レビュー
クリアしたあとに,素直に「楽しかった」と思えるWii用RPGの大本命
ゼノブレイド
また,仲間や街の人達と心を通じ合わせることで,ゲームを有利に進められる“キズナ”システムや,神が作ったとされる特殊な光剣“モナド”を駆使した独創的なバトルシステムなど,実に見どころの多い作品だ。
それもそのはず。本作を手がけたのは,過去に「バテン・カイトス」や「ゼノサーガ」シリーズなどを制作し,RPG開発には定評があるデベロッパとしてゲームファンに認知されている,モノリスソフトなのだ。
本稿では,そんなゼノブレイドの概要を紹介しつつ,ゲームの魅力を紹介していきたい。本作に興味のある人は,ぜひ目をとおしてほしい。
「ゼノブレイド」公式サイト
■プロローグ
これは,異なる次元,異なる時間,異なる一つの空間の物語――
静謐な果てない海と,どこまでも尽きない空だけの世界が在った。
ある時,世界に大きな変化が生まれた。
巨神と機神――
泡が弾けるかのごとく,突如として世界に出現した二柱の神は,
己が存在のすべてを賭けて戦った。
二つの神が打ち鳴らす大剣の響きは,海原を揺らし,大気を震わせた。
両者は残された力を大剣の一閃に託し,相打ち合い――
やがて骸となった。
それから幾万の昼と夜を経た現在。
巨神界に暮らす一族――ホムス達は存亡の危機に立たされていた。
機神界からの突如の侵攻。
鋼鉄の装甲を纏った戦闘機械――機神兵たちは,
ホムスたちをまるで食らうかのごとく,問答無用の殺戮を繰り広げた。
だがホムスたちも,黙って喰われるだけの存在では終わらなかった。
かつて機神を討ち果たしたとされる伝説の光剣「モナド」が
彼らの手にはあったのだ。
モナドを携えるホムス軍の英雄ダンバンが戦場を駆け,
数多の機神兵たちを両断していった。
だがダンバンも無事では済まなかった。
モナドのあり余る力は,彼の肉体を蝕んでいたのだ。
軋む肉体に鞭打ち,ダンバンが放った最後の一撃は光の奔流を生み,
飲み込まれた機神兵たちは消え去っていった。
ホムスの存亡を賭けた激戦から一年余。
ここに新たな創世神話が紐解かれる。
以上が本作のザックリとしたストーリー概要だ。念のため説明しておくと,“ゼノ”の名前が冠されている作品ではあるが,ゼノサーガシリーズとの関連性はまったくないので,新規プレイヤーでも問題なく楽しめる。
またプロローグにもあるように,本作では人(ホムス)と機神兵との壮絶な戦いが描かれ,仲間の死や別れといった“重い”シーンも用意される。Wii向けRPGということで,どちらかというとライトなノリを想像してしまったのは筆者だけではないだろうが,その予想は良い意味で裏切られることになるはずだ。
もちろん,シリアス一辺倒の内容というわけではなく,友情や愛情,そして逆境から立ち上がっていく人間の強さなども描かれているので,「キツいストーリーはちょっと……」という人も,そう気にせずにプレイを始めてみてほしい。
シームレスで展開される戦術的なバトルシステム
未来視を使って迫り来る脅威を打開せよ!
