レビュー
「Twin Frozr VI」クーラー搭載のGTX 1060 6GBは,静音動作に期待する人向け!?
MSI GeForce GTX 1060 GAMING X 6G
国内ではNVIDIAの「Founders Edition」が出荷されないこともあって,各社はGPUのリリース直後からオリジナルデザイン版を積極的に市場投入しているが,今回取り上げるMSI製カード「GeForce GTX 1060 GAMING X 6G」(以下,GTX 1060 GAMING X 6G)も,その1つである。
では,このGTX 1060 6GB搭載のGAMING Xカードは,従来モデルと同じように,ゲーマーの期待に応えてくれるだろうか。MSIから入手した個体を使って確かめてみたい。
上位モデルと同様,「Gaming APP」から3つの動作モードを選択可能
上位クラスのGPUを搭載する従来モデルがそうであるように,GTX 1060 GAMING X 6Gも,「OCモード」「ゲーミングモード」「サイレントモード」という3つの動作モードを持ち,メーカー保証の範囲内で,異なる動作クロック設定を選び,利用できるようになっている。
具体的な動作クロック設定は以下のとおりだ。
- OCモード:ベース1594MHz,ブースト1809MHz,メモリ8108MHz相当
- ゲーミングモード:ベース1569MHz,ブースト1784MHz,メモリ8008MHz相当
- サイレントモード:ベース1506MHz,ブースト1708MHz,メモリ8008MHz相当
さて,後述するテスト環境において,実際に自動クロックアップ「GPU Boost」の効果をGaming APPから確認してみると,OCモードでは1949MHz,ゲーミングモードでは1911MHz,サイレントモードでは1860MHzまでブーストクロックが到達するのを確認できた。
同じ環境でGTX 1060のFounders Editionは1885MHzまで上がっていたので,動作クロックの上がり幅はかなり大人しめといった印象を受ける。とくにサイレントモードではFounders Editionよりクロックが低くなるので,このあたりがスコアにどう影響するのかは気になるところだ。後段で確認したい。
細かいところで簡略化を確認できるものの,基本的には既存のGAMING Xモデルとよく似ている
続いてカードそのものを見ていきたい。
補助電源コネクタの数が8ピン
というわけでこちらが補助電源コネクタ部。少し奥まった配置となっている。GTX 1060 6GBのリファレンスデザインだと6ピン |
外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4 |
さて,GPUクーラーの取り外しは自己責任であり,取り外した時点でメーカー保証は受けられなくなる。それを断ったうえで,今回はレビューのため特別に取り外して,基板とGPUクーラー詳しく見ていこう。
まずGPUクーラーだが,分解してみて最初に気付いたのは,GTX 1080およびGTX 1070搭載モデルと比べて,ヒートパイプの本数が減っていることだ。GTX 1080 GAMING X 8GおよびGTX 1070 GAMING X 8Gだと,8mm径が1本に6mm径が4本という構成だったのに対して,GTX 1060 GAMING X 8Gでは8mm径が1本と6mm径が2本になっている。これは,GPUの規模に合わせて,冷却機構のコストも抑えたということなのだろう。
また,GTX 1080 GAMING X 8GおよびGTX 1070 GAMING X 8Gだと,メモリチップ用にはヒートスプレッダ,電源部にはヒートシンクを採用しているのに対し,GTX 1060 GAMING X 6Gだと,基板表面を覆うのは1枚のヒートスプレッダのみとなっている。
電源部は見る限り5+1フェーズ構成。Founders Editionの3+1フェーズと比べれば豪華だが,基板上の空きパターンや“空白地帯”からしても,詰め込んであるとまでは言えない感じだ。
もっとも,MSI独自の品質規格「Military Class 4」に準拠した「Hi-c CAP」コンデンサや,日本メーカー製の固体コンデンサ,「Super Ferrite Choke」といった高耐久品で電源部は構成されており,MSIのゲーマー向けグラフィックスカードらしい安心感はある。
また,デジタルPWMコントローラはuPI Semiconductorの「μP9511P」という,最近よく見るものになっている。
なお,メモリチップ2枚分の空きパターンがある点もFounders Editionと同じだ。
3つの動作モードでFounders Editionとの違いをチェック
