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「Radeon HD 7790」レビュー。GTX 650 Tiキラーと位置づけられた新型GPU「Bonaire XT」の実力を探る
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印刷2013/03/22 13:01

レビュー

GTX 650 Tiキラーとなる「Bonaire XT」の実力チェック

Radeon HD 7790
(SAPPHIRE HD7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION)

Text by 宮崎真一


SAPPHIRE HD7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION
メーカー:Sapphire Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
価格:未定(※2013年3月22日現在)
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 2013年3月22日13:01,AMDは,Radeon HD 7700シリーズの新製品となる「Radeon HD 7790」(以下,HD 7790)を発表した。開発コードネーム「Bonaire XT」(ボネアXT)と呼ばれていた製品だ。
 AMDは,デスクトップPC向けGPUとして,2013年いっぱいはRadeon HD 7000シリーズを継続すると述べ(関連記事),一方で新製品を投入するともしていたが(関連記事),その予告どおり,「Radeon HD 7000シリーズの新型GPU」が登場してきたことになる。

 デスクトップPC向けGPUの新製品としては,2012年3月5日発表のRadeon HD 7800シリーズ以来,実に1年以上振りとなるHD 7790だが,この製品をゲーマーはどのように受け止めるべきか。今回は日本AMDから入手したSapphire Technology(以下,Sapphire)製グラフィックスカード「SAPPHIRE HD7790 1G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+DL-DVI-D/HDMI/DP DUAL-X OC VERSION」(以下,SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OC)の検証を通じて,その実力と立ち位置に迫ってみたい。


新しいGPUコア「Bonaire」を採用するHD 7790

シェーダコア数896基で,特性はよりHD 7800に近い


HD 7790 GPU
画像集#009のサムネイル/「Radeon HD 7790」レビュー。GTX 650 Tiキラーと位置づけられた新型GPU「Bonaire XT」の実力を探る
 冒頭で「新型GPU」とお伝えしているように,HD 7790が採用するBonaireコアは,従来のRadeon HD 7700シリーズで採用されていた「Cape Verde」(ケープベルデ)コアとは別のものだ。実際,Cape Verdeを含むSouthern Islands(サザンアイランド)世代のGPUコアは,いずれも南太平洋に浮かぶ島からコードネームが与えられているのに対し,Bonaire XTの「Bonaire」は,日本語だと「ボネール」と呼ばれることの多い中米カリブ海の島であり,明らかに異なる。
 AMDがはっきりとそう謳っているわけではないが,Bonaireは「Sea Islands」(シーアイランド)世代,いわば“Southern Islands Refresh”的なGPU世代の一員であると見ていいのではなかろうか。

画像集#034のサムネイル/「Radeon HD 7790」レビュー。GTX 650 Tiキラーと位置づけられた新型GPU「Bonaire XT」の実力を探る
 実のところ,「Graphics Core Next」(以下,GCN)アーキテクチャに基づき,TSMCの28nmプロセス技術を採用して製造されるGPUという点で,HD 7790は既存のRadeon HD 7000シリーズと変わらない。ただ,160mm2のダイサイズに20億8000万トランジスタを集積した新型GPUコアは,Cape Verdeコアの「123mm2のダイサイズに15億トランジスタ」と比べると,約30%広いダイに39%多いトランジスタを詰め込めているわけで,Sea Islands世代でASIC設計の最適化が進んでいることは見て取れよう。

 気になるシェーダプロセッサ「Stream Processor」(以下,SP)数は896基。Cape Verde世代の上位モデル「Radeon HD 7770 GHz Edition」(以下,HD 7770)だと640基なので,SP数は40%増量という計算になる。
 なお,GCNアーキテクチャでは,64基のSPが,スカラユニット×1やテクスチャユニット×4,L1キャッシュなどとセットになって,演算ユニット「GCN Compute Unit」(以下,Compute Unit)を構成する。なのでCompute Unit数としては14基ということになるわけだ。

HD 7790の概要とブロック図。図中「GCN」とあるのがCompute Unitで,ご覧のとおり14基ある
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 ROPユニット数が16基で,メモリインタフェースが128bitというのはCape VerdeコアのRadeon HD 7700シリーズと同じ。なので,「Radeon HD 7850」(以下,HD 7850)よりもCompute Unit数で2基少ないだけのGPUコアを,Radeon HD 7700シリーズと同じ足回りの上に載せた存在がHD 7790であるとはいえるかもしれない。

