インタビュー
スクエニ内外で話題を呼んだ(ザワっとした)マフィア梶田の「新生FFXIV」連載から1年。まさかの「吉田直樹×マフィア梶田」対談が実現
FFXIVの影で動いていた幻の新作は
「ベイグラントストーリー」の系譜を受け継いでいた!?
4Gamer:
それは子供のころからゲームが本当に好きで,プレイする側から開発者になったというところが強く影響しているんですかね?「こうしたらもっと面白くなるのに!」みたいな。
吉田氏:
それも大きいと思います。あとは,僕の世代はオリジナルを作るチャンスがあまりない時代でした。実は新生FFXIVの直前にも,高井(高井 浩氏),皆川(皆川裕史氏),前廣(前廣和豊氏),あともう辞めちゃいましたけど吉田画伯(吉田明彦氏)と一緒に完全新作を作り始めていたんです。でも,みんなFFXIVへ駆り出されて幻に(笑)。
4Gamer:
豪華スタッフじゃないですか……そのゲーム,遊んでみたかったですね。
吉田氏:
かといって上手くいくかどうかは,別問題だと思います。人が揃えば良いものができる,というわけでもないのがゲームの難しいところですね。そのタイトルは社内の都合とはいえ途中で解散することになってしまったので,迷惑もかけてしまいました。それもあって,フロムソフトウェアさんの「Bloodborne」などダークファンタジーのような作品を見ると,悔しいなあと思ったりはします。
4Gamer:
おお? Bloodborneに近い作品だったんですか。
吉田氏:
ゲームシステムがとかではなくて,根底に流れている雰囲気とか,意気込みとか羨ましいです。僕はコアゲーマーなので。僕は松野さん(松野泰己氏)のゲームが大好きで,オウガシリーズもそうですが,とくに「ベイグラントストーリー」は素晴らしかったです。あれをもう少しダークな方向へと引っ張った,ハードな作品があってもいいかなといまでも思います。
4Gamer:
なんてこった……。「ベイグラントストーリー」は自分も大好きですよ! それ,やりたかったなぁ。
吉田氏:
そのゲームはマルチプレイ対応で,超強いPKキャラも作れるんですが,PKキャラで死んだらキャラをロストするというピーキーなシステムでした。伝説のPKランキングみたいな物もあって,殺されたキャラクターはランキング上で棺桶に……と,話してると売れる気がしませんね(笑)。
4Gamer:
いやいや,惜しいですねぇ。今はもう,新生FFXIVの開発に携わってしまったからには新作などは手が出せない……?
吉田氏:
立場的に大作を並行(で開発)するのは難しくなりました。新生FFXIVだけではなくて,いまは第5ビジネスディビジョンという事業部みたいなところを全部見ている状態です。予算とか,事業計画とか,人員計画とか,マネージャー陣とか,経理の人たちに助けてもらいながら,ひーひー言ってなんとかやっています。
それに,僕にとってのスクエニは「ファイナルファンタジー」と「ドラゴンクエスト」と「キングダムハーツ」が“まともに発売されてこそ”の会社です。僕個人の仕事としては,オリジナルの開発を行うのなら,そのあとでも良いと思っています。ある程度立場も上がってしまったので,僕の立場ならこの3タイトルがコンスタントに発売できるのが正常。世界中にファンの方がいるタイトルですので,それにきちんとお応えしながら,新作を作っていくというイメージです。
スクエニには新しい発想ができる人が多いので,そちらはほかにお任せする。そして僕はスクエニに在籍している限り,その3タイトルがうまくいくように仕事をするのが前提で,いまお話ししたように,僕がオリジナルの新作を作るならそのあとかなと思っています。それが嫌でオリジナルを作りたいのなら,自分は別の会社に行くべきなのかもなあ……と。
4Gamer:
ハドソン時代から,まったくブレないですね(笑)。でもやっぱり,新生FFXIVのプレイヤーからしたら,吉田さんがそうやって責任を持って担当している方が安心だと思います。もしも別作品を任されて吉田さんが離れるとなったら,阿鼻叫喚になりそうな(笑)。
吉田氏:
いや……「せいせいした!」と言われると思いますよ(笑)。
運営とプレイヤーの間にある,埋まらない溝
