［E3 2011］物理シミュレーションを巧みに利用した「From Dust」。仏ゲーム界の重鎮，エリック・シャイ氏の久々の新作がダウンロード専用ゲームで登場

筆者がデモをプレイしていると，後ろから眺めてニヤニヤしていたエリック・シャイ氏。自分のゲームを他人がプレイしているのを見るのが楽しい，根っからのエンターテイナーであるようだ

　1991年にリリースされ，日本のゲーム業界にも多大な影響を与えたとされる「Another World」（邦題 アウターワールド）の作者として知られるEric Chahi（エリック・シャイ）氏の最新作「From Dust」「From Dust」（Xbox360 / PC / PS3）が，E3会場のマイクロソフトのブース内にあるXbox LIVE専用エリアにおいて，プレイアブルな状態で展示されていた。

　アウターワールドは，その独創的なエイリアンの世界全体をシャイ氏自身が作り上げたものだったが，From Dustではシャイ氏の世界感の中で，プレイヤーが自在に地形を変化させていくというゴッドゲームの様相が取られている。「ポピュラス」や「ブラック＆ホワイト」のようなゲームに雰囲気が似ているが，From Dustではゲーム世界の人間たちが生存できるように手助けするのが目的になっている。そのタイトルが示すように，土（dust）や水，溶岩のようなものを一定量握って別の場所に移し，キャラクター達が歩む道筋を整えるという趣向なのである。


　デモでは，10人ほどの仮面を付けたトライバル風な人間キャラクター達が，離れた場所の祭祀場風の地点まで駆け抜けていくのを，数分のタイムリミットの間に手助けするというものになっている。時間内に一定の数のキャラクターが到着していないと大波や火山などの災害に襲われるという感じだが，その道筋というのが中々のクセモノで，川や海などの液体に阻まれて，キャラクター達が歩けなくなっているのだ。

　そこで，プレイヤーは近くの土を運んで通り道を作ったりしなければならない。ただし，川の流れや潮流が物理シミュレーションによって表現されているため，場合によっては，すぐに侵食されてしまってキャラクター達が渡りきれなくなり，最悪の場合は溺れ死んでしまうことにもなる。川のどの部分を塞き止めれば，プレイヤーの思うように川が流れていくかとか，人間キャラクター達が時間内に手際よく通過できるかといったことをに頭を使わなければならない。物理系のパズルゲームとでもいうべき作品なのだ。


　会場のデモ版では，土を運ぶだけでなく，水を汲み取って干上がらせることも可能だったし，リリースされているスクリーンショットを見る限り，水だけでなく溶岩のようなものも存在するようだ。すべてのキャラクターを救う必要はなく，決められた時間内に一定量のキャラクターが到達できれば次のミッションに進めるが，シャイ氏の狙うとおりであれば，プレイヤーは，家族で移動する人間キャラクター達に同情を感じながらプレイすることになるかもしれない。

　From Dustは，年内にPC，PlayStation 3，Xbox 360で販売される予定で，当初はXbox LIVEエクスクルーシブのタイトルとして登場することが予想される。著名クリエイターであるシャイ氏の久々の新作であるとともに，ダウンロード専用ゲームとは思えないほど，物理シミュレーションやグラフィックスは見事なのだが，不運なことに内容があまり一般受けしそうにない作品であるだけに，日本ではリリースされそうにないのが残念なところである。