インタビュー
「チェインクロニクル」3周年記念インタビュー。運営開発を手がけてきた松永 純氏,小林 央氏,山浦大輔氏の心に残るエピソードとは
そして7月31日には,東京・秋葉原にて「チェンクロ3周年『絆の大感謝祭』ファンミーティング2016」が開催される。このオフラインイベントでは,チェンクロの第3部やアニメ「チェインクロニクル 〜ヘクセイタスの閃〜」に関する最新情報が一挙公開される予定だ。
今回4Gamerでは,絆の大感謝祭の開催に先駆けて,チェンクロの企画開発を手がける総合ディレクターの松永 純氏と,運営ディレクターを務める小林 央氏,そして開発ディレクターの山浦大輔氏に,本作のこれまでを振り返ってもらった。
松永 純氏 |
小林 央氏 |
山浦大輔氏 |
魔神と特効キャラの関係をどう設定するか,常に頭を捻っている
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は,チェンクロのサービスイン3周年を記念して,皆さんにこれまでを振り返っていただこうと思うのですが。
松永 純氏(以下,松永氏):
(資料の年表を見ながら)こうしてあらためてチェンクロの年表を眺めてみると,本当にたくさんのイベントをやっていますね。魔神襲来イベントなんてもう20回近くもやっているのか……。
4Gamer:
プレイヤーからすると,魔神イベントは新しいキャラクターを入手する機会ですし,魔神のコレクションも楽しみの一つになっています。
松永氏:
そうですね。おかげさまで,そういった感想を多くのプレイヤーの皆さんからいただいています。
魔神と言えば,身体にナンバーが振られていますよね。熱心なプレイヤーは解析を試みたりしていますけど,実際のところあのナンバーには何か意味があるのでしょうか。
松永氏:
すでに一部では有名な話になっていますが,あれは「ヌクテメロンの魔神」というものを参考にしているんです。ヌクテメロンの魔神は,それぞれ1時から12時のいずれかが割り振られており,チェンクロの魔神もそれに倣っています。各時間に複数の魔神が存在しているので,次のナンバーを予測できる法則性はないですし,同じナンバーの魔神が比較的近いタイミングで出てくることもあります。
また,魔神の名前や肩書きも,ヌクテメロンの魔神のそれをアレンジしています。ただ総数が決まっているので,最近はなかなかしっくりくる名前がないと担当のスタッフは嘆いています。カタリスみたいな元々の名前の印象に対して,“冒涜の魔神”的な意味合いとドラマ性,キャラデザインのバランスを取らなければいけないので。僕は「まだ行ける!」と無責任なことを言っていますけど(笑)。
4Gamer:
魔神のデザインは,どのように決定しているんですか?
すべてのキャラクターデザインは,イラストレーターさんに発注する前に,僕とチームの担当者で綿密な打ち合わせをするんですけど,とくに魔神は毎回苦戦しますね。魔神は,ユグドやほかの大陸とは違うところから来ているという設定ですから,外見や衣装はチェンクロの各勢力/大陸とは違うもを意識しています。このネタを毎回ひねり出すのが大変で……。
そして何より苦労しているのが,魔神と特効キャラとの関係性なんです。1対1の敵同士の関係性って,ザックリ分類すると仇,家族,友達……などが考えられますが,わりと限界があって。ですから,バリエーションが尽きてきて「似たような関係は前にあったよね」という話が頻繁に出てくるんですよ。
まあ,でもまだまだ気合で何とかしたいなと(笑)。
4Gamer:
そうなるとコラボレーションが絡む魔神イベントは,原作があるので比較的特効キャラが作りやすかったりするんでしょうか。
山浦大輔氏(以下,山浦氏):
残念ながら,コラボだからといって作りやすいということはないです(笑)。コラボさせていただく作品の原作に沿ったストーリーや設定を活かすように魔神の設定を作るわけですから,むしろチェンクロの世界観だけで構築するより難しいかもしれません。
