テストレポート
SilverStoneのゲーマー向け周辺機器ブランド「Raven」第1弾マウス,ファーストインプレッション
4Gamerではその製品版サンプルを,SilverStoneの販売代理店であるマスタードシードより入手したので,第一印象をお届けしたい。
最大の特徴である巨大なダイヤルが
グリップポジションを制限する
しかし,それだけではSST-RVM01Bを説明したことにはならないだろう。それ以外にも,
- 本体左側面に青色LED内蔵の巨大なダイヤルを装備
- 計10個のボタンにOSの機能ショートカットを割り振った「Vista Mode」と,単ボタンやマクロなどを登録できる「Game Mode」を持ち,本体底面のスイッチで切り替えられる
- 各種設定はすべてマウス本体側のフラッシュメモリに保存する仕様で,ドライバソフトウェアが不要
- 大きなモノクロ有機ELパネルを内蔵
といった機能がてんこ盛りだからだ。
「つまみ持ち」のしようがないので,「かぶせ持ち」を試みると,親指がダイヤル中央のボタンを押すような感じになる。サイドボタンに親指は届かない。また,このポジションだとダイヤル中央ボタンを“誤爆”しがち |
付属のマニュアルは日本語を含む多言語版だが,そこでは,左サイドボタンを人指し指(の腹)で押すよう説明されている。押しづらさも相まって,かなりの難度だ |
持ちづらいこともあり,実測値以上に重く感じられる |
本体左側面には,ダイヤルの中央のほか,いわゆる左サイドボタンが二つ用意されているものの,マウスの“背”をしっかりホールドする「かぶせ持ち」だと,左サイドボタンに親指はとどかない。一方の「つまみ持ち」だと,ダイヤルが本体中央からやや後ろ寄りになっているため,つまむためのスペースがほとんどないのだ。
衝撃的なのは,左サイドボタンを人指し指で――つまり左メインボタンから人指し指をいったん離して――サイドボタンを押すよう,マニュアルで推奨されていること。FPSなど,俊敏なサイドボタン操作を行う必要のあるタイトルでは,事実上,サイドボタンは使えそうにない。さらに,このサイドボタンはふにゃふにゃとした感覚で,クリック感もボタンの返りも非常に弱いため,どれくらい押すとスイッチが反応するのか分かりづらいのも気になった。
また,有機ELパネルを内蔵するためか,本体重量がケーブル込みで約192g(※実測値),参考までにケーブルを重量計からどかした状態でも148g(※同)と,昨今のゲーマー向けマウスとしてはかなり重いこと,本体サイズがダイヤル込みで83(W)×128(D)×48(H)mmと大きいことも,使いづらさに拍車をかけている。
Game Modeでは最大5セットの
カスタマイズ内容を保存&切り替え可能
●Vista Mode
SST-RVM01Bの対応OSはWindows 2000/XP/Vistaで,別にWindows Vista専用というわけではないため,“ノーマルモード”と読んでも差し支えないVista Mode。マウス側の切り替えスイッチを「Normal」にしてSetting RAVENを起動するか,Setting RAVENを起動した状態で「Normal」にスイッチすると,このウインドウが開く。
左サイドボタン×2には「進む」「戻る」,右サイドにはスクロール時に便利な「Page Up」「Page Down」,さらにスクロールホイールボタンの近くには左右スクロール機能が固定で割り当てられている。全体的にWebブラウザやオフィススイートの利用が想定されたモード,といっていいだろう。
400dpi→800dpi→1600dpi→3200dpi→400dpi……
といった順番で切り替えが可能だ。なお,ダイヤルにはWindows Vistaの「Flip 3D」機能が割り当てられており(※Windows XPでは,Internet Explorer 7のタブなど,アプリケーション内に複数開いたウインドウを切り替える機能として利用可能),要するに,あまり役には立たない。
●Game Mode
各ボタンに割り当てられるのは,右クリック,中(=センター)クリック,戻る,進むといった,Vista Modeと同じ機能と,「DoubleClick」「Single Key」「Macro」「Key String」「Select Profile」を割り当てられる。各機能の詳細は以下のとおり。
Double Click:
左メインボタンのダブルクリックを割り当てる。
Single Key:
キーボード上のキーを「押して」「離す」アクションを登録する。たとえばFPSにおいてよくリロード(弾薬の装填)に利用される[R]キーを登録すれば,当該ボタンを押すと,[R]キーを押して離す,つまり,1回[R]キーを押したと認識される。
Single Keyの入力インタフェース。Macro,Key Stringsも同様の外観だ
ただこの機能,どうも「押下,押上を問わず2アクションを登録する」機能として働いてしまっているようで,[R]キーを押したまま[E]キーも押したりすると,「[R][E]を両方とも押しっぱなし」として登録してしまう。ソフトウェア側の不具合と思われるが,この点は要注意。
Macro:
最大16アクションを登録するマクロ機能。Single Keyとは異なり,最後に必ず押上がカウントされるため,入力できるキーの組み合わせは最大8となる。また,この仕様のため,押しっぱなしは登録できない。
試してみた限り,(有効かどうかはともかく)どんなキーでも登録可能なようだ。
Key String:
特定の文字列入力を登録する。[Ctrl]や[Shift]は無視されるので,ゲーム中にショートメッセージを送ったりするための機能ということなのかもしれない。
入力できる文字数に制限はないが,有効なのは40文字のみ。また,[Shift]が無視される関係で,たとえば日本語キーボードで「!」「?」「#」と続けて入力した場合,「1」「/」「3」と登録されてしまう。正直,少なくとも現時点では,使い途がありそうな機能ではない。
Select Profile:
プロファイルを切り替えるためのショートカットを登録するもの。上に示したSetting RAVENのスクリーンショットでは,上端に「1〜5」の数字が見えるが,これはSST-RVM01Bに最大でプロファイルを五つ保存できることを示している。
Select Profileを利用しない場合でも,ダイヤル中央部のボタンを押せば,Vista Modeと同じようにプロファイルを切り替えられるが,たとえばSelect Profileを任意の2ボタンに登録したりすると,二つのプロファイルを素早く切り替えられるというわけだ。
ところで,ダイヤルは何に使うのかというと,スクロールホイール脇に用意された(Vista Modeで左右スクロール機能を提供する)部のボタンを押しながら回すことで,X軸,Y軸別個に,100dpi刻みでトラッキング解像度を変更するためにのみ利用可能。もちろん,そんな操作をゲーム中,少なくともアクション性の高いタイトルをプレイしている最中に行うのはまず無理だ。Game Modeにおいても,ダイヤルの存在意義は微妙といわざるを得まい。
ダイヤルは明らかに企画倒れ
一般的な多機能マウスとして見ればアリ?
一方,本体内蔵のフラッシュメモリを利用した機能周りは,絶賛できるほどではないにせよ,そう大きな破綻はなく,少なくとも使って使えないことはないレベルにある。ゲーマー向けという位置付けではあるが,ユーザーとしては,ゲーム用途はあまり考慮せず,一般用途向けの多機能マウスとして見るべきなのかもしれない。
ただ,それでも実勢価格1万円前後というのは厳しいだろう。この価格帯なら,マウス製品で実績豊富なメーカー,すなわちLogitechやMicrosoftの一般ユーザー向けハイエンドマウスを購入できてしまうからだ。
残念ながら,SST-RVM01Bが広く受け入れられることはまずないと思われるが,SilverStoneがゲーマー向けデバイスの開発に挑戦してきたこと,それ自体は大いに歓迎されるべきである。Ravenブランドが繰り出す次の一手を,期待して待ちたい。
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