4Gamer:
なんだかんだで多くのプレイヤーは,旧FFXIVを立て直して新生FFXIVを大ヒットに導いた吉田さんの功績を忘れちゃいませんよ。運営が安定してきたからこそ,自分も含めていろいろと文句を言えるようになりましたが,それでも吉田さんに対するプレイヤーの信頼度はいまだ大きいと思います。
吉田氏:
そう言っていただけると嬉しいです。
なにせ,FFXIVの再建プロジェクトは,あらゆる面で前代未聞だったじゃないですか。ライター目線でも,正直なところ「無茶にもほどがある。絶対無理だ」と思っていました。それを成功させましたからね。
だからこそ吉田さんは一躍,世界的に有名なゲーム開発者の一人になったという印象があります。そうなると誰か別の人間が代わりを務めるわけにもいかない。そういった意味では,開発者としては「エオルゼアに縛られてしまった」ように見えるところもあります。
吉田氏:
同じようなことを海外のメディアの方にも聞かれますが, FFのナンバリングタイトルを悩みながらも自分でゲームデザインできる,こんなに幸せなことはないと思います(笑)。
4Gamer:
ほう,そうきますか!
吉田氏:
それに新生FFXIVはアップデートがある以上,つねに「最新のFF」なんです。極端な話,FF15が発売されてもその直後に我々のアップデートがあればFFXIVのほうが最新作(笑)。ですから,「新しいゲームが作りたい,新生FFXIVはキツイ」といった感じはまったくないです。唯一,個人ハウジング実装直後(※)に,初めて自分で「あ,ヘコんでる」と自覚できたくらいでしょうか。
※2014年9月のパッチ2.38で実装された「個人ハウジング」。このときの土地や価格の発表に関してちょっとした騒ぎに……。
4Gamer:
おうふ……。
吉田氏:
「嘘つき」という扱いがショックで。土地の数については,サーバーのコストという現実的な問題もあり,一気に投資しきれない部分ですので,お待ちいただくしかなく,そのあと処理をやりくりして倍増できました。一方の個人ハウジングシステムについては「フリーカンパニーの家が単純に個人で買えるようになるだけです」とずっと言っていましたし,ニコニコ超会議3の放送でも同様の発言をしていたのですが……。価格のイメージをお伝えする部分が曖昧すぎたため,この点はお叱りを受けてもしかたがないです。しかしネット上でまとめられていた個人ハウジングのシステムイメージが,僕の発言していた物とは違うにも関わらず,プレイヤーの間では「これを吉田が言った」となっていたようで。新生FFXIVを担当していて,初めて「これはちょっとしんどい……」と思いました。
4Gamer:
運営側とプレイヤーの,認識の食い違いですね。
吉田氏:
それはもう,間違いなくあります。でも,それは運営側である以上は絶対に避けられない部分でもあるので,認識の食い違いは覚悟済みなんです。この時はなんとなくなんですが,フィードバックに留まらない雰囲気があり,さすがに辛いなあ……と。TGS 2014の直前まではちょっと凹んでいました。
4Gamer:
ハウジングの件は,極端なケースというか……吉田さんの説明は,基本的には凄く分かりやすいと思うんですよ。でも,ちょっとした認識の違いで間違った情報が真実であるかのように拡散してしまうのがネットの怖さで,あのときはそれが思いっきり悪い方向に動いてしまった感があります。
吉田氏:
僕もプレイヤーですから,MMORPGというゲームはプレイを継続していく中で,基本的には面白いんだけど,慣れるにつれて,どこかに少しずつ不満が溜まっていくゲームだと思っています。それが,ハウジング問題をフックに爆発してしまったところもあるのかなと。
しかしこの時は,結局はプレイヤーの皆さんに元気づけられて,すぐに持ち直しました(笑)。TGS 2014では800人くらいのプレイヤーさんと話しましたが,「僕は,私はネットの書き込みとかは気にしてないので,これからもがんばってくださいね!」と,ものすごく励まされました。やっぱり,お客様のために頑張っていけば,いいことあるや!と思います。
4Gamer:
