連載
インディーズゲームの小部屋:Room#358「Never Alone」
近頃は京橋の審問官(自称)として時空の裂け目を修復して回っている筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第358回は,Upper One Gamesが開発した「Never Alone」を紹介する。
本作は,イヌイット(イヌピアット)の民間伝承をモチーフにしたアクションゲーム。イヌイットの語り部が現地語で読み上げた「クヌーサーユカ」という物語をゲーム化したもので,プレイヤーは「娘」と「キツネ」を交互に操作しながら,力を合わせて困難を乗り越えていく。それにしてもこの大陸,毎度毎度,滅亡の危機にさらされすぎじゃないですかね……。
ある時,猛吹雪が続いて狩りができなくなった原因を探しに村を出た娘だったが,あっという間に行き倒れてしまい,白熊に襲われて絶体絶命のピンチに陥ってしまう。そこに真っ白いキツネが現れて白熊を退治してくれたことから,一人と一匹は協力して娘の村を目指すことに。しかし,娘とキツネがようやく村にたどり着いてみると,一人の恐ろしい男の手によって,村はすっかり変わり果てた姿になっており……といった具合で物語は進んでいく。
ゲームは横スクロールのパズルアクションで,それぞれ異なる特徴を持った娘とキツネを自由に切り替えながら仕掛けを解き,先へと進んでいく。とくに,キツネには精霊の姿を見るという特別な力があるだけでなく,小さくて身軽な体を活かして娘が入れないような隙間を通り抜けたり,高い段差を乗り越えたりと大活躍。また,娘のほうも“ボーラ”という伝統的な狩猟道具で障害物を壊したり,足場代わりの精霊を呼び出す仕掛けを起動したりといったことができる。
時折,吹雪による突風が吹きつける一面の雪の大地と,そこを駆け抜けていく娘とキツネの愛らしい姿,そしてイヌイットの伝承にある奇妙な姿の精霊達といった独特のビジュアルが印象的な本作だが,もう一つ見逃せない特徴となっているのが,イヌイットコミュニティの協力を得て制作された大量のドキュメンタリー映像が収録されていること。これらの映像はゲーム中でフクロウを発見することによってアンロックされ,どれも非常に興味深い内容だ。
人間と自然と動物との間にある特別なつながりを大事にし,それらすべてに霊的な存在を見出すという彼らの生き方は,八百万の神の考え方を持つ我々日本人にとっても,ごく自然に共感できるものではないだろうか。本作は,外見こそ横スクロールのアクションゲームの体を取っているが,本質的にはこれまで口伝や“スクリムシャー”と呼ばれる鯨骨細工によって伝えられてきたイヌイットの伝承を広く発信することに主眼が置かれており,次第にゲームそのものより,ドキュメンタリー映像のほうに引き込まれてしまう。
ゲーム内で流れる映像やストーリーには,すべて丁寧に日本語字幕がつけられており,イヌイットの人々の文化や伝統をゲームを通じて身近に感じられる作品なので,興味を持った人はぜひお試しを。そんな本作は,Steamにて1480円で発売中だ。
■「Never Alone」公式サイト
http://neveralonegame.com/- 関連タイトル:
Never Alone
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(C)2014 Upper One Games LLC. All rights reserved.
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