forGamer.net独占インタビューシリーズ
「Warhammer Online」
with Robin Dews and Matt Sansam

Warhammerの世界観の基礎になった,25年の歴史

 ロンドンから北に200kmに位置するノッティンガムは,北のヨーク地方や北西のリバプールへの交通の岐路で,ノッティンガム城を中心にインナーシティと呼ばれる都市部が広がる。人口は30万人程度だが,ヨーロッパらしい古い建造物と近代的な風景がミックスされた,非常に雰囲気の良い街並みだ。先ほどロビンフッド以来何もなかったといわれていると書いたが,近代では退廃の詩人バイロンや「チャタレイ夫人の恋人」を書いたロレンスなど,芸術分野でも多くの才能を排出している。

 Game Workshop社は1975年にこのノッティンガムで設立し,プラスチックやメタル製のミニチュアフィギュアをデザイン/制作して世界に輸出してきた。Warhammerが世に送り出されたのは1983年のことだが,最近では「Lord of the Rings」(指輪物語)のミニチュアゲームにも人気が集まり,独立系のTRPG会社としても大きく成功を収めている。
 そのGame Workshop社がオンラインゲームの制作のために設立した子会社が,今回取材したWarhammer Online社だ。同社はコンピュータソフト開発技術の未熟さを補うためロンドンを本拠にしていたClimax Development社と提携し,Climax Development社側もWarhammer Online制作のためにオフィスやスタッフをノッティンガムに集めてClimax Nottingham社を設立した。

 今回インタビューしたのは,Warhammer Online社のジェネラルマネージャー,ロビン・デュース(Robin Dews)氏と,Climax Nottingham社側で総合プロデューサーを務めるマット・サンサム(Matt Sansam)氏の二人だ。デュース氏は非常に明るく,しゃべり出したら止まらない感じの人で,対称的にサンサム氏のほうは物腰静かでマジメそうな雰囲気がある。Warhammer Online自体は2004年の発売を目標としており,まだプレイアブルなバージョンがない状態だったが,二人はWarhammerの世界観を筆者にも分かるように説明しながら,いかに面白いゲームになるのかを多弁に語ってくれた。

Warhammer Fantasy RolePlay (通称WFRP)は,25年の歴史の間に6版までルールブックが改訂され,ガイドブックや小説など幅広く展開している Warhammer Online社のボス,ロビン・デュース(Robin Dews)氏。Game Workshoo社を説得してWarhammer Onlineの企画を進め,イギリスでも名だたるオンラインRPGに成長させようという野望を持つジェネラルマネージャー。スキンヘッドのコワモテだが,本当はお喋りで気のやさしい人物である

 

テーブルトークとゲーム制作会社のジョイントベンチャー

4Gamer.net (以下,4GN):

 まだまだ情報の少ないWarhammer Onlineですが,今日はじっくりとお話を伺いたいと思います。まず,Warhammer Onlineの企画が始まった経緯から教えてください

Robin Dews (以下,デュース):

 はい。Warhammerの世界観を使ったオンラインゲームを作ろうとGame Workshop社が考え,Warhammer Online社の設立に乗り出したのは,ちょうど2年ほど前(2000年)のことでした。当時はRPGにする気もなく,ただオンライン専用のゲームを作ろうというくらいのあやふやな企画だったですね(笑)。Warhammerらしく,ストラテジーゲームとなるという話もあったくらいなんです。2001年の1月から6月くらいまでは,企画を練る作業ばかりを行っていました。そうやってオンラインゲームの制作に必要な知識や技術力を考えていくうえでClimax Development社との提携が決まり,今作業しているWarhammer Onlineの原型となる形ができあがっていきました。Warhammer Onlineは,Climax Development社とGame Workshop社のジョイントベンチャーなのです。

4GN:

 Warhammerシリーズはゲーム会社にライセンス提供していましたよね。以前,Warhammer 40,000を元にしたSSI(Strategic Simulations Inc。現在はUBI Software社の1部門)のソフトで遊んだ記憶があります。

デュース:

 あまり面白くなかったでしょう?(笑) よく覚えてらっしゃいますね。当時はWarhammer 40,000はSSIに,WarhammerはTHQ社にライセンスしていたのですが,コンピュータゲーム版は我々を満足させるものではありませんでした。そういう経験もあって,今度は自分達でやってみようと考えるようになったのでしょうね。

4GN:

 現在Warhammerシリーズのプレイヤー数は,どれくらいですか?

