「Homeworld 2 Questions」

〜forGamer.netメールインタビュー〜

Text by TAITAI

 完全3Dで構築された宇宙空間での戦いや迫力のカメラワーク,SF映画を連想させる派手なエフェクトの数々など,多くのプレイヤーに衝撃を与えた名作「Homeworld」の続編「HomeWorld 2」が,この夏(US版:2003年8月27日)ついに発売される。
 日本での知名度はそれほどではないかもしれないが,Homeworldは1999年のGame of the Yearを受賞した傑作ゲーム。国内でも,続編を心待ちにしていたプレイヤーは少なくないだろう。
 forGamerでは,HomeWorld 2の開発元であるRelic Entertainment社の副社長ダン・アイリッシュ (Dan Irish) に,いくつかの質問を投げかけてみた。Homeworld 2のコンセプトや専用のMOD制作ツールについてなど,いろいろな話を聞くことができたぞ。

回答者:ダン・アイリッシュ (Dan Irish ) Relic Entertainment社 Vice President

forGamer.net(以下,4G):
 HomeWorld 2を作り始めたときに考えていたコンセプト及びビジョンと,それがどのように達成されたか,という経緯をお聞かせください。やはり前作HomeWorldでプレイヤー/業界に与えた影響は大きく,前作を超えるという意味でも,いろいろと苦労はあったと思いますが。

Dan Irish(以下,Irish):
 Homewolrdの元々のコンセプトとビジョンは,アレックス・ガーデン(Alex Garden)によって考え出され,またそのコンセプトは当社自体を活性化するものでした。
 アレックスは,スター・ウォーズシリーズの熱烈なファンが感じていたような,"宇宙空間での戦闘を実際に経験するに近い感覚"で遊べるゲームの必要性を強く主張しており, 彼のビジョンは,フル3Dの世界と優れたカメラワークを駆使して,RTSというジャンルにおいて,新たな方向性を開拓する作品を作り上げることでした。
 「Command & Conquer Generals」のようなトップクラスの作品でさえ,優れた3Dゲームエンジンを使用しているにも関わらず,フル3Dである利点を引き出せていません。HomeworldとHomeworld 2の背後にあるコンセプトは,自由なカメラワークを駆使することで,よりゲームの世界観にリアリティを与え,迫力ある描写を実現するということだと考えています。
 上方に固定されたカメラ視線でプレイするのとは大きく違って,ゲームの中で視点を自由に動かしながら遊べるという面白さは,本作ならではの長所だといえるでしょう。
 Homeworldは,そのようなコンセプト/ビジョンが先に確立され,ゲームのストーリーやアート部分に関する詳細は,制作チームが揃った時点から考えていきました。


――――――――――――
4G:
 開発で注意/苦労した点はどの部分でしょうか?

Irish:
 Relic Entertainment社は,およそ4年前に新しいHomeworld 2のエンジン開発に着手しました。もちろん,私たちはHomeworldエンジンの開発から多くを学び,またその経験をHomeworld2の開発に生かしました。
 私たちは現在,非常に強力なゲームエンジンと,MODを制作しやすい構造のツールセットを揃えています。それらは,現在使用できる3Dハードウェアの性能を利用することで,最大限のパフォーマンスを発揮するものだと自負しています。
 また最も重要なこととして,Homeworld 2では,ゲーム全体の外観を大きく改善・向上させることができました。高圧縮されたテクスチャやスペシャルFXシステム,ダイナミックライティング,そして最新のPath Finding機能(軌道検索:巨大な3Dマップの中でも,ユニットの移動の調整などを簡単に行える)など,いろいろなテクノロジーを利用していますね。
 このような技術的アプローチは大変な苦労もありましたが,開発の中で最もエキサイティングかつやりがいのある挑戦だったといえます。

――――――――――――
4G:
 エディタの機能についてお聞かせください。
 ジャンルを問わず,最近のゲームには充実したエディタが付属されている作品が多いと思いますが,HomeWorld 2のエディタに何か特徴的な要素は含まれているのでしょうか? 本作の優秀なゲームエンジンに魅せられて,StarWarsやStarTerkといった人気作のMODを作りたがるプレイヤーも多いと思うのですが。

Irish:
 Homeworld 2は,レベルエディタ(level editor)と戦艦構築ツールとしてMaya 3.01を利用しています。ただこれはMayaの古いバージョンのため,私たちはAlias/Wavefront社と協力しながら,Homeworld 2フォーマットへエクスポートできる,最新のMaya:Personal Learning Edition(以下,Maya:PLE)を発表する予定です。Homeworld 2エンジンでMODを作りたいという要望が多くなるという点には私も同感ですし,その可能性は無限だと思います。

――――――――――――
4G:
 Homeworld 2では,オンラインのコミュニティを意識して,武器のタイプや強さ,戦艦のモデル,さらにはユニットに貼り付けるチームタグまでが変更できるモジュールをリリースする予定があると聞いています。自分だけの"旗艦"を作って対戦をすることも可能なのでしょうか? また,具体的にどのようなモジュールになるのかお聞かせ下さい。

