インタビュー
[TGS 2015]野島一成氏のシナリオがほぼカットなしで堪能できる!? 2016年リリース予定の「ZODIAC」についてMario Rizzo氏と野島一成氏にインタビュー
TGS 2014で発表された本作は,アートワークがそのまま動いているような幻想的なグラフィックスとタッチパネルを生かした直感的なゲーム性などで注目されている作品だ。
さらに本作は,フランスのkobojoが開発しているのだが,「伝説のオウガバトル」「タクティクスオウガ」などで音楽を手がけた作曲家の崎元 仁氏,「ファイナルファンタジー」シリーズをはじめゲームのシナリオを数多く執筆しているシナリオライターの野島一成氏が開発に参加していることで,世界中のゲームファンの熱い視線を集めている。
今回4Gamerでは,TGS 2015に出展していた同社のブースを訪れ,「ZODIAC」の開発を手がけるkobojoのMario Rizzo氏と,野島一成氏の2人にインタビューを行うことができた。2016年にリリースを予定している「ZODIAC」について,いろいろと気になっている質問をぶつけてきたので,ぜひ最後まで読み進めてほしい。
「ZODIAC Orcanon Odyssey」公式サイト
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・[TGS 2015]スキルやジョブを使い分けながらの戦略的なバトルがアツい。新作RPG「ZODIAC Orcanon Odyssey」のインプレッションを掲載4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
TGS 2014で発表されてからこの1年間で,ZODIACを取り巻く環境がずいぶんと変わってきていると思います。まずは,現在はどのような状況なのかをあらためて教えてもらえますか。
Mario Rizzo氏(以下,Rizzo氏):
ZODIACは,この1年で大幅に変化しました。2014年度内にはヨーロッパでリリースすることが決まりましたし,SCEさんと契約をして,PlayStation 4とPS Vitaでのリリースも決まりました。
4Gamer:
現在のところ,ゲームはどのくらいでき上がっているんですか?
Rizzo氏:
ゲームの完成度に関して言うと,日本版と欧米版で少し異なります。システム的な部分はすでに開発が終わっているんですけど,まだコンテンツが充実していないという状態です。
というのも,今用意しているコンテンツを全部合わせると,それこそPS4のパッケージゲームのようなボリュームになるんです。なので,章単位で小分けにして配信していく必要があるんですね。
現時点では,第一章の3分の1くらいまで作業が完了しているので,第1章が完成次第欧米版を出して,次に日本版をリリースという流れになります。現在の予定だと,日本でのリリースは2016年になりそうです。
4Gamer:
ちなみに,E3 2015でZODIACをプレイしたスタッフから,今回出展されているバージョンでバトルコマンドが変わっていると聞いたのですが,そのあたりはどうなのでしょうか。
多少UIは変えてますが,大幅な変更は行っていません。E3ではゲーム本体に近いバージョンを出展していたんですが,今回のTGSでは,ZODIACを15分程度で分かりやすく紹介するために,デモ版を作ったんです。チュートリアルもありますし,スキルやジョブがある程度が開放された状態になっています。
野島氏が手がけるシナリオでは,「FFX」にも通じる“親と子”の関係に注目?
4Gamer:
今回はせっかく野島さんがいらっしゃるので,ZODIACのシナリオについてぜひ話を聞かせてください。
公式サイトなどで公開されているストーリーは非常に断片的で,まだ謎が多く隠されているという印象を受けたのですが,今の段階でそれ以外の部分について何か教えてもらえることはありますか?
まず,主人公のカイルですが,彼は軍人さんなんです。
この世界には大きな街が1つあって,そこを教会が仕切っているんですね。軍隊も含めてすべてです。実は,軍の幹部には「ウラン」というカイルのお姉さんがいるんですけど,2人が荒野を巡るにつれ,世界と自分自身の謎が徐々に明らかになっていくんです。
この展開の流れは,まさにJRPGそのものですね。
4Gamer:
野島さんが制作に参加したことで,ZODIACのシナリオというか設定にも影響が出た部分があると思うのですが,元々あったものに野島さんが手を加えた部分があれば,教えてもらえますか。
野島氏:
主人公の人物関係について1つ,ある大事な要素を加えました。それは「親」です。ZODIACでは,主人公と親との関係性を描いているんですよ。
……なんかこれ,JRPGの匂いがするように寄せていってると思いませんか(笑)。
4Gamer:
確かにそういう設定って,JRPGっぽいですよね(笑)。
野島氏:
親は頻繁に登場するわけではないですけどね。でも主人公達は確実に親を意識しています。
4Gamer:
恨んでいるんですか? それとも尊敬している?
