レビュー
トラッキング速度最大500IPS。「史上最速のマウス」は買いか?
G402 Hyperion Fury Ultra-Fast FPS Gaming Mouse
Gxx2シリーズとして,「G602 Wireless Gaming Mouse」「G502 Proteus Core Tunable Gaming Mouse」(以下順に G602,G502)以来,3製品めとなるG402は,形状とセンシング技術が見どころとなるが,その実力はいかほどか。ロジクールから製品版を入手できたので,テスト結果をお届けしたい。
フルモデルチェンジとなった新作は
最大500IPSのトラッキング速度を実現
その後,製品型番の数字が3桁に戻ってからも,Logitech/ロジクールは「Optical Gaming Mouse G400」「G400s Optical Gaming Mouse」(以下,G400s)と,MX510直系のマウスを提供し続けてきた。
そんなG402のスペックは下にまとめたとおりで,ポイントは,最近のLogitech G/Logicool Gが積極的にアピールしている光学センサー「Delta Zero」(デルタゼロ)と,別途搭載される加速度センサーおよびジャイロセンサーを駆使するセンシング技術「Fusion Engine」(フュージョンエンジン)により,最大500IPS――日本においては「どのような環境でも確実に性能が出せる保証値」である420IPSが公式スペックとなる――という,極めて高いトラッキング速度を実現する点だ。
●G402の主なスペック
- 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
- ボタン数:8(左右メインボタン,センタークリック機能付きスクロールホイール,左メインボタン脇×2,左サイド×3)
- トラッキング速度:最大500IPS(≒12.7m/s,日本国内における保証値は420IPS)
- 最大加速度:最大16G
- 画像処理能力:未公開
- フレームレート:未公開
- DPI設定:240〜4000DPI(80DPI刻み)
- USBレポートレート(ポーリングレート):125/250/500/1000Hz
- データ転送フォーマット:16bit
- スリープモード:あり(1〜60分の中で選択。デフォルトは30分)
- 本体実測サイズ:72(W)×135(D)×41(H)mm
- 重量:約140g(※ケーブル含む),約95g(※ケーブル抜き)
- マウスソール:動摩擦係数 −μ(K)0.09,静止摩擦係数 −μ(S)0.14
- ケーブル長:2.1m
- 製品保証:2年間
従来製品であるG400sが70〜140IPS,上位モデルたるG502が300IPSなので,G402のトラッキング速度は圧倒的といえる。実際,Logitechは世界最速と位置づけているほどだ。
欧米圏向けの愛称である「Hyperion Fury」(ハイペリオン・フューリー,ギリシア神話に出てくる神の怒り?)を見ても,日本人的には今ひとつ速さを感じなかったりもするが,センサー周りのスペックは相当なものだとまとめてしまっていいだろう。
ちなみに,上で示しているケーブル抜きの重量は,分解して,ケーブル自体を取り外して計測したときの値である。分解については後段で述べるが,同条件でG400sは約103gだったため,G402では前世代比で8gの軽量化が実現された計算だ。
Gxx2系らしい形状と,G400sの後継らしさが同居
見た目の割にクセはない
72.2(W)
左右メインボタンはG602およびG502と同じくセパレートタイプで,一般的に中指を置くことになる右メインボタンが左メインボタンより長いのも変わらず。G602は両方のメインボタンが軽く凹み,G502では左メインボタンのみが軽く凹んでいたのに対し,G402では両方とも凹んでいないが,これはMX510直系らしさを重視した結果ということなのかもしれない。
Gxx2系らしく,右メインボタンがせり出す形状だ。一般に人差し指より中指のほうが長いので,この設計は理にかなっていると思う |
左右メインボタンはどちらも丸みを帯びた形状になっている。この部分はいかにもMX510の直系らしいところ |
ホイールの表面に凹凸加工はされていないが,ラバーコートが優秀なためか,動かすとき,とくに指が滑ったりするようなことなはかった。
左側面はG502と同様,親指を配置しやすいように大きく湾曲し,また,底面部はスカート状になって若干の広がりを見せている。G400sは本体手前側(=後方側)で凹みがなくなって膨らむのに対し,G402は膨らまず凹みきっているのが大きな違いだ。
左サイドの[G4][G5]ボタンは,G400sのサイドボタンと同じような場所に同じような角度で配置されている。だが,サイドの凹みが前後方向に長くなったことで,親指を配置するにあたっての自由度は増した。そのため,親指の配置場所次第では,G400sからの移行時にフィーリングが若干変わるかもしれないが,大勢に影響はないともいえる。
実際のところ,FPSの激しいプレイ中に使うことはまずないが,「かぶせ持ち」時にも親指の先端に当たるかどうかといったところで,誤って押してしまう心配はない。邪魔になるようなことはないはずだ。
細かな改善によって
G400sよりさらに握りやすくなったG402
実際に握ったときのフィーリングも確認しておこう。
大きめのマウスは一般にかぶせ持ちとの相性がよいのだが,G502は右側面の微妙な歪みもあって,意外と適していなかった。それに対してG402は,縦長の形状を活かし,まったく問題なく使える。
