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[GDC 2014]インディーズゲーム開発で盛り上がるブラジルの現状と市場の課題
今回のセッションでスピーチを行ったのは,IGDA Rio de Janeiro運営者であるArthur Protasio(アートゥル・プロタシオ)氏と,IGDA Curitibaを運営するBruno Compagnola de Paula(ブルーノ・コンパニョーラ・デ・パウラ)氏の2名だ。
IGDA CuritibaのBruno Compagnola de Paula氏 |
IGDA Rio de JaneiroのArthur Protasio氏 |
ブラジルは人口2億人を超えており,2013年におけるGDP(国内総生産)は世界7位という,マーケットとして大きなシェアを持つ国の一つ。さらには,2014年のFIFAワールドカップ ブラジル大会や2016年のリオデジャネイロ オリンピックの開催を控えており,今後の経済発展にも期待が持てることから,ゲーム市場としても有望視されている。
しかし,ブラジルでは,ゲーム機を含む精密機器などに対する輸入税の税率が非常に高く,ゲーム市場の成熟を阻害する要因となっている。
たとえば,日本ではPlayStation 4が4万2000円程度で購入できるのに対し,ブラジルでは3999レアル(約17万5000円)と4倍以上の価格になる。ちなみに,価格の約63%が輸入税にあたるそうだ。詳細は「こちら」の連載記事に掲載しているので,興味のある人は参照してほしい。
このように,ゲーム市場を取り巻く環境に恵まれていないにもかかわらず,ブラジルではゲームの開発スタジオが増え,Behold Gamesの「Knights of Pen & Paper」のように,国外で注目されるタイトルも現れるなど,成長の兆しを見せている。
「Ballistic」は,Facebook向けにリリースされたブラウザベースのFPS |
テーブルトークゲームで遊ぶような感覚のRPG「Knights of Pen & Paper」 |
日本のゲームをリスペクトしたという横スクロールアクションの「Oniken」 |
Protasio氏は,ブラジルのゲーム市場がすでに7億ドル規模に成長しており,2008年には42社だったゲーム開発スタジオの数も,2013年には200社にまで増えていると説明。
また,Paula氏によれば,ブラジルではインディーズゲームの開発者達が即興でゲームを制作するゲームジャムが非常に盛んで,ブラジル各地で1年に60回も開催されているという。
ゲームを開発するコミュニティが形成されていくにつれ,国内外でヒットする作品も増えていったとのこと。これには,インターネットを介したデジタル流通の仕組みがここ数年で飛躍的に普及したことも影響しているのだろう。
まず,エンターテイメント制作のキャリアが短いためか,「ブラジル人が作ったゲームをブラジル人自身が信用していない」のだという。
たとえば,先述した「Knights of Pen & Paper」は,ワールドワイドで50万ダウンロードを記録しているタイトルだが,ブラジルでは1万8000ダウンロードと,日本の2万1000ダウンロードよりも少ないのだ。
またProtasio氏は,「語学力の低さ」も成長を阻む要因の一つだとコメント。Protasio氏によれば,ブラジル人の英語能力は南米諸国の中でも最低とのこと。そのため,インターネットでさまざまなゲームをダウンロードできる時代になっても,海外のゲームを英語版で直接プレイするような人は少ないのだという。
Protasio氏は,ブラジル自信の市場規模は小さいためローカライズされるゲームが少ないが,翻訳されたものは長く愛される傾向にあると述べ,海外の優れたゲームに入ってきてほしいという切実な思いを訴えかけていた。
筆者は今回のセッションを聴講して,ブラジルのゲーム市場(とくに消費者側)はまだまだ課題が山積みだが,少なくとも開発者に関しては大きな可能性を秘めていると感じた。
まだ成熟していない部分はあるにせよ,盛んに行われているゲームジャムなどで切磋琢磨していけば,インディーズ以外のプラットフォームでも,ブラジルのゲームクリエイターが手がけるヒットタイトルが生まれる可能性も高そうだ。
また,インターネットをはじめとしたデジタル流通,Kickstarterなどのクラウドファンディングなども,ゲームクリエイター達には追い風となるだろう。
数年後,GDCなどのイベントで,ブラジルのゲームクリエイターがサクセスストーリーを語る講演が行われる未来を期待したいものである。
Game Developers Conference公式Webサイト
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Knights of Pen & Paper
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