4Gamer:
原作の世界観を崩さないことも重要ですよね。「これはやってくれるな」といった制約もありそうですし。
山浦氏:
場合によっては,そういうこともあります。ただ,たいていチーム内に原作のファンが少なからずいたりするので,そのスタッフが「チェンクロでやるなら,こうしたい」という案をいろいろ出してくるんです。その熱意がコラボ先の皆さんに伝わり,「じゃあやりましょう」と快諾していただけることが多いですね。
小林 央氏(以下,小林氏):
加えて,スタッフがかなり原作を研究して設定やストーリーを作り込みますから。たとえば先日実施した「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」とのコラボでは,原作者様から「再現性が高い」という感想をいただきました。
4Gamer:
魔神イベントの開発はいろいろと大変そうですけど,ぜひ今後も続けてほしいところです。
松永氏:
ええ,やはりボスキャラを倒して自分のものにするという要素は単純に熱いですよね。これからも続けていきたいなと。また,魔神イベントとは別に,もう一つボスキャラ討伐イベントを追加しようという話が進んでいます。
山浦氏:
やはりボスキャラは,プレイするうえでの大きな目的になりますし,ストーリー的にも重要な存在です。したがって,ストーリーにどう登場させるかといった位置付けを考えたうえで登場させるつもりです。
もう3年間ずっと,ボスキャラといえば魔神,という前提でやってきているので,新しいボスキャラの概念というのがなかなか作りにくいんですが,魔神とはまた別の熱さが味わえるコンテンツにできるよう,内容も世界観もしっかり揉んでいるところです。
近日,詳細が発表できると思うので,楽しみにしていただければと思います。
4Gamer:
皆さんが,とくに記憶に残っている出来事はありますか? 「これは大変だった」みたいなものでも構いません。
山浦氏:
なにが大変だったというよりは,今まで作ってきたものすべてが大変でしたね……。どれも一生懸命作っていますが,楽しみながらどんどん作り込んでいって,結果的に自分達の首を絞めるというか(笑)。
松永氏:
これも魔神イベントの話になってしまうのですが,個人的には2013年11月の「稲妻の魔神アエル・グルン」です。これは初めて特効キャラをセットした魔神で,反響が大きかったんですよ。開発当時は,一般的なボスイベントとして魔神キャラクターを発注していたんですが,ここにも物語性があったほうが熱いのではないかと思って,アエルとフィーというふたりの竜騎士を途中で用意した結果,皆さんから好評をいただきました。
ただ,特効キャラを深くストーリーに絡めるとなると,どうしても時間がかかってしまいますので,そのあとしばらくは魔神単体でイベントをやっていました。その間,作家さんやスタッフと一緒にいろいろ詰めていって,ようやく2014年6月に「真理の魔神ハティファス」を開催できたんです。そこから,今の魔神イベントの設計が固まった感じですね。
4Gamer:
今や魔神と特効キャラはセットで当たり前というイメージですけど,最初はそうじゃなかったんですよね……。
松永氏:
それ以外にも,皆さんから感想をいただいてすぐに準備を始めて,しばらく経ってから仕様を固めたものがたくさんあります。
振り返ってみると,どうやってストーリーやゲームの楽しさを組み立てるか,それをどう伝えるか工夫したところには,必ずプレイヤーの皆さんの“声”がありました。そして達成できたときにまた皆さんが反応してくださって,それで今のチェンクロができていったんだなって,あらためて感じます。
力技で進めていた第1部終盤と
第2部序盤の並行開発,そしてイベント展開
4Gamer:
そのほか,強く印象に残っている出来事はありますか?