野島氏:
両方です。カイルのお姉さんは親をすごく憎んでいる,けど弟のカイルはそんなことないという。「親」というキーワード1つとっても,感じ方はそれぞれということですね。
4Gamer:
現段階で公開されているストーリーを見ると,少しヘビーというか重厚的な印象を受けたのですが,全体的にこの調子で進んでいく感じになるのでしょうか。
野島氏:
基本はシリアスなんですけど,ところどころのやり取りが笑えるというか,思わずクスリとなる部分はありますよ。日本語ではギャグっぽい要素も入れたんですけど,それがギャグとして訳されているかどうかは,私には分からないです(笑)。
4Gamer:
翻訳もそうですが,ゲーム制作の工程を重ねるうちに,シナリオが自分の意図しない表現になることがあったりすると,不安になったりしませんか?
野島氏:
いや,それはむしろ楽しいですね。昔のゲームの作り方に似ているので。そっちがそうやるなら俺はこうするぞ,みたいな。
4Gamer:
少し話は逸れますが,ZODIACのストーリーについて,今まで野島さんが手がけた作品の中に,方向性が似ている作品はありますか。
野島氏:
設定的な部分を考えると,「ファイナルファンタジーX」ですね。
4Gamer:
なるほど! FF Xプレイ経験者ならイメージしやすそうです。
ちなみに,ZODIACのストーリーはどれくらいのボリュームなんですか?
Rizzo氏:
野島さんにシナリオの依頼をしたときには,「『ファイナルファンタジー』が大好きなので,ぜひ壮大なストーリーでお願いします!」と依頼したんです。そうしたら,本当に壮大なシナリオを書いていただけて,とてもスケールの大きいものになったので,すごくハッピーでしたね。
野島氏:
シーンの数だけでも,パッケージのゲームと同じくらいのボリュームはあります。シナリオを書いているときは,きっとこんなにたくさん入らないだろうと思っていたんですけど,意外にも少ししか削られてなかったんですよ。
Rizzo氏:
私自身,野島さんのファンなので,できるだけシナリオを変えたくないという思いがありました。一応マイナーな修正はしたんですけど,それ以外はゲームに組み込んでいます。
野島氏:
リテイクがほとんど来なかったので,ドキドキしていましたね。もっとギリギリになってから,「やっぱりダメです」って言われたらどうしようと(笑)。
Rizzo氏:
普通,ゲーム制作って「これくらいの時間と人件費があって」とか,いろいろと考えてからスタッフを組むと思うんですけど,この作品はまったく逆なんです。
まずはストーリーがあって,それを実現するためにいろいろな部分を回していったのですが,結果としては良い形だったと思っています。当初の想定を超えるほど壮大なシナリオだったので,追加で資金を調達することになりましたが(笑)。
野島氏:
そう聞くと責任重大ですね……。
一同:
(笑)
4Gamer:
ちなみに,リリース後に追加シナリオなどの配信計画はあるんですか?
Rizzo氏:
それを考えるのは,まず現在のバージョンを完成させてからですね。
以前野島さんとお話した際,ローンチ後もコラボレートできるかお聞きしたら,そのときは「はい」とおっしゃっていただけました。野島さんの気が変わっていなければ,追加のシナリオ配信はあると期待していただいていいと思いますよ。
野島氏:
最近は,そういうのがあるから油断できないですよね。本編をあまりハッピーエンドにしちゃうと,「じゃあ次,何と戦うんだ」って話にもなっちゃいますから(笑)。
人間とそれ以外の3種族の関係性にも注目
4Gamer:
ZODIACには多様な種族がいるようですが,種族についても教えていただけますか?
ZODIACには,火,水,風,土という地球上の4要素からなる4つの種族がいます。人間の種族もその中に含まれるのですが,彼らが大きな権力を持っていて,ほかの3種族は人間に少し押されているという感じですね。それを描くために,ある映像を用意しました。
とある人物に捕まっていた種族の人々が逃げていくというシーンがあって,それをカイルがフライオンに乗って追いかけていると,「またあいつらが来たよ!」と言われたりするので,それを見てもらえれば,人間と他種族には衝突があるということを分かっていただけると思います。
4Gamer:
ZODIACでは,主人公がフライオンに乗って冒険の旅をしていますが,この世界ではフライオンに乗るのは日常的なんですか。
カイルを含め,国家警備隊は日常的にフライオンに乗っていますよ。
4Gamer:
カイルのフライオンにはセイバーという名前が付いていますよね。名前があるということは,人間とモンスターに信頼関係のようなものがあると考えていいんですか?
野島氏:
主人公とフライオンの間に親密性はもちろんあります。ですが,どちらかというと主人公達よりプレイヤーのほうが,フライオンに愛着を持つようになるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
ちなみに,フライオンを操作していたときに,野島さんがディレクションをしていた「バハムートラグーン」のドラゴン「サラマンダー」を思い出しました。それで,ZODIACの企画には「バハムートラグーン」の影響があるのかなと感じたんですが,実際のところはどうなのでしょうか。
「バハムートラグーン」はもちろん私も知っています。ドラゴンとの親密度がとても重要な作品ですよね。ただ,モンスターと親密性があるという部分は共通していますが,「ZODIAC」と「バハムートラグーン」にはあまり関連性はないかもしれません。
フライオンの動きに関して言うと,前に私がUbisoftで制作に携わっていた「チャイルド オブ ライト」が近いかもしれませんね。本作では,2Dキャラクターがいろいろな方向に動けるという設定にしたかったので,その点では「チャイルド オブ ライト」と通じる部分があるかと思います。
ちなみに,ビジュアル部分はヴァニラウェアの作品,動きの部分はトライエースの「ヴァルキリープロファイル」を目標にしていました。
※チャイルド オブ ライト(PC/PS4/PS3/PS Vita/Xbox One/Xbox 360/Wii U)
4Gamer:
なるほど。先日,CyDesignationが「ZODIAC」のアートディレクションを担当していることが明らかにされましたが,制作にはどの程度関わっているのでしょうか。
CyDesignationさんとは,実は2年前からZODIACで協業をしています。
我々が描いたデザインはすべてCyDesignationさんにチェックしていただいてますし,CyDesignationさんがデザインしているものも,我々が目を通しています。つまり,CyDesignationさんとkobojoで,デザインのすべてを共有しているということです。
4Gamer:
CyDesignationと一緒に仕事をして刺激を受けましたか?
Rizzo氏:
それはもう! とても素晴らしい経験をさせていただきました。CyDesignationさんと組んだことで,ZODIACはとても質の高いものになっていると思います。
4Gamer:
残念ですがそろそろ時間が迫ってきてしまったので,最後に4Gamer読者に向けてメッセージをお願いします。
野島氏:
僕はこの作品は洋ゲーだと思ってるんですね。でもkobojoのみんなはJRPGを愛していて,それを作ろうとしている。その感覚が面白いですね。
なぜそうなっているのかは僕も分からないですけど,パリと東京が合わさると,不思議なものができるんだなって思いました。ぜひ楽しみにしていてください。
Rizzo氏:
このゲームは西洋ゲームとJRPGの良いところをミックスさせたユニークなものです。ゲームを楽しんでほしいのはもちろんですが,プレイしてもらったら,ぜひフィードバックが欲しいですね。
日本でJRPGをリリースするなんて無理だと言われていたので,ZODIACをもうすぐリリースできることが非常に嬉しいです。今後もZODIACのようなゲームを出していきたいと思っていますので,ぜひ応援してください。
4Gamer:
ZODIACが日本でリリースされるのを楽しみにしています。本日はありがとうございました。
「ZODIAC Orcanon Odyssey」公式サイト
4GamerのTGS 2015特設ページ
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