また,「つまみ持ち」やつかみ持ちでもストレスなく握れる。つかみとかぶせのハイブリッドである筆者独自の持ち方「BRZRK持ち」でも扱いやすい。
以下,写真とともに短評をまとめておくので,参考にしてもらえれば幸いだ。
見た目の違いはわずかなのだが,この変更は,持ち手に与える印象をガラリと変えるインパクトがあり,ここは素直に歓迎したい。ただ,「G400sがジャストフィット」という人からすると,右側面のどこに指を置くべきか,しっくりくるようになるまで,若干の時間を要する可能性はあるだろう。
オンボードフラッシュメモリを実装したG402
Logicoolゲームソフトウェアはほぼこれまでどおり
ここ数年の間に登場したLogitech/ロジクールのPCゲーム用周辺機器と同じように,G402も,基本的にはWindowsのクラスドライバで動作するものの,センサーやボタン周りの細かな設定を行うためには「Logicoolゲームソフトウェア」(英語では「Logitech Gaming Software」,以下 LGS)をロジクールのWebサイトからダウンロードして導入する必要がある。
開いてみるとすぐ分かるのは,「オンボードメモリ」「自動ゲーム検出」という,2つの動作モードを切り替えるスイッチがあることだ。従来,オンボードのフラッシュメモリは“G5系”以上の特典だったが,Gxx2シリーズで,ついに4型番にもオンボードフラッシュメモリが実装されたことになる。
その名称からして,LGS未導入のPCに差したときも設定内容を使えそうだと考えるかもしれないが,実際には利用にあたってLGSの導入が必須というのは,従来のLogitech/ロジクール製マウスから変わっていない。
一方,「自動ゲーム検出」を選んだ場合は,G402で行えるすべてのカスタマイズを行って,複数のプロファイルとして保存できるうえ,アプリケーションの起動に合わせてプロファイルを自動的に切り替えながら使えるようになる。どちらを選んだとしても,設定内容が有効なのはLGSをインストールしたPC上だけなので,迷ったらひとまずは多機能な「自動ゲーム検出」を選んでおくのがいいだろう。
ちなみに,G402用のLGSには,その速度性能を計測できる動作確認用ページが用意された。光学センサーだけを使った場合と,Fusion Engineを有効化した状態でマウスを素速く動かすと,ページ内のタコメータが動き,両者の違いを確認できるというものだが,一度使ってみれば十分だろう。正直,必要性は感じない。
光学センサーはPixArtのカスタムモデルという可能性大
加速度&ジャイロセンサーはワンチップか
冒頭でも述べたとおり,G402の最大500IPSというトラッキング速度スペックは,3つのセンサーによる合わせ技たるFusion Engineの賜物とされている。では,その実態はどうなっているのか。筆者のレビューで恒例となっている分解を行ってみよう。
下の写真は,底面部のソールを剥がしてネジを取り外し,底面部と上面部のカバーを引き離したところだ。サイドボタンは小型の別基板で実装され,メイン基板とリボンケーブルでつながっているところが目を引くが,全体としては整然と並んでいる印象を受ける。
基板全体。光学センサーは見慣れない型番だが,PixArt Imaging製であることは間違いない |
レンズユニットは旧Avago Technologies時代からよく見かける形状のもの |
その近くには大小1つずつ,モールドされたチップが見えるが,大きいほうはSTMicroelectronics製のUSBマイクロコントローラ「STM32F102」。動作クロック48MHzの「Cortex-M3」を統合しているので,“32bit ARMプロセッサ”ということになる。そのすぐ近くにある小さなチップは,断言できないものの,加速度センサーとジャイロセンサーを統合したものではないかと思う。
左右メインボタンはオムロン製。配置の都合上,側面の型番は写真に収められていないが,隙間から覗き込むと,「D2FC-F-7」までは確認できた。左メインボタン脇の2ボタン,そして左サイドボタンには,写真だとちょっと見にくいが「HiMAKE」ロゴがあったので,Xiamen Himake Technology製スイッチが採用されているという理解でよさそうだ。
センタークリック用のスイッチは白いボタン型で,上面カバー側に取り付けられたスクロールホイール側の突起を使って入力する仕様になっている。
※注意
マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
いかにも光学センサーという挙動を示すG402
リフトオフディスタンスは総じてやや長め
センサーがG402独自のものであると判明したところで,その性能をチェックしてみよう。テスト時の設定は下記のとおりだ。
●テスト環境
- CPU:Core-i7 4770(定格クロック3.4GHz,最大クロック3.9GHz,4C8T,共有L3キャッシュ容量8MB)
- マザーボード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GA-Z87X-UD4H(Intel Z87 Express)
※マウスのレシーバーはI/Oインタフェース部のUSBポートと直結 - メインメモリ:PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×2
- グラフィックスカード:GIGA-BYTE TECHNOLOGY GV-760OC-2GD(GeForce GTX 760,グラフィックスメモリ容量2GB)