しかしMMORPGは数あれど,新生FFXIVほどさまざまな面で親切なゲームはそうそうないですよ。国産であるからこそ,日本人の気質までちゃんと理解しているというか……。自分はゲームライターの視点で見ている部分が強いから,そう感じるのかもしれませんけど。
吉田氏:
比較対象がもっと増えてほしいとは思います。海外のMMORPGをプレイしている方が「FFXIVはMMOの中では相当親切だぞ!」とか,「このボリュームのアップデートを短期間でやってくれるMMOはそうそうないぞ!」と言ってくださるのはとても嬉しいです。もちろん,「お金を払っている以上,ほかのゲームと比べる必要はない」という意見も当然ですし,どちらにしても,結局は地道にパッチを作っていく以外,僕らにできることはないのですが……。
4Gamer:
これはイメージですけど,MMORPGの開発はシングルゲームと比べてストレスが段違いじゃないですか?
吉田氏:
何か発表したあとだとか,パッチが出た直後だとかは,愛ゆえになんでしょうけれども,反射的に良い面よりも悪い面を大きく指摘されることが多いとは思います。それを冷静に分析して,事前に想定していた反応の通りであれば良いのですが,明らかにミスだったときはやっぱり凹みます。
そこからホットフィックスを目指すにしても,QA(※Quality Assurance,品質保証のこと)を考えたらウチでは最低“3日”はかかります。そうなると,プレイヤーの皆さんを待たせてしまう3日間は地獄の苦しみです。エオルゼアに「吉田あああああああああ!!!!」というシャウトが響き渡りますし……。
4Gamer:
人間なんですから,凹まないわけないですよね。でも変な話,新生FFXIVは批判の中にも愛が垣間見えるというか,「吉田さんだから」というところが絶対あると思うんですよ。すでにプレイヤーの間ではキャラクター化していて,「吉田ああああああああ!!」のシャウトに関しても本気でキレている人よりは面白がって叫んでる人の方が多いじゃないですか(笑)。
吉田氏:
なんか他社さんのオンラインゲームにも迷惑をかけているみたいで……。サーバートラブルがあったりすると,「吉田あああああああああああああ!!!!」というシャウトが響き渡るそうで,それだけはご勘弁いただきたいと(苦笑)。
4Gamer:
(爆笑)。なんでや! 吉P関係ないやろ!
吉田氏:
いやもう,本当に申しわけないです……。
「FF」という“制限”の中で作られるMMORPG
4Gamer:
ご自身もヘビーなプレイヤーである吉田さんですけれども,MMORPGにおいてもっとも重視すべきと考えているもの……魅力を感じている部分は,どういったところなんでしょう?
吉田氏:
難しい質問ですね。それに関しては「FFシリーズをMMOにした場合」と,「どのMMOでも共通であるべきもの」と,「まったくオリジナルのMMOを作るとしたら」という三つの軸があって,僕の中では全部ちょっとずつ答えが違います。
まずは,ログインしたときにたくさんのプレイヤーがフィールドを走り回っていること。これはどのMMOでも共通して絶対に必要なことですよね。
4Gamer:
そうですね。
そもそも「人がたくさんいる」ということが達成できなかったら意味がない,過疎ったら厳しい……これはゲームの面白さと同一視されがちですが,実は少し違うと思っています。「人がいるからログインする」という部分がMMORPGにとって,とても重要です。
4Gamer:
ああ,分かります。
吉田氏:
たとえ仲の良い友達がログインしていなかったとしても,「この世界には自分と同じゲームを遊んでいる人がこれだけいる」という安心感は,何ものにも代えがたい。何か会社で嫌なことがあっても,エオルゼアにログインしたら「みんなそれぞれに現実の生活がありつつも,リスキーモブを追いかけているんだなあ」と感じられるような仲間意識は,絶対に必要だと思っているんです。
4Gamer:
深夜にログインしても人がいたりするのは,たしかに嬉しく感じます。
吉田氏:
あと,単純に僕の好みを言うなら「何をしてもいい」という自由度がほしい。ただ,FFをMMORPGにする場合はそこが逆転するポイントで,絶対にある程度の制限が必要になります。
4Gamer:
と,言いますと?