今回,GTX 1060 GAMING X 6Gの比較対象としては,GTX 1060 6GBのFounders Editionを用意した。GTX 1060 GAMING X 6Gにある3つの動作モードでそれぞれFounders Editionに対してどのようなスコアを示すかを確認してみようというわけである。
なお以下グラフ中では,スペースの都合上「GAMING X 6G(OCモード)」「GAMING X 6G(ゲーミングモード)」「GAMING X 6G(サイレントモード)」と表記して区別する。
テストに用いるグラフィックスドライバはテスト開始時の最新版となる「GeForce 372.70 Driver」。そのほかテスト環境は表のとおりとなる。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0に準拠。ただし,「3DMark」(Version 2.1.2973)では,レギュレーションで規定する「Fire Strike」だけでなく,DirectX 12テストである「Time Spy」も実施する。なお,Time Spyのテストにおいては,「2回実行し,高いほうの総合スコアを採用する」という,Fire Strikeと同じルールを適用した。
テスト解像度は,GTX 1060 6GBがミドルハイクラス市場向けGPUということから,今回,1920
また,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,その挙動がテスト状況によって変わる可能性を排除すべく,同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。
メーカーレベルのクロックアップ効果はほぼ無視できるレベル
順にテスト結果を見ていこう。
グラフ1は3DMarkのDirectX 11版テストであるFire Strikeの総合スコアをまとめたものだ。
GTX 1060 GAMING X 6Gのスコアにおいては工場出荷設定となるゲーミングモードのそれが1つの基準となるわけだが,同モードにおけるテスト結果は,対GTX 1060 6GB Founders Editionで約102%。OCモードに切り換えても約103%であり,メーカーレベルのクロックアップ効果は控えめだ。また,序盤でブースト最大クロックがFounders Editionより低いことを指摘したサイレントモードは,若干ではあるものの,Founders Editionより低いスコアを記録している。
続いてDirectX 12版テストのTime Spyだが,グラフ2を見ると,スコア傾向はFire Strikeと変わっていないのが分かる。GTX 1060 GAMING X 6Gのサイレントモードは,こちらだとFounders Editionより若干高いスコアだが,実スコア差は11しかないので,ここはほぼ横並びとするのが正しい評価だろう。
グラフ3,4は「Far Cry Primal」の結果となる。
Far Cry PrimalでもGTX 1060 6GBとの力関係はほぼ変わらず,GTX 1060 GAMING X 6Gはゲーミングモードで約2%,OCモードで3〜4%程度高いスコアを示し,サイレントモードでは完全に揃った。
「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)の結果がグラフ5,6となる。
ARKはシンプルに,描画負荷が高まるとグラフィックスメモリ負荷も高まるため,メモリクロックの引き上げを伴うOCモードで,対Founders Editionのスコアが最大約9%に開いた。一方,メモリクロックが変わらないゲーミングモードおよびサイレントモードだと,スコア傾向はここまでと同じだ。
グラフ7,8は「Tom Clancy’s The Division」(以下,The Division)の結果である。
The Divisionにおいては,3DMarkやFar Cry Primalと比べると,わずかながらGTX 1060 GAMING X 6Gが優勢で,対GTX 1060 6GBのスコアはOCモードで3〜5%程度,ゲーミングモードで2〜4%程度高く,サイレントモードでも最大約1%高くなった。ただ,実フレームレートでいえばせいぜい4fpsがいいところであって,これを体感するのは限りなく難しいだろう。
それはグラフ9,10にスコアをまとめた「Fallout 4」でも同じ。GTX 1060 GAMING X 6Gのゲーミングモードにおけるスコアは対GTX 1060 6GBで最大でも約2%しか上がっていない。メモリクロックの引き上げを伴うOCモードでも,スコア差は最大で約4%だ。
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ11,12となるが,ここでもメーカーレベルのクロックアップ効果はあまり感じられない。「最高品質」の2560
