インタビュー
「ディビジョン」はこんなゲームだった。「UBIDAY2015」で来日した開発者に,ゲームについて詳しく話を聞いた
危険なウイルスのパンデミックによって廃墟と化したニューヨークで,崩壊した秩序を取り戻すために活躍する組織「ディビジョン」の姿を描く本作。原題の「Tom Clancy's, The Division」にあるように,トム・クランシー氏の名を冠し,リアルな軍事描写とハイテク装備,そしてプレイヤーがおのおののロール(役割)を楽しむゲームシステムなど,ファンの期待を裏切らない内容で,2016年の発売を目指して現在開発が続けられている。
UBIDAY2015の会場に出展された試遊台は,最長2時間待ちという盛況で,その注目度の高さがうかがえた。同イベントの開催にあたり,開発を手掛けるUbisoft Massiveのアソシエイトクリエイティブディレクター,ジュリアン・ギャリティ氏が来日。多忙の中,インタビューに答えてくれたので,その模様をお届けしたい。
「ディビジョン」公式サイト
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プレイヤーは崩壊した秩序を取り戻すため,自衛組織「ディビジョン」に所属する
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは本作においてギャリティさんの役割を教えてください。
ジュリアン・ギャリティ氏(以下,ギャリティ氏):
はい。私は,アソシエイトクリエイティブディレクターという立場で制作に携わっています。本作の開発には,たくさんのチームが関わっているのですが,それぞれのチームのアイデアや意見などがバラバラにならないよう,彼らとコミュニケーションを取りつつ,まとめていく仕事をしています。
4Gamer:
なるほど。では,そんなジュリアンさんが手掛けるディビジョンについて,改めてどんなゲームか教えてください。
ギャリティ氏:
ディビジョンは,謎の人工ウイルスが世界中にばらまかれたことで発生した感染爆発により,インフラが失われ,文明が崩壊してしまったニューヨークが舞台です。プレイヤーは秩序回復のために作られた「ディビジョン」という組織に所属し,秩序を取り戻すために戦っていきます。
本作では「オープンワールド」「オンライン」「RPG」という要素をゲームの3つの柱として掲げており,数々のミッションによって構成されたメインストーリーや,Co-op,PvPなどのオンライン要素を広大なオープンワールドで体験できます。さらに,キャラクターを自分のプレイスタイルに合わせて,好きなように育てていくことができます。
4Gamer:
ディビジョンは,どんな目的で活動しているのでしょうか。
ギャリティ氏:
ディビジョンという組織は,命令されて動く軍隊ではなく,一般人を中心に組織された自警隊なのです。ですから,何かの指示を受けて動くのではなく,平和と秩序を取り戻すために今,何をしたらいいのかということ自ら考えて行動しています。
4Gamer:
何かの強大な敵がいるという感じではないんですね。
ディビジョンが戦うべき相手はいますが,1つの組織ではなく,複数の敵が存在します。例えば「クリーナーズ」という集団は,この街からウイルスを根絶しようと考え,相手が生きていようが死んでいようが,あるいは感染していようがいまいが,すべてを燃やし尽くそうとする厄介な連中です。
また「ライカーズ」は,パンデミックの混乱に乗じてニューヨークの「ライカーズ刑務所」から脱獄をした囚人達で,暴力的な集団です。
文明が崩壊したことで,それぞれの集団は好き勝手なことを始めており,それに対してできることを進めていくのが,プレイヤーの目的となるんです。例えるなら,西部劇の保安官や用心棒の現代版といったところでしょうか。
貴重なお宝が眠る「ダークゾーン」で
シームレスにマルチプレイが展開
4Gamer:
ゲームはシングルプレイとマルチプレイがシームレスにできるとのことですが,それはどのように感じになっているんでしょうか。
ギャリティ氏:
ええ,シングルプレイとマルチプレイは,具体的なモードとして分けてはいません。ゲームは通常,ディビジョン達の拠点から市内へ出て行って,そこでミッションを請け負っていくというミッションドリブンな形で進めていきます。市内にはまた「ダークゾーン」と呼ばれる区域があって,そこに入ることでマルチプレイが楽しめるんです。
4Gamer:
ダークゾーンでは,どんなプレイができるんですか。
ギャリティ氏:
UBIDAY2015に出展した試遊台がまさにそれなんですが,ダークゾーンの中には,以前そこを統治していた軍隊が残していった貴重な装備などのお宝があります。それを回収して持ち帰ることで,自分のものにできるんです。
4Gamer:
そのお宝をめぐっての戦いが繰り広げられるということですね。
ギャリティ氏:
ええ,仲間と協力して回収してもいいですし,すでに貴重な物資を手に入れたほかのプレイヤーを倒して奪うのもいいでしょう。私などはとくに仲間を集めたりせず,1人でこっそりダークゾーンに入り,こっそりお宝を回収していく遊び方をしています。
4Gamer:
PvPが必須ではないんですね。
ギャリティ氏:
そうなんです。最大4人のチームを組んでPvPなどをすることもできますが,ダークゾーンでの最大の目的は物資の回収ですから,戦うことは必ずしも必要ではないんです。そこはみなさんのプレイスタイルにゆだね,遊び方に自由度を設けています。
4Gamer:
ダークゾーン内で倒されると,どうなるんですか。
ギャリティ氏:
手に入れたものはすべて落としてしまい,ほかのプレイヤーに奪われます。実は物資を拾うと,キャラクターの腰に目立つ黄色いバックパックが表示されるので,「あいつは,お宝を持っている」ということがすぐバレてしまうんですよ。
4Gamer:
ハイリスク,ハイリターンなんですね。誰かとチームを組みたいときは,どうすればいいんでしょう。
ギャリティ氏:
マップにはオフィスなどのソーシャルエリアが設けてあって,そこに集まることで仲間と組んでダークゾーンに挑めるようになっています。
4Gamer:
チームの仲間を裏切ることもできる,と聞きましたが。
ギャリティ氏:
プレイヤーが撃った弾は仲間にも当たってダメージを与えるので,仲間を撃ち倒してお宝を独り占めすることも可能です。しかし,味方を撃つとペナルティがあるので,それだけリスクは大きくなります。
4Gamer:
どんなペナルティがつくんですか。
ギャリティ氏:
チームの仲間を倒すと「ローグ」というレッテルが表示されるようになり,そのローグを倒した人には多くの経験値が入るんです。つまり,ローグになったプレイヤーは,ほかのプレイヤーから狙われやすくなってしまうんです。
4Gamer:
なるほど。お宝は独り占めしたいがローグになると危険。悩ましいですね。ところでダークゾーンには,何人ぐらい入れるんですか。
ギャリティ氏:
UBIDAY2105では9人でプレイができたんですが,実際には20人以上のプレイヤーが入れるようになる予定で,ダークゾーンももっと広くなる予定です。
4Gamer:
ダークゾーンに入らなくてもゲームを進めることはできますか。
ギャリティ氏:
ええ,マルチプレイは必須ではありません。このゲームはMMORPGのように,明確な終わりというものがないようなデザインになっているので,一度クリアしたミッションを何度もリプレイすることができますし,ダークゾーンも,行くことができるようになった時点から,いつでも入れるようになります。ちなみに,ダークゾーンにはレベルがあり,プレイヤーは自分の「ダークゾーンレベル」に合ったものに挑戦できます。ダークゾーンレベルは,通常のレベルとは別に,ダークゾーンの滞在時間や,経験値などをもとに決まります。
4Gamer:
ということは,ダークゾーンは,ニューヨークにいくつもあるんですね。
ギャリティ氏:
すみませんが,これ以上の詳しいことは,現段階では言えません。あとは,ご想像にお任せします(笑)。
ニューヨークの街を,リアルスケールでゲーム上に再現
4Gamer:
ところで,ゲームの舞台になるニューヨークはどこまで再現されているんでしょうか。
ギャリティ氏:
具体的な広さはお話できないんですが,開発の目標の1つに「本物のニューヨークを再現する」というものがあります。通りの名前や位置関係は現実のニューヨークと同じですし,例えばマジソン・スクエア・ガーデンからブロードウェイまで歩いたとき,現実でもゲームの中でも,かかる時間はさほど変わらない,というぐらいの作り込みをしています。
4Gamer:
ちなみに,移動は徒歩だけですか。
ギャリティ氏:
はい,徒歩のみですね。ですから「ザ クルー」などと比べると,全体的なマップのサイズは小さくなりますが,徒歩での移動に準じた広さと密度は持っています。もちろんファストトラベルはありますので,一度行ったところの移動は楽にできます。
4Gamer:
ところで,そもそも今回なぜニューヨークという街を舞台に選んだのですか。
ギャリティ氏:
そうですね,選んだ理由はたくさんあるのですが,最大の理由は非常に象徴的な場所が多くて,戦場として面白くなりそうだったということです。