山浦氏:
私はやはり2014年7月の第2部のスタート前後ですね。私自身はもともとチェンクロのメインプログラマーとして立ち上げから関わっていたんですが,2014年5月頃に松永から開発ディレクターを引き継いだんです。その中で,自分が何をすべきかを考えたときに,第1部が良い形で終わったので,第2部でそれをきちんと受けてつなげていくにはどうすればいいかを重要視しながら,いろいろ切り盛りしていました。
プレイヤーの皆さんの声をどう活かし,ゲームシステムををどう改善していったらこれからも楽しんで遊んでいただけるか,それをずっと考え続けて今に至るのですが,当時は第2部が2年も続き,さらに第3部を作り始めるとは思ってもいませんでした(笑)。
松永氏:
第2部のストーリーを考え始めたのは,2013年12月の公式生放送が終わったあとなんですよ。イベントが終わったあと,そのまま第2部の構想について会議した記憶があります。そう考えると,実際に第2部がスタートするまでに,やっぱり半年かかっているんですよね。
4Gamer:
そうなると,第1部の後半と第2部の開発は並行して行われていたわけですよね。進捗の管理が相当大変だったと思います。
そこは第2部の「CRIMAX CHAPTERS」と,第3部の開発も同じなんですけど,我々自身ですら「どうやっているんだろう」と思うくらいです(笑)。現場にはいつも無茶を承知でいろいろお願いしている状況です。
松永や私はもちろん,開発チームの面々も自分達の納得がいくものを皆さんにお届けしたいという気持ちがありますので,大変ですが,やりがいを感じてくれて,ちゃんとついてきてくれるのが頼もしいですね。
小林氏:
第2部はゲームのターニングポイントでしたから,開発の物量が多く,またプレイヤーの皆さんの関心と期待が相当高まっていました。開発チームにかかるプレッシャーも相当大きかったですね。
また運営チームでも,リリースが近づくことで出せる情報が確定するので,それをいつまでにどれだけ出すかを一つずつ決めていくんです。しかし,どうしても拾いきれないものが出てしまって大慌てするということがありました。2014年6月から7月にかけては本当に大忙しでしたね。
それでも第2部をしっかりしたコンテンツとして提供できましたから,今振り返ると良い思い出です。
松永氏:
今もやっていることの量は多いままですが,当時はそれに加えて,未経験のさまざまなことが舞い込み続けてくる状況でした。1周年記念ファンミーティングの直後に,としまえんでイベントをやったりもしましたし。
4Gamer:
ああ,そんなこともありましたね。
松永氏:
開発でてんてこまいな中,イベントの開発協力の依頼がきて,「としまえん? ホントに?」と思いながら台本を見たら,主人公役の石田 彰さんのものすごい長ゼリフが飛びこんできたのを覚えています(笑)。
それまで,主人公のセリフは常に1行だったんですけど,いきなり10行以上が用意されていて。すっごく監修したかったんですが,収録のスケジュールを考えるとそれも無理で。でもその結果,主人公がいっぱいしゃべっている! と喜んでくださった方がたくさんいたというオチが付きました。
4Gamer:
そうしたプレイヤーに向けた試みというと,チェンクロでは早くからニコニコ生放送の公式配信に取り組んでいた印象が強いです。2013年というと,ほかのタイトルを見回しても,公式生放送はほとんどありませんでしたから。さらに毎回違った切り口で,一視聴者として新鮮でした。
松永氏:
しかも,小林のプレイ実況が回を追うごとにうまくなっていくという(笑)。
いつの間にか実況担当みたいになっていましたね(笑)。
公式配信のコンセプトは,チェンクロの最新情報をお届けするというものなんですが,あるときプレイヤーの皆さんの上手なプレイを披露できると面白いんじゃないかというアイデアが出たんです。そこで最初は観覧席にいたお客さんの中から有志を募ってプレイしていただくことを試みました。
そこから,ゲームの中にもタイムアタックの要素を入れようという話になって,一つのコンテンツとしてカジノを用意したんです。実際,カジノのタイムアタックは好評でした。
4Gamer:
そんな経緯があったんですね。
小林氏:
トッププレイヤーの巧みなプレイには,皆さんの関心が集まります。7月31日に開催する絆の大感謝祭でもバトルロワイヤルを実施しますので,ご期待ください。
山浦氏:
思い返してみると,チェンクロがリリースされた当初,スマホのゲームでプレイヤーのテクニックが問われるようなタイトルは,珍しかったんですよね。
現状では,トッププレイヤーのテクニックは我々の想定をはるかに上回っており,もはや小林も解説しきれないくらいになっています。
小林氏:
プレイが速すぎて,解説する前に敵が全滅してしまいますね(笑)。
山浦氏:
タイムアタックイベントで大幅に記録を更新できる「置きチアリー」に代表される,先行入力系の操作などは,開発チームのバトル担当も「こんなテクニックが出てくると思わなかった」と言っているくらいです。それが動画で公開されて,皆さんが鑑賞したり,実際に試してみたりしているわけですから,作っている側としても嬉しいですね。
4Gamer:
公式生放送でとくに印象に残っているものはありますか?
