COMPUTEX TAIPEI 2008の会場には,PCケースメーカー各社がゲーマー向け,あるいはゲーマーもターゲットになると謳うPCケースを多数展示していた。
……その多くは,モーターでフタが開閉するとか,華美な装飾がウリだとかいった“いかにも”なタイプ。派手さの好まれる北米市場ではよくても,日本では販売数的につらくなりそうなものが主流だったが,そんななかにも,機能的にゲーマーが使って便利そう,あるいは,デザイン的に日本向けといえそうなものもあったので,今回は4製品をピックアップしてみた。写真を中心に紹介したいと思う。
北米 vs. 欧州&日本で,派手さに関してせめぎ合い中?
アメリカンスタイルのCooler Master「HAF」
Cooler Masterブースに展示されていたHAF
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Cooler Masterは,COMPUTEX TAIPEI 2008の同社ブースで,「アメリカンスタイルのPCケース」と位置づける
「HAF」を展示していた。
HAFは「High Air Flow」の略で,名は体を表すと言わんばかりに,本体前面下部,側面,そして天面にそれぞれ230mm角相当のファンを1基ずつ搭載。さらに,天面の前面パネル側には,液冷ユニットのタンク用となる冷却剤の注ぎ口も設けられるなど,徹底して冷却能力が追求されている。マザーボードトレイに四角い穴が空いているのは,HAFのプロダクトマネージャーであるEric Chen氏いわく「バックプレートを採用する仕様の,大型CPUクーラーを容易に着脱できるようにするため」とのことだ。
本体向かって左側の側面には,HAFの文字がプリントされる
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HAFは現在のところエンジニアリングサンプルの状態にあるが,興味深いのは装飾LEDに関する,同社のマーケティング担当者によるせめぎあいが行われているというエピソードだ。
HAFの展示機はケース前面の230mm角ファンに赤色LEDが埋め込まれているが,これについて同社北米のマーケティング担当者からは
「地味すぎる。もっと派手に」,一方で欧州&日本の担当者からは
「形状だけで十分過ぎるほど派手だ。むしろLEDを消せないか」というリクエストが上がっているという。アメリカンスタイルということで,もっと派手になってしまう“危険”もあるが,Cooler Masterは,販売地域ごとに搭載LEDなど,細部の仕様を変えてくるメーカーでもあるので,今後の動向に注目しておきたい。個人的には,LEDを排除し,さらに向かって左側面のアクリルパネルもなくなれば,同社既存製品「CM 690」の上位モデル的な製品として,注目を集めそうな気がする。
なおHAFは,価格こそ未定ながら,世界市場では2008年8〜9月に発売の見込み。
本体側板,天面,前面にそれぞれセットされる230mm角相当のファン。側板部は120mm角×4,天面部は同×2に付け替え可能で,天面部には,どうやらCOSMOSシリーズ用液冷ユニット「Aquagate Max」も取り付けられるようだ
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本体内部。ケーブルマネジメント性のよさが謳われている。マザーボードトレイ部にぽっかりと空いているのが,バックプレート付属型CPUクーラー用の着脱用スペース。HAFらしく,拡張カード用ブラケットもメッシュ加工されている
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本体天面には小物置き場があり,滑り止めシートをめくると,液冷ユニットの冷却剤注ぎ口が姿を見せる。右の写真は,側板を取り付けた状態の全体
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液冷+“自社開発のESA風機能”搭載
IKONIK「Ra X10 Liquid」
Ra X10 Liquid
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国内代理店がマスタードシードに決まった新興メーカー,台湾のIKONIK TECHNOLOGY。その第1弾となるフルタワーケースが
「Ra X10 Liquid」(Ra:ラー)である。その名のとおり標準で液冷に対応し,本体向かって右側面に計8基用意されたファンとラジエータ,本体底面に用意されたタンク兼用ポンプユニットによるCPUの冷却が可能な製品だが,それ以上に特徴的なのが,
「System Intelligent Management」(以下,SIM)と呼ばれる,ESAライクなシステム制御機構だ。
SIMは,USB接続の制御ユニットと,Windows上で動作するソフトウェアから成っており,本体に内蔵する青色LEDを一括でオン/オフできるだけでなく,
最大6基のファンおよびポンプ回転数コントロール機能と,6か所の温度調整機能を提供する。
同社は,Ra X10 Liquidを,400米ドルで2008年第3四半期に市場投入の予定。液冷ユニットを省いた「Ra X10」も,270米ドルで発売する計画があるという。デザイン的には,側板に埋め込まれたアクリルパネルについては好みが分かれそうだが,ハイエンドのPCゲーム環境をまめに制御したい人にとっては,なかなか面白そうだ。
なお同社は,PCケースとは別に,各出力の確認とファン回転数制御を専用ソフトウェア「Mad Tweaker」から行える電源ユニット「VULCAN MT」シリーズの投入予定もあるという。
右側面のパネルを外すと,8基のファン,そして冷却用ラジエータが見える。8基のファンなど,いくつか埋め込まれた青色LEDは,SIMから一括してオン/オフが可能だ。LED,とくに青色LEDは,部屋を暗くすると鬱陶しくなるので,これはありがたい。なお本体底面には液冷用のポンプユニットが設置される
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本体に取り付けられているSIMコントロールユニット(左)。中央は,SIMのUIだ。温度センサーは,テープで貼り付けることになるローテク仕様(右)
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温度センサーを利用したファン回転数制御も,SIMから行える(左)。天面には排気用のスリットが設けられているほか,I/Oインタフェースがいくつか引き出される(中央)。マグネットで固定するタイプのダストカバー装備だ。青く光るのは,液冷の状況を確認可能な小窓である。右は側面からで,3.5インチシャドウベイを8基搭載。HDDは,写真手前と奥,どちらにインタフェースを向ける形でも取り付けられる
