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「FFXI」プロデューサー,田中弘道氏サイン会直前 in GC
サイン会直前の落ち着かないであろう待ち時間,我々4Gamerはひそかに田中氏と,お馴染みのグローバル オンライン プロデューサーSage Sundi氏,ヨーロピアン オンライン プロデューサー室内俊夫氏にお話しをうかがう機会を得ていたので,その模様をお伝えしよう。(Interview by Kawamura,photo by kiki)
■ヨーロッパ中のメディアから取材の嵐
すいません,こんな緊張するひとときに。GCの参加は3回めでしたっけ。
Sundi氏:
そうですね,「FFXI」としての出展は3回めです。
4Gamer:
田中さん自身がGCに参加するのは初めてですよね?
田中氏:
ええ,僕は初めてですね。
4Gamer:
どうですかGCは。どんな印象を持たれました?
一同:
(笑)
4Gamer:
?
田中氏:
いやね,「それを聞かれたらどうしよう」って,さっき話してたんですよ。実はまだ全然見て回れてないんですよ。
4Gamer:
あら,大忙しなんですね。
田中氏:
ここ(ビジネスセンター)と,会場のFFXIブースを行き来してばかりです。昨日も今日もずっと取材で,まさにカンヅメ状態。ドイツまで来てカンヅメ(笑)。
4Gamer:
取材に来ているのは,やはりヨーロッパ全体からですか?
Sundi氏:
ヨーロッパ全体ですねえ。ドイツのメディアが一番多いけど。すでにどれくらい取材を受けましたっけ?
田中氏:
1,2,3,4……えーと,16くらいかな? メディア混合のインタビューもあったから,実際の数はもっと多いと思う。
4Gamer:
ヨーロッパのメディアの取材を受けてみて,何か「日本やアメリカとは違うな」って感じるところはありました?
田中氏:
いや,とくに違いはなかったですね。ほかのリージョンのユーザーと,まったく変わりません。
コミュニティサイトのすごく熱いのがヨーロッパに一つあって,そこの運営者のインタビューも受けたんですよ。そこの意見というか質問というか,そういった内容まで,日本やアメリカの熱い人達と同じでしたね。NMのポップタイムを全部計った表とか持ってきて,「ここがおかしいからこういう仕様にしたらどうだ」とか(笑)。
4Gamer:
熱いですねぇ(笑)。ドイツのメディアの方々からは,どういう質問を受けました?
Sundi氏:
一般紙の場合は,普通に「FFXIのドイツ語版が出るんですか?」という質問が多かったですね。一方でオンライン専門誌は,「World of Warcraft」(WoW)との比較が多かったですね,やっぱり。「WoWの独占市場であるヨーロッパ圏において,FFXIが裾野を広げるにはどうするつもりか」とか。
4Gamer:
ちなみにその質問には,どのように答えたんですか?
田中氏:
僕らが目指しているのは,限られたMMORPGプレイヤー人口の奪い合いではなくて,FFシリーズのファンというカジュアルなゲーマーに裾野を広げ,いかに取り込んでいくつもりだということですね。
Sundi氏:
ヨーロッパでは最初に出たのがPC版だけでしたから,ヨーロッパでも「PCゲームタイトル」というイメージが強かったんでしょうね。なので,「FFXIはコンシューマ向けのMMORPGです」という説明をしてきたつもりです。
4Gamer:
なるほど。実は欧米/欧州の人から見ると,生い立ちは結構特殊かもしれませんしね,FFXIは。
田中氏:
Xbox 360版で,ようやくFFXIをコンシューマ機で提供できたんですけどね。ヨーロッパというのは,コンシューマの土壌が十分に形成されないままPCがどんどん発達していて,そこにちょうどいいタイミングでWoWが出て,オンライン市場をガーッと形成したわけですよ。
Sundi氏:
会場のFFXIブースで,現地の人にボランティアで参加してもらっているんですけど,その中の一人もFFXIはプレイしているけど,ほかのFFシリーズについてはPC版でしかやったことがないと言ってましたね。プレイステーションは持ってないと。
4Gamer:
あぁ,そういえばVIIとかVIIIって,PC版も作られてましたよね。
田中氏:
……そういえば,あれ,なんで作ったんだっけ?
