レビュー
FILCOブランドのCherry茶軸採用メカニカルキーボードを試す
FILCO Majestouch 2 Camouflage
FKBN91M/NMU2
今回は,そんなMajestouch 2 Camouflageシリーズから,ZF Electronics製のメカニカルキースイッチ「MX tactile feel(ergonomic)」,いわゆる“Cherry茶軸”を採用し,テンキーレスで日本語配列の「FKBN91M/NMU2」を試用する機会が得られたので,その特徴と使い勝手を紹介してみたい。
バリエーションが豊富な
Majestouch 2 Camouflageシリーズ
立体的なFILCOのロゴ。金色で高級感がある |
迷彩パターンのところどころにMultiCamのロゴマークを確認できる |
Majestouch 2 Camouflageシリーズは,一般ユーザー向けの「Majestouch 2」シリーズがベースになっているため,ラインナップや基本スペックは似たものになっている。大きく異なるのは,Camouflage(カモフラージュ:迷彩)と製品名にあるように,迷彩柄のデザインを採用している点だ。
さほど凝った塗装に見えないかもしれないが,迷彩模様には高機能迷彩として定評がある「MultiCam」を採用しており,実は意外な本格志向だ。ゲームプレイへの影響はともかく,ゲーマー向けモデルとして分かりやすい意匠になっているとはいえるだろう。
それぞれのキースイッチの特徴は,以下に示したとおりだ。
- Cherry茶軸:バネ圧が一定で打鍵音は小さめ。キースイッチの部分に軽いクリック感があるため,打鍵音は不要だが,押した感触はほしいという人向き
- Cherry黒軸:キーを押し具合に応じてバネ圧が高まるタイプで,打鍵音は小さめ。入力時に「しっかり押している感触」を求めるユーザー向きだ
- Cherry青軸:バネ圧が一定で,打鍵時にカチッと音がするタイプ。小気味いい音がするので好むユーザーも多いが,同居人がいたりすると使いづらいかもしれない
ちなみに,Cherry茶軸採用モデルのバネ圧は公称45gで,錘(おもり)を使った実測でも40g強で沈み込み始めていた。一般PCユーザー向けのキーボードだとバネ圧50g前後が多いので,やや軽めのチューニングといえるかもしれない。
短めのキーストロークで反応を向上させるのは,ゲーマー向けキーボードにおいて一般的な解決策だ。とくにCherry茶軸は,他社製のゲーマー向けキーボードでも採用例が多く,ポピュラーなキースイッチである。
さらに,Majestouch 2 Camouflageシリーズでは,すべてのモデルでキースキャンレート1000Hz――つまり1msごとのキースキャン――を採用しているとのこと。この値は,Razer USAを始めとする,ゲーマー向け製品専業のメーカーの製品と同等である。スキャンレートを高めることで,キー検出までのタイムラグが小さくなり,いきおい,反応速度も高まるというわけだ。
コンパクトながら安定感がある
テンキーレスモデル
テンキーレスモデルということもあり,FKBN91M/NMU2の底面積は実測356(W)×135(D)mmとコンパクトにまとまっている。
PCとの接続インタフェースは,USBもしくはPS/2。PS/2で接続する場合は,付属のUSB−PS/2変換アダプタを用いることになる。Nキーロールオーバーに対応しており,USB接続時には最大6キーまで,PS/2接続なら全キー同時押しが可能と謳われているのも特徴だ。このあたりは,キーの反応などを含めて後ほど検証したい。
ちなみにキーの交換は,付属のキートップリムーバーを使って行える。このキートップリムーバーは,キー同士の隙間からキーの下に引っかけるようにしてキーを取り外すのだが,なかなか使いやすいものだった点を特筆しておきたい。
キー配列は,[Windows]キーと[アプリケーション]キーを含めて日本語91キー。配列自体は一般的なものとなっており,キートップのかな文字が省略されている。キーのピッチは実測19mmなので,標準的と述べてよさそうである。
特徴的なのは――Majestouchシリーズ共通,ではあるのだが――[変換][無変換]キーの幅が一般的な日本語キーボードよりも狭くなり,その分[スペース]キーの幅が広くなっている点。そのため,一見すると英語キー配列のようも見える。[スペース]キーは,アクション系ゲームでジャンプに割り当てることが多いので,歓迎したいポイントといえそうだ。
筐体の右上には,[CapsLock]と[ScrollLock]のLEDが用意されている。色は青。テンキーレスキーボードにありがちな,[NumLock]キーでメインキーをテンキー代わりにする機能は備えていない |
ケーブルは布巻きのものが用いられている。結束バンドが取り付けられており,バンドにもFILCOロゴが入っているなど細かいところにユーザーへの配慮が伺える |
そのほかキーの特徴としては,左[Ctrl]キーの右隣に[Fn]キーを備えている点が挙げられる。この[Fn]キーとファンクションキーとを組み合わせると,いわゆるマルチメディアキー的に,下に挙げるような機能を利用可能だ。
- [Fn]+[F1]:出力音量大
- [Fn]+[F2]:出力音量小
- [Fn]+[F3]:出力音量ミュート
- [Fn]+[F5]:巻き戻し
- [Fn]+[F6]:再生/一時停止
- [Fn]+[F7]:停止
- [Fn]+[F8]:早送り
- [Fn]+[F12]:スリープ
出力音量がらみの3機能が左に寄っているのは,ゲーム中での利用が想定されているためだろう。他社製のゲーマー向けキーボードでも時折見られる仕様だが,手元で簡単に消音できるのは,ゲームをプレイしていくなかで何かと便利だ。
