連載
インディーズゲームの小部屋:Room#648「INMOST」
長年愛用しているタブレット端末がいよいよダメになってきて,どうしようか悩み中の筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第648回は,Hidden Layer Gamesが開発した「INMOST」を紹介する。本作は,相互に絡み合う3人の主人公の物語を読み解いていく,ダークな雰囲気のアドベンチャーゲームだ。古すぎて修理対応期間も切れているから,さすがに買い替えかなあ……。
本作の主人公は,不気味な家の中で何かの秘密を探ろうとしている少女,かつて魔女がいたという城を探索するヒゲ面の男性,そして崩れかけた城の奥深くで影のような魔物と戦う騎士という3人。シーンごとに主人公が交代し,その都度,別のキャラクターを操作しながらゲームを進めていくのだが,中でも大きな役割を果たすのがヒゲ面の男性だ。
少女を操作するシーンは謎解きが中心で,友達である大きなぬいぐるみを抱えて,薄暗い家の中で屋根裏部屋に隠された秘密を探っていく。ここでは敵のようなものは登場せず,戸棚の中を調べたり,椅子を引っ張ってきて家具によじ登ったりといった少女らしい方法で,少しずつ家の中を調査していくことになる。
ヒゲ面の男性のパートはこのゲームのメインで,黒い影のような魔物の攻撃から逃れながら,廃墟となった城の内部を探索していく。男性は戦う術を持たない一般人なので,高所から落ちれば死亡するし,魔物に襲われたらひとたまりもない。そのため,あの手この手で魔物をやり過ごし,ときには仕掛けを駆使して魔物を撃退しなければならない。
騎士は3人の中で唯一,武器となる剣を持っており,黒い影のような魔物を切り伏せることができる。このパートには謎解きがなく,何かに憑り付かれたかのように,ひたすら魔物を倒して先に進んでいくという,本作としてはやや異色の展開が待っている。とは言え,戦闘そのものは簡単で,アクションが苦手な人でも問題なくクリアできるだろう。
本作のストーリーは一見すると非現実的だが,ゲームを進めていくと,実はそれぞれのシーンが各キャラクターの身に起きた,とある出来事の記憶や心象風景を暗示したものであることが分かってくる。それを読み解くためのカギは,ヒゲ面の男性のパートに登場する語り部に,小さな宝石として表現された“痛み”を渡すことで徐々に明かされるため,宝石集めは本作のやり込み要素ともなっている。
こうして得た手がかりをどう解釈するかはプレイヤーに委ねられるが,大切なものを失うことの痛みと向き合い,乗り越えていくための愛や希望が大きなテーマとなっており,3人の関係性が解き明かされるラストシーンは非常に感動的だ。とくに,ヒゲ面の男性の正体が判明し,筆者の中ですべての謎がつながったときは,思わず鳥肌が立ってしまった。
ゲームの雰囲気にマッチした,美しいドット絵で描かれたモノトーン調のグラフィックスも印象的で,本作の大きな魅力だ。一度クリアして全体像を把握したあと,もう一度始めから,1つ1つのシーンの意味を確認しながらプレイしたくなるゲームに仕上がっており,ストーリーをじっくりと考察するのが好きな人に,ぜひオススメしたい。そんな本作のPC版は,Steamにて1520円で発売中だ。
■「INMOST」公式サイト
https://inmostgame.com/- 関連タイトル:
INMOST (インモスト)
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INMOST(C)Hidden Layer Games 2020. All rights reserved.