レビュー
「Twin Frozr VI」クーラー搭載のMSI独自デザイン版GTX 1080をテスト
MSI GeForce GTX 1080 GAMING X 8G
COMPUTEX TAIPEI 2016の取材を通じて,4Gamerでは,GTX 1080 Founders Editionの699ドル(税別)という北米市場におけるメーカー想定売価より,カードメーカー各社のオリジナルデザイン採用カードは(少なくとも北米市場におけるメーカー想定売価だと)同等か,安価になる可能性が高いということをお伝えしているが(関連記事),そんな各社のオリジナルデザイン採用モデルは,これから続々と登場の見込みだ。
4Gamerでは今回,そんなカードメーカー独自モデルのなかから,MSI製の「GeForce GTX 1080 GAMING X 8G」(以下,GTX 1080 GAMING X 8G)を入手できたので,そのポテンシャルをテストにより明らかにしてみたいと思う。
Gaming APPにより3つの動作モードを切り替え可能。動作クロック設定は大人しめ!?
COMPUTEX TAIPEI 2016のレポートでもお伝えしているとおり,MSIは現在のところ,GTX 1080 GAMING X 8Gと,その上位モデルとなる「GeForce GTX GTX 1080 GAMING Z 8G」(以下,GTX 1080 GAMING Z 8G),そしてCorsair製簡易液冷クーラー搭載モデルとなる「GeForce GTX 1080 SEA HAWK」を日本市場へ展開予定だ。その意味でGTX 1080 GAMING X 8Gは,国内展開が決まっているMSI製GTX 1080カードのうち,最も大人しい独自デザイン版ということになるだろう。
ただ,最近のMSI製グラフィックスカードということで,独自ユーティリティの「Gaming APP」(Version 6.0.0.04)から,「OCモード」と「ゲーミングモード」「サイレントモード」という,3つの動作モードを選択できるようになっている。Gaming APPを導入していない状態ではゲーミングモードで動作し,Gaming APPから残る2つの動作モードを選択可能で,それぞれ動作クロック設定は以下のとおりだ。
- OCモード:ベース1708MHz,ブースト1847MHz,メモリ10108MHz相当
- ゲーミングモード:ベース1683MHz,ブースト1822MHz,メモリ10108MHz相当
- サイレントモード:ベース1607MHz,ブースト1733MHz,メモリ10108MHz相当
25MHz引き上げた設定で,サイレントモードはGPUのベース,ブーストクロックをいずれもNVIDIAのリファレンスクロック相当まで下げたモードだ。ただ,3モードともメモリクロックは,NVIDIAのリファレンスである10010MHz相当(実クロック約1251MHz)と比べるとほんのわずかに高くなっている。
なお,後述するテスト環境でコアクロックを追ったところ,最大動作クロックは順に1949MHz,1923MHz,1847MHzだった。MSIがそう言っているわけではないのだが,この数字から,「2GHz超えはGTX GTX 1080 GAMING Z 8Gで」といったことをMSIが考えていそうな気配は感じた。
クーラーは新作「Twin Frozr VI」。基板は電源部に注力した豪華な作り
付け加えると,Founders Editionから6ピン1系統が増えて8ピン
Gaming APP上部にあるファンのアイコンをクリックすると,Zero Frozrの有効/無効をユーザー側で任意に切り換えるためのスイッチにアクセスできる |
Gaming Appから「LED」と書かれたアイコンをクリックすると,MSIロゴと龍のLEDの色を変更できる |
なお,GPUクーラー側面にあるMSIロゴと龍のイラスト部にはLEDが埋め込まれており,Gaming APPから色と光り方を設定できる。色は約1677万色からスライドで,光り方はゆっくり点滅する「呼吸」,早い点滅の「フラッシュ」,2回の点滅を繰り返す「ダブルフラッシュ」,そしてそれらの中からランダムとなる「ランダム」の4種類からそれぞれ選択可能だ。
また,GPUクーラーに上にある,赤い稲妻のような意匠の部分も光るが,こちらは色が固定で,光り方のみ変更できるようになっている。
基板側では,10+2フェーズ構成という,豪華な作りの電源部が目を引く。GTX 1080のFounders Editionだと5+1フェーズ構成なので,電源周りは圧倒的にリッチな仕様になっているわけだ。