松永氏:
「刃牙道」コラボ記念ですかね?
小林氏:
ああ,あれは変わりダネでしたね。生放送中に参加プレイヤー全員で討伐した数を計測して発表するという企画だったのですが,初めての試みだったのでうまくいくかヒヤヒヤしていました。
4Gamer:
そもそも「刃牙道」とのコラボは,どういう経緯で決まったんですか。
松永氏:
実を言うと2013年8月のサービス開始前には,もうコラボの話が出ていたんですよ。ただチェンクロもスタートした直後でしたから,まだ世界観の印象が固まっていない段階でイメージの異なる作品とコラボするのはどうだろうと考えて,1年近く待ってもらったんです。
山浦氏:
ちょうど第2部公開に伴い,拳キャラが実装されるタイミングで「今ならコラボできる!」となりまして。
松永氏:
そうそう。そういう意味では,第2部で拳が実装されなかったら,あのコラボはずっと実現しなかったかもしれませんね。やはりコラボは原作再現度や,ゲームとの親和性が大切なので。
実は当初,ローマの剣士みたいな感じで刃牙が剣を持っているイラストなどもあったんですが……やはり,ちゃんと拳で戦って良かったなと思いますね。
声優陣やイラストレーターなど
関わった多くの人に愛されるチェンクロ
4Gamer:
チェンクロは,キャラクターのボイスを演じている声優陣にも好評ですよね。とくに緑川 光さんは相当コアなチェンクロファンとして,プレイヤーの間でも有名です。
松永氏:
緑川さんには第2部からキャストとして参加していただいていますので,最初のボイスの収録は,たしか2014年の5月頃でしたね。収録の当日にチェンクロの概要を紹介したところ,「面白そう」と,その日からずっと遊んでくださっているんです。
また緑川さんは,チェンクロをプライベートでも広めてくださったようで,そのあとオファーした声優さんには「緑川さんから面白いゲームだと聞いています」と言ってもらえて,良い空気で仕事を進められたということが何度もありました。
4Gamer:
チェンクロラジオやオフラインイベントなどでの,緑川さんのチェンクロトークのガチッぷりはすごいですよね。
山浦氏:
最近実施したダンまちコラボの踏破型イベントでも,緑川さんが2桁ランキングを記録しているのを発見して,チーム内が騒然としたんですよ。緑川さん自身もラジオで「がんばった」とおっしゃっていて。
私達も生半可な知識では緑川さんと話ができないので,難しいところです(笑)。
小林氏:
生放送でプレイを披露していただいたこともあるのですが,そのときはリハーサルで「これはちょっと僕には簡単すぎるから,もっと制約を付けたルールにしましょう」と緑川さん自身から提案をいただきました。結局,その場にいたほかのゲストの声優さんが演じているキャラ縛りでプレイしたんですが,緑川さんは見事にクリアしていましたよ。
4Gamer:
そこまでチェンクロをやり込んでもらえると,作っているほうも嬉しいですよね。
松永氏:
ええ。また声優さんだけでなく,イラストレーターさんも結構やり込んでくださっているんですよ。キャラクターの発注などでやり取りしていると,「自分が描いたキャラを手に入れました」というような報告がよくあります。
とくに竜徹さんは実際にファンミーティングの対戦企画に参戦して,優勝するくらいやり込まれていたのが印象に残っていますね。
松永氏:
そのときの約束で,2015年10月から「イラストレーターフィーチャーフェス」が始まったんですよね。第1弾が竜徹さんということで。
4Gamer:
ちなみに今,チェンクロでは何人のイラストレーターを起用しているのですか。
松永氏:
正確な数字はすぐ出てこないのですが,100名は超えていますね。
4Gamer:
起用の基準はあるのでしょうか。
松永氏:
画風が第一ですね。チェンクロらしい,透明感のある王道ファンタジーの雰囲気になじむ方というか。一方で,ちょっとエッジが効いていて「こういうのもアリだな」と思わせる方にも,全体のバランスを見てお願いしています。イラストからは,皆さんがチェンクロを好きだという気持ちが伝わってきて嬉しいですね。
4Gamer:
今,チェンクロのキャラクター数はどのくらいなんですか?
