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[CEDEC 2005#06]”顧客と一緒に作っていくオンラインゲーム”
演壇に立ったのはNeorigin社のゲーム事業部取締役/開発プロデューサーであるYoon Hyungsup氏。氏は,同社が現在クローズドβテストを行っているオンラインクイズゲーム「JellyJelly」の開発過程を引き合いに出しつつ,開発側とゲーマー達との対話がいかに価値あるものかを語った。
ちなみにこの「JellyJelly」,2004年に開催された東京国際映画祭マーケットのひとつ,東京コンテンツマーケット2004にて,第2回TCMアワードインタラクティブ部門の受賞作品となっている。また,2005年8月上旬に行われた第1次クローズドβテスター募集には,初日で1万人ものゲーマーが集まったというカジュアルゲームタイトルである。
■プレイヤー達が作り出すコミュニティこそがサービスを活気づける
講演の序盤は,韓国ゲーム業界におけるパラダイムシフトや,オンラインゲームを取り巻く環境や問題点などに関する話題が中心となった。その多くは,4Gamer読者ならばご存じと思われる内容だったのだが,「Ultima Onlineサービスを始めた頃,まずは10万人が暮らせる都市(ゲーム世界)を作り,次いで人(プレイヤー)を集めた。しかし都市には社会的/政治的基盤がなく,多くの(ゲーム世界での)社会的問題を正式に伝える窓口もなかったため,不満は少数の開発者に向けられた。だが,開発者達がすべての声に答えることは不可能であったため,多くのプレイヤーが疎外感を感じ,開発者を憎み始めた。適切なコミュニティを用意するのに一年の時間がかかった。開発者たちは作品の開発段階でオンラインコミュニティに対する関心を持たなければならない」というリチャード・ギャリオット氏の言葉を引用した点は印象的だった。Yoon Hyungsup氏は,プレイヤー達が生み出すコミュニティの大きなパワーと,「オンラインゲームは開発者達のものではなく,ゲームプレイヤー達のものである」という点を,強く受講者に印象づけたのである。
■ユーザーに"自負心"を抱かせることが最重要課題
男性プレイヤーを集めるために,女性に受ける作品作りを心がけ(愛着の持てるアバターシステム),世界に通用するゲームを作るために,誰もが知っている遊びをゲーム化(世界中で親しまれている"クイズ")し,アバターのグラフィックスは2Dか3Dか? アバターの頭身は何頭身がよいか? 月額課金かアイテム課金か? いくらなら払えるのか? などなど,ありとあらゆる項目を,オンライン上のアンケートだけではなく,オフラインでの若者達との対話によっても調査し,サービスの品質向上に努めたと語った。
そうした努力はスタンダードな企業努力と言えるが,氏が強調したのは,プレイヤー(予備軍)達とのコミュニケーションによって生まれる,作品を核とした強固なコミュニティこそが重要であるという点。開発者達との対話を重ねたユーザーは"自分もゲーム開発に参加している"と感じ,自負心を抱く。自負心の強いユーザーはボランティア化し,ゲーム運営の経費節減や新規ユーザーの教育,広報活動に大きく貢献してくれる。これは,"暁のArtista" "X-Tester"といった仕掛け(詳しくは「こちら」)が効果的に機能している「グラナド・エスパダ」の例を思えば,大いにうなずける話である。
新鮮味やインパクトにはやや欠けるものの,実に基本に忠実で,その上説得力のある講演をしてくれたYoon Hyungsup氏。講演の最後に「JellyJellyはクローズドβ中だから,まだ成功事例とは言えませんが」などと謙遜していたものの,同作の韓国での評判は上々のようである。後に行われるだろう正式サービスや,他国での展開の結果によって,ぜひ氏の"正論"の強さを再確認させてもらいたいところだ。(大路政志)
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JellyJelly
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