Sundi氏:
知りませんよ(笑)。
4Gamer:
EAスクウェアだったころですよね,確か。
また懐かしい名前が出てきましたね。
4Gamer:
ところで失礼な質問かもしれませんが,確認させてください。ヨーロッパでは,FFシリーズの認知度というのはどれくらいなんですか?
Sundi氏:
具体的なセールス本数は分からないけど,それでもみんなが知っているタイトルという感じではありますね。
田中氏:
会場内とか外を歩いていると,「サインください」って,ものすごい人が寄ってくるので,それだけ注目度はあるようですよ。
4Gamer:
なるほど。FFXIならWoWを崩せそうな気がしてきますね。
Sundi氏:
ただまあWoWはやっぱりPCなんですよね。うちのヨーロッパ展開を考えるなら,PCのWoW,コンシューマのFFという住み分けになると思います。
■GCで見た,ここが変だよドイツ人?
4Gamer:
こっち来てからは,ずっと取材ですか。
田中氏:
ええ。今日も明日も延々と取材があるから,会場を見てる暇が全然ない。
4Gamer:
それじゃあ,もう感想も何もないですね(笑)。
田中氏:
いまの時点で見られたのは,(ビジネスセンターとFFXIブースの)通り道くらいかな(笑)。それで感じたのは,東京ゲームショウやE3だと,展示ってやっぱり映像がメインじゃないですか。巨大なプロジェクターで流れる最新プロモーションムービーとか。でもこっちの人は,ひたすらゲーム自体を見てますよね。
4Gamer:
確かに,試遊台が目当てという人が多いような気がします。
田中氏:
「見に来ている」というよりも「遊びに来ている」という感じですね。
Sundi氏:
家族連れで,週末だし遊びに行こうかって感覚なんですかね。年齢層にも幅があるし。
4Gamer:
さっきふと気付いたんですけど,GCのFFXIブース。やたらに女性が多くないですか?
Sundi氏:
多いですね。
4Gamer:
ヨーロッパのFFXIプレイヤーって,もしかして女性が多いんですか?
Sundi氏:
いやぁそんなことはないんですけど,やっぱりこのゲームショウに来る女性が多いんじゃないですかね。我々の感覚だと,女性ゲーマーといってもコンシューマばかりですが,こちらの女性はPCゲームにバリバリ親しんでますね。
田中氏:
それはドイツだからなのかな。ヨーロッパ全体というわけではなくて。
Sundi氏:
ドイツの特徴なんだと思いますよ。イギリスだと,PCのパーツを見てキャーキャー言う女の子はあんまりいないけど,こっちの女の子はPCのパーツ見て目をキラキラさせてる。
室内氏:
「この水冷ユニットがー!」って騒いでる女の子もいますしね(笑)。
4Gamer:
やはりドイツというのは,PC市場が大きいのが特徴ですね。いまだにゲーム市場のシェアの60%くらいがPCゲームですよね,確か。
田中氏:
取材を受けていても,ドイツのメディアはPC市場としてのインタビューが中心でしたね。コンシューマ機は,市場としてはあまり大きくないのかなと感じました。
Sundi氏:
コンシューマ向けのメディアの取材だと,話の内容が「ファイナルファンタジーIII」(NDS版)になっちゃうんですよね。
田中氏:
日本で昨日発売されたばかりで、まだ我々も製品版を触ってないのに(笑)。
■ドイツ語版とかフランス語版とか
日本語版と英語版以外の言語というのは,ドイツ語/フランス語が初めてですか?
