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  • 発売日:2020/12/10
  • 価格:8778円(税込)
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印刷2024/03/19 15:49

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[GDC 2024]「サイバーパンク 2077」大型拡張パック「仮初めの自由」で追求されたインタラクティブ・シネマティックスという“自由”

 アメリカ時間2024年3月18日から22日にかけて,世界最大規模の参加者数を誇るゲーム開発者会議Game Developers Conference 2024(以下,GDC 2024)が開催されている。GDC 2024初日に実施されたNarrative Designサミットで,CD Projekt REDでシネマティックデザイナーを務めるカイェタン・カスプロウィッチ(Kajetan Kasprowicz)氏が登壇し,「サイバーパンク 2077」の大型拡張パック「仮初めの自由」で追求された,インタラクティブ・シネマティックスというコンセプトを解説した。

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CD Projekt REDシネマティックデザイナーのカイェタン・カスプロウィッチ氏
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 “見ているだけ”の場面が多いことで知られる「サイバーパンク 2077」だが,平均40時間ほどあるメインキャンペーンに加えて,一人称視点で“視聴”するカットシーンは8時間ほどにも及ぶといわれている。それも50年ほど未来のディストピアをしっかりと描きあげるためのCD Projekt REDの真骨頂ともいえるデザインスタイルなのだが,カットシーンを視聴している間にも,プレイヤーは自由に視点を変えたり,セリフやアクションを選択したりでき,その選択によってストーリーが分岐することで,ゲームとしてのインタラクティブ性が保たれている。

 これをカスプロウィッチ氏は「インタラクティブ・シネマティックス」と呼んでおり,大義での演出効果は「プレイヤーが自分の判断により,その世界に何らかの影響を与えている」と錯覚させることにある。2023年9月にリリースされた大型拡張パック「仮初めの自由」では,さらにそのコンセプトが追求されたそうだ。

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 ナラティブデザインの問題点の1つとして,“ルドナラティブ・ディソナンス(Lusonarrative Dissonance:ゲームにおけるストーリー性の不協和音)”という業界用語が存在する。これは,2007年当時にUbisoft Entertainmentのクリエイティブディレクターだったクリント・ホッキング(Clint Hocking)氏が提唱したものだ。インタラクティブなゲームに,非インタラクティブなシネマティックスを挿入することにより,プレイヤーは自由度のなさから感じ取れる違和感を,「バイオショック」を例にして自身のブログで解説したことが始まりとされる。

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 オープンワールド型のゲームは“ノンリニア”とも呼ばれる自由度の高さと引き換えに,ストーリーの間延びを引き起こすことがある。カスプロウィッチ氏が解説するインタラクティブ・シネマティックスは,そうしたゲームとストーリーの不協和音を解消するための,CD Projekt REDの試行錯誤であるともいえる。

 カスプロウィッチ氏によると,インタラクティブ・シネマティックスは,ゲーマーが“ただ見ているだけ”という観衆としてのストーリー体験を緩和し,カットシーンとゲームプレイの間を限りなくファジーなものにさせるという。カットシーン中でもNPCの話に聞き飽きてウロウロしてしまうことがあるように,いかにゲーマーをストーリーに引き込ませ続けられるかが,「サイバーパンク 2077」の大きな課題だった。
 そして,より良いインタラクティブ・シネマティックスとストーリーのフローを実現するためには,開発の初期段階からゲームデザインとシネマティックデザインのチームが計画を練り始めることも必要だったそうだ。

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 「サイバーパンク 2077」では,フィクサーから与えられる仕事は“ギグ”(Gig:日本語では依頼)と表現されるが,「仮初めの自由」でも新エリアである「ドッグタウン」で体験できる,9つのギグが用意されている。ゲーム本編ではオープンワールド・チームがギグの制作を行い,メインキャンペーンに大きなインパクトを与えない形で,よりゲームプレイにフォーカスしたものだった。

 一方,「仮初めの自由」においては,そのルーツをキープしながらも,何層ものストーリーで構成されたナラティブ性を高めたものになっているという。プレイヤーがいくつかの選択をしながら,ある結末へと向かっていくという基本構造がしっかりとした,感覚的にはよりクエストに近いものになっている。

 例えば,ギグの1つである「ドッグタウンの聖人」では,すべてのシーンでプレイヤーに自由の高さを感じさせるチャレンジがあった。しかし,開発時のリソースが少なく,すべてのアニメーションは制作済みのものの中から再利用する形で実現するという,大きな制限が課せられていたそうだ。

 また,「贖罪への道」はエンディングでプレイヤーが選択する行動によって結末が変化する依頼だが,開発チーム内ではソロ専用の依頼に固定させるかどうかという議論があったという。そこで,ハッキング要素を加えるなどしてインタラクションを増やし,そこから起こるリアクションを楽しめるように改良が重ねられた。こうした制限のある選択を設けないと,プレイヤーは「とりあえず銃の引き金を引く」という行動に出がちらしい。

 こうした,「仮初めの自由」におけるインタラクティブ・シネマティックスの追求は実を結び,本編よりも“ストーリーをプレイしている”ということに対してポジティブな評価をするプレイヤーが多かったという。カットシーンで発生し得るイベントにおいては,どんな小さなインタラクションとその結果も,プレイヤーの中には少なからず気付く人がいるので,より良いゲーム体験を提供するためには手を抜いてはいけないとカスプロウィッチ氏は力説していた。

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