しかも,採用する部材はMSIが独自に定める品質規格「Military Class 4」に準拠したもので,エネルギー効率の高さが謳われる「Hi-c CAP」コンデンサや,日本メーカー製の固体コンデンサ,あるいは一般的なチョークと比べて電源効率が極めて高いという「Super Ferrite Choke」といった高耐性品が揃っている。
Gaming APPに用意された3モードすべてでテストを実施。ドライバはテスト開始時点の最新版
用いるグラフィックスドライバは,テスト開始時の最新バージョンとなる「GeForce 368.39 Driver」。そのほかのテスト環境は表のとおりとなる。
テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。テスト解像度には,GTX 1080がハイエンド向けモデルであるため,3840×2160ドットと2560×1440ドットの2つを選択した。
なお,テストにあたって,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。これは,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除するためだ。
クロックアップにより対Founders Editionで若干のスコア向上を実現するGTX 1080 GAMING X 8G
「3DMark」(Version 2.0.2067)の結果から順に見ていこう。グラフ1は3DMarkの総合スコアだが,GTX 1080のFounders Editionに対し,GTX 1080 GAMING X 8GのOCモードは6〜7%程度,ゲーミングモードは4〜5%程度,サイレントモードは約2%高いスコアを示した。OCモードとゲーミングモードにおいてメーカーレベルのクロックアップ効果は確実にあるといえる。
なお,サイレントモードでもスコアが上がっているのは,Founders Editionに対してメモリクロック設定がわずかに高いうえ,GPUコアクロックもFounders Editionの最大1807MHzに対し,前述のとおりサイレントモードでは1847MHzまで上がるためだ。Twin Frozr VIクーラーを搭載することで,より高いブーストクロックを実現した効果といったところである。
続いて「Far Cry Primal」の結果がグラフ2,3となる。
GTX 1080に対するGTX 1080 GAMING X 8Gのスコアは,OCモードで104〜106%程度,ゲーミングモードで103〜105%程度,サイレントモードで101〜104%程度で,スコア差はあるものの,3DMarkと比べると詰まり気味で,とくに「最高」プリセットでOCモードとゲーミングモードの違いがなくなっている点が目を引く。
描画負荷が高まり,メモリ性能がスコアを左右するような局面になってくると,製品スペックにおける25MHz程度のGPUコアクロック差は,ほぼ無視できるレベルになるということなのだろう。
グラフ4,5は「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)の結果である。
ARKにおいては「Low」プリセットの2560×1440ドットで相対的なCPUボトルネックによるスコアの頭打ちが見られ,スコア差が詰まりつつあるが,3840
OCモードとゲーミングモードのスコア差がそれほどない理由は,Far Cry Primalと同じはずである。
「Tom Clancy’s The Division」(以下,The Division)の結果がグラフ6,7だ。ここでのスコア傾向は,「中」プリセットの2560
具体的には,OCモードとゲーミングモードで5〜7%程度,サイレントモードで2〜4%程度高い。
グラフ8,9は「Fallout 4」の結果で,一言でまとめるなら,スコア傾向はThe Divisionと同じだ。ただ,GTX 1080とのスコア差はOCモードとゲーミングモードで最大約11%に達しており,フレームレートで1割強の違いがあれば,局面次第では体感できる可能性もあるだろう。
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ8,9だが,ここでのスコア傾向は3DMarkに似たものになった。
もっとも,ここで重要なのは,GTX 1080 GAMING X 8Gがサイレントモードであっても,3840
平均フレームレートのスコアを見ると,平均60fpsには少し届いていないのだが,それでも,ついにシングルカードで4K最高品質のスコア7000超えが出てきたというのは,とても感慨深い。
グラフ10,11の「Project CARS」では,「初期設定」の2560
電源部の強化により消費電力はかなり増大。Twin Frozr VIクーラーの静音性は見事
