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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第20回「殺られる前に殺れ! 殺人カーレース『デス・レース』が襲来!(その3)」
ロメロ監督は,2000年公開の「URAMI 〜怨み〜」に続き,久々にゾンビ映画を撮ると周囲にもらしていたそうである。それだけに,バイオハザードの降板劇が相当ショックだったようだ。また,結果的にはスティーブン・ソマーズ監督が撮った「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」を,Universal Picturesからオファーされていたものの,考え方の相違などを理由に降板したこともあり,ビデオゲーム業界とハリウッドの映画産業に大きな失望を抱いていたという。
Universal Picturesはその後,ロメロ監督に「ランド・オブ・ザ・デッド」を撮らせることで義理立てしたのだが,カプコンとの仕事は「バイオハザード2」のCMが最後になってしまった。
2005年にGroove GamesからXbox向けに発売された,FPS視点のゾンビゲーム「Land of the Dead: Road to Fiddler's Green」は,「Day of the Zombie」のタイトルで開発されていたものに,あとから映画版権をかぶせたものだ。
アンダーソン監督は,たとえ低予算の作品でも大金をつぎ込んでいるかのように見せることにかけては,高い経験値を持っていた。そこで相棒のジェレミー・ボルトと徹底的なロケハンを行い,ドイツでゲームの雰囲気に近い洋館を探し出し,セット撮影の約8割をドイツで行ったという。これは,ゼロからセットを組み上げるよりも,ロケーションでの撮影のほうが予算を大幅に削減できるからだ。「イベント・ホライゾン」では宇宙船が舞台であったため,すべてセットを組み上げる必要があり,予算に関しては相当苦しい思いをしたようなのだが,こうした経験が生きたということだろう。
そして地下研究所のシーンでは,構造そのものを広く大きく見せるべく,シーンごとに扉を変えるという工夫をしたり,ゲームと同じように上部からの固定俯瞰視点で撮影したりと,細部へのこだわりと映像マジックを駆使することで,アクション重視の映画を作り上げることに成功した。
また,ゲームに関しては「バイオハザード2」のほうが好きらしく,列車での戦闘シーンを挿入したり,リッカーを登場させたりと,ゲームの「1」と「2」が入り混じったスタイルになっている点や,ロメロ監督の「死霊のえじき」やヴィンチェンゾ・ナタリ監督の「CUBE」へのオマージュなど,アンダーソン監督が好きな映画からエッセンスを抽出したシーンが多々ある点も見逃せない。
なお,この映画は「不思議の国のアリスのゾンビ版」が裏テーマになっている。そこでゲームに登場しないオリジナルキャラのアリス役として起用されたのが,ミラ・ジョヴォヴィッチ(正式な発音はヨヴォヴィッチ)である。アンダーソン監督は,オーディションで最初に現れたミラに一目惚れし,即座に主役を決めたそう。その後,正式に籍を入れる形ではないものの,ミラはアンダーソン監督の子供を出産。事実上の夫婦となっている。
そのうちの一つが,20th Century Fox Filmから飛び込んできた「エイリアンvs.プレデター」だ。アンダーソン監督は悩みに悩んだが,バイオハザードIIではプロデューサーと脚本を担当することにして,エイリアンvs.プレデターの監督を引き受けることに決めた。
なお,バイオハザードIIは,ヤン・デボン監督作品の多くでセカンドユニット・ディレクターを務めていたアレクサンダー・ウィット監督に依頼。ウィット監督にとっては初監督作品だったが,ゲームの「バイオハザード3」の世界観を踏襲したスタイルは,ゲームファンから好評を得た。とくに,ジル・バレンタインの格好や追跡者など,ゲームと映画がシンクロするような作り込みは絶賛されたものだ。ただ,映画ファンからは,演出の甘さやミラの超人的な立ち振る舞いがゾンビ映画を破綻させているなど,辛口の評価もされていた。
なお,バイオハザードIIもロケーションはドイツのベルリンを中心に,カナダなど少ない予算で撮影ができるところが選ばれている。
映画の評価は賛否両論だったが,「エイリアン2」でアンドロイドを演じたランス・ヘンリクセンを起用し,ウェイランド湯谷社の印象を強くさせたりと,マニアックな試みがあちこちに施されており,個人的にはそういうネタを見つけるたびにニヤリとしてしまったものだ。