- ストレージ:SSD(CFD販売「CSSD-S6T128NHG5Q」,Serial ATA 6Gbps,容量128GB)
- サウンド:オンボード
- OS:64bit版Windows7 Ultimate+SP1
●テスト時のマウス設定
- ファームウェアバージョン:90.0.14
- ドライババージョン:LGS_8.55.137
- DPI設定:240〜4000 DPI(主にデフォルト設定の1600 DPIを利用)
- レポートレート設定:125/250/500/1000Hz(※主にデフォルト設定の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
まずはリフトオフディスタンスからだ。ここでは,厚さの異なるステンレスプレートを用意し,重ねることで高さを検出することにした。なお,現在手元にあるプレートだと,すべてを重ねたときの上限は2.5mmとなるため,それ以上は計測できないことをあらかじめお断りしておく。
というわけで,テスト結果は表のとおり。LGSからFusion Engineの有効/無効を切り替えてもリフトオフディスタンスに違いは出なかったので,スコアは1種類のみの記載となる。
テスト結果 | |
---|---|
ARTISAN 隼XSOFT(布系) | 1.65mm以上,1.7mm未満 |
ARTISAN 疾風SOFT(布系) | 2.5mm以上 |
ARTISAN 飛燕MID(布系) | 2.1mm以上,2.2mm未満 |
Logicool G440(プラスチック系) | 2.5mm以上 |
Logicool G240(布系) | 2.5mm以上 |
Razer Destructor 2(プラスチック系) | 2.5mm以上 |
Razer Goliathus Control Edition(布系) | 2.5mm以上 |
Razer Goliathus Speed Edition(布系) | 2.5mm以上 |
Razer Manticor(金属系) | 1.35mm以上,1.4mm未満 |
Razer Sphex(プラスチック系) | 2.5mm以上 |
SteelSeries 9HD(プラスチック系) | 2.5mm以上 |
SteelSeries QcK(布系) | 2.3mm以上,2.4mm未満 |
ZOWIE G-TF Speed Version(布系) | 2.4mm以上,2.5mm未満 |
ZOWIE Swift(プラスチック系) | 2.5mm以上 |
ただ,センサーの安定感は見事で,テスト中にネガティブアクセルのような挙動を見せることはなかった。厳密な測定を行えばまた違った結果が出るのかもしれないが,実際にゲームをプレイしていて違和感を覚えることはないだろう。
次に直線補正(アングルスナップ)だが,G402用のLGSにはそもそも直線補正を設定する項目が用意されていないので,今回はWindowsの「ペイント」で絵を描き,それをもって比較してみることにした。その結果が下の画像で,見る限り,体感できるレベルでの直線補正はないと述べていいように思われる。
予想以上に違和感がなく,完成度の高いG402
価格さえ適正になれば買いだ
同時に,多ボタンを使いたい人向けの拡張がされつつも,重量は増加するどころかむしろ軽くなっている点にも注目したい。ケーブルにクセがなく,ソールの滑りも十分に良好であるため,G400s以前のマウスを使っていた人がG402に乗り換えても,重さが原因で疲れるということもないだろう。
また,Fusion Engineの採用によって,センサー周りに変なクセが生じたりもしていない点も好材料。リフトオフディスタンスにバラツキがあり,全体的に長めなのは気になるものの,見た目に反して(?),G402はいい意味で「非常に普通」なゲーマー向けマウスに仕上がっているといえる。
ただこれは,Logitech/ロジクールの謳うFusion Engineに,これといったメリットが見られないというのと同義でもある。冷静になって考えれば,500IPSというのは,「肘からセンサーまでの距離が約30cmとして,0.03秒でマウスを90度振り抜くくらいの速度でマウスを動かしても追従する」という意味であり,そこまでの性能が必要かというと,正直,かなり微妙ではないかと思う。
もちろん,高速で動かしたときの信頼性が増すわけなので,8000DPIとか10000DPIとかいったまったく意味のない高DPI化と比べればはるかに価値のある進化ではあるのだが,メリットを受けられる人の数は限られるだろう。この点は押さえておいてほしい。
結果として,“初値”がおおむね5900
流通在庫のみとなっているG400sの実勢価格は3800〜5100円程度(※2014年8月8日現在)。それを踏まえるに,G402の店頭価格もせめて4000円台にまで下がってこないと,「買い」とは言えそうにない。
というわけで,G402に手を出すのは少し待ってみるのが正解,というのが本稿の結論になる。機能面性能面でリフトオフディスタンス以外のマイナス要素はないと言って差し支えないので,価格さえこなれてくれば,多くのゲーマーに勧められる製品となるはずだ。
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ロジクールのG402製品情報ページ
- 関連タイトル:
Logitech G/Logicool G
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