連載
【西川善司】裸眼立体視対応で7800円。格安のUSBディスプレイを試してみる(前編)
西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト
(善)後不覚 |
そんな狂信的な多画面マニアなボクですが,最近,ちょっと変わったものを入手しました。
それが,アイ・オー・データ機器の直販サイト「アイオープラザ」で販売されている,裸眼立体視対応の7インチディスプレイ「RockVision 3D」(型番:CL2-002L3)です。ボクが買ったときは,通常価格比50%引きの処分価格(?),7800円(税込)になっていました。
ダッシュボード組み込み型のカーナビの画面とちょうど同じサイズのRockVision 3D。液晶パネルのバックライトは白色LEDで,解像度は800×480ドットです。解像度は1280×720ドットとか1366×768ドットくらいはあってほしかった気もしますが,価格を考えると致し方ないですかね。
画素はRGBサブピクセル構成で,スマートフォンやタブレットにおいてよく採用されているペンタイル配列ではないため,文字表示もくっきりしています。
裸眼立体視の実現方式はアクティブ視差バリアになります。
視差バリア方式というのは,両目の視線に対し,片方の眼からの視線を覆い隠すよう配置したマスク(=視差バリア)を用いて立体視を実現するものです。
視差バリアは,デジタル時計の数字表示用に用いられる,セグメント方式を採用した白黒液晶のようなものになっていて,映像表示用液晶パネルの上にレイヤーとして配置されています。なので,オンにすると白黒液晶が黒表示となり,視差バリアの役割を果たすようになり,結果,立体視が可能になるのです。ちょっと分かりにくいかもしれませんが,Nintendo 3DS(以下,3DS)の立体視と同じ方式を採用していると言えばイメージしやすいのではないでしょうか。
RockVision 3Dの背面にHDMIなどのディスプレイ入力端子はなく,あるのはUSB 2.0準拠のUSB Mini-のみ。つまり,RockVision 3DはいわゆるUSB接続型ディスプレイということになります。
電源はUSBから供給されるので,ACアダプタなどは不要です。
RockVision 3Dはディスプレイ部とスタンド部に分かれている |
スタンド部。「く」の字に折り曲がる構造となっている |
ディスプレイ部とスタンド部を組み付けた状態 |
PCとの接続インタフェースはUSB Mini-B |
ドライバの導入と付属ソフトのインストール
導入時には,少々取っつきにくい部分があったので,軽く紹介しておきたいと思います。
RockVision 3DにはCD-ROMが付属していて,ここにドライバソフトと,ArcSoft製メディアプレイヤー「TotalMedia Theatre 5 SE」(以下,TMT5SE)が収録されています。
ただ,USBディスプレイとしての機能はDisplayLinkの技術によって実現されているため,ドライバソフトは,DisplayLinkのサポートページからダウンロードしたほうが無難です。実際,CD-ROMに収録されていたバージョンを導入したところ,愛機たるVAIO Fに接続してもうまく動作しなかったのですが,DisplayLinkから入手したほうのドライバでは,問題なく動作しました。
ちなみにTMT5SE,DVD-VideoやAVCHDベースの立体視映像再生には対応している一方で,3D Blu-rayには対応していません。3D Blu-rayを楽しみたい場合には,別途対応のプレイヤーソフトを入手する必要があります。
何に使うか,どう使うか。
セットアップしたところで,何に使うか悩んでしまうわけですが,
- 画面サイズが小さい
- 解像度もそれほど高くない
- しかもUSB接続
なので,PC用のメインディスプレイとして使うのが難しいのは火を見るよりも明らかです。当然,補助的なディスプレイ装置としての活用が主体となります。
現実問題として,3D立体視対応のテレビやディスプレイを持っている人でも,ゲームをプレイするときや映画鑑賞をするときにしか立体視モードは使いません。もっと言えば,普段のPC作業中にふと立体視コンテンツに遭遇したとしても,「現在のデスクトップに配置された作業途中のウインドウ群」を閉じてまで立体視で見たいとは思わないことがほとんどです。一般的な3D立体視対応テレビやディスプレイはメガネを掛けるタイプが主流なので,なおさらその「億劫さ」が増します。
その意味でRockVision 3Dは,もともと補助ディスプレイ的な存在ですし,裸眼立体視対応なので,割り切って使えそうです。3D立体視対応コンテンツに遭遇したら,その再生ウインドウだけをRockVision 3Dへ移動させればいいんですから。
ゲームの3D立体視ショットをRockVision 3Dで見る!