Irish:
 Maya 3.01をすでに持ってる場合は,即座にゲームに追加コンテンツを作成することが可能です。またMaya:PLEではなく,我々が用意するレベルエディタの発表を待った場合でも,Maya:PLEに比べるとかなり限定はされてしまいますが,同じような追加コンテンツを作成できます。
 私たちとしては,Maya 3.01のコピーを手に入れることをお勧めしたいですね。後で我々ががそれらのプレイヤーに向けたエクスポータを提供する予定ですし,Maya 3.01はすでに製造を中止されているものの,インターネット上で未使用の無料コピー版を簡単に入手できますからね。

――――――――――――
4G:
 本作を作るにあたって,影響を受けた映画やゲームなどがもしあれば教えてください。ミサイルの軌跡や戦闘機の挙動に,日本のアニメーション(マクロスなど)を彷彿させるものを感じたのですが(でも個人的に思い出したのは「Babylon 5」ですが)。


Irish:
 私たちが強く影響を受けた作品は,以下のようなものですね。

−アート
 クリス・フォス(Chris Foss), ピーター・エルソン(Peter Elson),ジョン・ハリス(John Harris), シド・メッド(Syd Mead)

−アニメ,マンガ
 大友克洋, 士郎正宗

−映画
 トロン, ブレードランナー, スター・ウォーズ

−音楽
 ブライアン・エノ(Brian Eno),バング(Bangra), イスラム古典音楽(Traditional Islamic), クラシック(Classical Western)


――――――――――――
4G:
 非常に気が早い話で申し訳ないのですが,ゲームエンジンのライセンスを他社へ供与する計画はあるのでしょうか? エディタの質問でも触れましたが,あのクオリティのグラフィックスで「StarWarsの世界観を楽しみたい!」などと考えるプレイヤーは多いと思うのですが(過去にAge of Empires2のエンジンを使用して,Star Wars Galactic Battlegroundsが制作された例があるように)。

Irish:
 Homeworld 2エンジンに興味を持ち,高い技術力を誇るデベロッパに対して,ライセンスを提供する準備は出来ていますよ。現在,第三者にライセンス供与するためのアプローチをいくつか模索している段階です。とはいえ,まずはHomeworld 2自体を完成させ,高品質な作品となるように専念することが最重要だと考えています。


――――――――――――
4G:
 日本のファンへ一言お願いします。

Irish:
 Homeworld 2は,人類(Hiigarans)と彼らのリーダーであるKaran S’jetの,壮大な戦いの物語です。多くのプレイヤーが,Hiigaraが帰還を果たしたときにその困難はすべて終結したと思われたでしょう。しかし運命とは,流浪者(the Exiles)にとってそれほど甘いものではありません。Inner Rim(内縁惑星群)において,Hiigaransは,残虐で古代の力を行使する新たな強敵に遭遇するのです。
 Homeworld 2は,母船(MotherShip)とそのクルー達が果敢に挑む旅に着目した物語です。その旅の中でHiigaransは,銀河系の最古の場所へと誘われながら新たな敵に遭遇し,彼らが流浪の運命を背負った裏側にある"真実"を突き止めていきます。

 前作であるHomeworldにおいて,流浪者(the Exiles)は,自らの故郷(Homeworld)を奪還しました。それに対してHomeworld 2は,彼ら(流浪者)自らの"運命"を取り戻す冒険なのです。

 またHomeworld 2をプレイするにあたって,Homeworldや「Homeworld:Cataclysm」のストーリーを理解したり知っておく必要はとくにありません。すべての物語がHomeworld2に含まれており,プレイヤーは,この壮大な冒険叙事詩を新たな一章から楽しんでいけます。。
 ただ前作シリーズそれぞれのストーリーを知っている人ならば,私たちが過去とのつながりを考慮して作り上げた物語/世界観の奥深さに驚き,より楽しんで頂けるのではと思っています。

 Homeworld 2に期待して下さっている皆さん,ありがとうございました。

 さて,筆者的には非常に注目している本作だが,実はまだ日本国内での展開については,正式な発表が無いままとなっている。題材(SF)が日本人受けしにくい,システムがマニア向きなど,いろいろな懸念材料は確かにあるかもしれない。しかしこれだけのビッグタイトル,どこかから発売されることはほぼ間違いないと考えてよいだろう。
 Preα版を遊んでみた印象では,グラフィックスの素晴らしさはもちろんのこと,戦闘機,戦艦の挙動/ディテールの細やかさはかなりのクオリティ。Homeworld 2は,ぜひ完全日本語化するなどして,より多くのプレイヤーの目に触れていってほしいタイトルだと感じた。国内における展開についてなど,今後の動向にも注目していきたいところだ。

→「Homeworld 2」のScreenshotsやムービー,過去のNewsは「こちら」からどうぞ。

※記事中のScreenshotsは,すべて開発中のものです。ご了承ください。