デュース:

 もう25年も続いているゲームですから,アクティブなプレイヤーは30万から50万人くらいでしょうか。これは,Game Workshop社が直接的な販売権を持っているフランスやドイツなどのヨーロッパと北米地域を合わせた人数です。ほかにもイタリアや,日本などアジア地域でも翻訳版が出ています。プレイヤーの中にはフィギュアを集めるコレクター専門になった人も多いですし,過去13年に渡って行われているコンベンションは相変わらずの盛況ですよ

カオストロールとドワーフが戦っているシーン。周囲の照明源は月光と画面左手の写っていない場所にある焚き火のみで,その分リアリスティックな表現になっている Warhammer Onlineのために開発中のゲームエンジンはLiviathanエンジンという名称。この画像は時間によって影の変化を示すテクノロジデモから撮影したものだ

 

Warhammer Onlineの標語は,「ニッチ,オブセッシブ,ファンタジー」

4GN:

 さて,2004年にはWarhammer Onlineが登場するわけですが,すでに相当な数のMMORPGが世界で開発されていますよね。

デュース:

 平たく言って,世界中でMMOを楽しんでいるプレイヤーは100万人くらいしかいないんじゃないでしょうか。「Ultima Online」が20万人,「EverQuest」が40万人,「Dark Age of Camelot」で15万人,「Asheron's Call」の10万人……。まあ,その中でもかなりのプレイヤーが重複しているでしょうね(笑)。ただ,韓国はちょっと例外ですね。非常に特殊なケースだと思います。
 そういった,まだ限られたユーザー層しかない中でWarhammer Onlineの位置付けを明確にしなければなりません。そこでキーワードを挙げるとすれば,「ニッチ,オブセッシブ,ファンタジー」の三つとなります。"ニッチ"(niche:いわゆる"隙間"的なポジション)というのはもちろん卑下しているわけではなく,この市場を現実的に考えたうえで自分達を表現したものです。Game Workshop社はイギリスの片田舎の小さな企業ですし,今後テーブルトークの市場が大きく成長していくとは考えられません。しかしながら,一度Warhammerに親しんでもらったプレイヤーには,継続的に遊んでもらえるような世界観やゲームシステムを作ってきたという自負もあります。それが,二つめの"オブセッシブ"(obsessive:"ハマった"状態)ですね。だからテーブルトーク版を楽しんでもらっているファンを中心に,Warhammer Onlineで継続して遊ぶ人を必ず確保できると思っています。そして最後の"ファンタジー"(Fantasy)は,言うまでもなく我々が過去25年に渡ってファンに提供してきたことですから,その経験をオンラインゲームに十分に生かせるでしょう。

4GN:

 現在,課金制のMMOで商業的に利益を得るには,10万人のユーザーが最低ラインといわれていますが。

デュース:

 先ほどもニッチという言葉で説明したように,我々はMMOPRGを開発している会社の中でも少し特異な存在で,ビジネスモデルや技術も世界的に通用するものを持っています。Warhammer Onlineを成功させるのに十分な数字は5万人をクリティカルマス(絶対数)であると試算していて,この人数分はこれまでのテーブルトーク版のファンだけでも確保できるだろうと考えているのです
 MMORPGで重要なのは,その世界観がどれだけプレイヤーに受け入れられるかということじゃないでしょうか。Ultima Onlineはそれまでのシリーズでつちかってきた世界観がありますし,EverQuestもMUD(マルチ・ユーザー・ダンジョン)をうまく表現していたと思います。しかし先ほど話題に上がったようなMMOプレイヤー人数の限界を考えれば,ほかはどれも似たり寄ったりで,違いがなくなってきています。今後リリースされる作品でいえば「Star Wars Galaxies」「World of Warcraft」は問題なく成功するでしょうが,ほかは難しいでしょうね。そういった強豪タイトルに囲まれた中で,Warhammer Onlineには過去数10年に渡って育ててきた世界観とゲームシステムがあります。もちろんEverQuestのような大ヒットになることを望んでいますが,世界的に受け入れられる素材かというと……う~ん,どう思います?(笑) 予測はできないけど,ビジネスとしてやっていけるんじゃないかと考えています

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