会場となったHighline Ballroom
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北米時間2014年10月27日,Dellは米ニューヨーク市の多目的施設「Highline Ballroom」で報道関係者向けイベントを開催した。イベントの主役はもちろん,製品概要を別途お伝えしているゲーマー向け13インチノートPC「
ALIENWARE 13と外付けグラフィックスボックス「
ALIENWARE Graphics Amplifier」,そして“巨大なおにぎり”的なフラグシップデスクトップPC「
ALIENWARE Area-51」だ。
その製品概要は別途お伝えしているとおりだが(
関連記事1,
関連記事2),4Gamerではイベントに参加する機会が得られたので,現地で担当者に聞いてきた内容をまとめてお届けしてみたい。
イベント開場前の様子(左)。一般客が詰めかけて列をなしていた。いずれもALIENWARE公式情報ページなどの招待客だそうだ。右はイベントのオープニング。謎のレーザー光線ショーで,正直,スベり気味
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発表会の模様(左)。右はまもなくアルファテストの始まる「Evolve」のデモだ。来場者は,ALIENWARE Area-51の試遊台で,モンスター1,ハンター4に分かれてプレイできた
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PCIe 2.0 x4でALIENWARE 13と接続されるGraphics Ampifier。外部出力だけでなく“描き戻し”にも対応
Eddy Goyanes氏(ALIENWARE Global Product Manager, Dell)
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マイアミに拠点を構えるDellの子会社,Alienware Computerでプロダクトマネージャーを務める
Eddy Goyanes(エディー・ゴヤネス)氏が説明してくれたところによると,ALIENWARE Graphics AmplifierはPCI Express 2.0 x4とUSB 3.0を転送できる専用ケーブル「Graphics Ampifier Cable」で,
ALIENWARE 13のサウスブリッジ(=ICH)と接続される。
ALIENWARE Graphics Amplifier。残念ながら内部構造は見せてもらえなかった
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ノートPC側の専用インタフェース(左)と,専用ケーブルを差したところ(右)。専用ケーブルのインタフェース部には白色LEDが埋め込まれ,通電時に光る
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ALIENWARE Graphics Amplifier側のインタフェース(左)。USB 3.0は4ポート用意される。ALIENWARE Graphics Amplifier側の先でも専用ケーブルはインタフェース側に白色LEDが埋め込まれていた(右)
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接続後はALIENWARE 13の再起動が必要で,再起動すると,ALIENWARE 13側のGPU「Intel HD Graphics」「GeForce GTX 860M」がいずれも無効化され,ALIENWARE Graphics Amplifier側のグラフィックスカードが有効になる。この状態で外部ディスプレイと出力すればそのまま利用でき,あるいは“描き戻し”を行えば,ALIENWARE Graphics Amplifierで描画した画像をサウスブリッジ経由でALIENWARE 13側の液晶パネルに表示できるという仕掛けだ。
閉じた状態のALIENWARE 13から専用ケーブル→ALIENWARE Graphics Amplifier→外部ディスプレイという流れで「Alone in the Dark」を出力している例
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一方こちらは“描き戻し”の例。ALIENWAREから専用ケーブルでALIENWARE Graphics Amplifierと流れ,搭載されたグラフィックスカードで描画処理を行ってから,再び専用ケーブル経由でALIENWARE 13に戻すという形で,「Middle-earth: Shadow of Mordor」の画面をALIENWARE 13上に表示させている
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PCI Express 2.0 x4接続ということで気になるその性能だが,Goyanes氏いわく,「ロスはクリティカルではない。『
Radeon R9 290X』を搭載したデスクトップPCでもALIENWARE Graphics Amplifierでも『TOMB RAIDER』のベンチマークスコアは100fpsを超える」とのこと。具体的に何%落ちるのかの答えは,はぐらかされてしまったが,ハイエンドGPUを使う限り,大して気にする必要はないというのが,Dellのスタンスのようだ。
薄いだけのノートPCになることを
避ける設計がなされたALIENWARE 13
