マイクロソフト リンクス 2003 日本語版
Text by UHAUHA 1st May.2003
■一段とリアリティを増したリンクスシリーズ最新作
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恐怖の池越えのショット。油断するとポチャンだ。パワーストロークとリアルタイムスイングではとくに注意しよう |
ゴルフを再現したゲームといえば,真っ先に名前の出てくるのは"リンクスシリーズ"だろう。DOS時代から進化し続けてきたPCゴルフシミュレータの定番ソフトである。
グラフィックス,サウンド,ボールシミュレートなどすべての面でリアリティを追求してきたシリーズだが,コテコテのシミュレータのわりには初心者から上級者,そして実際にゴルフをたしなんでいる人まで楽しめるゲームシステムになっているのが人気の秘密だ。
そんなリンクスシリーズの最新作が,「マイクロソフト リンクス 2003 日本語版」(以下,リンクス2003)。パッと見は前作「マイクロソフト リンクス 2001」(当サイトのレビューは「こちら」)から大きな違いは感じられないが,ほぼ完成系ともいえるゲームシステムはそのままに,ボールの軌道などの基本的な部分よりも,付加価値要素を重点的に強化され,地味ながらも一段と広い層のプレイヤーに楽しんでもらえるような作品となっている。
今回もセルジオ・ガルシア,イェスパー・パーネビック,デビット・トムズ,アニカ・ソレンタムといった一流プレイヤーのプレイスタイルが再現されており,現実ではまず"ご一緒"できない彼らと,GPSデータを基に忠実に再現された実在する五つの有名ゴルフコース,そして一つの架空コースを舞台にラウンドできる内容となっている。
********** リンクス2003の収録6コース **********
Cambrian Ridge(アメリカ・サウスカロライナ)
Kauri Cliffs(ニュージーランド)
The Centenary Course at Gleneagles(スコットランド)
The Ocean Course at Cabo del Sol(メキシコ)
Tribute at the Otsego Club(ミシガン)
Skeleton Coast(架空コース)
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実写のようなグラフィックスは健在。風の音,鳥の声,ギャラリーの歓声など"空気"をも感じ取れる |
グリーン上ではパットアシスタント機能が便利。上級者でもつい使ってしまうのではないだろうか |
画面上にはさまざまなカメラの映像を表示可能だ。ちなみにゲームのメイン画面も,実はカメラモードで動いている |
■トーナメントモードでトッププレイヤーを目指せ!!
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電子メールを使ったプレイ方法もある。主催者が設定したルールでプレイして,結果を電子メールで送り返すのだ |
まず各ゲームモードを簡単に説明しておこう。基本設定のまま気軽に1コースをラウンドできる"クイックスタート",ルールなどを細かく設定してラウンドできる"プレイ",シーズントーナメントに出場しライバルと順位を競い合う"トーナメント",MSN Zone.com(MSN Gaming Zone)やLANを使ってマルチプレイを楽しめる"オンライン",各ショット方法やプレイ方法を解説してくれる"レッスン"がある。
前作との最大の違いは,トーナメントモードの内容だ。大幅に内容が変更されていて,ありがちなシーズントーナメントに参加して優勝を目指すだけでなく,ゴルフプレイヤーとしての人生を体験できる"キャリアモード"と呼べるモードになったのだ。
トーナメントモードでは,アマチュアレベルからスタートし,トーナメントに参加して経験を積みながら上位レベル,そしてチャンピオンを目指す。優勝すれば賞金やトロフィを入手できるなど,今までのリンクスシリーズにはなかったゲームモードに変更されている。
このトーナメントは筆者も非常に気に入ってプレイしまくっていたのだが,一度トーナメントに参加してしまうと,スコアが悪いからやり直そう……といったことはできない。例えばショットをミスした,連続して池に落とした……などという泣きたくなるようなことが,どうしても起きてしまう。だからといって,リンクスを強制終了しようが,PCをリセットしようが,次にプレイするときは必ず前プレイの続きから開始される。つまり"ズル"ができないようになっているのだ。
トーナメントを途中で抜けるには"棄権"を選ぶしかなく,キャリアにおいては理由はなんであれ棄権という文字は載せたくないのが本音だ。そのため一打一打が自然と真剣になり,その苦労がスコアに反映され,優勝などしようものなら今までのゴルフゲームにはない達成感が味わえるのだ。
