レビュー
豪華制作陣が手がけた“面白さに忠実なRPG”。その実力やいかに
ラジアントヒストリア
本作は,キャラクターデザインに「ラジアータストーリーズ」のこにしひろし氏,音楽にキングダムハーツシリーズの下村陽子氏,ディレクターに「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」でディレクションサポートを担当していた平田 弥氏が起用され,ゲームファンから大きな注目を集めている作品である。
アトラスブランドのRPGといえば,真・女神転生シリーズやペルソナシリーズを思い浮かべる人が多いだろう。本作は,そんな同社が「アトラスはもう一度,考える。面白さに誠実なRPGとは,何か」というメッセージを掲げ,純粋な“面白さ”にこだわって作り込んだ作品だ。発売日からしばらく経ってしまったが,本稿では,そんなラジアントヒストリアの概要を,特徴的な魅力を紹介しながらお伝えしていこう。
「ラジアントヒストリア」公式サイト
ラジアントヒストリアの物語は,凄腕の密偵剣士ストックが,情報部を取り仕切る上司のハイスから,「捕らわれた密偵を救出し,アリステルの街まで送り届けろ」という任務を請け負うところからスタートする。レイニーとマルコという2名の部下と共に密偵を救出し,アリステルへと向かうストックだったが,道中,一瞬の油断を突かれ密偵を殺されてしまい,さらに自らも敵軍に囲まれて,絶体絶命の状況に陥ってしまう。
任務は失敗に終わるのかと思われたが,ストックは時間と空間がねじ曲がった不思議な世界“ヒストリア”で意識を取り戻す。そして,そこにいた謎の双子から,ストックは時空を往来できる能力を手に入れたことを告げられ,さらに世界がその能力を必要としているという衝撃的な事実を知らされる。
……このように,なんとも壮大なオープニングから始まるラジアントヒストリア。公式サイトから受ける印象が“一般的な王道ファンタジー的”であるため,「ストーリー面ではさほど注目すべき点がないのではないか」と考えていた人もいるだろう。しかし実際には,時間移動という要素が生み出すストーリー展開の厚みこそが,本作の大きな特徴であり,魅力なのである。
タイムトラベルという題材を
無理なくゲームに落とし込んだ秀逸なシナリオ
本作では,プレイヤーがゲームを進めていく過程で,幾度となく「重大な決断」を迫られることになる。そこでの選択次第で,その後のストーリー展開が大きく変化するため,プレイヤーは熟考に熟考を重ねて選択肢を選ぶ必要がある……のだが,中にはどちらを選べばいいのか見当も付かない場合もあるだろう。ときには誤った選択を選んでしまい,悲しい結末を迎えてしまうこともありえる。しかし,だからといって嘆く必要はない。本作では,バッドエンディング的な結末を迎えてからが本番なのだ。
ちなみに,白示録の能力は万能ではなく,歴史の分岐点といえる重要なポイントへしか移動できないので,その点はご注意を。
過去に遡り未来を変えていくというタイムトラベル的な要素は,物語のテーマとしては特別珍しいものではないが,それがファンタジーRPGにおいて,システム的にも重要な意味を持つケースとなると,あまり多くはないように思う。
本作はタイムトラベルという能力を主人公に付与して,プレイヤーに「自分の行動が未来を変える」ことへの責任感や使命感を強く意識させる。この仕掛けは予想以上にうまく機能しており,プレイヤーは重厚長大なストーリー展開にだれることなく,モチベーションを保ったままゲームを進めることができるのだ。
グリッド移動を利用したパズル的要素が
バトルシステムに奥深さを付与
マップ上に見える敵シンボルにぶつかると戦闘が発生するシンボルエンカウント制が採用されているのだが,敵シンボルの動きはさほど速くないため,意図的に戦闘を避けることも難しくはない。
本作の戦闘システムで特徴的なのは,マス目に配置された敵を強制的に移動させ,まとめてダメージを与えることができる“グリッド移動スキル”だろう。バトル開始時はバラバラに配置されている敵だが,これをひとまとめにして一気に倒すのは非常に爽快だ。こちらの攻撃範囲を敵の配置に合わせるのではなく,敵の配置をプレイヤーの都合に合わせるというプレイ感覚は,ちょっとしたパズル感覚も楽しめ,なかなか病みつきになる。
ちなみに戦闘中は,キャラクターの行動順序をチェンジすることもできる。ただしチェンジしたあとは,敵が直ちに攻撃してくるというデメリットもあるため,HPには常に気を配っておきたい。
RPG好きには無条件でオススメ
アトラスの提唱する“誠実”なRPGの形を確認しよう
そろそろ冬休み。もしまとまった時間があるなら,“やり直し”を含め,この作品を楽しんでほしい。「真・女神転生」や「ペルソナ」とはまったくといっていいほど趣の異なる作品ではあるが,アトラスが提唱する“誠実”なRPGの形を,ぜひ自分の目で確かめてみよう。
- 関連タイトル:
ラジアントヒストリア
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(C)ATLUS CO.,LTD. 2010