ALIENWARE Graphics Amplifierの“母艦”となるALIENWARE 13は,「
ALIENWARE 14」より薄く軽い一方で,その厚みは27.9(H)mmと,他社の薄型モデルと比べると明らかに厚い。
ALIENWARE 13。基本デザインが同じこともあり,ぱっと見の印象はALIENWARE 14と変わらない。また,徹底的な薄型化もされていたりはしないので,言われなければALIENWARE 13だと気づかない人もいそうだ
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発表会では,ALIENWARE 13が,ALIENWARE 14比で小型化軽量化を実現しながら,性能は最大17%向上したとされている。なお,公称のバッテリー駆動時間は8時間とのこと
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なぜ,とことんの薄型化を行わなかったのか。この点についてGoyanes氏は,他社製品だと,薄さの代償として,高負荷時に発熱対策で動作クロックが下がることがあるのに対し銅製の冷却機構を採用することで,最大性能を発揮できるようにした結果だと述べていた。いわく,「他社がどんどん薄くしていったのはもちろん知っているが,ユーザーが求めているのは性能」「ALIENWARE 13と同じスペックの他社製ゲーマー向け薄型ノートPCを並べて性能を比較した場合,その性能はALIENWARE 13のほうが高い」とのことだ。
あわせて,筐体のフレームを構成する部品には炭素繊維(カーボンファイバー)を混ぜてあり,他社のゲーマー向けノートPCと比べても堅牢性は大幅に向上しているという。
本体底面から。炭素繊維を含むフレームが本体を覆う構造であることがよく分かる。また,吸気スロットを見る限り,銅製の冷却機構はCPU用とGPU用とでそれぞれ用意されているようだ
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ALIENWARE 13では,ALIENWARE 14とほぼ同じキーボードを採用するのも特徴という。「一部のキートップは面積の都合から小さくなっているが,内部構造自体は同じ。下にプレートを敷き,どのキーを押しても同じ反応が返ってくるよう配慮してあると,Goyanes氏は語っていた。
スペック周りでは,ニュースリリースの時点だとはっきりしなかったポイントであるストレージ周りの詳細が明らかになっている。
ALIENWARE 13のストレージスロットは1つ。そこに,M.2接続でTLC NAND型フラッシュを採用するSSDを1枚もしくは2枚,あるいは2.5インチHDD 1台のいずれかを搭載できるとのことだ。
筐体の秘密が次々と明らかになった
新世代フラグシップ,Area-51
新型ALIENWARE Area-51。開発が始まったのは約3年前。欧米およびアジアにおけるゲーマーの設置事情調査結果を基に,この形状へ行き着いたとのこと
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ずいぶん前に終息済みの先代モデルとは似ても似つかない,まったく新しい筐体を採用した新型ALIENWARE Area-51。「ユーザーはゲームPCを机の下で壁の近くに置く」というデータを導き,そんな吸排気に不利な状況下であっても最大限の吸排気効果を得るべく,筐体の前面と背面を斜めにカットした「Triad」(トライアド)デザインを採用したというのは
別記事でお伝え済みだが,この“巨大なおにぎり”にはもう1つのメリットがあるとGoyanes氏は言う。
それは,椅子に座った状態でも筐体前面の電源ボタン(=ALIENHEAD)やスロットイン型の光学ドライブ,ヘッドセット接続用の3.5mmミニピン端子,USB×2,カードリーダーへアクセスしやすく,また,机の下に潜り込んで背面側のインタフェースにケーブルを差すときにも端子の場所を確認しやすいこと。従来のArea-51から引き続き,本体背面のインタフェース群近くや,筐体内には,PCの電源がオフの状態でも別途バッテリー駆動するLEDが埋め込まれているので,それらを駆使すれば,机の下の奥まったところに置いたとしても,使ったりメンテナンスしたりしやすいというわけである。
本体背面側はI/Oインタフェース近くの四角いボタン(※写真で上側LEDの左上)を押すことで,筐体内部は側板の開閉と連動してそれぞれ白色LEDが光る
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Triadデザインの突端部3点は特別頑丈に作られており,割れたりする心配は無用とGoyanes氏
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また,筐体が非常に丈夫で,どこを持っても持ち上げられることも,新ALIENWARE Area-51のメリットとしてGoyanes氏は挙げていた。「見栄えにこだわった他社のPCだと,『こだわった部分』が脆く,そこを持つと筐体が壊れたりすることがあるが,ALIENWARE Area 51はどこを持っても大丈夫」と同氏。本体天頂部は取っ手状にっており,やろうと思えばここだけで引っ張り上げることも可能だそうだ。
その天頂部,背面側には側板を外すための機構が用意されており,ワンタッチで左右の側板を取り外せる。筐体部のLEDを光らせるためのインタフェースは接点になっているので,ユーザーは煩わしいケーブルマネジメントを意識することなく,さくっと側板を取り外して内部構造にアクセスできる。
