連載
「キネマ51」:第38回上映作品は「ジョン・ウィック」
グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が支配人を務める架空の映画館,「キネマ51」。この劇場では,新作映画を中心としたさまざまな映像作品が上映される。第38回の上映作品は,キアヌ・リーブスの“ガン・フー アクション”が格好良すぎる「ジョン・ウィック」。
「ジョン・ウィック」公式サイト
驚くほどのド直球アクション
いやぁ,ド直球でしたね。
関根:
ド直球なアクションでしたね。
二人:
……。
須田:
あっ,もうこの映画の感想の9割を話してしまったようで,何となく気持ちが満たされてしまったような……。
関根:
ですね。どうしましょう(笑)。
須田:
前々回ご紹介した「マッドマックス 怒りのデス・ロード」同様,何も考えずにワーって楽しんでほしいアクション映画なわけですよ。ここまでヒネリのないアクション映画は久々ですよ。
関根:
いい意味でヒネリがないですよね。ストレートというか。ストーリーは,大事なものをすべて失った元殺し屋が,大きな闇組織に立ち向かっていくという,非常にシンプルな構成で。
須田:
見始めると最後まで想像できてしまうんだけど,それでも楽しめちゃうっていうのが,この映画の魅力ですかね。しかし,キアヌ,殺しまくりますよね。
関根:
殺しまくりますね。パンパンパンパンと。
須田:
スピーディーな大量殺人。
関根:
爽やかさすら感じましたね。銃撃ちまくりの,殴りまくり。きっかけは正直どうでもいいんですよね。理由のなさで言ったら,CHAGE&ASKAの「YAH YAH YAH」と同じレベルですよ。殴りに行こうかって。
須田:
そうそう。主人公は,愛する女性が亡くなって,その深い悲しみを背負って生きてきたのだけど,そのやるせない思いを爆発させる理由が欲しかっただけなんじゃないかとすら思いました。
関根:
確かに(笑)。
須田:
きた! みたいな。
これ,もうスイッチ入れるよ。いいでしょ,殺しても,みたいな。
関根:
さすがにそこまではないけど,ちょっと分かります(笑)。
やっぱりキアヌはかっこいい
あと,この映画はキアヌ・リーブス映画なんですよ。
関根:
えーっと,まあ主演ですし,当然キアヌ映画かと。
須田:
いやいや,それだけじゃないですよ。キアヌのすべてが詰まっている映画ということです。
関根:
ほほう,なるほど。例えばどういったことでしょう。
須田:
まず,格好いい。
関根:
そうですよ,いい男です。……ってそれだけですか?
須田:
それだけでも充分じゃないですか。あとスーツが似合うしね。
関根:
まあ,キマってましたね,スーツ。
須田:
……遠い昔,痩せていた頃の僕は,キアヌに似てるって言われていたんです。
関根:
まさかそれを言いたかっただけですか。
須田:
いやいや,まあ,ゲーム業界のキアヌだってことも言いたかったんですけど。
関根:
ほかにないんですか,これぞキアヌ映画というところ。
須田:
あとは,ガン・フー アクション。ガンアクションとカンフーアクションをミックスしたような動きですけど,今回は柔術やシステマ[1]も入ってましたね。
関根:
話によると千葉真一さんを崇拝しているということもあったりして,アクションには並々ならぬ思い入れがあるようですね。
須田:
彼のアクションって昔からぎこちなさが残るんですよ。でも,あまりにも流暢にすすんでいくアクションシーンよりも,若干のぎこちなさが感じられる動きのほうが生々しくて。実際,人が闘うってこんな感じなのかなと。そしてアクション終わりのキメ顔,これがまた素敵でした。
関根:
確かにそうなんですけども,それはまあ,主演の俳優として当然だとも思うんですが。
須田:
分かりました。それならこの映画がいかにキアヌ映画かということを説明しましょう。
最初からそれを話してくださいよ。
須田:
この映画は,キアヌ・リーブスがいかにいい人なのかが,よく分かる映画だということなんですよ。
関根:
なんですか,それ?
須田:
部長はもちろんご存じかとは思いますが,キアヌ・リーブスさんっていい人じゃないですか。
関根:
なんで突然“さん”を付けるのか分かりませんけど,ネットではけっこう有名な話ですよね。いい人エピソードを集めたまとめサイトなんかもあるくらいですし。
須田:
しかも,ラーメンが大好きで。
関根:
それはいい人と関係なくないですか。
須田:
部長はこの映画を見て,何か疑問は感じましたか?
