「DOOM 3」

Todd氏



Tim氏

 2004年8月5日,六本木ヒルズのホテルグランドハイアット4階ローズマリーの間にて,id SoftwareのCEOであるTodd Hollenshead氏とリードデザイナーのTim Willits氏の,来日インタビューが行われた。id Softwareといえば,4年に渡って「DOOM 3」を開発し続けてきたチーム。このたび開発が終了し,いわゆる世界中を巡る発売記念ツアー中といったところだろうか。
 「DOOM 3」のゲーム内容に関しては,すでに当サイトの「こちら」にレビュー記事が掲載されているほか,「こちら」のスクリーンショット集などもあるし,何より日本語マニュアル版が本日(8月12日)めでたく発売となった。そこで今回のインタビューでは,「DOOM 3」を生み出したid Softwareのスタッフについての話などを織り交ぜつつ,いろいろと聞いてみることにした。もちろん,気になるデモ版や次回作などの話も聞いたので,お楽しみに。

4G:
 日本を訪れるのは初めてですか?

Todd:
 2度目ですね。2年前にも一度日本に来ました。そのときは22時間しかいなかったので,ほとんど通り過ぎたようなものでしたね。

4G:
 今回はゆっくり世界中を回れますね。

Todd:
 まずロンドンに2日間,バルセロナに1週間,香港に4日間,そして東京には昨日着いたところです。でも明日はダラスに帰らないと。「QUAKECON 2004」(8月12〜15日)があるから,あまりのんびりできないのですよ。

4G:
 さっそくですが,お二人は「DOOM 3」の開発ではどんな作業を?

Todd:
 僕はCEOなので,仕事は主にビジネスや運営方針のことばかり。開発には直接はタッチしていません。

Tim:
 僕はムービーディレクターと,ストーリーのアイデア出し,そしてスタッフの管理などを行う立場でした。

4G:
 リードデザイナーというのは,てっきりアート関係の仕事かと思っていました。

Tim:
 実際のところ,スタッフを激励するチアリーダーみたいなものですね(ポンポンを振るマネ)。

4G:
 そのチアリーダーに激励されながら「DOOM 3」を生み出した,id Softwareのスタッフ陣を紹介してもらえますか。

Tim:
 まずはご存知,ジョン・カーマック(John Carmack)。彼がテクノロジの上層レベルを考案するところから,すべてが始まります。彼の技術的なアイデアに合わせて,ストーリーが作られていきますね。

4G:
 やはりidの作品は,彼がキーとなっているんですね。

Tim:
 そしてリードアーティストのケネス・スコット(Kenneth Scott)が,クリーチャーのデザインを行いました。まず最初に20万〜50万ポリゴンという,ピクサー映画並のハイポリゴンのモンスターデータを彼自身がモデリングして,それに着色も行ってます。

4G:
 「DOOM 3」という独特の世界の,雰囲気を生み出した人物ですね。

Tim:
 実際にゲームで使用する,ローポリゴンへの変換も彼自身が行いました。ジョン・カーマックが作った自動ツールがあって,それでノーマルマップ(注:ポリゴンに微細な凹凸を貼り付けるテクノロジ)に変換して,ローポリゴンモデルに貼り付けているんです。まさにカーマック・マジック。

4G:
 そのお二人が,実作業における中心人物ですね。

Tim:
 そのほか,モンスターの動きを作るスタッフが2名,プログラマは5名,レベルデザイナが4名,そしてアート担当が9人。各部門にマネージャーというものは存在せず,全員が横並びの位置で仕事をしていますね。カーマックだけはちょっと特別ですが。

4G:
 リードアーティストのケネス・スコット氏は,どんな人物ですか?

Tim:
 彼は故郷のカナダでNational Art賞を受賞した経歴のある,ダークなイラストを描く人物ですね。実は日本のアーティストの大変なファンです。日本の彫刻(注:たぶんフィギュアとかガレージキットのこと)を収集するのが趣味で,アニメファンでもあります。日本のDVDやアニメグッズを,ものすごいお金をかけて日本から直輸入しているんですよ。

4G:
 「DOOM3」のギャラも,ほとんどそこにつぎ込んでしまったとか?

Todd:
 ははは,きっとそうに違いない。

4G:
 ダークで繊細な人というイメージですが?

