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印刷2010/06/21 15:31

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第267回:E3 2010総括

奥谷海人のAccess Accepted

 ゲーム業界のビッグベント,「E3 2010」が幕を閉じた。先週の「Weekly 4Gamer」を見ると,やはりプラットフォームホルダー関連のニュースが読者の関心を集め,その影に隠れてしまった感じがあるものの,新作ゲームもなかなか充実のラインナップ。今回のE3で見えてきた,ゲーム業界のトレンド「囲い込み」なども含め,簡単に総括してみよう。

第267回:E3 2010総括 新作ハード/ソフトラッシュの背後に見えた「囲い込み」トレンド

 

やはりモーションセンサーよりも新作ソフトが気になる!
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昨年より5000人ほど多い,4万5600人の業界関係者が世界90か国から集まったというE3 2010。新型ハードウェアを引っさげたプラットフォームホルダーが主役だったという印象が強いが,新作ソフトの数々もコアゲーマーを唸らせるだけのボリューム

 現地時間の2010年6月15日から17日にかけて,ロサンゼルスのダウンタウンにあるコンベンションセンターで開催された,ゲーム業界恒例のビッグイベント,E3。今年は3D立体視やモーションセンサーといった新技術を取り入れたハードウェアが次々と投入され,現世代ゲーム機のライフサイクル後半における戦いの火蓋が切って落とされたといったところか。
 会場では,新型ハードに触れるため数時間待ちの行列ができるなどという反応の良さで,やはりいつもにも増してプラットフォームホルダー主導のイベントという色が強かったように感じられた。

 Microsoftのカンファレンスで紹介された「Kinectimals」のデモで,トラの子と戯れていた女の子が,いかにもビデオに合わせて演技をしている風だったり,任天堂のカンファンスで宮本茂氏が意外にWiiリモコンに苦労していたりと,今年のE3はカンファレンス関連のレポートが面白かった。
 シルク・ドゥ・ソレイユを呼んで行われたKinectのイベントにいたっては,E3開催の2日前,そのためにわざわざロサンゼルスに乗り込んだジャーナリストやアナリスト達に電飾付きのカッパを着せ,テレビで発表するためのエキストラとして使いながら,具体的な発表が何もないというもので,「さすがにこれはどうなの?」と思ってしまった。

 

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 といった余計な雑感はともかく,ディスプレイの前で手足を動かしてゲームをプレイする姿に,どうしても違和感を覚えてしまう頭の固い中年ゲーマーである筆者にとっては,やはり気になるのはコアゲーマー向け新作ソフト。2010年後半から来年にかけてリリースされるゲームソフトは,その数も質も,我々を十分に満足させるだけのものがあったという印象が強い。
 Activisionの「Call of Duty: Black Ops」はもちろんのこと,Electronic Artsからリリースされる「Medal of Honor」「Crysis 2」,そして「Bulletstorm」,そしてTHQの「Homefront」やMicrosoft Game Studiosの「Halo: Reach」「Gears of War 3」,さらには,2K Gamesの「XCOM」やUbisoft Entertainmentの「Tom Clancy’s Ghost Recon: Future Soldier」など,FPS/TPS関係の発表が盛りだくさんだった。

 

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 また,シューター以外では,Valveの「Portal 2」を筆頭に,Ubisoftの「Assassin’s Creed: Brotherhood」,LucasArtsの「Star Wars: Force Unleashed 2」,Square Enixの「Deus Ex: Human Evolution」といったアクションタイトル,Microsoft Game Studiosの「Fable III」やBethesda Softworksの「Fallout: New Vegas」といったRPG,さらに2K Gamesの「Sid Meier’s Civilization V」やSEGAの「Shogun 2: Total War」といったストラテジー,そして趣向をこらした数々のレーシングゲーム群に期待できる。
 MMORPGでは「Star Wars: The Old Republic」が控えているし,会場では出展されていなかったものの,Blizzard Entertainmentの「StarCraft II: Wings of Liberty」や「Diablo III」といったタイトルも忘れてはならない。
 国産のゲームでも,「METAL GEAR SOLID RISING」や「「Castlevania 〜Loads of Shadow〜」「Final Fantasy XIV」「Dead Rising 2」「MARVEL VS. CAPCOM 3 Fate of Two Worlds」「Devil’s Third」,そして「Grand Turismo 5」といったゲームに,アメリカ人達の注目が集まっていた。
 正直なところ,ここしばらくはモーションセンサーを試してみる時間もないほど,コア向けタイトルが充実しているのである。