最も基本的な活用は「3D写真の閲覧」ということになりますかね。3D立体視対応カメラは持っておらずとも,3DSなら持っているという人は多いでしょうし。
あえて説明するまでもないでしょうが,3DSは,3D立体視対応写真とビデオの撮影ができます。[HOME]メニューから[R]ないし[L]ショルダーボタンを押すだけで起動する「3DSカメラモード」がそれです。
撮影した3D立体視対応写真やビデオは,3DSに挿入したSDカードの「DCIM」-「100NIN03」フォルダに記録されます。写真は「MPO」形式,ビデオは「AVI」形式のファイルでそれぞれ保存されるので,SDカードを抜いてPC側のカードリーダーに差し込んでやれば,PCへコピー可能です。
なので今回は,TMT5SEよりも汎用性の高い,3D立体視対応写真の閲覧&編集用フリーソフトウェア「ステレオスライドショー」を用いることにした次第です。
RockVision 3Dでステレオスライドショーの3D立体視表示を利用するために行う作業は,MPOファイルを読み出した後,「ステレオ形式」メニューの「縦インターレース」を選択することだけです。いくつか作例を用意して,zipファイルにまとめ,アップロードしてみたので,必要な場合は使ってみてください。
3DSで撮影したMPOファイル4枚をダウンロード
ゲームの3D立体視ビデオをRockVision 3Dで見る!
3DSで撮影した3DビデオはRockVision 3Dに付属のTMT5SEから再生できるのですが,残念ながらアスペクト比がおかしくなります。「アスペクト比を維持する」にしても,他のアスペクトモードを指定しても,微妙に縦が長く表示されてしまいます。
また,3D立体視対応ビデオの定番プレイヤーソフトとして知られる「Stereoscopic Player」も試してみましたが,こちらでも正しいアスペクト比を保持したまま再生できるとこを確認しています。
ただ,実際にRockVision 3Dを用いての3D立体視対応ビデオを再生したとき,最もお手軽でかつ便利だったのは,YouTube(YouTube 3D)です。YouTubeなら,いま挙げたようなメディアプレイヤーが不要で,いままさに使っているWebブラウザ上で再生されるビデオを3D立体視できるからです。
YouTubeは,いまや3D立体視対応ビデオの投稿にも対応しており,3D立体視対応ビデオの撮影が可能なホームビデオカメラが安価になってきていることも手伝って,3D立体視対応ビデオの投稿数は増加傾向にあったりします。
逆に言えば,一度この設定をしてしまえば,以降,YouTube上にあるすべての3D立体視対応ビデオはRockVison 3D上で問題なく視聴できるようになります。RockVision 3Dは,画面解像度がそれほど高くないので,3D動画の再生はYouTubeの再生フレーム上の「全画面」ボタンを押して全画面再生にしたほうがよいでしょう。でないと「映像の一部しか画面に表示されない」という事態が起こったりします。
個人的には,今後,ゲームスタジオには,スクリーンショットだけでなく,ゲームプレイ映像の3D立体視対応版も公開してほしいと思っています。ゲームの3D立体視は,映画と違って,プレイヤーが仮想空間のなかで動けるので,立体視したときの感動が大きいし,「単なる作業」になりがちな「移動」という基本アクションにおいても,実際に距離感というか,空間の広がりみたいなのが実感できて一段階さらにゲームが楽しくなるんですよね。
7800円ならアリかも
ところで気になる画質ですが,価格が安いのであまり期待はしていなかったところ,7800円(税込)という金額と照らし合わせれば十分納得できるレベルでした。
パネル解像度が800×480ドットで,縦の視差バリアによる3D立体視ですから,得られる3D立体視映像は400×480ドット程度になります。3DSの3D立体視表示機構が2Dで800×240ドット,3Dで400×240ドットですから,画面サイズ分,3DSよりも縦解像度が多いというような実感ですかね。
ただ,カジュアルに3D立体視対応写真やスクリーンショット,YouTubeの3D立体視対応ビデオを楽しむ目的なら,不満はないと思います。
それと,本体背面の[3D]ボタンを押して2Dモードとして活用している間はWindows 7のガジェット表示用サブディスプレイとしても使えるので,それも意外に便利だったりします。
なので,こんなことを言ってしまうと身も蓋もないかも知れませんが,3D立体視対応ディスプレイとしての活躍の機会が少なめでも,結構便利に使えてしまっています(笑)。
ノートPCとHDMI接続した外部液晶ディスプレイに加えて,もう一画面,サブ画面を増設する向きにも使える? |
普段はガジェットなどを表示させるサブディスプレイとして使えば元は取れる……かも |
今回はここまでとして,後編となる次回は,このRockVision 3DでPCゲームを無理矢理立体視プレイすることに挑戦しようと思います。
■■西川善司■■ テクニカルジャーナリスト。4Gamerの連載「3Dゲームエクスタシー」をはじめ,オンライン/オフラインのさまざまなメディアに寄稿したり,バカゲーを好んでプレイしたり,大画面にときめいたり,観切れないほどBlu-rayビデオを買ったり,オヤジギャグを炸裂させたりして毎日を過ごしている。 |
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