田中氏:
そうですね。今,同時開発しているそれらが初めてです。
4Gamer:
フランスのプレイヤーというのも多いんですか。
田中氏:
FFXIだけで見る限り,ドイツよりフランスのほうがプレイヤーは多いですね。
Sundi氏:
ドイツ/フランスではなく,ドイツ語圏/フランス語圏として見ると,この二つの言語と英語があれば,ヨーロッパのプレイヤーはだいたいフォローできるんですよ。スペイン語圏とかもありますけど,オンラインゲームはまだまだ弱いようですし。
4Gamer:
ちなみにほかの言語の候補とかあります?
室内氏:
いや,今のところはとくに……。EU圏を本気でフォローするのはなかなかツラいものがあるんですよ。一体何か国あって,何言語あるのやら。
田中氏:
ドイツ語版とフランス語版は,ほぼ同時のリリースを予定しているんですけど。結局,ドイツ語版とフランス語版を,既存の日本語版や英語版と足並みを揃えていくための開発環境を作るのが一番時間がかかりましたね。トランスレーターを最低2人とコーディネーターという体制が必要なんです。
Sundi氏:
よくオンラインゲームで,「多言語のアップデートは同時にリリースする予定です」なんていう話を聞きますが,FFXIの場合はリージョンに関係なくサーバーが同じなので,本当に同時アップデートするしかないんですよ。「フランス語だけ1週間遅れる」とか,物理的にありえないしできないんです。
田中氏:
だから今,うちのオフィスにはドイツ人とフランス人とアメリカ人がずらーっと並んでいて,いろんな言語が飛び交ってますよ。
4Gamer:
なんだかNOVAのオフィスみたいですね。
Sundi氏:
バシッと全言語に同時にパッチが当たる,初の本当の意味でのマルチランゲージ対応MMORPGだと思いますよ。
田中氏:
僕ら自身,昔アメリカのMMORPGをプレイしていて,日本のサーバーがバージョンアップするまでのタイムラグというのが結構つらかったので。そういうところから,FFXIは同時にアップデートしたいと思うようになりましたね。
4Gamer:
アメリカのMMORPGって,ちなみに何をプレイされてたんですか?
田中氏:
やっぱり「EverQuest」(EQ1)が一番長かったですね。これはもともと北米サーバーでプレイしていたんですけど,やっぱりアップデートのタイムラグがいやで,日本語サーバーには移らなかったです。
4Gamer:
ところでFFXIドイツ語版って,ローンチ予定はいつですか?
一同:
「近々」です(笑)。
田中氏:
すでにアトルガン発売時までの分のドイツ語やフランス語の翻訳はほぼ済んで
るんですけど,この前バージョンアップがありましたからね。これが日本語と英
語が先行して作られているわけですけど,ドイツ語版とフランス語版もこれに追
いつこうと。
4Gamer:
アップデート分のローカライズを,せっせと進めているわけですね。
田中氏:
で,それが揃ったときがリリースタイミングですね。それ以降はもう,4言語に対して常に同時にバージョンアップを実施します。そのための運営体制も作らなくちゃいけないんですけどね。
4Gamer:
去年のGCでもFFXIブースは相当盛り上がってましたけど,すでにいるヨーロッパ圏のプレイヤーは,みんな英語版でプレイしているってことですよね。やっぱりドイツ語版は,新規にパッケージを購入する必要があるんですか?
Sundi氏:
いや,英語版をプレイしている人には,無料で自動的にバージョンアップされますよ。言語アップデート後は,ヨーロッパ圏の人は英語かドイツ語かフランス語か,好きなものを選べるようになります。
室内氏:
今も中身は英語版で,パッケージとマニュアルだけドイツ語版というものが売られています。日本で言うところの「日本語マニュアル付き」ってやつですね。ドイツ語が導入されれば,これがバージョンアップによってドイツ語版になるので,実際のところ「ドイツ語版パッケージ」との違いは,そんなにないです。
Sundi氏:
でもヨーロッパの既存のプレイヤーって,実はそれほどドイツ語を待っていないんじゃないかっていう疑惑も(笑)。
田中氏:
「英語版でいいや」ってね。むしろドイツ語化されることによって一般ユーザーが入ってきて荒れることに抵抗がある,みたいな風潮もあるようですよ。
4Gamer:
うーん,どこかで聞いたような話ですね(笑)。
■ヨーロッパでFFXI事業を展開する,知られざる苦労
ちなみに現在のFFXIのユーザー数,ドイツではどれくらいですか?
