イベント
「東京コンテンツマーケット」シンポジウム「本格化する仮想社会ビジネス最新情報」
独立系のクリエイターや制作会社が1コマブースを計80コマ連ねる商談会なのだが,企画としてシンポジウムがあり,オンラインゲームに関連するビジネス分野の話題も取り扱われた。
そのなかから,本記事では「本格化する仮想社会ビジネス最新情報」と題し,「Second Life」などのメタバースの話題を扱った回について,レポートをお届けしよう。
このシンポジウムに参加したのは,ソニー・コンピュータエンタテインメント Home(Japan)Project推進室 シニアプロデューサーの赤川良二氏,キューエンタテインメント 代表取締役CCOの水口哲也氏,ココア 代表取締役の森山雅勝氏で,CNET Networks Japan 編集統括の西田隆一氏がモデレーター(進行役)を務めた。
SCE 赤川氏が提供する話題は,PLAYSTATION 3を持っている人なら,接続契約を結べば誰でも使えるようになる仮想空間サービス「PLAYSTATION Home」についてである。そしてキューエンタテインメント 水口氏は「Seconde Life」内で電通と一緒に手がけている「バーチャル東京」プロジェクトおよびそのほかについて,ココア 森山氏は同社が制作中のPCオンラインの仮想社会サービス「meet-me」を中心に話題を披露した。
なお,このシンポジウムはメディアも含め基本的に撮影禁止であったため,スライドで示された画面イメージはお届けできない。たいへん遺憾であるが,あらかじめご了承願いたい。
東京23区の再現からスタートする「meet-me」
「meet-me」は(サービス開始時点で)東京23区の道路と区画,主要なランドマークを備えた仮想空間となる。そしてランドマーク以外の土地については,参加者が購入して,自由に建物を建てられるようになっている。アバターはアニメ調で,より馴染みやすい雰囲気になるはずという。また,著作権侵害をはじめとする有害なコンテンツについては,排除できる仕組みを考えているそうだ。 氏によれば仮想社会の持つ一つの課題は「操作もさることながら,何をしたらよいか分からない」ことであるという。日本におけるサービスとして,馴染み深い実在の土地をベースにしたことも,そうした意識が前提にあるのだろうか。
仮想空間は「アナザー・ワールド」。実用性がカギ
ご存じの方はご存じのように「スキージャンプ・ペア」とは,真島理一郎氏が作ったコミカルな動画で,同名の架空のスキー競技を扱った作品だ。あの奇想天外な映像が,「Seconde Life」でプレイ可能な競技として再現されるのである。
そのほか水口氏は別の角度から,自身がプロデュースに携わったミュージシャン「元気ロケッツ」の活動について述べ,「YouTubeにコンセプチュアルな映像を掲載してからわずか10か月間で,幕張メッセで行われた環境キャンペーンライブ『Live Earth』でオープニングアクトを務め,ホログラムのアル・ゴア副大統領を会場に呼ぶ大役を務めた」「このように,現在の市場にはすでに,テレビ/ラジオを介さずに音楽や映像をプロデュースする回路が開かれており,そうしたものの一つとして仮想社会がある」とした。
またそこで,YouTubeと仮想社会を併置したのが氏の考えのポイントであり,15年ほど前の「バーチャル・リアリティ」論の一部を引きつつ氏は,「バーチャル・リアリティというより,それはアナザー・リアリティと呼ぶべきものだ」と述べ,仮想社会が現実社会と境界なく融合していくはずがないと喝破,現実社会から見た実用的なインタフェースの形として仮想社会を位置付けた。
「PLAYSTATION Home」は2008年春が目途
画面には比較的写実的な顔をしたアバターと,広々した「マイホームスペース」が表示され,氏は「日本の家はこんなに広くない気がしますが」などとツッコミを入れつつ,アバターの顔が細かく設定できる,例えば家具には有料のものを用意できる,アバターの服には協賛メーカーのものが採用できるといった,基本的な説明を加えていった。
マイホームスペースから外に出ると「ホームスクエア」で,街の一画が用意されている。そこではエモートアクションを使って一緒に踊ったり,「出会ったプレイヤー同士が例えば一緒に「みんゴル」を始め」たりすることも可能だという。またホームスクエアの中には「ゲームスクエア」と呼ばれる施設があって,そこでは現在のところ,ボウリングとビリヤード,簡単なアーケードゲーム風の作品がプレイできるが,ここに他社製を含め,ほかの作品をラインナップしていくことも可能と述べた。
「時期尚早だったPlayStation BBと違って,本体と契約だけで可能で,課金システムも整備された」と,PLAYSTATION Homeに自信を覗かせつつ,氏は当初2007年内が予定されていたサービス開始時期については「2008年春をめどに,あらためて発表がある」とコメントした。
ゲームデザインの世界にはもともと,「FPS/TPSの万能コンテナ説」とでもいうべき考え方がある。これは,プレイヤーの分身として行動させるのに最も分かりやすい形だという意味であり,ゲーム内に配置された分身のアクションをトリガーにして,あらゆるゲーム要素が展開可能という見解だ。今回のシンポジウムで述べられた内容は,この見解に近い。
オンラインゲームの文脈で言うなら,行き交う多数のプレイヤーをそのままプレイ要素に直結させたのがMMO作品であり,ゲームに入る手前でのコミュニケーションを重視したのが,近年のゲームポータルのあり方だったと整理できよう。そしてその間に,作品ごとに独立したポータルシステムを持つMOタイトルが入る。
PLAYSTATION Homeの構想は,ゲームポータルが占める位置に仮想空間とアバターを置くものであり,そこで成り立つ独自のコミュニケーションは,独特の魅力を発揮する可能性がある。ただ,一方で水口氏が述べたアナザー・リアリティ論,つまり“仮想空間の価値は,現実生活の中でのインタフェースとしての卓越性で決まる”とでも整理すべき論点を忘れてはいけない。
果たして仮想空間は,より進化した便利なインタフェースとなっていくのか。今回のパネリストはもちろん,その点に関しては楽観的で,仮想空間インタフェースの本格的普及時期について,森山氏は「meet-me」のサービス時期を睨みつつ「2年後」と答え,水口氏は「3年後」,赤川氏は「PLAYSTATION Homeが始まればすぐにでも」と答えていた。それぞれの取り組みを楽しみに見守りたい。
- 関連タイトル:
Second Life
- 関連タイトル:
meet-me
- 関連タイトル:
PlayStation Home
- この記事のURL:
キーワード
Copyright 2006, Linden Research, Inc. All Rights Reserved
Copyright(C)2007-2015 Co-Core Inc. All rights reserved.
(C)2008 Sony Computer Entertainment Inc. All Rights Reserved.
- セカンドライフ 歩き方ハンドブック
- Book
- 発売日:1970/01/01
- セカンドライフ公式ガイド Second life the official guide
- Book
- 発売日:1970/01/01
- セカンドライフアバターメイキングブック
- Book
- 発売日:1970/01/01
- セカンドライフの達人 [本]
- 価格:1628円