移動中に敵を発見したら,画面下に表示されている“バトルパレット”の中から“戦う”を選び,戦闘をスタート……というのが,本作の基本的な戦闘の流れとなる。戦闘中は,敵が攻撃範囲内に存在すればオートで通常攻撃が繰り出されるので,攻撃を仕掛ける場所やタイミングなどを考慮しつつ,どうすれば効率よく戦えるかを試行錯誤していく。 モンスターの中には,こちらが攻撃を仕掛ける前に襲ってくる厄介なものもいるので,その点は要注意だ。またストーリーが進んでいくと,遠方から敵をおびき寄せることも可能になる。敵の特性を見極めつつ,どのタイミングで戦闘を仕掛けるか(あるいは,戦闘を回避するか)を常に考えながらフィールドを探索するのは,Wii用RPGとしてはなかなか新鮮で,個人的にも非常に楽しめた要素だ。
戦闘を有利に進めていくためには,“アーツ”の存在を無視するわけにはいかない。アーツとは,プレイヤーキャラクターが使用可能な“技”のことで,タイミングや方向などをうまく工夫することで,通常攻撃を遙かに上回る威力を発揮する。
アーツには,単にダメージを与えるだけのものではなく,敵を転倒させたり,特定のステータスをダウンさせたりと,さまざまな特殊効果が付与されているものもある。アーツを使用すると,ゲージが回復するまで再使用ができないため,これだけに頼った戦い方は難しいが,これらの使い所を工夫するのもまた,本作の大きな楽しみなのだ。
一方のパーティゲージは,仲間全員が連続してアーツを繰り出せる“チェインアタック”や,戦闘不能になった仲間を蘇らせるときなどに使用する重要なゲージだ。
仲間に声をかけるには,戦闘中にタイミングよくBボタンを押す必要がある。戦闘中は必死でそれどころではないかもしれないが,後々の戦況に大きな影響を与えるため,常に気を抜かないようにしたい。
ちなみにパーティゲージは,アーツを効果的にヒットさせたり,クリティカルを出したり,仲間がクリティカルを出したときに声をかけたりすることでも上昇する。とくに強敵との戦闘では,テンションの確保とパーティゲージの蓄積が勝利の鍵を握る。このあたりのシステムを活用できるようになると,戦闘の奥深さ,そして楽しさがさらに増してくる。
なお,モナドの使用中には,本作ならではの要素ともいえる“未来視(ビジョン)”が行える。これは“少し先のことが視える”特殊能力で,敵のアーツや,敵から受けるダメージなどを,事前に知ることができる力だ。
言うまでもなく,未来視で判明した未来をもとに戦略を組み立てていけば,キャラクターの死亡やパーティの全滅といった不幸な未来を変えることもできるだろう。パーティゲージを一つ消費して,未来視を仲間に与えることも可能で,プレイヤーの工夫次第では非常に面白いバトルが楽しめるようになる。
コンプリートまで何百時間かかる!?
クエストやプレアワードなどやりこみ要素も満載
主人公達は,旅の途中で出会う人々から「モンスターを倒してきてくれ」「アイテムを持ってきてほしい」といった,さまざまなクエストを依頼される。クエストを受けるかどうかはプレイヤー次第だが,達成すれば住人達とのキズナが深まるだけでなく,報奨金がもらえたり,クエストでしか見られないエピソードが発生したり,ときにはレアアイテムが入手できたりする。ゲーム攻略の息抜きに,ちょっと寄り道したいときなどにはもってこいの要素なので,時間に余裕のあるときには,積極的に住人達とコミュニケーションをとるといいだろう。
キズナ関連では,特定の場所やメンバーを条件とする“キズナトーク”も見逃せない要素だ。これは,会話によって仲間達の意外な一面が見られるという,いわゆるサブストーリーのようなもの。
ちなみに,キズナトーク中に発生する選択肢のどれを選ぶかによって,キズナは大きく上下する。相手にとって好印象なものを選ぶとキズナはアップするが,好ましくないものを選ぶとダウンしてしまうのだ。キズナは戦闘にも影響を与える要素なので,プレイヤーはここでも,頭を悩ますことになる。
コアなゲームファンからすれば,Wii用タイトルということでボリュームなどに不安を抱いていた人も少なくないと思う。正直なところ,筆者も当初はそんな考えを持って本作を眺めていた一人だった。
だが実際にプレイしてみて,その考えは一変した。本作は少なく見積もっても,各種要素をコンプリートするには(もちろん,する必要はないのだが)数百時間のプレイ時間が必要なほどの,ボリュームのある作品だ。やり込みプレイが当たり前というコアゲーマーも,きっと満足できるだろう。
純粋にRPGとして本作を見ても,シリアス一辺倒ではない“楽しめる”シナリオや,プレイヤーの好みをそのまま反映できるアーツ/スキル等のカスタマイズ機能,ごり押しだけでは損をする戦術性の高い戦闘システムなど,良質なRPGの条件を十分に満たしている。Wiiというハードのスペックによるグラフィックス面での物足りなさや,メニュー起動のもたつきを含むUI周りの仕様など,あえて挙げようとすれば不満点もなくはないのだが,総合的に見て,ゼノブレイドは間違いなく秀作と呼べるタイトルだ。
まさに「腰を据えてじっくりプレイする」という言葉がよく似合う本作。Wiiで遊べる本格的なRPGを求めていたという人には,任天堂とモノリスソフトが満を持してリリースしたゼノブレイドを,強くオススメしたい。
「ゼノブレイド」公式サイト
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