AMDが示したRadeon HD 7700シリーズの主なスペック。「Primitive Rate」(≒ポリゴン処理性能)が従来製品だと「クロックあたり1プリミティブ」のところ,Radeon HD 7800シリーズと同じく「クロックあたり2プリミティブ」になっているあたりからも,HD 7790はよりRadeon HD 7800シリーズに近い存在といえそうだ
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 表1は,そんなHD 7790のスペックを,同製品の上位モデルとなるHD 7850,下位モデルとなるHD 7770に加え,AMDが競合製品と位置づける「GeForce GTX 650 Ti」(以下,GTX 650 Ti)と比較したものとなる。

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新世代PowerTuneの概要
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 Sea Islands世代のGPUコアを採用するHD 7790ではもう1つ,電力制御機構「AMD PowerTune Technology」(以下,PowerTune)の改良が入った点も指摘しておきたい。
 Northern Islands世代のRadeon HD 6900シリーズで採用され,「Radeon HD 7970 GHz Edition」(以下,HD 7970 GE)では,ベースクロックよりも高いブーストクロックに達する動作ステート「Boost State」(もしくは「Boost P-State」)を持った「PowerTune with Boost」へと進化していたPowerTuneが,HD 7790に合わせて最新世代へと移行してきたのである。

 AMDによれば,HD 7970 GEでは,Boost Stateを含め,4つの動作ステート「Dynamic Power Management State」(以下,DPMステート)が用意され,DPMステートごとにコア電圧とコアクロックが規定されていたとのことだ。
 厳密には,Boost Stateとその下の「High State」では,「コア電圧はそのままに,コアクロックだけ落としたDPMステート」も「Inferred State」(インファードステート)として用意されているが,コア電圧まで制御されるステートはあくまで4つだった。また,Boost Stateへの移行トリガーは温度と消費電力だったという。

HD 7970 GEなどにおけるPowerTune(=PowerTune with Boost)の実装。Boost StateとHigh StateにはInferred Stateも用意されるが,基本的なDPMステートは4つだった。Inferred Stateは「電圧のステートが4つしかない」制限のなかで,できる限り高いクロックを維持できるように設けられた追加ステートだという。コア電圧のステートは4つしかないので,電力を必要以上に消費するという欠点はあったが,ある意味,苦肉の策だったわけだ
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 それに対してHD 7790で採用される新世代PowerTuneでは,コア電圧とコアクロックをセットで規定したDPMステートが「State 0」から「State 7」までの8段階に細分化され,Inferred Stateなしに,きっちりこの8ステートで切り替わる。AMDいわく,「シンプルにいえば,(従来のPowerTuneにおける)Boost Stateというのは最大の動作ステートである。(GCN世代のGPUにおける)DTE(Digital Temperature Estimation)の採用で,より正確に消費電力状況を推測できるようになったことから,さらに高い動作電圧と,さらに高いDPMステートを設定できるようになり,それを我々はBoost Stateと呼んでいたわけだ。ただし,HD 7790で採用される新しいPowerTuneにおいては,単純に数字で呼ぶことに決めた」とのこと。なので,HD 7970 GEなどのBoost Stateは,HD 7790だとState 7に相当するものだという理解でいいだろう。

 新しいPowerTuneでは,GPUの動作状況とTDC(Thermal Design Current,熱設計電流)とTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)を監視し,細かく動作クロックを制御する。そのため,常に高い性能を発揮できるよう,動作クロックをより高い状態で維持できるになったと,AMDは謳っている。

HD 7790におけるPowerTuneの実装。8つのDPMステートが設けられ,動作状況やTDC,TDPに応じて積極的に切り替わる。ちなみに8つのDPMステートの設定値がいくつかは公開していないとのこと。「HD 7790のリファレンスでは最大が1000MHzだが,カードベンダーの実装によって変わる」(AMD)。なお,スライドには10msでDPMステートが切り替わるとか,サンプリングレートが50msであるとか書かれているが,「これらはあくまでも『プロットするタイミングが多く,切り替える速度が速い』ことを伝えるために添えたもの」だそうで,発表時点でそれ以上の説明はなされていない
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 実際の挙動をチェックすべく,後述するテスト環境で「3DMark 11」(Version 1.0.4)を実行し,任意の250秒程度をTechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.9)で追ってみることにした。その結果がグラフ1で,8つのステートがあることをはっきり確認することはできないものの,300〜1000MHzの範囲でコアクロックが乱高下するところは見て取れよう。