筆者がトーナメントの次によく遊ぶのが,オンラインモード。リンクス2003はシングルプレイでも十分に楽しめるが,人間同士でラウンドするマルチプレイはまた別の楽しさがある。ネット回線を使い,友人や会社内(!?)でゴルフコンペを楽しむといったこともできるのだ。
LAN以外にもMSN Zoon.comを経由して,一緒にプレイしてくれる人を探すことも可能。ただし,Zoom.comは米国のサーバーなので,チャットを含めプレイヤー名に日本語は厳禁ということはお忘れなく(日本語ロビーサーバーもあれば,一段と盛り上がるのではないだろうか……)。
実際にマルチプレイで遊んでみると,リアルタイム性があまり重要ではないゲームなので,その安定度は極めて良好。あえていえば,過去のリンクスシリーズと代わり映えしないのが少々残念なところか(変えようもない気もするが)。ゲーム設定も前作同様にマッチプレイ,ナッソなどを含め,突拍子もないルールでプレイ可能なので,飽きずに何度も楽しめるだろう。
一つ問題なのは,相手側のレンダリング時間,ショットまでの時間などにより,自分の順番になるまでは結構ヒマなこと。長くても1分程度だろうが,この時間はチャットで相手をあおったり,雑談したりしながら時間を潰そう。ちなみに二人でハーフ(9ホール)を回ると,1時間ほどかかった。18ホールでは単純計算で2時間ほど要するので,お酒でも片手にジックリと腰を据えてデスクトップゴルフを楽しむ,そんな大人のスタイルが似合いそうだ。
また目新しいところでは,リンクス2003には電子メールトーナメントという,文字通り電子メールを使ったトーナメントを開催できる機能がある。
ホストはトーナメントルールを設定し,その設定情報を参加者に送信する(リンクス2003上から送信可能)。参加者はその設定でプレイして,その結果を主催者に送り返す,という感じに進められる。そしてホスト側は送られてきたスコアを比較する……と,マルチプレイモードとはずいぶん違うが,これはこれで面白い試みだろう。
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リアルタイムスイングでは,ヘッドスピードも重要だがヘッドの芯でボールを捕らえなければ飛距離は出ない |
ゴルフゲーム全般にいえることだが,グリーンエッジからのチップショットは相変わらず入りやすい…… |
過去のリンクスシリーズには無かった視点も。リンクスでプレイヤーがここまで大きいのは少し違和感があるかも |
■クラブをマウスに持ち替えた新しいショットシステム
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細かいところまで再現されたコースを見ていると,実物のコースに行って見比べたい心境になる |
ゴルフゲームで一番重要なのは,当然ボールを打つこと(ショット)で,狙い通りのスイングができなければ,良いスコアを出すのはまず無理だ。
リンクス2003には,誰でも簡単にショットが打てる"シンプルスイング",多くのゴルフゲームで採用されている"クラシックスイング",上級者向けのマウスを左右にスライドさせる"パワーストローク",そして今回新たに採用された"リアルタイムスイング"の4種類が用意されている。
リアルタイムスイングは,クラブをマウスに置き換えたスイング方法といった感じ。具体的には,マウスを手前に引くことでバックスイング,前に押すことでフォロースイングと,実際のクラブを振り上げてから振り下ろすまでをアナログ的に再現している。バックスイング量やマウスを前方に動かす速度でヘッドスピード(ボールを打つ力)を調節でき,少し斜めに押し出せばボールに当たるヘッド角度が変化する。
最初はまっすぐマウスを移動させることも難しいかもしれないが,何度も繰り返すことによって自在にスイングできるようになり,使い慣れると手放せないスイング方法である。リンクスシリーズは初めてという人は,まずリアルタイムスイングを試してほしい。もちろん,今までシンプルスイングやクラシックスイングを使ってきた人にもお勧めのスイングだ。
設定するスキルレベルによって打てる球種に違いが出るのも面白い。スキルレベルにはアマチュア,プロ,チャンピオン,エリートの4種類があり,アマチュアはストレートしか打てず,プロならば軽いフックやスライスも打てる。そしてエリートであればさまざまなショットを打てるなど違いがあるので,自分の腕前に合わせて設定しておきたい。
また新機能として,スキルレベルがアマチュアとプロの場合に使用できる"パットアシスタント"が追加されている。これはグリーン上でのパッティング時に手助けしてくれる機能で,ボールからカップまでの理想ラインが表示され,さらに力加減もスイングメーターにマークが表示されるので,ゴルフゲームが初めてという人でもロングパットを綺麗に沈められる……かもしれない(パットアシスタント通りに打てば必ずカップインするということではない)。グリーンの傾斜も考えながら「大体,このくらい」などパッティングラインや力加減を調整することは忘れずにやっておこう。