なお,[F5]〜[F8]は,メディアプレーヤーの制御用であり,試した限りでは,「Windows Media Player」や「WinDVD 11」でも利用できた。
ちなみに980gはケーブル込みの重量。ケーブルを重量計からどかせて計測した参考値は実測で936gだった。
底面には,滑り止め付きのチルトスタンドが備わっているのも見て取れる。チルトスタンドをたたんだ状態で,キートップを含まない高さは,最も高い奥側で約33mm。最も低い手前側は同20mmだった。
キーの高さは,キートップ面が湾曲しているステップスカルプチャ形状なので,場所によって高さが異なるものの,おおむね8mm前後といったところ。キーの高さも加味すると,手前側の高さは約28mmに達するため,場合によっては,自前でパームレストを用意するなどの工夫が必要になるかもしれない。
なお,チルトスタンドを立てると奥側は約44mmまで持ち上がる。傾斜は十分といえるレベルなので,好みに応じて調節すればいいだろう。
複数キー同時押しと高レスポンスを
バトルフィールド 3で体感
まずは,本機の大きな特徴である複数キー同時押し周りだが,「4Gamer Keyboard Checker」(Version 1.0 Beta)でテストしたところ,「Nキーロールオーバーに対応し,USB接続時に最大6キー,PS/2接続時に全キーの同時押しが可能」というカタログスペックには偽りなし。USB接続時は,[Shift][Ctrl][Alt]といった修飾キーのほかに最大6キーの同時押しが可能だった。筆者がテストした限り,「最大6キー」の組み合わせには制限もなく,どの組み合わせでも最大6キーは同時に検出されるようだ。
続いては,実際にゲームをプレイしてみることにしよう。本製品はマクロ機能などを備えていないことから,FPS向けのキーボードだろうということで,今回は「バトルフィールド 3」を選んでみた。
使ってみた印象は,一言でまとめるなら「SteelSeries 7G」に近いかなといったところ。キーが浅い所で反応する一方,ストローク自体は4mmなので,レスポンスよくゲームを楽しむには,キーを深く押さず,浅く撫でるように操作する必要がある。
しばらく使って慣れてくると,複数キー同時押しの効果も確実に体感できる。筆者は,バトルフィールド 3において,伏せる,しゃがむ(※筆者の場合,標準とは異なり,伏せるを[Z]キーに,しゃがむを[S]キーに割り当てている)といった動作を多用するのだが,これらの動作をしながらのリロードなどを確実に行えた。筆者が普段利用しているPFU製「Happy Hacking Keyboard Lite」よりも操作性が向上しているのは確かだ。
ただ,1000Hzのキースキャンレートを体感できたかというと微妙なところ。反応速度は気持ち速めのように感じられるものの,それはキースキャンレートによるものではなく,キーのバネ圧と,浅い位置で反応するキースイッチによるものという印象を受けた。
また前述のとおり,キーの押し込み自体は軽いので,底まで力強くキーを押し込むクセがある人だと指を痛めるかもしれない。そういった人は,押し込むにつれて適度な抵抗が加わる,Cherry黒軸採用モデルを選んだほうが幸せになれるかもしれない。
なお,キーを押したときのしっかりとした感触も満足いくものだったが,これは,メーカーのこだわりが影響しているようだ。
ダイヤテックによれば,本機は,キースイッチ部の全スルーホールをハンダ付けしているとのこと。これにより,キーのガタつきやグラつきを減らしているという。この工夫が,少なからず,キーの良好な押下感につながっているものと考えられる。
好みに合わせて選べるのが大きな魅力
メカニカルキーボードの有力な選択肢だ
しかし,Majestouch 2 Camouflageシリーズには12種類ものバリエーションが用意されているため,筆者の好みに合った英語配列のテンキーレスモデルを選ぶということが可能だった。このバリエーションの豊富さというのは,高く評価していい点だ。
もちろん,ゲーマー向けキーボードとして,Majestouch 2 Camouflageシリーズ――少なくともFKBN91M/NMU2の完成度は十分といえるレベルにある。違いはキースイッチと配列,テンキー部の有無だけなので,シリーズ全体の完成度が十分だと述べることも可能だろう。キーボードとしての基本性能は,メカニカルスイッチを採用する他社のゲーマー向けキーボードと比べて遜色ない。それでいて選択肢は12種類もあるのだから,相当に魅力的なシリーズだとまとめられるはずだ。
Majestouch 2 Camouflageシリーズの実勢価格は,スイッチや言語配列にかかわらず,テンキーレスモデルで1万1000〜1万3000円程度,テンキー付きモデルでプラス1000円程度となる(※いずれも2011年12月28日現在)。
メカニカルキーボードゆえ,決して安価ではない点は覚悟が必要。また,「豊富な機能こそゲーマー向けキーボードに求めるものだ」「迷彩柄は生理的に受け付けない」という人にも向かないが,それ以外のメカニカル派なら,Majestouch 2 Camouflageシリーズを候補にしない理由はないとまとめておきたい。
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Majestouch 2 Camouflageシリーズ製品紹介ページ
ダイヤテック公式Webサイト
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