吉田氏:
もともとのFFがシナリオ重視のRPGなので,ストーリーを中心にしてプレイヤーが世界を救っていくという要素はハズせません。それがある以上,すでに“自由”ではないのです。なぜなら,必ず“英雄”になることを強いられるからです。これは好みが分かれる部分でもありますが,上記の「人がたくさんいる」を前提とした場合には,より多くの人が好む方を選択することになります。
4Gamer:
ああ,なるほど。ストーリーの根幹として,“善人”であることが求められますよね。
吉田氏:
もちろん,FFシリーズにダークな主人公がいても良いと思いますが,その場合にはRPGであるなら僕はダークに進むか,善人的にプレイするかは選べるようにしたい。しかし,MMORPGのようにひとつの世界を数千人で共有する場合,スタンドアローンのゲームのように選択肢を十分に用意するのは難しい。そこで新生FFXIVは「正義って何ぞや?」をテーマにすることにして,それぞれの正義についてプレイヤー自身に考えてみてもらうという作りにしました。FFシリーズというテーマを抜きにして個人的な好みだけで言うなら,フィールドPvPなども含めて,もっと自由度の高いMMOも楽しいと思います。
4Gamer:
それはきっと,吉田さんが海外のMMOを多くプレイしてきたことで培われた考え方ですよね。たとえば,海外と日本ではPKに対する印象が大きく違うじゃないですか。自分も昔は海外のMMORPGをプレイしていたので分かるのですが,海外では「楽しみ方のひとつ」として認識されているのに対して,日本のプレイヤーはPKをすることもされることも基本的に好まない気質の人が多いんですよ。それが,国産MMOの自由度を低下させている一つの要因なんじゃないかと思っています。
……とは言っても,新生FFXIVに関してはフィールドで“光の戦士”たちが殺し合っていたら,明らかにおかしい(笑)。そういうことですよね。
吉田氏:
そうですね,「それでいいだろう,ゲームなんだから!」という方もいらっしゃると思いますが,「FFなんだからやめて!」という人もほかのMMORPGにはない,強いフィードバックになると考えます。ただ,そろそろPvPサーバー(※)もアリかなあと考えたりしないわけでもなく……せっかくフィールドを作り込んだわけですし,F.A.T.Eでレベリングをしている最中に集まった人たちが突如として……ね(笑)。
※専用のPvPフィールドだけではなく,無差別PKや通常フィールドでの対人戦などが許可されたサーバー
4Gamer:
大惨事ですよ!?
