プレイレポート
「QuakeWarsOnline」ファーストインプレッション。これは「Enemy Territory: Quake Wars」の欠点を解消した良質なオンラインFPSだ
「QuakeWarsOnline(クエイクウォーズオンライン)」公式サイト
最初に,QuakeWarsOnlineの元になったETQWがどんなゲームなのか簡単に説明しよう。
ETQWは,id SoftwareのQuakeシリーズに属している作品で,2007年に発売された。Stroggと呼ばれる謎の生命体が地球に侵攻した第1次Strogg戦争が描かれている。第1次Strogg戦争とは,人類が初めてStroggと遭遇し,Stroggの圧倒的な科学力を前に一部地域の占領を許してしまいながらも,GDF(Global Defence Force)の活躍によってこれを撃退したという戦いだ。
ETQWは,こういったストーリーを背景にGDF側,Strogg側に分かれて戦うチーム対戦型のFPSだ。チームに対して輸送,敵拠点の破壊,目標の爆破といったミッションが与えられ,片方のチームは課せられたミッションの完遂を目指し(攻撃側),一方のチームは敵のミッションを完遂させられないよう邪魔をする(防御側),という形で攻防を繰り広げる。
単純にフラグを取ったり,相手を倒したりすれば勝てるゲームではなく,課せられたミッションを達成する/妨害することに成功すると勝利となる。そういったルールによって演出される緊張感の高さが,ほかのFPSとは大きく違うところだ。
ただし残念ながら,ETQWは成功したゲームとはいい難い。最盛期にはそこそこの数のプレイヤーで賑わっていたが同作だが,こと日本では注目を集めることができなかった。その最大の原因は,ローカライズされていなかったことにあると筆者は考える。ただでさえルールが複雑なうえに,メッセージやアナウンスもすべて英語なので,ゲームを“楽しむ”ために,それなりの英語力が必要となっていたのだ。
また,発売元のActivisionも日本市場に熱心ではなかったようで,日本には公式サーバーが設置されなかった。ETQWにはランキングシステムがあったが,日本からランキングシステムに参加するには,海外のサーバーに接続しなければならず,pingの関係で不利になるというようなこともあったのだ。
そんなETQWをベースにしたQuakeWarsOnlineなので,ETQWにあった問題点がどこまで解消されているかが気になる。FPSとしては複雑なゲームシステムを,どう噛み砕けるのかが成否のポイントといえるだろう。
とはいえ,Quakeシリーズのファンとしては,Quakeが持つ独特の世界が壊されていないかもまた,気になるところだ。Quakeシリーズは,妙なキャラクター造形や,シリアスな中にどことなく漂うバカバカしさのあるストーリーが特徴で,それらがid Softwareのゲームエンジン特有の動きと相まって,独特な味わいを醸し出している。そういったものがきちんとQuakeWarsOnlineに引き継がれているのかも,ファンとしてはチェックしたいポイントなのだ。
ETQWとQuakeWarsOnlineのシステム的な違いをチェック
起動直後のウインドウ。右上にほかのプレイヤーが作ったルームの一覧がある。入りたいルームを選んで「フリーモード入場」をクリックすれば遊べる。また,「ルーム作成」をクリックして自分でルームを作ることも可能 |
ルームの作成をクリック。マップの数は現状では2つだが,今後追加されるようだ |
またETQWでは各マップに,Stroggのストロイエント(Stroggのエネルギー源)製造設備を壊すといった内容のストーリーがあり,それに沿った3つのミッションが設定されている。QuakeWarsOnlineでは,マップに付随する3つのストーリーのうち1つを選ぶという仕組みになっているため,各マップに設定されている制限時間が異なる。ETQWの場合,1マップあたりの制限時間は20〜30分程度だったが,QuakeWarsOnlineは,1ゲームあたり10分程度に設定されていたので,ETQWに比べ短い時間で区切りがつきテンポよく遊べるといえるだろう。
なお,QuakeWarsOnlineのゲームタイプは,ETQWと同じミッションクリア型(フリーモード)だが,WeMade Onlineによると,チームデスマッチや,Strogg占領地域から脱出するゲームタイプの追加が検討されているそうだ。