 

 

怒濤の新作ハード/ソフトラッシュの裏で,新しいトレンドが

 そんなハードウェアやソフトウェアの発表の裏で,今年,目についたのがエクスクルーシブタイトルの動き。“エクスクルーシブタイトル”の存在は重要なアピールポイントであり,多くのゲーマーを自分のプラットフォームに「囲い込む」方法の一つだ。しかし,サードパーティの,「なるべく広いプラットフォームで,自社のゲームを売りたい」という意図と相反するのは言うまでもない。
 それでも,Microsoftのカンファレンスで突然発表されたCrytekの「Codename: Kingdom」のように,エクスクルーシブタイトルがいくつか発表されている。

 こういった囲い込み戦略は,メーカーに対するものだけではない。DLC(ダウンロードコンテンツ)戦略などを含め,メーカーからゲーマーに向けた囲い込みも,大きなトレンドの一つになっているようだ。それに関連したトピックがいくつか発表されたので,まとめて紹介しよう。

 

EAの発表した無料会員プログラム「Gun Club」って?
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 6月14日に行われたElectronic Artsのプレスカンファレンスで発表された「Gun Club」は, FPSゲーマーが好きなゲームを遊ぶだけで特典などがもらえてしまうという無料のオンラインプログラムである。
 会員になれば,βテストの優先権や,予約したときのインゲームアイテムがもらえたり,ニュースやイベント情報の提供が受けられる。すでに「Battlefield: Bad Company 2」や「Medal of Honor」のβ版などで利用されており,「Dead Space 2」など今後の作品の多くもこのプログラムの対象に含まれていくようである。
 これを,Electronic Artsの言う「EA作品を愛してくれているファンに対する恩返し」と取るか,「競合製品に対する囲い込み」と取るかは自由だが,このシステムの背後には,中古ソフト対策もあるはずだ。いずれにせよ,ゲームメーカーはサービス業であるということを再認識させられる発表だった。

 

Virgin Gamingのメインビジネスは,賞金を賭けたトーナメント
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 Virginグループが久々にゲーム業界に参入するというニュースは,多くの古参のゲームファンを興奮させたが,フタを開けてみると「クレジットカードなどを使って登録したプレイヤーが,同じランクのゲーマーと,実際の賭け金を払って勝負する」という,オンラインギャンブルの一種であることが分かった。詳しい仕組みは良く分からないが,現在のところ,PlayStation 3とXbox 360のオンラインを利用することが発表されており,E3会場の入り口に設置した特設会場では,「ModNations」を使ったデモが行なわれていた。
 少しでも公平な対戦ができるよう,プレイヤーにはスキルランキングが設定され,自分よりランク下のプレイヤーには挑戦できないようなシステムになっている。自分のスキルを利用した賞金付きトーナメントであるため,多くの国で合法なサービスとして認められるという話だが,ポーカーなどを使ったオンラインギャンブル同様,中毒者を続出させるようなことになれば,問題視される可能性もある。

 

ブラウザ版「The Witcher」と「Steam for PS3」の共通性
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 E3発のニュースの一つに,大人向けアクションRPGとしてヒットした「The Witcher」をブラウザゲームにした「The Witcher: Versus」が,iPhoneやFacebook向けにリリースされ,ブラウザ版とのクロスプラットフォーム対戦が可能になるというものがあった。
 こういったクロスプラットフォームの動きは最近多く,北米で昨年(2009年)ローンチされたMMORPG,「Fallen Earth」でもiPhoneなど3G携帯電話機上でゲームをプレイできる仕組みを開発しているし,「Need for Speed: Hot Pursuit」では,友人がオンラインにつながったことをTwitterで知らせたり,ゲーム写真をFacebookに転載するようなサービスも考慮しているという。
 そういえば,Valveが発表したPlayStation 3版のPortal 2は,Steamworksに対応しているということで,PlayStation Networkで「Steam」サービスが始まるようだ。こうした流れから見えるものは,既存のプラットフォームの枠からはみ出た,「自分達のプラットフォーム作り」というコンセプトだろう。

 以上のような発表から感じられるのは,ここ数年間で培われてきたオンラインコミュニティやソーシャルネットワーキングサービスのノウハウを利用し,「いかに自社のファンを囲い込めるか」という視点だ。将来どうなるにせよ,“ゲーム”が,従来の枠に収まらなくなっていくのは間違いないだろう。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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