4Gamer:
ゲームでは,どんな場所で戦えるんですか。
ギャリティ氏:
タイムズスクエア,マジソン・スクエア・ガーデン,ブロードウェイのフラットアイアンビル,国連のビルなど,実在するさまざまな場所が,崩壊した状態で登場しています。有名な場所だからこそ,大規模感染が発生したあとの景色とのギャップが鮮明になると思います。現地に行ったことがある人なら,リアルにそれが感じられるのではないでしょうか。
4Gamer:
試遊台で見たんですが,ゲーム中に天候がリアルタイムに変わっていく演出はすごかったですね。
ギャリティ氏:
ありがとうございます。時間も天気はダイナミックに変化していきますし,降る雪はプレイヤーの体にも積もり,やがて溶けていきます。今回,本作のために独自開発したゲームエンジン「Snowdrop」のたまものですね。
4Gamer:
降雪はゲームに影響したりするんですか。
ギャリティ氏:
いえ,天気や昼夜の変化が直接影響することはありません。ただ雪が激しく降っているときは,敵が見えづらくなくなったりすることはあります。
4Gamer:
本作のRPG的な要素についてもお聞きしたいのですが,プレイヤーキャラクターはどのようにして成長していくんでしょう。
ギャリティ氏:
ミッションをクリアすると,キャラクターのレベルに影響する経験値のほか,スキルを身に付けるためのポイントが手に入ります。それを適宜,振り分けることで,自分のプレイスタイルに合ったスキルを身に付けられるようになっています。
またミッションをクリアすることで手に入るスキルなども,存在しています。
4Gamer:
ミッションはどのように進行していくんですか。
ギャリティ氏:
ミッションは,特定の場所に行くと本部のオペレーターから指示があり,挑めるようになります。いくつかのミッションがマップに表示されていて,それらをクリアすることでほかのミッションがアンロックされていくんですが,挑戦する順番などは自由に選んでください。
4Gamer:
何度か発売が延期されていますが,開発の進捗状況はいかがですか。
ギャリティ氏:
大変お待たせして申し訳ないのですが,2016年3月の北米での発売に向けて順調に進んでいます。私がこうして日本に来られる程度の順調さですね。
4Gamer:
それを聞いて安心しました。ちなみに開発にはどのぐらいの人が関わっているんですか。
ギャリティ氏:
約600人ですね。各国にあるUbisoftの開発スタジオの人員を総動員して開発中です。
4Gamer:
βテストが行われると聞いたのですが,日本のプレイヤーも参加できますか。
ギャリティ氏:
オープンワールドのミッションをいくつかプレイできるほか,ダークゾーンなど,ゲームの主な要素を少しずつ体験できるようになる予定です。
4Gamer:
分かりました。では最後に,本作を楽しみにしているファンに向けて,メッセージをお願いします。
ギャリティ氏:
UBIDAY2015を見て,日本にも待っている人がたくさんいることが分かり,大変感謝しています。ゲーム本編はもちろん,βテストには私自身参加しますので,ぜひダークゾーンでお会いしましょう。そのときはみなさんの持っているお宝を盗ませていただきます(笑)。
4Gamer:
次の情報公開を楽しみにしています。ありがとうございました。
「ディビジョン」公式サイト
筆者もUBIDAY2015の会場で「ディビジョン」を試遊したのだが,実を言うと,比較的よくあるタイプのカバーシューターという印象で,さほど新鮮味はなかった。これはギャリティ氏も認めていることで,短時間の試遊でいろいろな要素を体験してもらうためには仕方ないとのことだという。
今回,話を聞いて,ダークゾーンに対する興味が強く出てきた。誰が敵で誰が味方が分からないという緊張感は,かなり面白そうだ。
クローズドβテストの情報も含めて,今後も注目していきたい。
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(C)2016 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Tom Clancy’s, The Division logo, the Soldier Icon, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.
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