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 グラフ2は,CPU使用率である「CPU Load」と,電流量「VDDC Current」,電圧「VDDC Power」を,GPUコアクロックと同時に追った結果をまとめたものだが,AMDがアピールするように,動作ステートごとに動作電圧とコアクロックがセットで切り替わっているかというと,端的に述べて「分からない」。4Gamerの取材に対してAMDは,今後,PowerTuneの挙動を追えるようなツールを投入する計画があると述べていたので,新世代PowerTuneで具体的に何が変わったのかを知るためには,そのツールが登場するのを待つ必要がありそうだ。

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SapphireのHD 7790カードはOCモデル

定格相当に落とした状態でも検証


GIGA-BYTE TECHNOLOGY製のHD 7850カード「GV-R7850C-2GD」と並べてみたところ。SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCの基板長は215mm(※突起部除く)で,ミドルクラスのカードとして長さは並といったところか
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 さて,冒頭でも述べたとおり,今回入手したSAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCはSapphire製のものだ。AMDの日本法人である日本AMDは,国内のレビュワーに対し,GPUクーラーの取り外しを禁じているため,基板がどういうデザインなのかはお伝えすることができない。この点はご了承を……と述べるつもりだったのだが,4Gamerに届いた個体は,「GPUクーラーのカバーを擦り傷などから保護するビニール製カバー」を固定するシールが,ご丁寧にもGPUクーラーの裏まで回ってしっかりと貼られていたため,カードの写真を撮影するには,一度クーラーを外すほかなかった。つまり,基板を目の当たりにできたわけである。

GPUクーラーの保護ビニールを固定するシールが,クーラーの裏側にまでべったり貼られており,GPUクーラーの取り外しなしには写真撮影が行えなかった
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 残念ながら基板の写真は掲載不可とされたが,この目で見て,電源回路が4+1+1の構成になっていることや,基板デザインは意外にシンプルであることは分かったので,文字情報としてお伝えしておきたいと思う。

SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OC。基板の裏側を見ると,写真右奥,つまり6ピン×1のPCI Express補助電源周りの基板には何も載っていないことが分かる。なお,搭載されるグラフィックスメモリチップはSK Hynix製の6Gbps品「H5GQ2H24AFR-R0C」だった
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HD 7790リファレンスカードのイメージ
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 というわけで,前段で後述するとしたテスト環境の話に移ろう。今回比較対象として用意したGPUは表1で挙げたもので,具体的にはHD 7790の上位モデルたるHD 7850と,下位モデルたるHD 7770になる。発表当初,HD 7850のグラフィックスメモリ容量は2GBとされており,後日,容量1GBの廉価版カードがいくつか登場しているが,今回用いるのは容量2GB版のほうだ。
 また,日本AMDから入手したSAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCは,その名のとおりクロックアップ版で,コア1075MHz,メモリ6.4GHz相当(実クロック1.6GHz)に設定されていた。そのため今回は,カードとしての定格動作とは別に,「Catalyst Control Center」からリファレンス相当にまでコアおよびメモリクロックを引き下げた状態でもテストを行うこととする。以下文中,グラフ中とも,前者を「HD 7790 OC」,後者を「HD 7790」と書いて区別するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。

 そのほかテスト環境は表2のとおりとなる。

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Catalyst Control Centerからドライバ情報を確認したところ
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 テストに用いているグラフィックスドライバがHD 7790とHD 7850&7770で異なるのは,HD 7790のテストにあたって,AMDから全世界のレビュワーに配布された同GPU専用ドライバ「12.101.2.1-130313a-154550E-ATI」を用いているためだ。3月22日時点の公式最新β版ドライバ「Catalyst 13.3 Beta3」だと,「Display Driver」のバージョンが12.100.17.0000なので,HD 7790だけ,若干新しいドライババージョンでテストすることになる。
 なお,HD 7850とHD 7770のテストに用いているグラフィックスドライバがCatalyst 13.3 Beta3ではなく「Catalyst 13.3 Beta2」なのは,純然たるスケジュールの都合だ。もっとも,Beta3とBeta2の違いは,OpenGL周りの修正のみなので,今回のテストにあたって,大きな問題はないだろう。

 一方,GTX 650 Tiでは,テスト開始時点の最新版である「GeForce 314.21 Driver Beta」を用いている。

外部出力インタフェースはDual-Link DVI-D×1,Dual-Link DVI-I×1,DisplayPort×1,HDMI×1
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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション13.1準拠で,それに加えて新世代「3DMark」のテストも行うことにした。3DMarkでは,DirectX 11ベースのテストとなる「Fire Strike」と,その高負荷版となる「Extreme」プリセットを選択。それぞれ2回実行し,値が高いほうのテスト結果をスコアとして採用することにした。
 ゲームアプリケーションのテストに用いる解像度は,HD 7790がミドルクラスGPUであることを踏まえ,1600×900ドットと1920×1080ドットを選択している。