松永氏:
この前,全部並べたポスターを作ったときは800人近くいました。今はもう少し多いです。
小林氏:
第3部が始まって少ししたら1000人を超えますね。
山浦氏:
プレイヤーの皆さんからの強い要望もあり、先日のアップデートでアルカナ所持枠を最大1000まで増やしたんですが,おそらくすぐ足りなくなるという(笑)。
4Gamer:
チェンクロの各キャラクターは,イラストだけでなくSDキャラもありますから,開発が大変ですよね。
山浦氏:
ええ,3Dモデル班のこだわりで、SDキャラは使い回しをせず1体1体全部新規で作っています。ポイントとしては,実際のバトル中に表示されるSDキャラが可愛らしく見えるかどうかにもこだわっていますね。これは正面から見て作っているだけでは,なかなか気づかないんですよ。
小林氏:
SDといえども,イラストレーターさんの画風をきちんと活かすようにしています。
4Gamer:
武器もSDでしっかり再現していますよね。
山浦氏:
武器単体だとパッと見では比率がおかしく思えるものもあるんですけど,SDキャラに持たせるとピッタリということも多いんですよね。それはもうモデル班のリーダーによる職人芸で,「たぶん,こうしたら似合う」とやると,本当にそうなるんですよ。同じモデル班の若手が作ってもそうならない。ところが,そのリーダーがちょっと手直しすると,すごく雰囲気が良くなるんです。そんな風に「匠の技」がモデル班に広まっていっています。
松永氏:
数の話ですと先日,ギネス世界記録に「同一ゲーム内でのシナリオの量」という内容で申請してみたことがありました。残念ながら,絶対的な比較の手段がなく受理できないという結果だったんですが,その際に周辺タイトルとの比較調査をしてもらったら,やはりチェンクロは圧倒的に多かったみたいです。
4Gamer:
認定こそされなかったけれども,おそらく世界一だろうと。
松永氏:
間違いないとは思います。シナリオボリュームに関しては,リリース当初から驚かれていましたけど,3年経った今では当時の4〜5倍以上になっています。まさに3年間の積み重ねですね。
イベントやコラボの展開がスムーズにできるようになっていた2015年後半
4Gamer:
お話を聞いていると,印象に残っている出来事はリリース当初から第2部の前半くらいに集中する感じでしょうか。
松永氏:
そうですね。どうしても苦労したことの印象が強くなるので。2015年後半になって第2部も中盤を過ぎた頃には,いろいろうまくできるようになったかな,と思います。
小林氏:
プロモーションもゲームと連動するよう展開できていますしね。2015年夏にはインゲームイベントとオフラインイベントを連動させる企画も実現できましたし。
この頃にはコラボも定期的にやっていくことが決まって,先方に「この時期に,こういうインタフェースでどうでしょう」と提案できるようになっていました。
松永氏:
逆に言うと,冒険が減っているかもしれません。最初の頃は素っ頓狂なことをやっていたなと思うこともありますからね(笑)。
小林氏:
キャラクターの新バージョンが初めて実装されたのは2015年の半ば頃でしたっけ?