吉田氏:
でも,PvPサーバーなら,そんな混沌さが面白いわけです(笑)。そもそもそれを許す特殊運営のサーバーですので,そこでプレイをされる方は,それを理解してプレイすることになります。そうなるとFC同士が同盟を組んで,「あのFCタグは同盟軍だから絶対攻撃するな!」といった現象もきっと発生する。F.A.T.Eを独占して安全にレベリングしたければ,みんな徒党を組もうと考えます。ほかの勢力もその隙を狙ってくるわけで……。より強い“結束”がエオルゼアの世界で発生すると思えば,面白いゲームになりそうな気がするんですよね。
4Gamer:
きっと,そのサーバーは……プレイヤー層がガラリと変わるでしょうね(笑)。
吉田氏:
FFとしてのポリシーがあるので,すぐに「よっしゃやるぞ!」とはなりませんが。ただ,面白そうだなあとは,どうしても考えてしまうんです(笑)。
4Gamer:
いまのMMORPGは,わりと「安全さに甘えている」ところがあると思います。新生FFXIVもユーザフレンドリーなシステムと表裏一体ですけれども……エンドコンテンツでない限りはそうそう死ぬこともないし,デスペナルティも軽いじゃないですか。
そこにPKの要素が入ってきたら,一気にスリリングなゲームになるなと思います。高レベル帯になるとモンスターも絡んでこなくてフィールド上の移動が完全な作業になっちゃいますけど,プレイヤーが襲ってくるとなったら大違いですよね。ただまあ,それを日本のプレイヤーが望むかって言うと……。
吉田氏:
一部以外は望まないかもしれないですねえ……。でも,海外からはよく言われるんですよ。「PvPサーバー置かないんですか?」と。そこで「FFだから」と話をするとみんな納得してくれます。やはりFFというのは,そういう意味ですごいですよね。それでも“遊び”としてはアリだと思ってはいるんですが,「そんな暇があったらコンテンツを増やせ!」と言われる気もしますし難しい(笑)。
4Gamer:
間違いないですね(笑)。
吉田氏:
だからいまは「フロントライン」をきっちりとアップデートして,新ルールやマップを足して,もっとFFユーザーからPvP好きの人口を増やしたいです。その上で,決着をつける場として「ウルヴズジェイル」を洗練させていきたい。やっぱり僕はPvPが好きなので,少しずつでも人口を増やしていきたいなと思っています。
吉田氏がPvPにのめり込むきっかけになった体験とは
4Gamer:
吉田さんのPvPに対する思い入れって,やっぱり過去にプレイしていた「Dark Age of Camelot」から来ているんでしょうか?
吉田氏:
最初は「ウルティマ オンライン」ですね。ゲームを始めた当初にいきなりPKされたんです。その相手が,ロールプレイヤーでカッコよかったんです。
4Gamer:
え,殺されたのに「カッコよかった」?
ええ,僕がその場で復活(※)を繰り返すものだから,途中から相手が怒って「お前はNewbie(初心者)か!」と言ってきたんです。それで「Yes」と答えたら,「とにかく復活のダイアログでYesは押すな! このゲームはスキルシーソー制なんだから,その場で復活なんかしたら,上がったスキルが全部ロストしていくぞ!」と。さらに,「お前のようなNewbieはブリテンの東じゃなくて西側に行け! ここは狩場がウマい分だけ,お前みたいなヤツを狩る俺のようなプレイヤーキラーが多いんだ」というアドバイスまでくれたんです。そのうえで,「この6ゴールドはお前をPKした証として返さんぞ!」と(笑)。
※「ウルティマ オンライン」の仕様で,キャラクターが死んだあと,幽霊になるか,その場で復活するかが選択できた。ただし,その場で復活するとスキルの数値が全体的に大きく下がってしまう
4Gamer:
それは面白い出会いですね(笑)。なんだか,プレイヤーキラーとしての矜持を感じます。
吉田氏:
それで,「こんなにすごいゲームがあるんだ!」と感銘を受けました。以降は,リアルの友達やネット上の友達とギルドを結成して遊びつつ,プレイヤーキラーを返り討ちにできるだけの力を……と思い,僕のキャラは強くなっていきました。最後は別キャラを作って,自分自身がPKのロールプレイをしていましたし,そういう意味では,かなり負けず嫌いです(笑)。