田中氏:
うーん(笑)。やっぱり今はまだ英語版しかないせいか,ヨーロッパでまとまったユーザー数がいるのはイギリスですね。
室内氏:
ヨーロッパ全体で,イギリスが半数弱を占めています。
4Gamer:
ヨーロッパ全体って,いったい何か国ぐらいからログインされているんですか?
室内氏:
それはまた……難しいことを聞きますね。
田中氏:
意外な国の名前もたまに見かけるよね。
室内氏:
ユーザー登録情報ベースでは,現在60か国ぐらいですかね。毎週チェックするんですけど,順調に増えていっています。もちろん,「なんでこんな国から……」ってところから一人だけ,というケースもあったりするんですけど。
田中氏:
サウジアラビアとか,南アフリカ共和国とかの人もいるね。
4Gamer:
実に多国籍なゲームになってきましたね。その中で,ドイツならではの特徴というのは何がありますか?
Sundi氏:
まず課金システムですね。ドイツは特殊なので,その整備が大変でした。この国はクレジットカードやデビットカードによる課金がほとんど定着していないんですよ。
4Gamer:
ではいったいどんな支払い方法が……?
室内氏:
メジャーなのはダイレクトデビット(口座振替)ですね。これができないとドイツではダメだと。
田中氏:
というわけで,8月7日にそれに対応させたんです。これまでヨーロッパになかなか入っていけなかった理由の一つに,課金の壁というものがあったわけです。地味で目立たない部分なんですけどね。
4Gamer:
結構国によって違うものなんですか。
室内氏:
イギリスは,クレジットカード払いもデビットカードも普通に普及していたりするんですけどね。
Sundi氏:
そのデビットカードの種類も,国によって違うくらいですから。
4Gamer:
ちなみにドイツでの課金額は?
Sundi氏:
12.95ユーロですね。追加キャラ1体につき1ユーロだったかな(編注:9月7日時点での1ユーロは約148円)。
田中氏:
アメリカのドルと同じ数字にするんですよ。税金関係で,そうなるんですよ。
室内氏:
ゲームに限らず,アメリカで199ドルのものはヨーロッパでも199ユーロ,といった価格設定をすることはよくあります。ヨーロッパは税金が高いので,その差額がドルとユーロの差として組み込まれるんですよ。その代わり,税込価格なんです。
4Gamer:
なるほど。
室内氏:
UKは,そのユーロ価格をもとにポンドへ換算して価格設定を行う,という風潮のようです。
Sundi氏:
そういう,こちらでは当たり前となっていることをやっていくのに,慣れてないせいもあり,ちょっと時間がかかりましたね。
■どさくさまぎれに,新作についても聞いてみた
さて,田中さん的にはNDSの「III」もひと段落して,次の新作に取り掛かってるころかと思うのですが。
田中氏:
E3 2005でのMSのカンファレンスで発表した新作MMOを今,本格的に作ろうとしてます。作ろうとしているというか,作り続けています。で,今は次世代のMMOとFFXIの二本立てでやっているので,自分が今,どっちの仕事をしているのか,ときどき分からなくなりますね。
4Gamer:
あの次回作は,FFシリーズの血を引いているとか,そういうことはまだ内緒ですか。
田中氏:
内緒です。
4Gamer:
FFXIと比べて,方向性は全然変わるんでしょうか。
田中氏:
いや,そんなことはないですよ。ただ,FFXIとは違う観点で作っています。開発しているのが同じFFXIチームだからこそ,XIの中で良かったところを見極めて,いいところを生かしていく方向にしようとしています。
4Gamer:
おや,開発ってFFXIと同じチームなんですね。
田中氏:
そうです。チームの中で徐々に「FFXI専属」「次世代作専属」というふうに分化はされてきてますけど。
4Gamer:
両方の陣頭指揮を執っているのは田中さんということですし,次世代はもしかして「裏FFXI」というか,つまりFFXIになかったものを全部入れ込んでみようとか,そういった作品になるのではないかという予想も立てられるんですが。
田中氏:
いや,やはり良い部分は良いものとして残しておかないと。すべてを反面教師としてしまうと,FFXIのときにベストのものを作った部分が,次世代ではベストでなくなってしまいますから。だからFFXIで本当に良かった部分というものを自分達できちんと把握していないと,次世代で失敗するということで気をつけています。
しかしFFXIとまったく同じものなら,今のXIをバージョンアップしていけばいいじゃないか,ということになってしまう。そのバランスを見極めることが,次世代を開発するうえでの使命ですよね。
■次世代作が出てきたらFFXIは?
