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NVIDIA,PCIe 2.0&3-way SLI対応の「nForce 700」チップセットを発表
なお,本稿は2007年10月に開催された報道関係者向け事前説明会の内容をベースにしている。秘密保持契約の関係で,このタイミングでの掲載となったことをあらかじめお断りしておきたい。
nForce 700シリーズについて解説したDrew Henry氏(General Manager, Desktop MCP, NVIDIA) |
事前説明会では,「GeForce 8800 GT」や「ESA」と合わせて,nForce 700シリーズの説明が行われた |
nForce 680i SLIのPCIe 2.0対応版にすぎない!?
nForce 700シリーズ
今回発表されたのはIntel製CPU向けの「nForce 780i SLI」「nForce 750i SLI」という2製品。正直に述べると,AMD製CPU向けモデルや“nForce 780の後継製品”についてもかなり詳しく語られたのだが,後日「詳細に触れてはならない」というお達しが出されてしまったので,本稿では書くことができない。「AMD製CPU向けnForce 700シリーズは2008年の早いタイミングで発表予定とされている」こと以外は述べられないので,この点もご了承いただきたい。
さてnForce 780/750i SLIだが,型番から想像がつくように,2006年1月に発表された「nForce 680/650i SLI」チップセット直系の後継製品となる。いきなり夢を壊すようなことをいってしまうと,nForce 680/650iのPCI Express 2.0対応&“Penryn世代”デスクトップCPU対応バージョンであり,それ以上でもそれ以下でもない。
SPP内蔵のメモリコントローラはDDR2-1066サポートで,「SLI Ready Memory」規格品ならDDR2-1200動作まで対応できるとのことだ。
以下,nForce 780i SLIとnForce 680i SLIの両上位モデルを中心に見ていくが,最大の違いは,やはりPCI Express周りだろう。
nForce 680i SLIは,PCI Express x16スロットを3基用意するのが特徴だったが,同チップセットにおいてその内訳はSPPから16レーン×1,MCPから16レーン×1,8レーン×1だった。
これに対してnForce 780i SLIでは,まずSPPがPCI Express 2.0に対応。さらに,PCI Expressブリッジ/スイッチングチップである「nForce 200」を組み合わせ,“SPP−nForce 200経由”で,PCI Express 2.0 x16(※PCI Express 1.1でx32に相当)を2系統提供する。3本めのPCI Express x16スロットはMCPから提供され,こちらはPCI Express 1.1規格準拠だ。
いうなれば,nForce 780i SLIのMCPによるPCI Express x16は,nForce 680i SLIのそれとまったく同じ。実際NVIDIAも,MCP自体はnForce 680i SLIのそれとまったく同じと認めている。USBやSerial ATA,サウンド,ネットワークの各機能に,nForce 780i SLIで変わった点はない。
●参考:nForce 780i SLIとnForce 680i SLIのPCIeスロット構成
- nForce 780i SLI:PCI Express 2.0 x16 ×2 + PCI Express 1.1 x16 ×1
- nForce 680i SLI:PCI Express 1.1 x16 ×2 + PCI Express 1.1 x8 ×1
とはいえ,PCI Express 2.0は倍速伝送バスなので,「PCI Express 2.0 x8=PCI Express 1.1 x16」。nForce 680i SLIより上のスペックは実現できている。
3-way SLIはGPU界の
ジェットストリームアタックだ!?