詳細は未定ながら,さまざまなゲームタイプが用意されるという |
動きや操作感覚にはファンも納得。ローカライズもほぼ完璧な仕上がり
QuakeWarsOnlineをプレイするとすぐに分かるが,キャラクターの動きや操作感覚はETQWとほとんど変わらない。WeMade OnlineによるとエンジンはETQWをベースにしているとのことで,Quake系ゲームのファンとしては一安心といったところだ。
とはいえETQWに比べると,グラフィックスのクオリティが少し落とされている。環境設定でグラフィックスのクオリティを最も良くしても,ETQWほどにはならない。テクスチャなどの品質を落としてゲーム本体のサイズを抑えているのだろう。
グラフィックスのクオリティを落としていることに関連していると思うが,キャラクターのモデルも変えられている。といっても,イメージを大きく損なうほどではないのでこの点はご安心を。QuakeWarsOnlineの開発にあたっては,本家id Softwareの許可がなければイラストを描き起こすことさえできないので,元のイメージからかけ離れたキャラクターが登場するといったことは,今後もないと思われる。
一定以上のゲームをプレイするとアイテムがもらえ,手に入れたアイテムは「インベントリ」画面で自キャラクタに装備できる |
さらにQuakeWarsOnlineには,疲労度というパラメータがあり,長くプレイしていると疲労が蓄積され,回復にQP(ゲーム内ポイント)が必要になる。詳細は決まっていないとはいえ,Quakeシリーズは”キャラクターが疲労しない”というのが特徴だったので,最終的にどのようなシステムになるかは,気になるところだ。
また,QuakeWarsOnlineでは,ゲームを終えるたびにゲーム内ポイントであるQPがもらえる。これはアイテムと交換したり,前述したように疲労度の回復に使ったりできるものだ。QPと交換して手に入れたアイテムは「アイテム保管庫」に蓄積され,インベントリ画面に移して自キャラクタに装備,それによって自キャラクタの能力が上がる。
αテストでは稼動していなかったが,手に入れたアイテムの売買,もしくは交換ができ,有料アイテムの実装も予定されているそうだ。
QuakeWarsOnlineのStrogg。頭部が少し人間っぽくなっている |
ETQWのStrogg。こちらのほうがモンスター色が強い |
上記のような違いこそあれ,ミッションをめぐる攻防の緊迫感は,ETQWそのまま。そしてなにより(画面を見れば分かるが)メッセージはすべて日本語,そしてアナウンスやクイックチャット(キーボード操作で定形セリフが言える簡単なチャット)も日本語化されていた。
Stroggが日本語をしゃべるのには違和感を感じなくもないが,日本で普及させるためには,ローカライズは必須。αテストの段階でも,QuakeWarsOnlineのローカライズはかなりよくできていたと思う。
筆者は,12月17日から20日まで実施されたαテストに参加し,ETQWとの違いに若干戸惑いつつも楽しく遊べた。Quakeファンとしては,イメージが崩されていないかなどが心配だったが,それが杞憂だったことにほっとしている。
ただαテストでは,ETQW経験者と初めてのプレイヤーとで,大きな差がついていたのは確かだ。ルールが分からずにウロウロしているプレイヤーも多かったので,初心者向けの説明が十分ではなかった可能性が高い。
αテストではチュートリアルムービーが用意されていたが,開発中というプレイアブルなチュートリアルの実装されれば,多少はこの状況も緩和されるかもしれない。ゲームの基本部分に大きな問題はなかったので,初心者を取り込む仕掛けがうまく機能すれば,実施される予定のβテストや正式サービスは,さらに盛り上がるはずだ。今後に期待できるオンラインFPSの一つといえるだろう。
兵科ごとのチュートリアルが用意されたQuakeWarsOnline。日本語の説明と動画で兵科の役割や働き方が説明される |
αテストでは利用できなかったが,プレイアブルなチュートリアルも組み込まれるようだ。ユーザーがガイドに沿って操作しながら兵科ごとの働き方を覚えることができるようになるらしい |
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