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インディーズゲームの小部屋:Room#449「Virginia」
お気に入りだった会社の近くの桜が強風のためか倒れてしまって大ショックの筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第449回は,Variable Stateが開発した「Virginia」を紹介する。本作は,新人FBI捜査官となり,バージニア州で起こった失踪事件の謎を追うというミステリーアドベンチャーだ。筆者の憩いの場所だったのに……。
1992年の夏,FBIはバージニア州の小さな町,キングダムで一人の少年の失踪事件の調査を開始した。少年の名は,ルーカス・フェアファックス。プレイヤーは新人FBI捜査官,アン・ターヴァーとなり,パートナーであるベテラン捜査官,マリア・ハルペリンと共にキングダムへと向かうことに。さらにアンは,上司からマリアの内部調査も命じられていた……。
本作は一人称視点のアドベンチャーゲームで,プレイヤーは基本的にアンの視点を通じて失踪事件の調査と同僚の内偵を進めていくことになる。とはいえ,本作を“ゲーム”と呼んでいいかは正直悩ましいところでもある。ゲーム進行は完全に一本道で,プレイヤーがやることと言えば,ほんのちょっと周囲を歩いて,1つか2つのオブジェクトをクリックする程度だからだ。
また,本作ではセリフが一切使われておらず,過去・現在・未来,あるいは幻想が目まぐるしく交錯するシーン構成が大きな特徴となっている。一方で,キャラクターの心情は微妙な表情の変化やプラハフィルハーモニー管弦楽団の演奏による圧倒的なBGMによって雄弁に語られている。また,シンプルながらも絵画的な美しさを感じさせるアートスタイルも大きな魅力だ。
本作のストーリーをどう解釈するかは難しい。一度プレイしただけでは,ほとんどの人にとって意味不明であるとさえ言えるかもしれない。筆者は本作を2回,通してプレイしたが,初回クリア時は正直「なんだこりゃ」と感じた。しかし,シーン同士のつながりを意識しながら2回めを遊んだときは,始めは気づかなかったたくさんの発見があり,おぼろげながら自分なりの解釈を得ることができた。こうなってくると,本作は俄然,面白くなる。
もちろん,それですべての謎が明らかになるわけではないし,決して分かりやすいゲームとも言えない。公式のゲーム紹介にあるように,「ツイン・ピークス」「ファーゴ」「トゥルー・ディテクティブ」といった作品や,「X-ファイル」が好きな人にはグッとくるものがあるだろう。万人受けは難しいゲームだが,筆者のようにいったんハマればとことん好きになれる作品なので,興味を持った人はぜひどうぞ。
ちなみに本作は,重要なテキスト情報は日本語化されており,Steamではデモ版が配信されている。また製品版は,同じくSteamにて980円で発売中だ。
■「Virginia」公式サイト
http://variablestate.com/projects/virginia- この記事のURL:
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