 なお,これはいつもどおりだが,「Core i7-3970X Extreme Edition/3.5GHz」は,テスト時の状況によって自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」の効果に違いが生じるのを防ぐため,同機能をマザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化した。


その実力は概ねHD 7850とHD 7770の中間

GTX 650 Tiとは一進一退の攻防を見せる


 では順にテスト結果を見ていこう。グラフ3は3DMark 11から「Performance」と「Extreme」の2つのプリセットにおける総合スコアをまとめたものだ。
 HD 7790のスコアはHD 7770比で31〜36%高く,HD 7850に迫っている。GPUコア周りがHD 7850に近いことのメリットを感じさせるスコアといえるだろう。HD 7790 OCはHD 7790比でスコアが4%上がっており,メーカーレベルのクロックアップによる効果も確認できる。

 対GTX 650 Tiだと,Performanceプリセットで約21%,Extremeプリセットで約7%高いスコアだ。

※グラフ画像をクリックするとスコア順で並び替えたグラフを表示します
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 グラフ4は3Dmarkの実行結果だが,ここでHD 7790は,Fire StrikeでHD 7770より約31%,GTX 650 Tiに対して約22%,それぞれ高いスコアを示した。HD 7850に対しても約86%とまずまずだ。
 より描画負荷が高まるExtremeプリセットだと,128bitメモリインタフェースであることが響いて,HD 7790のスコアはHD 7850から大きく置いて行かれるが,これはミドルクラスという製品の立ち位置を考えればやむを得ないところか。

 なお,GTX 650 TiがExtremeプリセットでスコアを大きく落とすのは,ドライバ側の問題によるものと捉えていいだろう。

※グラフ画像をクリックするとFire Strikeのスコア順で並び替えたグラフを表示します
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 ここからは実際のゲームタイトルを用いたテストの結果となる。
 まず「Far Cry 3」のテスト結果となるグラフ5,6と見ていくと,HD 7850比で82〜84%程度,HD 7770比で121〜125%程度のスコアであり,ちょうど真ん中に収まっている印象だ。ただ,3DMark 11や3DMarkだと完勝していたGTX 650 Tiに対しては,「標準設定」で若干上回る程度,高負荷設定では逆にわずかながら下回ってしまっており,明確な優位性があるとまでは言えない。

※いずれもグラフ画像をクリックすると1920×1080ドット解像度のスコア順で並び替えたグラフを表示します。以下グラフ16まで同
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 さらに,GeForceシリーズが高いスコアを示す傾向にある「Battlefield 3」(以下,BF3)だと,HD 7790は,今回テストしたすべての条件でGTX 650 Tiの後塵を拝した(グラフ7,8)。
 もっとも,HD 7770と比べると14〜30%程度高いスコアを示しているので,上位モデルらしい性能は発揮できている。また,HD 7790 OCであればGTX 650 Tiを上回る数字を叩き出している点も注目すべきだろう。

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 古い世代のゲームを代表して採用している「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果がグラフ9,10だ。Call of Duty 4ではプロセッサの規模がスコアを左右する傾向にあるため,テスト対象のGPUでは唯一のミドルハイクラスGPUとなるHD 7850が頭一つ抜け出ている。HD 7790はまったく届かない。
 とはいえ,そのHD 7790は,HD 7770に対して8〜14%程度,GTX 650 Tiに対しても7〜11%程度高いスコアを示している。古めのDirectX 9タイトルでしっかり数字を残せるというのは,ミドルクラスGPUにとって重要なポイントであるだけに,この結果は評価できるところだ。

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 Call of Duty 4と似た傾向になったのが,グラフ11,12にスコアをまとめた「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)だ。HD 7770だとGTX 650 Tiから置いて行かれるのに対し,HD 7790では安定的に高いスコアを示しているのはポイントといえる。

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 グラフ13,14の「Sid Meier's Civilization V」(以下,Civ 5)でもその傾向は変わらない。純粋な3D性能だけでなく,GPGPU性能も問うことになる「Leader Benchmark」を用いていることもあって,とくに高負荷設定時だとCiv 5はRadeon優勢となるのだが,果たしてHD 7790は高負荷設定時に対GTX 650 Tiで14〜17%高いスコアを示している。

