連載
【ヒャダイン】アラフォー男性が乙女ゲーにトライした件
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第53回「アラフォー男性が乙女ゲーにトライした件」
ども。4Gamerでの連載を,もう何年続けさせてもらっているのでしょうか。レトロゲームから最新ゲームまで,いろいろと書いてきました。まだまだ続けさせていただきますので,読者の皆様もどうかお付き合いを。
が。しかし! この2か月,新作ゲームをまったくやっていない! ずっと同じゲームばっかりやりこんでる! 「ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア」のレーティングバトルと,「LINE:ディズニー ツムツム」(iOS / Android),「ドラゴンクエストヒーローズII 双子の王と予言の終わり」(PlayStation 4 / PlayStation 3 / PlayStation Vita)のオンライン,そのローテーションですよ。もう書けるネタがないじゃねえか!
……ってことで,とりあえずすぐに始められそうなスマートフォン用ゲームで,ランキングの高いやつを闇雲にダウンロードしてプレイしよう! 時流をつかめるぞ!
そして出会ったのが「囚われのパルマ」(iOS / Android)。なになに? プロローグとエピソード1を収録したアプリ本体が360円(税込)で,エピソード2以降も各話360円(税込)とな? このご時世のこの価格設定でランキング上位に食い込むとは,さぞかし……ってこれ,乙女ゲーじゃねえか!! やっちまったな! でも生まれて初めて乙女ゲーをやってみるってのも悪くないかなと思いました。やったことがないものをあーだこーだ言うのはダサいなと,常日頃から思っているしね。
まず,囚われの身であるイケメン君と面会。セリフは,声優さんのフルボイス! てか膨大なセリフ量! すげえ。これ録音するの,何日かかったんだよ。イケボだなあ。普通ならテロップ処理で終わらせるようなセリフまできっちりしゃべってるよ。声優さんにのど飴を差し入れたい。
そうこうしながら,心を閉ざした青年と選択肢を選んだり画面に直接タッチしたりしつつコミュニケーションをしていくわけです。ここでふと冷静になる。「なんでワシはプライベートの時間で,寡黙なお兄ちゃんの話し相手をしてやらにゃいかんのだ」と。しかしこれはゲーム! 楽しまねば! ということでヒャダイン封印,ヒャダル子がんばれ。
その後のストーリーは,外出していろんな人と会話をしたりして,「話題」をゲットし,部屋に帰ったらメッセージアプリでその話題をイケメン君に投げかけたりすることで,コミュニケーションをして進めていくことになるんです。
何気ない話を投げかけるとしばらく未読なんだけど,ちょっとしたら返事が来ます。基本,スマホを縦持ちしてプレイするゲームなので,メッセージアプリも実際に友人や知人からの返事を待っているような感覚もあって,返事が来るのが待ち遠しくなっちゃったり。擬似コミュニケーションゲームとしてよくできてるよね。さすが2016年だよね。
そこでまたヒャダインおじさんが顔を出す。「なんで,見ず知らずの兄ちゃんに,自分のプライベートであったことをいちいち報告せにゃならんのだ」。そう。俺,自分のプライベートをLINEとかブログとかで書くのが邪魔くさいんですよ。なんで私的な時間を切り売りせにゃならんのだ,て感じで。
さらにですよ。島の雑貨店で買った小物や食堂で作ってもらったパンといった「アイテム」を,青年がいる部屋に「差し入れ」することもできるんです。これってまさしく男性アイドルにプレゼントを送る女性ファンの構造! しかも送るものが青年の暮らしにおいてあったら便利なものだったり,少し生活が華やぐものだったり。うん。ここらへんも,女性ファンが対象男性アイドルを家族のように母性たっぷりに愛する心理をうまく描いている! すごいぞこのゲーム。
さらに嬉しいのが,青年の部屋には監視カメラが付いていて,差し入れが送られる瞬間にはオタスケマンみたいなキャラクターが「差し入れが届いたみたいだよ! 見てみよう!」とのぞき見をうながしてくれるんです。要するに,自分が贈ったプレゼントを受け取るイケメン君のリアクションを見ちゃえ! ってことだな。喜んだり驚いたりする姿を見せてくれるわけだ。
普通のアイドルではそれはかなわないもんね。贈り物は一方通行。使ってくれているかどうかなんて分からない。ヘタすれば事務所で処分されて本人まで届いているかすらも分からない。それでもいい。贈ることが喜び。そんな女性ファンの献身的な母性の片隅にある,「本当に届いているのかだけでも確かめたい」という願いを叶えるこの機能! パーフェクトだぜパルマ。
そしてイケメン君は当然,差し入れを受け取ったあとにお礼のメッセージをくれるわけです。全然一方通行じゃない! 御恩と奉公が成立してるぜ! パルマ,まじ封建制度!