PCI Express周りが強化されたnForce 780i SLIとの組み合わせで訴求されるのが,3基のGPUを駆動させる3-way SLIだ。
3枚のグラフィックスカードで,同一フレームのレンダリングをアクセラレーションする仕組みが実現されるのは,民生用グラフィックスの世界ではこれが初めて。3枚のグラフィックスカードを動作させるためには,PCI Express x16スロットが3本必要になり,その条件を満たすのが,先のパフォーマンス速報で用いたnForce 680i SLIや,今回のnForce 780i SLIということになるわけだ。
NVIDIAによれば,この新しいブリッジコネクタは,nForce 780シリーズ搭載マザーボード製品に同梱される予定となっている。また,先にお伝えしたとおり,nForce 680i SLIユーザーに向けた3-way SLI用ブリッジコネクタは,PCショップの「Faith」が取り扱っている。
デュアルGPU駆動の従来のSLIではピクセルデータの転送にPCI Expressバスを活用する“SLIコネクタを使わないSLI”もサポートされてきたが,3-way SLIでこうしたモードがサポートされるかについては言及されなかった。
3-way SLIのレンダリングモードと
推奨ハードウェア環境
かつてのQuad SLIでは,3種類のレンダリングモードが提供されていた。詳細は筆者の連載バックナンバーを参照してほしいが,具体的には以下の三つだ。
- 4-way AFRモード(AFR:Alternate Frame Rendering):4基のGPUが異なる先のフレームをレンダリングする
- 4-way SFRモード(SFR:Split Frame Rendering):4基のGPUが同一フレームを手分けしてレンダリングする
- AFR of SFRモード:2基のGPUが1枚のフレームを共同でレンダリングし,その先のフレームをもう2基のGPUが共同でレンダリングする
3-way SLIについては,現在15社程度のゲームスタジオが最適化を表明しているという。「3-way SLIへの最適化」というとなにやら難しそうに聞こえるが,最適化の方針は従来のSLIとほとんど変わらない。つまり,従来のSLI(のAFRモード)に最適化されたゲームタイトルなら,3-way SLIでの高速化が見込めるわけだ。逆にいうと,従来のSLIでパフォーマンスがあまり伸びなかったタイトルだと,3-way SLIにしてもスケーリング効果は見込めないということでもある。
下に示したのは,NVIDIAによる3-way SLIのスケーリング効果データだ。グラフの棒は下からそれぞれシングルGPU,デュアルGPU,トリプルGPU駆動時のパフォーマンスを表している。
デュアルGPU駆動では超えられなかった,実効パフォーマンス向上倍率200%を,3-way SLIでは軒並み超えていることがちゃんと見て取れる。もっとも,(デュアルGPUによる)従来型SLIのパフォーマンス向上率と比べて,3-way SLIの上がり幅が小さくなっているのも確かだ。コストパフォーマンスは従来のSLIより悪く,「よりぜいたくなソリューション」といえるかもしれない。
- 2theMAX SP-1200
- Cooler Master RealPowerPro 1250W
- GIGABYTE ODIN Pro 1200W
- PC Power & Cooling Turbo-Cool 1200
- Tagan TG1100-BZ
順当なアップグレードといえるnForce 780i SLI
この先に待つHybrid SLIにも期待
nForce 780シリーズは,時代のニーズに合わせた順当なアップグレードといったところで,とくにnForce 780i SLIがサポートする3-way SLIやESAといったあたりには,そういったコンセプトが滲み出ている。
3-way SLIは,技術的には非常に興味深いものの,GeForce 8800 Ultra/GPUという超ハイエンドGPUのみの対応となるため,一般ユーザーには縁遠い存在だ。いまnForce 780i SLIベースで3-way SLIを実現しようとすると,最低でも1枚7〜8万円台のGeForce 8800 GTX搭載グラフィックスカードが3枚必要になる。これだけのコストをかけて,得られるのはGeForce 8800 GTX 1枚時の2〜2.5倍のパフォーマンスであり,これに価値を見いだせる人は,正直,限定されるだろう。
むしろSLI関連では――先の事前説明会では予告に留まったが――同じ製品型番ではなく,同じアーキテクチャ世代のGPUならSLI構成が可能になるという,2008年登場予定の「Hybrid SLI」こそが本命になるだろう。“3-way Hybrid SLI”が可能になれば,その時々にユーザーが購入した複数のGPUでパフォーマンスアップを図れることになるわけで,一般ユーザーにとってもSLIは身近になるはずだ。
- 関連タイトル:
nForce 700
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