小島プロダクション初となる海外スタジオのオープニングセレモニーをレポート。最先端技術を取り入れた作品がここから生まれる

新設されたKojima Productions Los Angeles，通称ロサンゼルススタジオ

　KONAMIの小島プロダクション初の海外スタジオとして，米国カリフォルニア州ロサンゼルス市に作られたKojima Productions Los Angeles（以下，ロサンゼルススタジオ）が，現地時間の9月5日，メディア向けに公開された。
　日本から小島秀夫氏やリードアーティストの新川洋司氏らが駆けつけてのオープニングセレモニーが行われたので，その模様をお伝えしよう。

　ロサンゼルススタジオは，太平洋岸に程近く，カリフォルニアらしい太陽の光が目一杯に降り注ぐモダンな雰囲気のオフィスだ。アメリカンサイズの2階建て住宅をオフィスにしたような建物で，奥には芝生が敷き詰められた庭があり，野生のウサギが人間を気にすることなく走り回っているような，のどかな環境になっている。
　この建物の前身は，ハリウッド映画の全盛期であった1920年代から40年代にかけて映画監督やプロデューサーとして活躍し，航空機製造メーカーHughes Aviationsや薬品研究施設であるHoward Hughes Medical Instituteを経営する大富豪であった，ハワード・ヒューズ氏の旧宅の1つであるとのことだ。


　このオフィス周辺の一帯は，もともとHughes Aviationsがあった場所であり，滑走路だった場所に住宅地の造成が進められている様子。今もイベント施設として利用されることのある巨大なハンガーがオフィスの目の前にあり，YouTubeやFOXのオフィスなどが隣接するほか，広域で見ても，Sony Computer Entertainment AmericaやActivision Blizzardなどのゲーム企業，そしてハリウッドの特殊撮影関連のスタジオなども多い。人材を求めるには最適な立地条件と言えそうだ。

　ロサンゼルススタジオのオフィス1階部分は，かつて航空機メーカー従業員のカフェテリアだったらしく，オーディオルーム以外，ほとんどの場所に壁がない，非常にオープンな作りになっている。
　晩年は対人恐怖症だったというヒューズ氏は，建物の裏側にあった階段を利用して，2階部分のアパートにアクセスしていた。ヒューズ氏の生活スペースだった場所は，数人が談笑できるロビーにも似たミーティングルームや，小島秀夫監督のオフィスに生まれ変わっている。

1階部分はオープンなつくりで，非常に快適そうな清潔な空間になっている。快適過ぎて，仕事がはかどるのかどうかちょっと心配

オフィスミーティングを行うスペース。「ソリッドルーム」や「リキッドルーム」と名付けられた会議室も擦りガラスでわけ隔てられているだけで，その擦りガラスをチョークボードとして使うのだという

　オフィス内のデスクは新品の状態で，ゲームスタジオには良くあるガジェットや縫いぐるみなどがほとんど置かれておらず，壁にもポスターなどがかかっていないなど，オフィスの真新しさが感じられる。

　ロサンゼルススタジオは最大で150人ほどを雇用する予定であるらしいが，現在はまだ30人ほどしかいないとのこと。
　ハリウッドのVFXスタジオや近辺のゲーム企業から参加した3Dアーティストや，「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」（PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360）（以下，MGSV）のマルチプレイヤーコンポーネントとなる「METAL GEAR ONLINE」の開発に従事するメンバーらが中心であり，オープンフロアだけに，まだどこかがらんとした印象だった。

　今回のオープンハウスで，まずメディア関係者が通されたのが，そのオフィスの離れとなる建物にあるシアター。もともと工場の専用消防局だった場所を改築した施設だそうだ。

　ここではMGSVのプロローグである「GROUND ZEROES」の新しいライブデモが披露されたが，その模様やメディアによる合同インタビューに関しては，また後日にじっくりと紹介する予定だ。

小島氏は，ロサンゼルススタジオの設立にあたって，写真の専用シアターと，ウォシュレット付きトイレの2つだけを注文したらしい。水回りの関係でウォシュレット付きのトイレは，メインオフィスの1か所だけに用意されているとか

　スタジオのオープニングセレモニーでは，特製はっぴを着た小島氏らによって鏡開きが行われたほか，新川氏による新しい直筆アートが公開された。想定していたものよりも大きなキャンバスが発注されてきたらしいが，墨汁を使って描かれた，お互いをカバーし合うかのようなソリッド・スネークとメリルが勇ましい。
　新川氏にとって，メリルは特に思い入れのあるキャラクターであるらしく，このアートもロサンゼルススタジオのどこかに飾られることになるとのことであった。

小島秀夫氏（中央）とともに鏡割りを行う，ロサンゼルススタジオのスタジオヘッドに就任した関根トム氏（左）と，コナミデジタルエンタテインメント米国法人社長の壷井知行氏（右）

自身が描いたスネークとメリルの横に立つ新川洋司氏

　小島氏によると，このロサンゼルススタジオ設立の目的は，MGSVを含む次世代ゲーム機向けの人材を，この地で雇用しやすくすることであるという。ロサンゼルスと言えば，カナダのモントリオールなどと並んでゲーム開発の中心地であり，ハリウッドで活躍するCGアーティストなども多い。そうした有能な人材の中にはすでにロサンゼルスで生活基盤を築いている人も少なくないはずで，この地にオフィスを持つことの意味は大きいだろう。

　当面の間は，ロサンゼルススタジオで独自のプロジェクトを進めるのではなく，小島氏の直属として，本部である「ジャパンスタジオ」と共同で開発していくことになるという。MGSVではスネーク役にハリウッド俳優のキーファー・サザーランドさんが抜擢されたが，モーションキャプチャや声優のタレント確保といった面でも，ロサンゼルスならではのメリットがありそうだ。

　このスタジオの設立は，すでに開発が進んでいる「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」よりも，その“次の作品”のための一手だろう。小島プロダクションからは，今後も最先端のグラフィックスやゲームシステムが詰め込まれた作品が生み出されることになるはずだ。

「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」公式サイト