100Mbps超えの通信速度を無線で実現へ。UQ，「WiMAX 2」のフィールドテストを公開

　2011年7月6日，UQコミュニケーションズは，次世代通信規格「WiMAX 2」方式（IEEE 802.16m）の採用に向けてフィールドテストを実施し，その環境下において下り100Mbpsを超える無線通信に成功したと発表した。これに合わせ，東京都千代田区大手町周辺で，報道関係者向けにフィールドテストの一部を披露している。

WiMAXとWiMAX 2との仕様比較

　同社は，2010年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2010」において，40MHz帯のWiMAX 2を利用した通信デモを行ったが，現在フィールドテストが行われているのは，20MHz帯を利用したWiMAX 2である。
　理論上の最大通信速度で比較すると，現行のWiMAXで下り最大40Mbps，上り最大10Mbpsなのに対し，40MHz帯を利用するWiMAX 2では下り最大330Mbps，上り最大110Mbps，20MHzの利用時は同165Mbps，55Mbpsだ。20MHz帯でのWiMAX 2を用いた理由は，「現時点で総務省による40MHz帯の割り当てがなされていないため」（UQコミュニケーションズ）とのことである。
　なお，350km/hまでの移動時でも通信が可能な点や，送受信にそれぞれ4つずつのアンテナを使う「4x4 MIMO」を採用する点などで，40MHz帯と20MHz帯に違いはない。

UQコミュニケーションズ代表取締役社長 野坂章雄氏

野坂氏がアピールするWiMAX 2を導入する3つ目的

　さて，発表会には，UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏が登壇し，WiMAX 2の実用化に向けて，導入目的やスケジュールなどの説明を行った。

　実際問題として，基地局の増設による「ワイヤレス容量」の増加は限界を迎えつつあり，新技術の導入や，周波数帯域の追加などを行うことで，ワイヤレス容量を増加させる必要があると野坂氏は言う。「ワイヤレス容量」というのは「ネットワーク帯域幅」とほぼ同義だと思われるが，そんな「ワイヤレス容量」を増やすために採用が進められているのがWiMAX 2というわけだ。

　WiMAX 2はWiMAXに対する下位互換性を持っているため，WiMAXの基地局が利用可能。そのため，WiMAX 2の基地局を増やして，WiMAX 2の「ワイヤレス容量」を増やせば，UQ WiMAXサービス全体の「ワイヤレス容量」も確保できるようになるというのが氏の見解だ。
　また，WiMAX 2の導入により，WiMAX以上に高速な通信環境を実現できる点と，それに合わせて，屋外からのストリーミング配信などといった新しいサービスも実現できるようになるとも，野坂氏は述べている。
　さらに同氏は，その高速性を「WiMAX 2で光ワイヤレスを実現」とアピールしていた。

WiMAX 2とWiMAXの併用でワイヤレス容量が増加するという

WiMAX 2の速さを「光ワイヤレスを実現」とアピールする

　現在のところWiMAX 2は，IEEE 802.16mとして標準規格になったばかりで，国内での各種制度整備などはこれから行われるといった状況だが，野坂氏は「2013年早々には国内でのサービス提供を開始したい」と鼻息が荒い。「定額制で，現行のWiMAXよりも少し高い金額になる」というプランまで出てきたあたり，UQコミュニケーションズ内では，サービス開始までのロードマップがかなりはっきりしてきているのだろう。

WiMAX 2導入までのロードマップを示したスライド

定額制プランのほか従量制プランも予定しているとか

今回のフィールドテストに使用された特別仕様のバス

　というわけで実際のフィールドテストの様子をお届けしたい。
　今回報道関係者向けに公開されたのは，WiMAX 2システムを搭載したバスで東京都千代田区大手町周辺を15分程度周回するというもの。大容量な動画を4つストリーミングで受信しながら走行するバスは，車内にディスプレイを備え，通信速度が随時表示されていた。

フィールドテスト用バスが搭載しているシステム

動画ストリーミング受信の様子

静止時

走行時

皇居周辺

　それでは実際の通信速度を見ていきたい。
　バスが停車している状態，つまり静止時には，140Mbps以上の速度で通信が行われていることが確認できた。なお，担当者によれば，150Mbps以上の実測値が出ることもあるとのこと。
　バスが動き出すと通信速度はガクっと落ちたが，それでもビル街の間を進んでいる限り，80Mbps前後は維持。周囲のビルのない皇居周辺まで来ると40Mbps程度にまで落ちていたが，これは「ビルによる電波の反射がなくなるため」（UQコミュニケーションズ）とのことだ。

　下り40Mbpsという理論値が掲げられているものの，実際にはその10分の1強も出れば御の字というのが，現行のWiMAXサービスにおける現状だ。それだけに今回のフィールドテストにおけるスコアをどう判断するかは悩ましいといえるが，それでも，2013年に向けて，期待の持てそうな数字が出ているのも確か。高速なモバイル通信サービスにおける選択肢の1つとして，サービス開始を楽しみに待ちたいところである。

青いガチャピンとムックが登場

プロフィールも公開される

インテル取締役副社長 宗像義恵氏

　このほか発表会では，インテルの宗像義恵 取締役副社長も登壇している。同氏は，インテルの事業戦略を実現するには超高速かつ広帯域のインフラが必須として，WiMAXおよびWiMAX 2をサポートしていくとアピールした。

　また，会場には，WiMAXのイメージキャラクターである「ブルーガチャムク」も登場した。
　余談だが，開場の前にスペシャルゲストとして「ガチャピン」と「ムック」の登場がアナウンスされていたので，青いガチャピンとムックが見られると思い，期待に胸を膨らませて待っていたのだが，実際に現れたのはいつもどおり緑と赤の彼ら。ブルーガチャムクは動画で登場しただけにとどまり，少し残念な気持ちになった筆者であった。

　なお，ブルーガチャムクのプロフィールは，UQコミュニケーションズのWebページに公開されているので気になる人は見てほしい。

WiMAXイメージキャラクター「ブルーガチャムク」

登壇者4人で記念撮影

「ブルーガチャムク」のプロフィール紹介ページ