パットアシスタントが初心者向けの機能だとすれば,上級者向けには"グリーンの分析"という機能が追加された。この機能を使えばグリーンをさまざまな角度(これは文字通りの"角度")から分析でき,簡単にいえばゴルファーが芝目を読んだりするときに,ボール側やカップ側からラインを確かめたりする行動をゲームシステム化したわけだ。座った状態で眺めたりできるなど,複雑な形状をしたグリーンなどでの"芝の読み"に大いに役に立つだろう。
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シンプルスイングは子供向けという感じ。クラブをクリックすると,矢印の地点(右上参照)まで自動でショットを打ってくれる |
パワーストロークは難度の高いスイング方法だ。クラブヘッドをドラックしたまま左右にスライドさせ,センター付近でマウスボタンを離す |
各スイング方法は,音声などを用いて分かりやすく説明される。まずはひと通りのレッスンを受けておくべし |
■Course Designerでオリジナルのコースを作れ
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コースデザイナーは,使いこなせば素晴らしいコースが作れるが,それまでが大変。完全日本語版で分かりやすくなったので,ぜひ挑戦を |
本作は,前作同様にArnold Palmer Course Designer(APCD)を収録している(今回収録されているのは最新版となるバージョン1.5)。
APCDは優れもののゴルフコースデザインツールで,自由にオリジナルのゴルフコースを作成可能だ。もちろん,そのコースでマルチプレイを楽しむこともできる。前作ではプログラムやヘルプは英語のままで,日本語マニュアルが付属するという形であったが,今回はプログラム/ヘルプ共に完全日本語化されてずいぶん分かりやすくなった。もっとも,アーノルドパーマーもビックリなゴルフコースを作れるようになるには,さすがに道のりは険しそうだが……。
ところで,コースを追加できる点も,リンクスシリーズの特徴の一つだ。
すでに海外では,リンクス2003用の追加コースとして「Links 2003 Championship Courses」という世界の有名コースが20コース収録されたデータ集が発売になっている。早速筆者も輸入販売しているショップで取り寄せてインストール(コースのインポート)してみたところ,リンクス2003日本語版でも問題なく使用できた。
なおマルチプレイなどで使用する場合は,相手側にもコースデータがないと一緒にラウンドできないのでご注意を。本編収録分の6コースに物足りなくなった人やほかのゴルフコースもやってみたい人は,輸入販売しているショップなどを探してみよう(欲をいえば,こういった追加データのようなものも国内代理店で扱ってほしいところではある)。
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最初からいろいろなプレイモードが用意されているが,オリジナルルールを作成することも可能 |
要所要所でヒントが表示される。覚えてしまえばうっとうしい画面だが,ひと通り目を通しておきたい |
■誰にでも勧められるゴルフシミュレータ,まずは挑戦だ
リンクス2003は,前作に比べて大幅な変更がされたとは言い難いが,初心者から上級者まで広範囲のプレイヤーが"一緒に"楽しめるゲーム性が,より高められたのは間違いない。
初心者が上級者とプレイしても,設定次第では上級者と対等にプレイ可能だし,上級者が負けるなんてことも十分にあり得る。アーケードのような操作性にできたり,逆にリアルシミュレータを求める人が唸るような操作性にできたりするなど,この広い守備範囲はリンクス2003ならではだ。またゴルフシミュレータは初めてという人やリンクスシリーズはやったことがないという人も,ゲーム中に"コース紹介" "アドバイスを受ける" "オンラインヘルプを見る"といった機能もあるので,とまどうことはないだろう。
テキスト/音声を含め,すべて日本語化されている点も安心できる。リンクス2002をプレイしている人も,リアルタイムスイング,グリーンの分析など新しい機能を試す価値は大いにある。
美しいゴルフコース,風の音,鳥の声……。モニターの中に広がる仮想空間で,クラブをマウスに持ち替えて存分にゴルフを楽しめる……。カップにボールが吸い寄せられていく瞬間には,ギャラリーの歓声とシンクロして思わず拳を握りしめて叫ぶことになるだろう……。ぜひリンクス2003で,そんな喜びを味わってもらいたい。
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グリーンの分析では,さまざまな角度からグリーンを調べることができる。じっくりとラインを読み,ロングパットを沈めよう |
トーナメントでは優勝すると,賞金,トロフィーなどがもらえる。どんどん試合に参加して,成績を残し,トロフィーケースを埋めていきたい |
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