グラフ13,14にスコアをまとめた「Project CARS」でも傾向は変わらない。GTX 1060 GAMING X 6Gは,OCモードであっても,GTX 1060 6GBより最大約3%高いスコアを示すに留まっている。
消費電力の増大は控えめ。Twin Frozr VIの冷却性能と静音性は申し分なし
クロックアップによって得られる性能向上がそれほどないため,クロックアップ設定によって無駄に消費電力が上がっていると,そこは大きなマイナスポイントになるわけだが,実際のところはどうだろうか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用して,システム全体での消費電力を測定,比較してみよう。
テストにあたってはゲームでの利用を想定し,ディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時とした。
その結果はグラフ15のとおり。アイドル時はいずれも50W弱で揃っており,また,アプリケーション実行時も,OCモードでFounders Edition比で最大14Wの増大が見られるものの,ゲーミングモードは2〜7Wの増大に留まっており,スコア差はかなり小さい。サイレントモードに至っては,Founders Editionとほぼ同じスコアだ。クロックアップのための電圧設定引き上げといったことを,GTX 1060 GAMING X 6GでMSIは行っていないということなのだろう。
GPUの温度からTwin Frozr VIの冷却性能も確認しておこう。ここでは,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 1.10.0)から温度を取得することにした。
テスト時の室温は約24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いているので,この点は注意してほしい。また,GPUクーラーどころか温度センサーの位置も異なるため,横並びの比較に意味はないことも押さえておいてもらえれば幸いだ。
注目したいのは高負荷時で,60℃台半ばというのは見事だ。前述のとおり,上位GPUを搭載するカードと比べるとTwin Frozr VIの仕様は簡略化されているわけだが,それでも十分すぎるほどの冷却能力は確保できているわけである。
さて,気になるTwin Frozr VIの動作音だが,それは下記に示す動画を見てもらうのが一番早いだろう。これは,カメラをカードと正対する形で30cm離した地点に置いて,音声付きのビデオとして撮影したものだ。
テストにあたっては,Gaming APP側の設定をゲーミングモードとしたうえで,PCをアイドル状態で1分間放置し,その後,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを最高品質の2560×1440ドットで4分間実行して,その模様をすべて収めている。
テスト開始後1分間はファンが停止しているため,環境音しか聞こえない。そして,1分後にベンチマークを実行すると,まずコイル鳴きと思われる周波数の高い音が聞こえだす。そして,そこから40秒後,つまりファイル冒頭から1分40秒後にファンが回転を始め,次第に動作音を増していく。
ベンチマーク実行3分後(=ファイル冒頭から4分後)には,ファンの動作音もそれなりに大きなっているものの,コイル鳴きともどもその音量は小さく,ケースに入れてしまえばまったく聞こえないレベルだ。GTX 1070 GAMING X 8Gなどがそうであったように,GTX 1060 GAMING X 6Gが搭載するTwin Frozr VIの静音性も相当に高い。
静音動作のGTX 1060 6Gカードとしては大いに価値がある
ただし,静音動作を期待できるGTX 1060 6GBカードとしての完成度は非常に高い。2016年9月12日現在の実勢価格だと,GTX 1060 6GB搭載カードの相場がざっくり3万2000〜4万円程度のところ,GTX 1060 GAMING X 6Gは3万7000〜4万円程度と,高いほうに属するが,GPUクーラーの冷却性能と静音性に価値を見出せる人にとっては,納得のいくプレミアム(=価格の上乗せ)と言えるのではなかろうか。
GTX 1060 GAMING X 6GをAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
MSIのGTX 1060 GAMING X 6G製品情報ページ
- 関連タイトル:
G Series
- 関連タイトル:
GeForce GTX 10
- この記事のURL:
キーワード
Copyright(C)2009-2017 MSI Computer Japan Co., Ltd. All rights reserved.