関根:
え,この映画を見て? 急展開ですね。
えーっと,キアヌ演じるジョン・ウィックが復讐のため闇の組織に立ち向かって,次々と敵を殺していくのに,その動機が若干軽めかなといったところですかね。面白かったから全然問題ないんですけど。
須田:
そうですよね。でも,劇中ではそんな若干軽めな復讐動機のジョンに対して,とてもたくさんの人達がサポートしてくれるじゃないですか。
関根:
確かに。立ち向かう闇組織って,けっこう巨大で,そこに歯向かうのは,自らも危険な目にあう可能性が高いですもんね。それなのにみんなが協力してくれてます。なんででしょう。
須田:
そこなんですよ。つまり,キアヌさんは人がいいからなんですよ。
関根:
……はい?
須田:
現実のキアヌさんがあまりにもいい人すぎて,それが作品の中にこぼれ出てしまって,ストーリーにも反映されてしまったんです。
関根:
何をおっしゃっているのか全然分かりません。
須田:
分かりませんか。それは部長がまだこの映画のことを理解してないってことですよ。ここだけの話,本当のタイトルは「キアヌ・リーブス」だったんですよ。
関根:
はい?
須田:
キアヌ・リーブスさんが復讐のために闇の組織と闘う! ってことになったら,全世界の人がキアヌさんの味方になるじゃないですか,いい人だから。つまりそういうことなんですよ,うん。分かりやすい映画ですよね。
関根:
なんか支配人は納得しているようですけど,僕にはまったく理解できません。というか,そんなタイトルのわけないじゃないですか。そろそろゲームの話にいきますよ。
キアヌ・リーブスゲーム?
須田:
こういうゲーム,作りたいです。
関根:
キアヌ・リーブスゲームですか。
須田:
作りたいですね。キアヌ・リーブスさんがパンパン殺すゲーム。殺し屋もの。やっぱり殺し屋ものっていいですよね。
関根:
殺し屋ものはいいですよ。キアヌである必要はないと思いますが。
須田:
いや,やっぱりキアヌさんじゃなきゃ。キアヌさんの人の良さが必要ですよ。
関根:
そこには乗っかりませんが,せっかくだからキアヌ以外の俳優も少しは気にしてくださいよ。この作品の脇役陣は闇社会ではおなじみの俳優ばかりなんですよね。
須田:
そう。闇社会といえばのウィレム・デフォーとかね。
関根:
敵のボス役の人,津川雅彦さんにそっくりじゃないですか。
須田:
ほんとだ。女好きの悪役をやってるときの津川さんに似てる。あとは,プロレスファンにとっても嬉しいキャストが,ケヴィン・ナッシュ。
関根:
プロレスラーなんですか?
須田:
そうですね。ディーゼルっていうリングネームのほうが有名かな? nWoの中心メンバーとして活躍していたんですよ。初来日時にはザ・グレート・オズとして,新日本プロレスのリングに上がっています。
関根:
そうだったんですね。
そういえば,この映画ってジョンでしたっけ,キアヌでしたっけ? どっちが役者でどっちが主人公の名前か分からなくなってきましたが。
須田:
ジョンですよ。
関根:
えっ,そこはぼけないんだ……。まあいいです。
で,彼が拠点にしているのがホテルなんですけど,そこがRPGの宿みたいな感じなんですよね。
須田:
そう。ホテルに戻るとライフ回復と武器の調達ができるっていう。要はセーブポイントになってる。ビデオゲームからのインスパイア感がムンムンしていますよね。
関根:
あと,何人殺したのか分からないんですけど,殺し方もゲームっぽいというか。
須田:
ザコキャラの殺し方ですよね。あと,あるところに行くと,全員同じ色のシャツを着て攻めてくるとか。ゲームでステージクリアをしているような感覚で面白かったです。乗っている車の格好良さもビデオゲーム感がありましたね。
関根:
そんなジョン・ウィックを見たあとに,やっていただきたいオススメのゲームといえば……?
須田:
ここはやっぱりストレートに「ヒットマン」でしょう。TPSで,白シャツ,赤ネクタイ,スキンヘッドの殺し屋。もうこの映画の世界観にピッタリ。
関根:
なるほど。あ,ヒットマンの新作が来年出ますねぇ。
須田:
そうなんですよ。それもあって,ぜひチェックしてほしいんですよね。
関根:
今確認したら,ヒットマン,2007年に映画化されてますよ。
須田:
あー,そうですね……でもね,部長。
関根:
はい。
須田:
その映画ヒットマンよりも,今回のジョン・ウィックはヒットマンのゲームに近い作品ですよ。
関根:
えっ,そうなんですか。
須田:
そうですよ!
関根:
……ところで支配人,映画のヒットマンはご覧になったんですか?
須田:
ん? ……あー,見てません。
関根:
出たー!
- この記事のURL: