしい。

 

全100種類以上ある車両の解説も見られる。画面は発売日に登場したパッチに収録されていた新車両の1台 空港は近くに高い建物があると飛行機の離発着ができない。念のため資材置き場で他社からガードしよう 不動産取引にて子会社売却が可能だ。安く建てて高いときに売り払う,これが鉄則。資産税対策に売るもよし

 

A4では開通させるには膨大な資金が必要だった新幹線とリニアは,赤字OKのA7では開通の興奮は半減かも 雨や雪も降り,雲も流れる。飛行船,UFO,サンタなども飛び交う。時間を早めていると一瞬なので見逃しがち あまり使わないかもしれないが,各ウインドウでチップヘルプの表示も可能。使い道は少ないが嬉しい機能だ

 

タイトル [価格改定]A列車で行こう7
開発元 アートディンク 発売元 サイバーフロント
発売日 2007/03/02 価格 8190円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Celeron/1GHz以上[Pentium 4/1.8GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上,グラフィックスチップ:DirectX 9.0c以上に対応,グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨],HDD空き容量:5GB以上[10GB以上推奨]

(C)ARTDINK 2005 (C)CYBERFRONT 2005