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AMD,ATIを56億ドルで買収?
実はこの噂自体は,2006年春以降,何度か出て,そのたびに否定されてきたもの。ただ,今回は様相が少し異なるようだ。ATI Technologies(以下ATI)本社のあるカナダの有力ニュースサイト「globeandmail.com」※1が“第一報”を伝えているうえに,その内容は「買収金額は56億米ドル(約6500億円)」「AMDの取締役会が買収を承認」などと,非常に具体性を帯びている。この報道があるまで,噂/伝聞レベルの話のみを伝えてきた北米や欧州のPC系ニュースサイト,そして通信社系サイトも追随しており,少なくともこれまでの「買収するかも?」的な話よりは,信憑性が高そうな気配だ。
※1 カナダの全国紙「The Globe and Mail」を発行するBell Globemedia Publishing運営のWebサイト。日本でいうところの大手新聞社系サイトという理解で問題ない。
仮に,「噂が正しかった」場合,AMDが得ることになるメリットと,生じ得る問題は,筆者がざっと思いつく限り,以下のようなものになる。
AMDがATI買収で得ると思われるメリット
- 「Radeon Xpress」チップセットがもたらすグラフィックス機能内蔵のローエンドチップセット市場における一定のシェアと利益
- 「Radeon」がもたらす,グラフィックスカード市場における一定のシェアと利益
- 「FireGL」がもたらす,ワークステーション向けグラフィックスカード市場における一定のシェアと利益
- AMDの「Torrenza」構想を,「Xilleon」や「Theater」,「Imageon」,そしてRadeonやFireGLが後押しする可能性※2
- XilleonやTheater,Imageonがもたらす,デジタル機器やモバイル市場における一定のシェアと利益
- Xbox 360やWii用GPU(グラフィックスチップ)がもたらす直接的な利益と,ゲーム機市場におけるブランドイメージ向上(AMDロゴがゲーム機に貼られる?)
- ATIがIntelとのクロスライセンスによって得た技術(これは入手できない可能性も十分にある)
- AMD64ファミリー向けチップセットビジネスにおけるAMDとNVIDIAとの蜜月関係解消
- Intel製CPU向けチップセットビジネスにおける,IntelとATIの蜜月関係解消
- ATIが持つ“非PC”ビジネスを,AMDがハンドリングできない可能性
globeandmail.comによれば,カナダ時間で23日からの週に,買収提案が正式になされるとのこと。報じられているとおりなら,今週中に何らかの動きがあるだろう。上で示しただけでも,PC業界を揺るがす大きな事件になる可能性を秘めているだけに,ゲーマーとしても無関係を決め込むわけにはいかない状況といえる。
買収や合併,業務提携といった何らかの発表がなされるのか,はたまた今度も噂で終わるのか。北米で24日を迎える,日本時間24日夕方以降の両社に注目しておきたい。(佐々山薫郁)
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