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 一方,グラフ15,16の「F1 2012」だと,HD 7790 OCがGT 650 Tiといい勝負というレベルに留まっている。HD 7790も,HD 7770と比べると27〜30%高いスコアなので,その点では評価できるのだが,Radeon HD 7700シリーズの製品スペックバランスが,あまりF1 2012向きではないということなのかもしれない。

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消費電力はHD 7770比で微増というレベル

SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCのクーラーは優秀


HD 7790のPCI Express補助電源コネクタは6ピン×1。これはHD 7850やHD 7770,GTX 650 Tiと同じだ
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 HD 7790のTypical Board Power(公称典型消費電力)は85Wで,HD 7850の同130Wほどは高くないものの,HD 7770の同80Wからは上がっている。最適化が施された新コアで,実際の消費電力がどの程度にまとまっているのかは気になるところだ。
 そこで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を比較してみたい。ここでは,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 その結果がグラフ17で,アイドル時はほぼ横並びと述べていいだろう。ただし,ディスプレイ出力が無効になると,GCNアーキテクチャのGPUはロングアイドルモードへ移行し,「AMD ZeroCore Power Technology」が有効に働くことで,カードの消費電力が大幅に低下する。実際,HD 7790 OCとHD 7770は88W,HD 7850は86Wまで低下したので,この点はGTX 650 Tiに対して強みになっているといえそうだ(※Catalyst Control Centerからのクロック引き下げで実現しているHD 7790ではテストに意味がないため実施していない)。

 一方,アプリケーション実行時だと,HD 7790の消費電力はHD 7770比で0〜28W高くなった。SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCというカードの設計がリファレンスカードとどの程度異なるのかは何とも言えないため,あくまでも参考値ということにはなってしまうのだが,「スペックどおり,HD 7770よりやや高め」と評することはできるように思う。また,GTX 650 Tiと比べた場合でも若干高いようだ。

※そのまま掲載すると縦に長くなりすぎるため,簡略版を掲載しました。グラフ画像をクリックすると完全版を表示します
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 続けて,3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zで各GPUの温度を追った結果がグラフ18となる。テスト時の室温は24℃で,システムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いて計測を行ったときのデータだ。

 それぞれクーラーが異なり,HD 7790に至っては動作クロックすら弄った状態のものなので,横並びの比較にはまったく適さないが,ひとまず,SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCが搭載するツインファン仕様のクーラーが優秀とはいえそうである。
 ちなみにこのクーラー,筆者の主観であることを断ってから述べると,動作音はさほど気になるレベルではなかった。静かなほうだと述べていいだろう。

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GTX 650 Ti対抗としての実力は十分

価格によってはHD 7850が強敵となるかも


 以上のテスト結果を見るに,HD 7790は,HD 7850とHD 7770の間,これ以上ないほど順当なところに収まっている。GTX 650 Tiに対しても,一進一退ながら,DirectX 9世代のアプリケーションで優位なところを見せているのはポイントが高い。

SAPPHIRE HD 7790 DUAL-X OCの製品ボックス
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 AMDのデスクトップGPU担当であるDevon Nekechuk(デヴォン・ネケチャク)氏は,4Gamerの取材に対し,北米市場では「150ドル」がマジックナンバーで,これを下回ると,より多くの人にヒットする製品になると述べ,HD 7790こそがまさにその製品だと位置づけていた。
 日本でも同じような状況は発生しており,市場では1万円台前半から購入できるGTX 650 Tiカードが人気。それだけに,HD 7790の登場を歓迎する人は多そうである。

 懸念材料があるとすれば日本市場における搭載カードの価格だ。グラフィックスメモリ2GB版のHD 7850カードは,1万8000〜2万3000円程度(※2013年3月22日現在)の価格で販売されているので,仮に1ドル120〜130円程度の相場換算でHD 7790カードが市場投入されてしまうと,せっかくのGTX 650 Ti対抗製品が,HD 7850に同士討ちを挑んでしかも討ち死にするという,目も当てられない結果になりかねないのである。
 HD 7790が成功するかどうかは,リファレンスに近い動作クロックの製品が,150ドルというキーワードからイメージされる市場価格で店頭に並ぶかどうかにかかっている。4月下旬からの大型連休が始まるくらいには,一定の結論を出せるようになっているのではなかろうか。

AMDのRadeon HD 7790製品情報ページ(英語)

  • 関連タイトル:

    Radeon HD 7700

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