本体背面側に2つ用意された突起を上に引く(もしくは持ち上げる)と,側板の上側が軽く外れる。あとは右の写真で下に見えるガイド部に気を付けながら引くだけで側板は外れる仕様だ。右の写真で右下に見える接点はLED制御用。左右で鏡映しのデザインになっているため,左右の側板はどちらに取り付けてもLEDは機能する
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ケーブルマネジメントといえば,本体前面向かって右側,マザーボードの背面側にストレージデバイス搭載用のトレイを用意したことで,グラフィックスカード周辺のケーブルを補助電源供給用のものだけに絞れるようになり,結果,エアフローが向上し,ユーザーが自己責任でグラフィックスカードを交換したり追加したりした場合も難なく給電用ケーブルを取り付けられるという。
ストレージ周りのケーブルを本体右側面にまとめることで(上),左から内部を覗いたときに目立つケーブルはグラフィックスカードの補助電源用くらいにまですっきりさせている(下)。なお,本体右側面のストレージトレイ側に,ファンの風が直接当たることはない。空気の抜ける穴を利用したパッシブクーリング。電源ユニットは標準の定格850WとBTOオプションの1500Wの2つがあり,後者のみフルモジュラーになっているという
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ちなみに,グラフィックスカードは,2スロット仕様のものを,1スロット分の空きを確保しつつ最大3枚搭載できる。液冷は考えなかったのかと聞いてみたところ,Goyanes氏は,検討したことを認めたうえで,「ユーザーが後から好きなカードを追加できることのほうを優先した」と述べていた。
複数枚のグラフィックスカードを差すと,1枚めと2枚め,2枚めと3枚めの間はそれぞれ1スロット分の空きが生まれる。そこに,本体前方側,斜め下部分に設置されたファンを使って外気を送る仕様だ。カードとファンの間にあるのは,カードのたわみを防止するための固定具で,デモ機では手回しネジと金具によって固定されていた
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上で出てきたGPU用吸気ファンの上部には,もう1つ吸気ファンを取り付けられる。より冷却が必要な場合はここにファンを足せるわけだ。右はカードとカードの間から奥を覗いたところで,無線LAN用のアンテナケーブルが出ていた
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さて,別記事でお伝えしたように,ALIENWARE Area-51は「Intel X99」プラットフォームを採用し,DDR4メモリを組み合わせたシステムだ。4Gamerのレビューでも明らかになっているとおり,純然たるゲーム性能だとIntel X99は「Intel Z97」の後塵を拝するわけだが,Intel Z97版ALIENWARE Area-51の可能性はないのだろうか。
「今のところはない。ゲーム用途でメモリ性能は確かに若干遅いが,我々はGPU,CPU,メモリの順で優先順位を付けているので,GPUをより多く搭載でき,よりCPUコア数の多いプラットフォームとしてIntel X99を選択したのだ」(Goyanes氏)。
簡易液冷ユニットが取り付けられたCPU周辺(左)と本体背面側(右)
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もう1つ気になったのが,今後のデスクトップPCラインナップだ。Dell/デルは「
ALIENWARE Aurora」を終息させたため,現在のところは“Xbox風の小型ゲームPC”たる「
ALIENWARE X51」と“PCベースの据え置き型ゲーム機”たる「
ALIENWARE Alpha」のみで,そこにいきなりフラグシップが加わるのはバランスを欠くのでないか。
この点に対するGoyanes氏の回答も明快だった。「ALIENWARE X51は消費電力150Wまでの市場を担当し,ALIENWARE Area-51がそれ以上を担当する。間にギャップはない」とのことである。
実にALIENWAREらしい新製品
どちらもPCゲーマーは要注目だ
このところ,ゲーマー向けノートPCは各社でスペックが似通ってきて,組み合わせ勝負か,Goyanes氏が指摘する薄さ勝負になっているところがあった。そんななか,各社が開発していた「ノートPC用の外付けグラフィックスボックス」を,ALIENWAREがいち早く,少なくとも業務用製品と比較すれば破格とも言える安価な値段で製品化したのは,快挙とさえ言っていいように思う。
もちろん,「そこまでするならデスクトップPCを買えば?」と切って捨てるのは簡単だ。ただ,ハイエンドクラスのグラフィックスカードとディスプレイを置くに置けない事情のある人や,持ち運びを考えるとゲームPCもノートにしておきたいと考える人はいるはずで,
別記事でもそう紹介したように,やはり今回のALIENWARE 13とALIENWARE Graphics Amplifierは,夢をカタチにした製品なのである。
一方のALIENWARE Area-51も,“スペックだけ勝負”となり気味のゲームPC市場に一石を投じるものとなりそうだ。しかも,ただ奇をてらっただけではなく,とことんまで使い勝手を追求した結果として生まれた大きなおにぎりは,久しぶりに登場した,見どころの豊富なデスクトップPCと述べていいのではなかろうか。
いずれも万人向けかというと大きな疑問符が付くものの,刺さる人には間違いなく刺さるだろう。
※14:10頃,記事を詳報に差し替えました。