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奥行きのないフルタワーを実現した
Lian Li「PC-X2000」
PC-X2000(写真左)。フロントパネルは純然たるカバーで,オープンベイは側面に用意されている。なお,右は2ゾーン構成(※ドライブベイと電源ユニットベイが1ゾーンになった)の下位モデル「PC-X500」のプロトタイプ |
PC-X2000のイメージ画像 |
Lian Li Industrialがブースに展示していたのは,奥行きの短さと背の高さが印象的なフルタワーケース
「PC-X2000」である。ゲーム用PCとHTPC(Home Theater PC)という,それだけ聞くと相反する用途に向くとされる同製品のサイズは230(W)×
430(D)×680(H)mm。PC-X2000はExtendedATXマザーボードをサポートするが,ExtendedATXフォームファクタをサポートするようなPCケースは,一般に600mm以上の奥行きがあるので,同製品は非常に短い。
このようなデザインになっているのは,リビングの床に置いたとき,見栄えがするような配慮からだそうで,同社のEmily Chen氏(Sales Specialist)は「HTPC(Home Theater PC)用途を想定し,できる限り少ない底面積で運用できるよう,HDDとマザーボード,光学ドライブ&電源ユニットという3ゾーンを縦に重ねた。すると,
本体前面と背面の距離が短くなって冷却効率が増し,コンパクトなゲーマー向けハイエンドPCケースとしても,非常に高いパフォーマンスを発揮するようになった」と説明する。
5インチベイは“横向き”で,側面のどちらにも,ベゼルを向けられるようになっている。これは,部屋のどこに置いても利用できるための配慮とのこと。また興味深いのは,3.5インチシャドウベイが,
6台のSerial ATA HDDをホットスワップできる仕様になっていることだ。
残念ながら現時点で発売時期と価格は未定だそうだが,国内販売代理店(※ディラック)があるので,そう遠くない将来,何らかのアナウンスがあるのではなかろうか。
本体内部(左)。オープンベイ+電源ユニット,マザーボード,HDDと,3チャンバー構成になっている。最大6台搭載可能なHDD用ベイは標準でホットスワップ対応だ(中央,右)。なお,HDDは本体前面に用意された140mm角ファン×1と,背面の80mm角ファン×2で冷却される
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マザーボードトレイは取り外し可能(左)。大きめのスリットはCPUの冷却に効果があるという。中央は側板に貼られた吸音材。右は,前面の3連ファンと,ダストフィルターだ。床に置くことが想定されているためか,大型のダストフィルターは引き上げて取り外す仕様になっている。140mm角ファン×3のすぐ上には,3段階に切り替えられるファンコントローラも搭載
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質実剛健イメージの3ゾーン冷却仕様採用モデル
Thermaltakeらしくない?「Spedo」
Spedo(型番:VI90001)。ガラス越しの撮影になっているため,若干見にくい&あまり多くのカットを撮れていない点はご容赦を
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Thermaltake Technology(以下,Thermaltake)が,2008年第3四半期末に市場投入予定として展示していたのが,
「Spedo」である。Thermaltakeのハイエンドケースというと,側板に設けられた大きなアクリルパネルから内蔵LEDの光が漏れてくる,ド派手なものが思い浮かぶが,Spedoは(同社にしては)びっくりするほど地味なデザインだ。最近の同社製ハイエンドPCケースのなかでは,群を抜いて日本市場向けといえるかもしれない。展示されていたサンプルだと,それでも側板部の吸気ファン周辺にアクリルパネルが用いられていたが,一切アクリルパネルを用いない選択肢も(日本市場で販売されるかは現在のところ未定だそうだが)ラインナップには用意されている。
本体内部。カバーが拡張カードと電源ユニットを覆っているのが分かる。232(W)×610(D)×536(H)というフルタワーサイズを,ATXフォームファクタまでのサポートにあえて留めることで,全体的に余裕のある設計になっている印象だ
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さて,機能面で目を引くのは,
カバーによる3ゾーン構造と,
マザーボードトレイ背面の有効利用である。前者は写真を見てもらえば一目瞭然なのだが,グラフィックスカード,というか拡張カードスロットを覆うようなカバーが用意されており,拡張カード類専用のチャンバーとして機能する。CPU&メモリと,拡張カード,電源ユニットを,それぞれ筐体の前から後ろへ流れる直線的なエアフローで冷却できるため,効率が非常に高いという。
また,マザーボードトレイには,CPU周辺をマザーボードの裏から冷却するためのファン,そしてビニール製のカバーが三つ取り付けられているが,このカバーは,ケーブルマネジメントのためとのこと。カバーを効率的に利用することで,ケーブルをスマートに配線可能になり,これも冷却能力の向上に寄与すると,Thermaltakeはアピールする。
左は「Advanced Thermal Chamber」と呼ばれるカバーの概要。CPU用のゾーンに向けたファンが,ドライブベイ部に設けられている点に注目してほしい。このファンは,角度を変えてられる仕様だ。右は,光の加減で相当見づらいが,Spedoのファン構成を示したもの
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マザーボードトレイ背面に120mm角の冷却ファンと,ケーブルマネジメント用のカバー×3を用意。右は,別の角度から見たSpedoだ。前面吸気ファンが赤色LEDを内蔵しているが,Thermaltake製PCケースとしては,十分に落ち着いたイメージである
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