レビュー
「RTS向け」とされる小型軽量マウスの実力診断
ZOWIE GEAR MiCO
「Star Craft II: Wings of Liberty」(以下,SC2)の韓国プロチーム「StarTale」との共同開発により誕生したというMiCOは,左右メインボタンとセンタークリック機能付きスクロールホイールしか持たず,設定用のユーティリティソフトなども付属していないという,徹底した“省機能”が特徴だが,実際のところ,本製品は,小型マウスを好む人達の期待に応えられるのか。今回はそのあたりに注目して見ていきたい。
ZOWIEいわく「『RTS専用』ではない」
小型・軽量な本体はつかみ持ち向き
2009年に,初代「StarCraft」用マウスが欲しいというリクエストがあり,それに向けて開発を始めたら,できあがるまでに2年掛かったと笑うTang氏いわく,「MiCOが搭載する光学センサーは,FPS用途を考えると完璧ではない,という人がいる。確かに完璧ではないが,しかしマウスの性能というのは,センサーだけでなく,コントローラとファームウェアによっても規定されるのであり,センサーがすべてではない。総合的に『ゲームをプレイするうえでよいマウス』であるなら,センサーのスペックは問題ではないのだ」とのこと。
RTS用ではあるものの,FPSにおいても,十分な性能を持っていると,氏は強くアピールしていたことを,まず紹介しておきたいと思う。
よくいえば,クセがなく誰でもぱっと握れるデザインだが,エルゴノミクスデザインを採用したマウスのようなフィット感はなく,量販店で大量に展示されている低価格のマウスと区別しづらいとさえ言えるかもしれない。
もちろんそのシンプルな形状から,「つまみ持ち」や「かぶせ持ち」にも対応は可能だ。かぶせ持ちの場合,背が低いため,大型のマウスと同じように握ろうとすると違和感があるほか,フィット感も諦めざるを得ない部分はあるものの,操作性そのものはつまみ持ちでもかぶせ持ちでも悪くなかった。
重量はケーブル込みで実測約100g,ケーブルを重量計からどかせた参考値で同64〜67gと,相当に軽く,ソールも非常に滑りやすい。
本体底面の四隅に真円型のソールが貼られている。ZOWIE GEARはその素材を明らかにしていないが,見て,動かしてみた印象からすると,いわゆるテフロン加工のものと見てよさそうだ |
ケーブルはビニール皮膜加工された直径3mm程度のもので,端的に述べて「一般的なマウスでよくあるもの」といった印象。ただ,そこそこ柔らかく,取り回しには苦労しなくて済む |
固めのメインボタンは気がかりだが
RTSが主用途なら問題なしか?
FPSゲーマーの視点からすると,とっさにクリックしようとしたときの反応が遅れてしまうのではないか,という危惧を覚えざるを得ないが,RTSではボタンをひっきりなしにクリックし続けることになるので,むしろこれくらい固いほうが,意識して確実にクリックできるということなのかもしれない。
とはいえ,初期のEC1&EC2にあったホイールの問題「いったん上方向へスクロールさせてから,あらためて下方向へ1刻み分だけ動かしたとき,この下方向への入力が無視される」はなくなっており,スクロールやセンタークリック時の誤動作もまず見られないので,その点では安心して使えると述べていいだろう。
ホイール部にはLEDが内蔵されており,400DPIは赤,800DPIは紫,1600DPIは青で光り,設定値を見分けられるようになっている。
一部マウスパッドでは反応しないものの
センサーの追従性は,RTS用としてなら十分
もちろん,Tang氏が言うとおり,実用レベルで問題がなければ,高いスペックは必ずしも不要。また,一般論としても,安価なレーザーセンサーを搭載したマウスより,高品質の光学センサーを搭載したマウスのほうが,実際の追従性は高いということもままある。
では,MiCOの場合はどうだろうか。表1の環境で,追従性をチェックしてみることにしよう。
テスト方法は下記のとおり。MiCOのポーリングレートは500Hz固定だった。
●MiCOの設定
- トラッキング解像度:1600DPI
- ポーリングレート:500Hz(デフォルト)
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定:「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速操作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速操作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速操作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.62」。本テストにおいて,ゲーム内の「Sensitivity」設定は,マウスに厳しい条件となるよう,「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」0.55に設定し,読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
そして,マウスパッドとの相性を確認した結果が表2となる。
その意味において,Tang氏の「普段RTSをヘビーをプレイする人が,FPSをプレイするときにも使う分には,まったく問題ない」という発言は,当を得ているといえそうだ。
もちろん,MiCOが本来のターゲットとしているRTSでは,FPSと比べると,マウスを一方向に大きく動かすようなケースが少ない。ただ,複数のユニットをドラッグして選択するという操作はあるわけで,そこはゲームジャンルを問わない問題とまとめることもできそうだ。
総じて無難な完成度で,RTS用としては十分にオススメ
FPS用途がメインならほかの製品も検討の余地あり
ボタンの固さやセンサーの追従性,操作の仕方によって起こりうる本体のガタつきなどは,RTSよりもFPSをプレイするときに気になりやすいが,マウスパッドを選べばFPSでも十分使っていける。ボタンや機能面の少なさよりも,サイズと形状をより魅力的に感じたのであれば,どちらのジャンルでも大丈夫だと思う。
ただ,FPSプレイヤーに向けては,「『Razer Abyssus』など,ほかの選択肢もあることを覚えておくべき」とも述べておきたい。MiCOが唯一無二の選択肢ではないので,小型のマウスを探している人は,MiCOも選択肢に入れつつ,形状や機能面も十分に比較検討すべきだろう。
ZOWIE GEARのMiCO製品情報ページ(英語)
マスタードシードのMiCO製品情報ページ
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- 関連タイトル:
ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)
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