連載
インディーズゲームの小部屋:Room#603「Jenny LeClue - Detectivu」
その昔,MSXでBASICプログラムを打ち込んではカセットテープに記録していた筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第603回は,Mografiの「Jenny LeClue - Detectivu」を紹介する。本作は,少女探偵のジェニーが牧歌的な町で起きた殺人事件の謎と,町に隠された秘密に迫るというミステリーアドベンチャーだ。ミニサイズのPC-8001も欲しいけど,もっと思い入れがあるのはPC-8801シリーズのほうなんだよなあ……。
世界中の子供達に愛されてきた,少女探偵ジェニーが活躍するミステリーな物語「ジェニー・レクルー」は,シリーズ38作品を数える長寿シリーズだ。しかし,誰も死なないことをモットーにしたストーリーはマンネリ化し,売り上げは下がる一方。著者のアーサー・K・フィンケルシュタインは担当編集から,もし次の本が売れなければシリーズは打ち切りになると告げられてしまう。担当編集に,より刺激的なストーリーを求められたアーサーは,やむを得ず,シリーズで初めての殺人事件のストーリーに着手するが……。
ということで,プレイヤーは小説の主人公ジェニー・レクルーとなり,殺人事件の犯人として投獄されてしまった母親の冤罪を晴らすために,ジェニーいわく初めての“本物のミステリー”の解決に乗り出すことに。しかし,調査を進めていくにつれ,どこにでもある平凡な町だと思われていたアーサートンに,大きな秘密が隠されていたことが明らかになっていく。
基本的なゲームの進め方は,ジェニーを操作して謎解きの手がかりを集め,それを組み合わせて答えを導き出すというもの。ストーリーの中で,いくつもの選択を迫られる場面があり,どれを選んだかによって,その後の展開が少しずつ変化していく。
一方,著者であるアーサーも,ナレーター兼案内人としてこの物語に参加しており,プレイヤーが著者としての立場から,ストーリーをどのように展開させるか――例えば,ハッピーエンドにするか,シリアスな物語にするか――を選択できるのも,本作の大きな特徴だ。
舞台となるアーサートンの町は,手描きによる独特のタッチで華麗に表現されており,ロケーションも豊富で見ているだけで楽しめる。また,少々ひねくれ者で友達が少ないジェニーを始めとした,さまざまな登場人物も個性豊かで魅力的だ。中でも,ジェニーの冒険を何かにつけて手助けしてくれるスージーは筆者の一番のお気に入り。彼女のことを頑なに友達として認めようとしないジェニーとの仲がどう進展するのかも,見どころの1つと言えるだろう。
肝心のメインストーリーはどうかと言えば,ジェニーの母親が巻き込まれた殺人事件と町の秘密が密接に絡み合ってジェットコースターのように展開し,まったく目が離せない。ラスト付近では止めどきが見つからず,最後まで一気にプレイしてしまった。多少の誤字・脱字はあるが,全体的に丁寧に日本語ローカライズされており,無理なくストーリーにのめり込めるのも大きなポイントだ。そんな本作はSteamにて1980円で発売中なので,アドベンチャーゲームのファンはぜひ遊んでみてほしい。オススメです。
■「Jenny LeClue - Detectivu」公式サイト
https://joe-russ-saiu.squarespace.com/- この記事のURL:
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