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IntelがCES 2015でアピールしたのは,最新CPUではなくRealSenseとウェアラブル機器向け超小型コンピュータだった
とはいっても,家電製品が主役のCES 2015というイベントにおいて,PCは脇役どころか存在感すらほとんどないのが正直なところ。製品を展示するPCメーカーすらごくわずかという,PCにとってはお寒いイベントだ。そういう事情もあってか,Intelも新CPUを搭載するPCをアピールするのではなく,PCやx86アーキテクチャのSoC(System-on-a-Chip)を中心とした周辺技術とその活用法をアピールする方向へと舵を切っている。
そんな基調講演で,Intelは何をアピールして,何を目指しているのが明らかになったのか。その点を簡単にまとめてみたい。
PC以外にも進出して,用途の広がりがアピールされたRealSense
IntelのRealSenseは,3Dカメラモジュール「RealSense 3D camera」を搭載するPCが登場するなど,実用段階に入りつつある。基調講演の中では,このカメラを内蔵した2-in-1デバイスを使い,手のジェスチャーでPCを操作するといったデモが披露された。
だが,基調講演で興味深かったのは,PCとRealSenseの組み合わせよりもPC以外のシステムにRealSenseを組み合わせた応用事例だ。たとえば,住宅のドアロックシステムにRealSenseを組み込んで顔認識用に利用すると,住人の顔を認識して鍵を開けるといったデモが披露された。
世界的に人気が高まっている飛行型ドローン(小型無人飛行機)に,
ゲーム分野での3Dカメラといえば,MicrosoftのKinectシリーズが真っ先に挙げられる。だが,Xbox 360またはXbox Oneの周辺機器であるうえ,PC用は開発者向けということもあってか,ゲームにこれを応用して新しい面白さを実現しようという流れはあまり見られないのが残念だ。Xbox One版のKinectを使った「Kinect for Windows V2」も発売されているのだが,あまり話題になっていない。しかし,RealSenseによって同種の機能を持ったシステムが広く普及するようになれば,ゲームを含むエンターテイメント用途への広がりも期待できるのではないだろうか。
ボタンサイズの超小型コンピュータ「Curie」でウェアラブル分野に挑むIntel
ちなみに,
Curieは,x86アーキテクチャを採用する組み込み向けSoC「Quark SE」をベースとしている。容量80KBのメインメモリと内蔵ストレージ用に容量384KBのフラッシュメモリ,そしてBluetooth LE対応通信機能や加速度センサ,ジャイロスコープといった機能を,大きいボタン程度のモジュールに組み込んでいる。
IntelがCurieで狙うのは,「IoT」(Internet of Things,インターネットにつながる小型デバイス)の中でもとくにウェアラブルデバイスの分野である。眼鏡型デバイスや衣服に組み込めるサイズを実現することにより,現在は英ARMのアーキテクチャを採用することの多いウェアラブルデバイスにも,x86アーキテクチャを広げていこうというわけだ。
基調講演では,サングラスメーカーとして名高いOakleyとの協業が発表され,Curieを使ったスポーツ用途のウェアラブルデバイスを開発するというプランが明らかにされている。
Curieをこうしたデバイスに組み込めば,センサーが取得した情報をBluetooth LE経由で他のウェアラブル機器に伝えて活用するといった使い方もできそうだ。
ウェアラブル機器に使えるサイズの超小型コンピュータを使ったもう1つ面白い例も披露された。Nixie Labsという企業が開発した“空飛ぶウェアラブルカメラ”がそれだ。身につけているときには大きな腕時計といった見た目だが,腕から外すと小さなローターが4個付いたドローンに変形するので,それを自由に飛ばして写真を撮れるという,スパイ道具のような代物だった。
ボタンサイズのCurieを使えば,これの制御ユニット部分をさらに小型化することも可能かもしれない。
Intelの思惑どおりに,ウェアラブルデバイスやIoT分野全般でCurieが普及するかどうかは分からない。しかし,通信機能とさまざまなセンサーを備えた超小型コンピュータが低コストでたくさん量産される時代になれば,それを使って新しい遊びを考え出す人が出てくるだろう。こうした機器と連携した新しいゲームが登場して,我々を楽しませてくれる日がくることを期待したいものだ。
Intel at CES 2015(英語)
Curieに関する情報ページ(英語)
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(C)Intel Corporation