結構ありがちな心配なんですが,新作に着手してしまうと,もう旧作の開発は事実上ストップ……みたいなイメージがあることなんですが。そういった部分はどうですか。
田中氏:
まさに,そうならないよううまくやれないかなと,いろいろ模索している最中なんですけど。先ほどの話じゃないですが,結局EQ1のプレイヤーも,EQ2が始まってそっちに移ってみても,またEQ1に戻ったりしてますよね。そういうところを,もっと突き詰めて導入していけないかなと。
4Gamer:
XIにはもともと「○年構想」というのはなかったんですか?
田中氏:
うーん,そういうのはなかったです。ただ,プラットフォームとして最初にプレイステーション2が選ばれたわけですが,コンシューマ機はどうしても世代交代というものがあるので,そのあたりの時期が一つの区切りになるのではないかという考えは当初ありましたね。
4Gamer:
その話から推測すると,次のE3あたりが次世代MMOの発表の場に……?
田中氏:
いやいや,それはまだ全然分かりませんよ。そもそも「次のE3」が,どうなっちゃうか分からないですしね(笑)。ただ次世代機とか次世代OSというのは,開発環境が全然変わってしまうので,それなりに準備時間というのが必要になりますね。
Sundi氏:
結局プラットフォームの寿命というのはユーザー次第なので,次世代機が出たあともユーザーが離れない限りは,FFXIのサービスも残るでしょうし,バージョンアップもエクスパンションも継続していくでしょう。
田中氏:
プレイステーション3が「プレイステーション2互換」を謳っているので,プレイステーション3でもFFXIはプレイ可能とソニーさんから聞いています。ただ,3の発売後は誰もがまたゲームに対する目が肥えていくでしょうからね。
Sundi氏:
逆に僕らから見ると,ユーザーはFFXIからいつ離れていくんだろう,ということだと思いますよ。我々がFFXIを捨てる,ということはないですからね。
田中氏:
現実的な話をすると,もしこの先人が減ってきたら,どこかで赤字になるタイミングが訪れる。そうなったらクローズドを考える必要も出てくるでしょう。少なくとも今まで運営してきた限り,全然ユーザーさんが減少する傾向はないので,ちょっと僕らも驚いていますが。
4Gamer:
時期によって増えたり減ったりは?
田中氏:
いや,ないんですよ。驚くことに。もしかしたらユーザーが完全に固定してしまっているのかもしれないし,古い人が辞めていく分,新しい人が増えているのかもしれない。いずれにしろ,その誤差は0.5%未満で,ほとんど変わってないです。
Sundi氏:
WoWが始まったときも全然影響なかったですし。
4Gamer:
最近のEQ1のように,完全にユーザーが固定化された状態なんですかね。
田中氏:
EQ1のユーザーの推移を見ていると,新しいエクスパンションが出るたびに少し増えて,また徐々に減っていくということの繰り返しなんですが。FFXIの場合,そういった動きすらもないです。
4Gamer:
エクスパンションでも増減しないんですか?