この後,アンダーソン監督は一切タッチしない形で「エイリアンvs.プレデター2」も製作された。が,筆者は未見なのでここでは触れないでおく。PSPでゲーム化もされており,一応購入してあるが,映画を観ていないので未プレイ。
また,2006年には現在大ヒット中のジョン・ウー監督作品「レッドクリフ Part I」でアクション監督を務めているコリー・ユン監督を起用し,「DOA デッド・オア・アライブ」を完成させる。こちらもイギリスとドイツに加え,アメリカの映画ファンドからもお金を引っ張り,プロデューサーとしてのポテンシャルを見せつけた。
が,個人的には実写版バイオハザードシリーズの中で,一番ダメな内容だったように思う。ラッセル・マルケイ監督の演出は古臭く,ミラは超人的な能力を身につけすぎており(アンブレラ社のウイルスが原因という設定ではあるのだが),緊迫感が薄れてしまっているのだ。
さらに追記しておくと,前作でジル役を演じたシエンナ・ギロリーも続投が決定していたのだが,ミラが嫉妬心からかアンダーソン監督に脚本を書き直させ,クレア・レッドフィールド(「HEROES」のアリ・ラーター)を登場させることになったのだとか。カルロスは続投しているのに,唐突にジルが姿を消した理由がこれでお分かりになるかと……。
しかし,トム・クルーズは降板することになる。その背景には,トム・クルーズが新興宗教に夢中になっていることを懸念したハリウッドの出資者達が(今回はアメリカだけが出資),「彼を主役にするならば出資は難しい」と通告したという噂がある。トム・クルーズはこれ以外にも,アンダーソン監督が執筆した脚本の初稿(世界各国で殺人カーレースが繰り広げられているという内容で,主役のフランケンシュタイン役はトム・クルーズ)に物言いを付けたり,プロデューサーのロジャー・コーマンと対立したりと,水面下では数々のドタバタを繰り広ていたようだ。
最終的にトム・クルーズはプロデューサーと主役の座から降板。結果,彼の映画製作のパートナーであり,1980年代からマネージメントを担当していたエージェント,ポーラ・ワグナーだけがデス・レースの製作へ残留することに。
当初はローレンス・フィッシュバーンやグレン・クローズなど,トム・クルーズの脇を豪華な俳優陣が固めるキャスティングが予定されていたのだが,出資者の財布の紐が堅くなったこともあり,主役を演じることになったジェイソン・ステイサムだけを大きくピックアップするスタンスで,映画は作られることになった。
こうして出来上がったデス・レースについては,ゲームとの接点も多いジェイソン・ステイサムのことも含め,回をあらためて相棒の灸 怜太と共に語っていくことにしよう。
ドブ漬けゲームスープレックス(20)
ニンテンドーDS
「トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説」(スパイク)
もうめっきり寒くなってきたというのに,ホラーゲームをプレイ。「トワイライトシンドローム」はプレイステーションでリリースされていた頃から好きで遊んでいるのだが,今作も都市伝説モノとしては抜群な完成度だった。
本作の監督と脚本は,作家でもある友人の福谷 修氏が担当しているのだが,濃厚で濃密な恐怖とリアルな表現をサウンドによって最大限に演出しているのはお見事。ヘッドフォンでのプレイを推奨したい。
個人的にはタッチペンで“こっくりさん”をやることになる所など,ツボにはまるシーンも多々あって,ニンテンドーDSで発売されているホラー物では傑作の部類に入るように思う。
ただ残念なのが,物語に関して。特盛状態のボリュームは分岐が多過ぎて,時間の使い方に難のある筆者みたいな人間には,全部のエピソードを堪能できる日など訪れないような気がする……って部分ぐらいかな。
「トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説」公式サイト
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(C)20th Century Fox
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(C)Groove Games
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