連載
海外ゲーム四天王 / 第35回:「Forklift Truck Simulator 2009」
今週の「海外ゲーム四天王」のテーマは,ドイツのデベロッパが開発したフォークリフトのシミュレータ,その名も「Forklift Truck Simulator 2009」だ。フォークリフトにミニスカ美女を乗せて高く掲げるとかそういう内容ではなく,トラックや貨物列車で運ばれてきた荷物を倉庫にしまったり,棚の荷物をトラックの荷台に積んだりする,まったくの直球一直線のシミュレータ。
「ものすごくフォークリフトの操作がうまい」ことを自慢できる相手はかなり限られそうだが,フォークリフトのすべてを知りたいという人にとって格好の作品となるこの一本を,フォークダンスやフォークソングなら自信はあるが,フォークリフトはどうかなあという4Gamer編集部の松本がチャレンジする。よーそろー!
全国1000万人のフォークリフトファンの皆様,お待たせしました。今週の「海外ゲーム四天王」は,働く車を描いた異色作「Forklift Truck Simulator 2009」を皆様へお届け。
このゲーム,もともとはライターのUHAUHA氏がいつものように,例によって,毎度毎度,相変わらず「ええと,ここだけの話ですけどね,いいゲームがあるんですよ」と,私に話を持ちかけてきたのが発端。なに,フォークリフトのシミュレータ? それは興味深いじゃないか。
ここで私が思い出すのが,「シェンムー」の中にあったフォークリフトのミニゲーム。聞くところによると,私と同じ思いを抱いた人は多いらしいのだが,荷物運びにせよレースにせよ,あのミニゲームはやたらと面白く,できることなら本編に戻ることなく,このままずっとフォークリフトを運転していたいと思わせるほど熱中したのである。
また,もう一つ思い出すのが「Grand Theft Auto:San Andreas」のミッション「Robbing Uncle Sam」だ。これは相棒のRyderと一緒にオーシャン・ドックにある州兵の倉庫に忍び込み,軍需物資を強奪するというものだが,頭の悪めなRyderがどんどん前に飛び出して警備兵に撃たれるので,フォークリフトの運転中,撃ち合いもしなくてはならないという慌ただしいミッションで,やっかいなフォークリフトの操作も含め,たいへん面白かった。こうして考えてみると,フォークリフトにはいい思い出が多い。
本作を開発したのは,ドイツのパブリッシャ/デベロッパである,astragon Softwareで,ズーから発売された「ファーミング シミュレーター 2009 〜大地へ挑もう! ぼくらの農業生活〜 日本語版」のメーカーだといえば,雰囲気がなんとなく分かってもらえるはずだ。同社は,本作のほかにレッカー車のシミュレータ,消防車のシミュレータ,ハンドボールのシミュレータ,市バスのシミュレータ,そして土木機械のシミュレータなどを世に問うており,また携帯ゲーム向けのカジュアルなタイトルをパブリッシングするなど,ラインナップの偏りや,さりげなく混ざっているハンドボールがとても気掛かりではあるが,なかなか充実している。
フォークリフトとは,荷物を運搬することを目的とした特殊車両で,前方にグッと突き出した“フォーク”が特徴。このフォークを荷物の下や“パレット”と呼ばれる専用台に突っ込んで持ち上げ,所定の場所に移動するという仕掛けだ。業務用特殊車両の中では見る機会も多く,親しみやすいものの一つではないだろうか。
ゲームには,チュートリアルのほか,ミッションモードとフリープレイが用意されている。登場するフォークリフトはドイツのメーカー,STILLの販売する3種類で,具体的にはモーター駆動の「RX20-18」と「RX60-50」,そしてディーゼル駆動の「RX70-30」がある。スピードや積載能力の細かい違いなどがたぶんリアルに再現されているのだろう。ただし,使えるフォークリフトはミッションによって決まっており,その日の気分で好きなものに乗れるわけではない。
モノがフォークリフトなので,ミッションは基本的に荷物の積み下ろしだ。マップは,「トラック集荷場」と「駅に隣接したトラック集荷場」の二つがあり,それぞれに3種類ミッションが用意されている。最初のミッションは,やってきたトラックなり貨物列車なりから荷物を下ろし,倉庫の棚に積んでいくというもの。次は,倉庫の棚に積んである荷物を下ろし,トラックなり貨物列車に積んでいくというもの。そして最後は,倉庫の棚に積んである荷物を下ろし,別の場所に積んでいくというものだ。うーん……どのミッションも基本的に同じじゃないかという雰囲気が漂うが,いずれも30分間という時間制限がある。積み下ろしすべき荷物はマップに表示されるし,掲載した写真のように荷物の周りに明るい色がつくので分かりやすい。
フォークリフトの運転はなかなか難しく,頻繁に視点を変えてパレットにフォークを,ググッと……。あっ。荷物に強い衝撃を与えて壊してしまうとゲームオーバーで最初からやり直し。また,フォークリフトをあんまりあちこちにぶつけていると,これまた壊れてしまってゲームオーバー。かなりセンシティブな操作を要求されるのだが,移動には慣性があり,望んだ位置にピタリと停めるのが難しいなど,自動車とはまったく違った操作感覚がある。また視点移動にも制限があるなど,ゲームの操作性はかなりクセがあるものだ。
というわけで,ミッションの数やフォークリフトの車種,マップのバリエーションに不足感があるのは否めず,プレイヤーを選ぶタイトルであることは間違いないだろう。向こうでの価格は24.99ユーロで,これを高いと見るか安いと見るかは,あなたのフォークリフトに懸ける情熱次第だろう。
もっとも,(ごくたまに)スパッと荷物を拾い上げ,適切な位置でキュっとカーブを切り,移動中になめらかにフォークを上下させ,ふらつくことなくうまい場所に荷物を置けたとき「オレってカッコいいかも」と思ってしまったのも事実だ。なまじ普段よく見かけるだけに,感情移入もしやすい。今はドイツ車しかないが,日本車やアメ車が運転できる拡張パックなどが出たら,買ってしまいそうな気もしてならない。
……おや,またUHAUHA氏から連絡が。「ここだけの話,実はいいゲームがあるんですよ」。うう。
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