田中氏:
ええ。ああ……ただ「アトルガンの秘宝」では少し増えましたね。あそこからXbox 360も加わったというのもあるからそっちの理由かなぁ。
Sundi氏:
エクスパンションというのはもともと既存ユーザーのためのものですからね。今のユーザー数がある限り,FFXIのサービスはずっと継続されていくでしょう。次世代MMOが出たときに,今のユーザー数がどう動くのかは分からないですけど,FFXIのユーザーは完全な移行よりも,たぶんFFXIをベースにして,次世代もプレイするということになるんじゃないでしょうかね。
4Gamer:
そういえばFFXIは,エクスパンションのローンチのタイミングというのは何か決まっているんですか。例えば「ギルド ウォーズ」は,半年に1回というふうに告知されてますが。
田中氏:
とくにそういうのはないです。パッチで十分というアップデートなら,エクスパンションではなくバージョンアップでやっちゃいますし。今年3月に開催したファンフェアで,向こう1年間くらいのロードマップは発表してます。
Sundi氏:
過去の例でいうと,1年後だったり2年後だったり,エクスパンションのリリース時期はかっちり決まってはいないんですよ。
田中氏:
エクスパンション,つまりディスクメディアで供給するということはファイル容量の大きいもの……やはり新エリア追加のタイミングということになるでしょうね。それ以外のもの,ミッションやモンスターやアイテムの追加ぐらいなら,バージョンアップでも十分だと思います。
Sundi氏:
いずれにしろ,ユーザーも定期的に大型のアップデート欲しくなると思うんですよね。そう思うと,こちらも用意していかなきゃってなりますよね。
4Gamer:
一度聞いてみたかったんですけど,田中さんにとって今のFFXIって,何点くらいの完成度なんでしょう。
田中氏:
難しいなぁ(笑)。まあ100点になってしまったら,それ以上は拡張する必要もなくなってしまいますから。何か物足りないものが常にある状態のほうがいいですよね。実際そうですし。
「80点」なのかもしれないし「65点」なのかもしれない。……「65点」というのが,非常にいい数字なんですよね,きっと。逆に完成されちゃったものは,飽きも来ると思うので。ユーザーが欲しいと思っているもののリクエストをもらって,それにどんどん答えていくという関係を作りたいと思っています。
■サイン会に緊張の表情を見せる
このあとサイン会ですね。
田中氏:
もう,どうしようかなと思って(笑)。
室内氏:
いやいや,逃げちゃダメですよ!
田中氏:
サイン会なんてしたことがないんで……。昨日,ボランティアで来てくれた人達のTシャツには,ちょっとサインしたけど。
Sundi氏:
5枚書いたら,もう「疲れた」って言ってましたね(笑)。
田中氏:
あんまり人来ないんじゃないかなぁ。早めに切り上げて終わりたいなぁ。
4Gamer:
あの分だと来ないわけないと思いますよ(笑)。しかし「田中弘道サイン会」はこれが世界初なんですね。
田中氏:
僕のサインなんかもらって何が嬉しいのかよく分かんないんですけど。そういえばおととい,オープニングセレモニーでゲーム音楽コンサートがあって,植松さんのサイン会があったんですけど,すごい行列ができちゃってましたね。僕らはさっさと外に出ちゃって,「大変そうだなぁ」って言いながらビール飲んでました(笑)。
4Gamer:
では後ほど会場で,大行列を前に途方に暮れているお顔を,しっかり写真に収めさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
その30分後,我々4Gamerスタッフが会場のFFXIブースに直行してみると,そこはすでに大変な人だかり。予定どおり13時30分になると田中氏が登壇し,サイン会が実施された。あまりの人の多さに,期待どおり途方に暮れた風の田中氏であったが,まさにヨーロッパでのFF人気を裏付ける大盛況ぶりであった。
日本ではなかなか会えず,海外のイベントのほうが会いやすい田中氏,Sundi氏,室内氏の3名であるが,今回も次世代MMORPGなどに関する貴重なヒントを聞くことができた。
FFXIのインターナショナルな展開と,次の田中氏のMMORPG。共に,今後とも目を離せそうにない。(2006年8月25日収録)
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