連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第489回「『進め!キノピオ隊長』に人生を見た」
まあ,誰もが知っている当然の話ではあるんだけど。でもね,意外と視点を変えてみるのって,難しいのよ。
例えば公正なはずのニュースでも「こういった国民の声もあります」ってフレーズがよく使われているわよね。逆に言うと,「そうじゃない国民の声もある」わけで。これは,ニュースに公平性がないと言いたいんじゃなくて,ニュースですら見方によっては別の見え方があるから,情報を発信されたまま鵜呑みにするだけじゃ気付けない物事もあるよって話なの。
戦争も,一方にとっては正義だけど,もう一方にとっても正義だから。お互いの正義がある。ただ,そのお互いの正義すらも,戦争による死という悲しい現実の前では正義にはなりえない。全員が幸せなほうがいいに決まっている。でも,現実としてそうはならない。
個人の考え方もそう。多面性があるのよ。例えば,捻挫をした場合。もちろん痛ましいことではあるけれども,「怪我をするなんてついてない」と思うのか,「骨折じゃなくて良かった」と思うのか。
……うん,ここまではよく言われる事例よね。でも,ネガティブな人ってこう思うんでしょうね。「そんなことは分かっている。でも,そう思えないから苦労しているんだ」って。
実はね,この件だけでもすでに多面性があってですね。「ついてない」って思う人のほうが実はポジティブだったりするの。だって,何と比べて「ついてない」と思ったかを考えたら,そういう結論になるからね。何と比べているか? それは,怪我をしていない自分。つまりそれって,逆説的に言えば「怪我さえなければこんなもんじゃない,普段の自分はついてる人間だ」ってことでしょ。
自称ネガティブの人は,別の見方をすれば根本的な自己評価が高いポジティブな人なわけです。かといって,一見ポジティブな「骨折じゃなくて良かった」って人は,元々の自己評価が低いというか最悪の事態を想定して,それに比べて良かったと思っているわけで。なので,その想定自体はネガティブなわけ。ただ,気分的にポジティブなところで留まっているから,こちらも最終的にはポジティブなんだけどね。
何が言いたいかというと。物事は多面性があり,ネガティブな面もポジティブな面もある。最終的には自分がどう思いたいか。「ついてる」って思えるならそれはそれでいいことだし,「ついてない」って思ったほうがなんだかんだで気が楽ならそれでもいい。どっちもポジティブなのよ実は。
さらに言うと,「ついてない」エピソードって他人からしてみたら,けっこうどうでもいいことなんだけど,そのエピソードをギャグにまで昇華できたら,これはまた相当ポジティブよね。けっこう難しいことではあるんだけど。
このタイトル,元々はWii Uでリリースされたものなんだけど,そのときは縁がなくてプレイしなかったのね。で,今回Nintendo Switch版で初めて触れてみたんだけれども。
いやはや。「マリオ」関連タイトルって凄いわよね。脇役を務め続けてきたキノピオも,スピンオフによって主人公になれるからね。「踊る大捜査線」で言うところの「交渉人 真下正義」的な。「キン肉マン」で言うところの「闘将!拉麺男」的な。……ちょっと違うか? 「課長島耕作」で言うところの「会長島耕作」。……うん,これは明らかに違うね。同一人物であるうえにランクアップまでしてるし。
ええ,例えに壮絶に失敗しました。まあ要するに,マリオ関連タイトルでは脇役であることの多いキノピオが主人公のゲイムです。ジャンルは公式によると「箱庭アドベンチャー」ってことになっているんだけど。ざっくり言うと,箱庭的なステージがあって,そのステージをいろんな角度に視点を動かして攻略していくっていう,パズル要素のあるアクションゲイムなのよね。
このゲイムのミソは,いろんな角度からステージを見るってことに尽きるわ。キノピオは,派手なアクションはしないというかできないの。なぜなら,マリオではなくキノピオだから。ある面から見ると行き止まりでも,視点を変えれば階段があったりする。表面から見えない場所にも案外突破口がある。それを発見して楽しむ作品なの。
任天堂作品らしく,とても面白くて手軽にプレイできるゲイムなんだけど,私はそのうえで,このタイトルに人生を見たわ。何か分からないことがあったり行き詰まったりしたら,まず落ち着く。で,視点を変えてみる。すると,なんだか行ける気がしてくる。この,“行ける気になる”っていうのがポイント。
さすがにこの作品はゲイムだから,必ず答えが用意されているのね。一方で人生には答えがないこともあるって違いはある。ただ「そうか,こういう考え方もあるか」って気付けること,これが現実にも重要だと私は思うの。見えている面だけが正しいとは限らないし,別の角度から見たつもりでも,さらに別の面があるかもしれない。いずれにせよ,いろんな面から物事を見て進むべきルートを選んでいくっていうのは,人生において重要なことだと思うのよ。
信念は大切。でも,その信念にとらわれすぎていないか? 確かに,自分はすげー高くジャンプできないし,パンチでブロックを壊すこともできないし,火の玉を投げることもできない。でも,進むことはできるし生き抜くことはできる。確かに世界を救う人はすごい。でも,世界を維持する歯車となれる人もまたすごい。
そういう角度で人生を見て生きていってもいいんじゃないか。私はこのゲイムをプレイしてそう思いました。いや,単純にゲイムとしてもすごく面白いよ。そこは任天堂。信じていいわ。ただ,思いのほか深いゲイムだなって。もし私に子供がいたらプレイさせたいゲイム。ただ説教するよりも,こういうゲイムを通じて諭したほうが聞いてもらえそうじゃん。なので,そういう意味でも,そうでないシンプルな意味でもオススメできるゲイムです。ぜひ。
W杯が終わって,ちょっと楽しみが減った最近だけど,逆に言うと睡眠時間とゲイムのプレイ時間が確保できるようになってきたとも言えるわよね。そして,4年後の大舞台を楽しむために普段からもサッカーを楽しもうという気にもなっている。うん,人生は楽しまなきゃな。自分がポジティブかネガティブかなんてどっちでもいいんで,自分を決めつけず最終的には楽しもう。そういうテンションの一週間でございました。また来週。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「Fallout Shelter」
Nintendo Switch:「進め!キノピオ隊長」
iOS:「PUBG MOBILE」
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