松永氏:
どうだったかな……。新バージョンはもっと早く出したかったんだけど,どう出すべきか運営チームと相談していたんですよね。イラストだけ先に出来上がっていて,ようやく「よし,このタイミングで!」と実装できたことを覚えています。
4Gamer:
2015年7月の「ブレイブ フロンティア」とのコラボは,ちょっと意外な感じがします。チェンクロはコンシューマゲームとのコラボが強い印象ですから。
松永氏:
あれは先方のプロデューサーと対談して決まったコラボで,ほかとは作り方が違って面白かったです。せっかく相互にコラボするのだからと,両タイトルでストーリーをザッピングさせて,両方やるとより楽しめる要素を入れたりしたんです。スマホタイトル同士だからできたコラボだなと。また同じようなことをどこかでやってみたいですね。
4Gamer:
2015年9月から10月にかけては,スマホゲームの「ボーダーブレイク mobile -疾風のガンフロント-」とアーケードゲームの「ボーダーブレイク」にチェンクロのキャラクターが登場するというコラボもありました。
松永氏:
あの頃から,チェンクロがほかのタイトルに進出するという取り組みも始まりました。
「ボーダーブレイク mobile」は,ストーリーが凝っていて面白かったですね。僕はイベントドラマがすごく笑えて好きでした。
山浦氏:
アーケードゲームのほうは,「ボーダーブレイク」チームのスタッフがすごくチェンクロを気に入ってくださったことから実現した企画です。後ろに宝箱を付けて動き回るところなど,すごくこだわって作っていただきました。「作ってみたので見てください」と呼ばれたので行ってみたら,「よくぞこここまで」という仕上がりで,本当にキャラ愛を感じました。
4Gamer:
やはり“好き”がきっかけだと,クオリティに影響があるのでしょうか。
松永氏:
それは当然あります。最初から座組みが決まっていて,「この素材でやってください」みたいな感じだと普通に終わってしまうんですけど,お互い好きでやっていると,お願いしていない素材が出てきたりするんですよ。「オリジナルの背景を作りました」とか「未使用のボイスがあるので使いましょう」とか。そうなるとクオリティが格段に上がりますし,プレイヤーの皆さんも喜びますよね。
ゲームの開発というと,時間をかければクオリティが上がるのは当然ですが,逆に運営の中でものを作るときは,時間が決まっていますから絶対的な限界があります。そこをカバーできるのは,もう愛情だけです。好きだからこだわれるし,好きだから皆さんが求めているものに最短距離でたどり着ける。それが大事だと思っています。
山浦氏:
プレイヤーの皆さんも,こだわっている部分には気がつきますからね。「開発,分かってるな」と。そうなると我々も作りがいがあります。
4Gamer:
ちょっと前後しますが,2015年8月の「太鼓の達人」とのコラボも意外な組み合わせでした(関連記事)。
小林氏:
このコラボを発表したのが2周年記念のファンミーティングのときだったんですけど,会場がザワザワッとしましたからね(笑)。「これは何だ」「何だかよく分からないことが起こっているぞ」と。
山浦氏:
最初はどんちゃんとかっちゃんをどう登場させようか途方に暮れましたが,最終的には夏祭りっぽいステージで彼らに挑まれるような形になりました。コラボ武器も,フィーナとどんちゃんを組み合わせた「フィーナどん」とか(笑)。異色の組み合わせですが,面白い内容になったんじゃないでしょうか。
小林氏:
ちなみに同じタイミングで発表した「シャイニング・レゾナンス」とのコラボは,「やっぱり来たか」と皆さん納得していました。
4Gamer:
チェンクロをリリースした直後の2013年9月に「シャイニング・ブレイド」とコラボしていますからね。初期のコラボなのに,すごくクオリティが高かったことを記憶しています。
小林氏:
ええ,それで「またやってほしい」というリクエストを多数いただいていたんです。そういった皆さんが待ち望んでいるようなコラボと,誰も予想しなかったコラボが同時に発表されたので,「この先チェンクロはどうなってしまうんだろう?」と思った方もいたかのしれませんね(笑)。
4Gamer:
そういえば,コラボキャラが新しいタイプの技を持っていることがありますよね。戦術が変わってしまうような技もあって,「なぜコラボで?」と思うのですが。
松永氏:
順序立てて説明すると,まず第2部からは,大陸ごとにトレーディングカードゲームのエキスパンションを作るイメージでキャラクターを設計しているんですよ。
小林氏:
たとえばケ者の大陸に登場するキャラクターは基本的に戦士ですが,パーティを彼らだけで固めても十分遊べるようバリエーションにしています。一方,鉄煙の大陸に登場するキャラクターは,火力が高いけれどデメリットも大きいので,どういうパーティなら能力を発揮できるか考えさせる設計になっています。
松永氏:
そうやって作っていくと,面白いけどうまく使えない単発のアイデアが出てくるんですが,それをコラボキャラに組み合わせているんです。結果として,遊び方が変わるような新しい技を持つコラボキャラが出てくると。
また開発としても,コラボキャラにもきちんとした遊びを入れたい,ほかのキャラクターと連携したときにシナジーが起きる設計をしたいという気持ちがあります。
山浦氏:
コラボキャラのイメージを重視して新しい技を作ることもありますね。それをのちのち本編の新キャラに持たせたりもしていますし。ちょっと変わったことをしてもコラボキャラなら許される,というわけではないですが,可能性を探る場にしている側面は確かにあります。
4Gamer:
その意味では,2016年2月の「戦場のヴァルキュリア」コラボでは,変身システムが効果的に使われていて記憶に残っています。変身するとどうなるのか,すぐにイメージできましたし。
松永氏:
あれはきれいな流れでしたね。
逆に「英雄伝説 閃の軌跡II」とのコラボのときは,もともと作っていた必殺技をコンボでつなげる機能が本編よりも先に公開されることになって,ちょっとやりすぎかなという話も出たりしました。今後も本編と,ゲーム的な楽しさのバランスをとりながら,進めていきたいですね。
「絆の大感謝祭」では「ここまで言っていいのか」というくらい第3部の情報を公開
4Gamer:
2015年末には,第2部の最後を飾る「CLIMAX CHAPTERS」がスタートしました。
山浦氏:
第2部のストーリーも佳境となる中,内部的には第3部を作ることが決まっていましたから,どうすれば第2部のあともチェンクロが続いていくことをきちんと伝えられるか,相当考えて“CLIMAX”という言葉を選んだことをよく覚えています。これが“LAST”とか“END”とかだと,ゲーム自体が終わる感じになってしまいますから。
小林氏:
2015年12月に公開されたプロモーションビデオは,映画の予告のような仕上がりでしたね。実際,中身も濃いものを提供できたのではないかと思います。
松永氏:
ですね。やはり2年も続けてきた第2部を締めくくるにふさわしい,熱い最終章を作り上げたいという想いがあったので。2年って,すごく長い時間だと思うんです。だから,第2部の冒険をずっと追ってくれたファンの皆さんに,「2年間追いかけて本当に良かった!」と思ってもらえるものに,絶対にしなければいけないなと気合いを入れました。
その一方で,2015年の中盤はコラボが比較的少なかったことを踏まえて,皆さんが喜ぶようなコラボもやっていこうという,いわば二正面作戦を展開しました。その上で通常のインゲームイベントもやっていましたから……まあ大変でした。
山浦氏:
やはり新章の公開にあたってはかなりの作業が発生しますからね。新キャラクターが一気に20体くらい出てきますから,メインストーリーだけでなく各キャラクターのストーリーも一気に追加しますし。これらのデータの仕込みが,運営イベントの更新のタイミングと被ったりするので,結構難しいんですよ。
小林氏:
そんな中でも4月1日にはエイプリルフールネタをしっかり仕込んだり(笑)。
山浦氏:
ゲームを開発していると,いろんな小ネタを考えつくんですよね。でも,あまり表に出す機会がないんですよ。「魔神ゲッベルツ襲来?」もずっと温めてきたネタで,「よし,ここで出そう」と。
4Gamer:
本編のストーリーが重くなっていく中,ちょうどいい緩衝材になった感じがしますね。
小林氏:
そうしたシリアスなストーリーの展開と相まって,アップデート間隔がそれまでの3か月から2か月に短縮されたことも緊張感を生んでいました。2015年末からの半年は,本当にあっという間でしたね。
松永氏:
でも2か月ペースは,やっぱり無理がありました(笑)。そんな最終章だからこそ,クオリティをさらに上げなければならないことを計算に入れていなかったんですよ。シナリオのブラッシュアップも,それまでの何倍も手間と時間をかけましたし,敵キャラからBGMまで,本当に皆でこだわったので。
それでもなんとか第2部のエンディングに到達できて,コラボもそれぞれ好評でしたし,やりきったという感じがありますね。本当に関わった全員が,全力を尽くした結果だと思います。
4Gamer:
そして「CLIMAX CHAPTERS」の最終章「黒の大陸篇」が実装されて約3か月,2016年7月にはようやくフィーナの姉「リヴェラ」をパーティに編入できるようになりました。
小林氏:
リヴェラは第2部を通しての重要人物ですから,「早く使えるようにしてほしい」というリクエストをたくさんいただいていました。
山浦氏:
ストーリーに関わるキャラクターにそういった反響があると,本当にチェンクロを作ってきた甲斐がありますね。単純に強ければいいということではなく,「このキャラを待っていました」と言っていただけるのはありがたいです。
松永氏:
ですね。リヴェラは本当に大切なキャラなので,後日談にあたる本編シナリオもきちんと用意させてもらって。とはいえ,リヴェラは性能も相当こだわっていますが。
4Gamer:
必殺技も専用に用意されていて。
山浦氏:
そうですね。知らないうちにすごいことになっていました(笑)。
4Gamer:
リヴェラを見てしまうと,今後登場する新キャラクターがどうなってしまうのか期待が高まる反面,不安もあります。
山浦氏:
開発チームとしては,やりたいことや表現したいことはまだまだあります。まだ実現できていないこととキャラクターの設計が合致すれば,「作っちゃおうぜ」とノリノリでやることも少なくないです。まさにリヴェラはそういうキャラクターでしたね。「え,これ本当にやるの?」と思いつつも,出来上がってみたら「リヴェラだったら,これくらいやってちょうどいいんじゃない?」と思える仕上がりになりました。
4Gamer:
そして7月31日には,チェンクロの3周年を記念した絆の大感謝祭が開催されますが,何か事前に教えてもらえることはありますか。
松永氏:
今回は,今後のチェンクロの展開に関する情報をドーンと出してしまいます。
山浦氏:
そこまで言っちゃうのか,というくらいに。
小林氏:
私は6月から大阪,名古屋,福岡とファンミーティングで各地を回ったんですけど,会場には熱量の高い方がいらっしゃっており,絆の大感謝祭での発表にも相当注目していました。
これが終わると,次に皆さんに向けて大々的に情報公開できる機会は年末までありませんからね。
あまり情報を出してこなかったアニメの話も“いよいよ”な発表がありますし,なにより本編の第3部ですね。第3部の情報は本当に,これでもかというくらい大々的に,全部出します。
というのは,プレイヤーの皆さんに安心してほしいからなんです。6月に公式生放送で,少し新システムの情報を出したんですが,部分的な内容だと,きちんと意図が伝えきれず,不安を感じる方もいらっしゃったんです。
山浦氏:
情報を少しずつ出していく手法を取ると,こちらとしては,楽しみにしてほしいと思って公開した情報が,説明不足のためにネガティブに感じられてしまうようなこともあるかもしれないんですよね。
松永氏:
3部では,いろいろ新しいことをやろうとしています。そこで絆の大感謝祭では,ストーリーも含めて,第3部でやろうとしていることをもう全部お伝えしてしまおうと。そうすれば,僕らがやりたいことの意図も,ちゃんと伝わって,ワクワクしてもらえるのではと思っているんです。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,今後のチェンクロの展開に期待する人達に向けてメッセージをお願いします。
山浦氏:
スマホゲームで3年続くタイトルはなかなかないと思いますが,いつもチェンクロを遊んでくださる皆さんには本当に感謝しています。第3部は,そうした皆さんの期待を裏切らない内容となっています。絆の大感謝祭では,その点をしっかりと説明していきますのでご注目ください。
小林氏:
絆の大感謝祭では大きな発表がありますが,日々のチェンクロのサービスは変わらず続いていきます。運営チームも開発チームも皆さんに楽しんでいただけるよう努力していますので,第3部に期待しつつ,これからもチェンクロをプレイしてくださると幸いです。
松永氏:
僕らの今年の目標は,3年経った今,チェンクロに初めて触れたときくらいのワクワクをもう一度ファンの皆さんに味わってもらうということです。ずっとワクワクできる,ずっと感動できるRPGでありつづけること,何年経とうがチェンクロの物語が広がっていくことを楽しいと思えること。それを実現できるよう,全力でがんばっていきますので,3周年を迎えたチェンクロを,この先もファンの皆さんとともに盛り上げていければと思います。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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