さて,GTX 1080 GAMING X 8Gはクロックアップモデルであるだけでなく,6ピンの補助電源コネクタも増えており,消費電力の増大が懸念される。今回も,ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定してみよう。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。
その結果はグラフ14のとおり。アイドル時は3モードともGTX 1080から7Wほど増加しているのだが,それ以上に目を引くのがアリケーション実行時だ。GTX 1080 GAMING X 8Gは,OCモードで41〜82W,ゲーミングモードで36〜81W,サイレントモードでさえ27〜78Wも高い消費電力値を示しているのである。
ただこれは,基板の豪華な作りを見るに,致し方ない部分もあるだろう。より高い動作クロックで安定的に動作するよう,リファレンスより150W(=6ピン
ただ,今回は比較対象に入れていないが,ドライバ以外は同じテスト条件で実施したGTX 1080 Founders Editionのレビューと比較したとき,GTX 1080 GAMING X 8Gのスコアは「GeForce GTX TITAN X」並みだったりもするので,この点は押さえておくべき情報だとも感じている。
消費電力が大幅に上がったということで,その分の熱をきちんと冷却できているのかどうか,GPU温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 0.8.8)からGPU温度を取得することにした。
なお,テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いている。アイドル時のファン回転は止まる設定だ。
GTX 1080 GAMING X 8GとGTX 1080 Founders Editionととで温度センサーの位置が同じとは断言できず,また,ファン回転数の制御方法ももちろん異なるので,横並びの比較はできない。その点は注意してほしいが,アイドル時に50℃というのは,ファン回転が止まっていることを考えればまずまずだろう。
一方の高負荷時は70℃台後半と,まったく問題のないレベルに収まっている。自己責任を覚悟してのオーバークロックにも,Twin Frozr VIクーラーは耐えてくれそうな印象である。
では,気になる動作音はどうだろう?
今回は,マイクをカードと正対する形で30cm離した地点に置き,PCをアイドル状態で1分間放置した状態から,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを最高品質の3840×2160ドットで4分間実行した,合計約5分間をビデオとしてYouTubeにアップしてみた。テスト時のGaming APP設定はデフォルトのゲーミングモードだ。
テスト開始後最初の1分間はアイドル状態で,Twin Frozr VIクーラーのファンは停止しているため,周囲の環境音が聞こえるだけだが,60秒後にFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを実行すると,それから約20秒後(=ファイル冒頭から80秒後)にファンが回転を始める。なので,それ以降を注意して聞いてもらうといいのだが,ベンチマークの実行開始からしばらく経っても,ファンの動作音はあまり聞こえない。コイル鳴きがあるのは気になるものの,このクラスの製品として,静音性はかなり高いと断言していいと思う。
消費電力の大幅な増大がマイナス要素ながら,「Twin Frozr搭載のGTX 1080」として魅力的
OCモードとゲーミングモードのクロック差が小さいため,Gaming APPによる動作モード切り替えのメリットはそれほどないこと,そして何より,豪華すぎる電源部のために消費電力がリファレンスデザインと比べて大幅に増大してしまっていることは懸念点であり,マイナス要素となるが,それでも,静かにしっかりと冷却できるクーラーを搭載したGTX 1080カードは,十分に魅力的だろう。
価格は未定だが,米ドルでのメーカー想定売価がGTX 1080 Founders Editionと同等だとすれば,税込9万〜10万円程度での登場になるのではなかろうか。これから夏にかけてGTX 1080カードを購入する計画があるのであれば,GTX 1080 GAMING X 8Gの存在を憶えておきたい。
MSIのGTX 1080 GAMING X 8G製品情報ページ
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