Tim:
 とんでもない! 彼はカナダ人なので,とても陽気な面白い人ですよ。

4G:
 そういえば今日は,ジョン・カーマック氏はどうしたのですか?

Todd:
 彼は先週の金曜日にベビーが生まれたばかりだから,今ごろ家族のそばにいるんじゃないかな。もともと彼は旅行が好きではなくて,3年前に韓国に行ったきりですね。

4G:
 ああ,おめでたい理由だったんですね。ではせっかくこの場にいないことですし(?),日本のプレイヤーも気になっているカーマック氏について何か聞かせてください。

Todd:
 彼は「QUAKE 3」のすぐあと,それまでの常識を覆すような,ビジュアルが劇的に異なるものを作りたいと思い,さっそく研究に取り掛かりました。「QUAKE3」から「DOOM3」への進化の度合いを,ソフトウェア3Dだった初代「DOOM」から,初めて3Dアクセラレータを使った「QUAKE」への進化に匹敵するものにしようとしたんです。

4G:
 では「DOOM 3」のコンセプトは実に明確で,世間の反応も狙い通りのものだったわけですね。

Todd:
 そうですね。「DOOM3」では,とにかく今まで見たこともない高精細なグラフィックスを見せようとしました。ポリゴン数は,実をいうと「QUAKE3」とそれほど変わっていないんです。でもこの数年に行われたビデオカードの革新的な進化により,プログラマブルシェーダなどのテクノロジが出現して,ディテールは桁違いのものとなりました。そして全編がリアルタイムシャドウとリアルタイムライティングにより,映画のようなグラフィックスを再現できるようになったというわけです。

4G:
 つまり「DOOM 3」は,極論してしまうと「とにかくグラフィックスに注力した作品」という位置づけだと考えてよいですか?

Todd:
 「DOOM 3」は「DOOM II」の続編というより,むしろハイクオリティ版として作られたものですね。リメイクと考えてもらってもいいでしょう。3のストーリーの細部は一応オリジナルですが,登場するモンスターの種類や,火星の基地が舞台という設定,世界観や目的,そういった要素はだいたい2から継承されているものです。

4G:
 では,「DOOM II」をプレイした人には,むしろ懐かしさすら感じられる?

Todd:
 サイバーデーモンやヘルナイトなど,ありとあらゆる過去のモンスターが「DOOM3バージョン」として復活しています。過去のDOOMもジョン・カーマックが作っているのですが,その世界観がDOOM 3でもそのまま再現されています。過去のDOOMが好きだという人には,DOOM 3で生まれ変わったモンスター達を楽しんでもらいたいですね。

4G:
 そもそも「DOOM」とは,どういうストーリーなんですか?

Todd:
 では説明しましょう。舞台となるのは2145年,火星にあるUACの基地。宇宙海兵隊の主人公が,行方不明になった科学者を探し出すためにUACの基地を訪れるところから始まります。UACで研究していたのは,次世代のワープ航法というか,テレポーテーションシステムのようなもの。異世界の扉を開こうとしていたのだけど,彼らは誤って地獄の扉を開いてしまった。地獄の連中がこちらの世界に出てきてしまい,基地は占拠されてしまう。地獄の住人達は,実は地球への侵攻を考えていた。……それを阻止するのが目的となります。

4G:
 なるほど。今作は,「DOOM II」のころと比べてストーリーの表現にも力を入れているように見られますが,実際のところ今回はストーリー部分にも期待できますか?

Todd:
 ええ,今回のストーリーは小説家が担当しています。声優は30人以上も参加しており,人物は研究所の所長,地球から火星の基地を調査に来たお偉いさん,そのボディガードなどが登場し,誰が黒幕なのかといったことに絡むストーリーが展開されていきます。ヒロインというか女性は一人だけいるのですが,まぁなんというか……ははは。

Tim:
 ははは。

4G:
 ううむ,楽しみですね。ではエンディングもだいぶ凝ったものに?

Todd:
 エンディングは一つだけですが,途中のストーリーには分岐点がいくつか用意されていますね。

4G:
 ストーリーを担当したという小説家とは,どなたですか?

Todd:
 Matt Costelloという作家です。過去に「7th Guest」「11th Hour」といった,パズル系アドベンチャーのシナリオを書いたこともある人物ですよ。

4G:
 懐かしい! まだDOS時代だった頃の,ホラーアドベンチャーですね。

Todd:
 DOOMと,だいたい同年代の作品ですね。

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