そんなこともあって次は「EverQuest」に手を出し,そのまま大規模PvPができるゲームである「Dark Age of Camelot」に行き着いたんです。それから6年半くらい,ずっとプレイしていましたね。
4Gamer:
PKの存在するMMOだからこそ,生まれるドラマもありましたよね。
吉田氏:
PKもそうですが,PvPは1度たりとも同じ試合がないというところが,まさしくエンドコンテンツだと思っています。エオルゼアで知り合ったフレンドが,初めてPvPを体験するというプレイヤーだったのですが,フロントラインに足を踏み入れて,かなりハマってくれたんです。そういう人が少しでも増えていけば,今後日本でも本格的なPvPやPKアリのゲームが生まれるかもしれません。若いプレイヤーの方から,将来オンラインゲームの開発者を目指す人も出てくるかもしれない。日本にはなかなかPvPが根付きませんが,地道に気長に考えています。
4Gamer:
そうやって面白さに目覚める人もいれば,食わず嫌いで遊ばない人も結構多いんじゃないかと。
吉田氏:
そうですね……。日本のプレイヤーのみなさんは,大迷宮バハムートの攻略で戦略や戦術をあれだけ研究して実践できるわけですから,対人戦でも相当強くなると感じるんです。きっとeスポーツでも活躍できるような,世界に通用するプレイヤーがまだまだ数多くいると思います。少しでもFFXIVがそういうきっかけに,なってくれればとても嬉しいです。
4Gamer:
PvPもそうですけど,日本では“失敗”を恐れる傾向がとにかく強い気がします。とくにエンドコンテンツに関しては,海外のプレイヤーだと平気でギリギリの装備でも挑戦していくのに,こっちは「いや,IL(アイテムレベル)○○以上じゃないとありえないから」みたいなプレイヤーが多いじゃないですか。そのあたりが本当に不思議で,さきほども言ったように力不足で他人に迷惑をかけたくないという心理が強すぎるのかなぁと……。ゲームなんだから,本来ならもっと“冒険”してもいいと思うんですけど。
吉田氏:
それは……ありますね。たとえば深夜にバハムート侵攻編4層の練習パーティをのぞきに行ったときのことです。練習パーティのはずなんですが,ミスして死んだら本番と同じくらい申しわけなさそうにされてて。結果的には最後まで和気藹々と練習して終わったのですが,他人に迷惑をかけたくない,でもクリアはしたい,だったらまずは練習に行かなきゃ……という部分は,欲求に応じてモードを分けるなど,ゲーム側でも何とかしたいと思っています。
4Gamer:
まずは楽しむべきですし,失敗を恐れずにという雰囲気になってほしいです。
MMOを分かっているからこその「運営の都合」
吉田氏:
楽しむという面では,ダンジョンでNPCのコスプレをしているような人達と出会えると楽しいですね(笑)。
4Gamer:
ああ,面白いです(笑)。やっぱり,装備にはこだわりを持ってプレイしたいですよね。新生FFXIVは,「ミラージュプリズム」というロールプレイヤーには理想のシステムを搭載していますし。MMOだと性能の高い装備の見た目が必ずしも好みじゃないということは絶対にあるじゃないですか,なのでミラプリは本当に素晴らしい発想でした。おかげで,毎日キャラを見るのが楽しいです。
吉田氏:
そういえば,ミラプリを実装する前から運命的だなぁ……と思っていたことがあるんです。マフィアさんのキャラが,本当にマフィアさんになっているのが面白くて(笑)。あの連載は,ミラプリが実装される前ですからね。
4Gamer:
やはり自分は「その世界に入りたい」と思ってゲームをプレイしているので(笑)。可能な限り似せようと頑張るんですよ。あれは連載用にキャラ立ちをさせたかったので,ファッションも目立つようにこだわりました。さまざまな装備を組み合わせて試行錯誤したんですよ。
吉田氏:
いや,あれはしっかりキャラが立っていて面白かったです。でも,実はミラージュプリズムに関しても運営側とプレイヤー側で,意識にズレがあったシステムの一例です。ミラージュプリズムは,パッチ2.0の時点から仕組みはできあがっていたんですが,あえて実装しなかったシステムでもあるからです。
4Gamer:
それはなぜですか?