しかしここでもまたヒャダインおじさんが顔を出す。「なんで差し入れしなきゃいけねえんだよ,てか,野郎の部屋の様子なんぞ興味ない」。ベッドでゴロゴロしたりデスクで本を読む青年の様子をのぞき見ても無感情ですよ,おじさんは。そりゃ,作り手もヒャダインおじさんに響くように作ってるわけじゃないから,このすれ違いが起きるのは当然ですよね。
あと,「夢アプリ」という,夢の中で青年と戯れられるサービス機能まで搭載。これは横になって眠っている青年を突っついて,青年が気持ちいい場所をつっつくとポイントアップ,ダメなところをつっつくとポイントダウン,ポイントが溜まるとサービスタイム! 思い切り突っつきまくれる! そして青年が声を上げる! 吐息を漏らす! これは女子にはたまらんわ。寝ているイケメン君を突っつくなんて,なかなかできる経験じゃないよ。この機能を考えついた作り手,天才だな。
しかしですよ! ここでまたヒャダインおじさんが顔を出すのです。「なんで寝ている兄ちゃんの体を突っつかなきゃいけねえんだよ。なんで吐息を漏らされなきゃいけねえんだよ」ってね。ほんと,なんで寝ている男性の体を突かなきゃいけないんですか。しかも気持ちいい部位を探さなきゃいけないだなんて,わしゃマッサージ師か。俺も体中が凝ってるから同じことをオリーブスパでやってもらいたいわ。本当に心底やってもらいたい!
さらにさらに! 有料の追加コンテンツとして,彼とお電話できちゃうってのがあるんですよ。前述の囚われたうんぬんのストーリーからは独立した,単発の「テレフォンイベント」として。
その内容も,誕生日に彼の声が聞きたいとか,仕事で失敗して叱られてしまったとか,まじで女子の需要を分かっている内容。女子の気持ちを十分に理解したサービス!
カプコンすげえ。みんな寂しかったり辛かったりしても唇かみしめて,強くなれ強くなれと,自分自身に暗示をかけながら生きているんだな。だけどそこをやわらかくほぐしてくれる,甘えさせてくれる存在っていうのが多くの女子は好きらしい。そんな噂を聞いたことがあるよ! だけどね,俺,それは邪魔くさいからやらないんだよ! ところがこのゲームの青年は全部を受け止めてくれるわけだ。なんという懐の広さ。この電話で寂しさを解消できる女子って多いんじゃないかしらん。
しかしまたここでヒャダインおじさんが顔を出す。「テレフォンイベント? なんで大して知らない相手に自分の悩みを相談しなきゃいけねえんだよ! 大体お前に何が分かるってんだよ!」。あー。こりゃ最悪ですね。男と女の決定的な違いが出ちゃいましたよ。男はあんまり悩みを相談したりしないんだなー。とくに,ただ聞いてほしいだけ,とか,包み込んでほしいだけ,とかは思わないんだな。
だからこのテレフォンイベントも「共感はいいから建設的な解決策をぱぱっと提示しろよ!」とか思っちゃう。あーあ。いくらヒャダル子になりきろうとしても,やっぱりヒャダインおじさんが出てきちゃう。イケメン君,ごめんよ。
というわけで,結論。乙女ゲーは乙女のためのゲームだ!
あ,念のため,囚われのパルマは細かいところまできっちり作り上げられた,本当に良いゲームですよ! 女性ならきっと素直に楽しめるのではないでしょうか!
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ 相変わらずサウナにどっぷりはまっているというヒャダイン氏。最近は快適なサウナを求めて地方にまで足を延ばしているそう。とくに名古屋のウェルビー栄店がお気に入りのようで,近所に移住したいほどだとか。 |
(C)CAPCOM CO., LTD. 2016 ALL RIGHTS RESERVED.
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