吉田氏:
新生FFXIVで,MMORPGを初めてプレイする方が多いと思ったからです。初めてオンラインのFFに触れる人達からすると,FFシリーズだと思ってプレイするわけですから,やはり黒魔導士には黒魔導士の格好をしていてほしいだろうし,パッと見で「あの人は戦士か,装備のレベル高そうだなあ!」という感じで強さの指標を分かりやすくしておきたかったんです。そうすれば,「自分もいつかああなりたい」と感じると思ったのです。自分が初めてMMORPGをプレイした時に,ほかのプレイヤーの装備を見て憧れたからこそ,最初の半年くらいはその状態を維持したいと思いました。最初からミラプリが入ってると,「あれ?みんなスカートとか,上半身裸でダンジョン来てるけど,これってFFだよね?」となってしまいそうで……。
あー,超強いのに半裸の人とかいますもんね(笑)。
吉田氏:
MMOに慣れていないと,「えっ!? これがFFなの?」と引いちゃう人もいるはずです。だから馴染むまで……パッチ2.2まで待ちました。MMORPGのプレイ経験のある方には「さっさと入れろ」と言われましたし,「おしゃれの大事さは,吉田ならわかってるだろうに!」と。最初からオシャレを楽しみたかった人達にしてみれば,そうなっちゃうのは当然なのですが……。運営の都合と言われてしまえばそれまででもあります。多種多様なニーズに,どのように,いつお応えするのか,いつもすごく悩みます。
4Gamer:
こうしてお話を聞いて,すごく納得しました。装備に関しては,MMO初心者ではない自分でも想定どおりの気持ちを味わっていましたから。当時は神話装備に憧れる時代だったので,全身が神話装備の人をずっと眺めていたりしたんですよ。「調べる」を押して(笑)。
吉田氏:
「いつか神話フルセットに」と,思いますよね(笑)。
4Gamer:
当たり前ですが,運営側はそんなに細かな部分までプランを組み立てているんですね。言われてみるまで意図には気付きませんでした。
吉田氏:
世界的に見てもMMORPGというジャンルは,いまかなり苦戦していて先細りしてきています。だからこそ,MMOPRGのゲーム人口を増やすためにも,初めてMMORPGに触れる方への配慮は大切にしたいと考えました。「MMOを分かっているからこそ」できないことや,時期を待つことも必要なのではないかと,ずーっと考えています。
4Gamer:
思うに,自分のようなプレイヤーは近くのものを見ながら話していて,吉田さんはずっと遠くにあるものを見て話している。そうすると,先ほどの話のように食い違いが生じてしまうんですよね。今回のようにあらためて説明されれば,「ああ,そういうことだったのか」と納得できるんですが。
吉田氏:
だからこそ,プロデューサーレターやライブ,イベントで皆さんとはできる限り対話したいと思っています。もちろん内容によっては事情を説明させていただいても,「それは運営の都合だろ」と言われる場合もあります。ただ,いずれにせよ理由が明かされないままプレイするよりは,ちゃんと説明があった方がそれをもとにプレイヤーさん同士が議論できますし,発展性が少しでも生まれればと,できるだけ前向きに考えるようにしています。
4Gamer:
そうやってプレイヤーとの対話を諦めないのが,吉田さんの良いところだと自分は思います。
MMORPGは,長く遊ぶ分だけ面白さと同時に細かいストレスも積もっていきやすいゲームです。そういうストレスをぶつけるためにも,MMORPGプレイヤーには仮想敵も必要なのかなぁと(笑)。
4Gamer:
仮想敵……と言っていいんですかねぇ(笑)。でも,ここまでプレイヤーの好意も敵意もひっくるめて相手をしてくれるプロデューサーがいるというのはやっぱりありがたいことですよ。
吉田氏:
ゲーム内で「吉田あああああああ!!!!」というシャウトを見かけると,自分でも同じシャウトしますし(笑)。
4Gamer:
ちょ,なにやってんすか!?
吉田氏:
プレイヤーとしてプレイしていると,「運営はやむを得ずやっているんだけど,たしかにこれはしんどいよな……」と思う瞬間はもちろんあるんです。そんなときはFCチャットで「なんだこのクソ仕様は,すぐ直さないとダメだろ!」とか言ってますもん……。
4Gamer:
自分で自分を叩いてるのか……(困惑)。
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