Windows 10の大型アップデート第2弾「Anniversary Update」は，ゲーマーにどんなメリットがあるのか。日本マイクロソフトによる説明会をレポート

Anniversary Updateを導入したNECパーソナルコンピュータの2-in-1ノートPC「LAVIE Tab W」。Anniversary Updateの新機能には，ペン入力関連が含まれているので，デモで使われていたPCは，ペン入力対応の製品ばかりだった

　2016年8月3日，Windows 10の大型アップデートである「Windows 10 Anniversary Update」（以下，Anniversary Update）の配信が始まった（関連記事）。セキュリティやバグ修正をまとめて毎月配信している更新プログラムとは異なり，Windows 10にさまざま機能を追加したり，既存機能の改良を導入したりするアップデートで，これを導入したWindows 10が，今後の最新版Windows 10となるわけだ。
　ユーザーごとに時間差を付けて配信しているとのことなので，筆者のように，すでに導入済みという人もいる一方で，まだ導入していないという人もいることだろう。

Anniversary Updateを導入したWindows 10の画面。パッと見では違いが分からないと思うが，スタートメニューの左ペインに並ぶアプリケーション一覧の表示方法が，今までのWindows 10とは少し異なっている

　8月5日，Microsoftの日本法人である日本マイクロソフトが，このAnniversary Updateに関する説明会を東京品川のオフィスにて開催した。Anniversary Updateによって追加された機能のいくつかは，ゲーマーにも有用なものだ。説明会で示された新機能について，簡単にレポートしよう。

アップデートで機能を追加し，進化するWindows 10

　Microsoftは，Anniversary Updateの以前にも1回，大型アップデートを配信したことがある。2015年7月末のWindows 10リリース後，最初に配信となった大型アップデートは，2015年11月の通称「November Update」であった。
　このアップデートは，どちらかといえば新機能よりも，既存機能の改良や安定性の向上を主体としたアップデートで，目立つ新機能といえば，音声入力アシスタント機能「Cortana」（コルタナ）の日本語版が導入された程度だ。とはいえ，November Updateによる安定性の向上で，Windows 10はようやく安心して使えるOSになった，という印象を筆者は持っている。

過去のWindowsとWindows 10では，アップデート方針が異なることを示したスライド。過去のWindowsは，OSそのものも新しいものに変更することでアップデートしてきたが，Windows 10は無料の大型アップデートを提供することで，OSを買い換えたりしなくても，機能を追加していくことを示したものだ。そしてAnniversary Updateは，その2回めのものとなる

　OSとしての安定性向上に重点を置いた（ように見える）November Updateに対して，Anniversary Updateは，新機能の追加を大きくアピールしている。
　なかでもゲーマーにとって注目の新機能は，なんといっても「Xbox Play Anywhere」だ。詳細は西川善司氏による解説記事を参照してほしいが，簡単に説明すると，Xbox Play Anywhere対応のゲームであれば，Xbox One用かWindows 10用のどちらかを買うだけで，もう一方のプラットフォームでも同じゲームをプレイできるようになるというものだ。

Xbox Play Anywhere対応タイトルに挙げられていた「Quantum Break」のWindows 10版

　発売済みの対応タイトルとしては，「Quantum Break」が挙げられており，今後登場するゲームでは，「Forza Horizon 3」や「Gears of War 4」といったビッグタイトルが，Xbox Play Anywhereに対応する予定である。

　とはいえ，日本におけるXbox One販売の惨憺たる状況を反映してか，今回の説明会ではXbox Play Anywhereが導入されたことに言及があった程度で，デモやアピールの類は何もなかった。
　日本のゲーマーとしては，「Xbox Oneのビッグタイトルは，今後PCでもプレイできるようになるものが増える」と，前向きに受け止めておけばいいだろう。

　Xbox Play Anywhere以外のAnniversary Updateにおける新機能では，ペン入力の使い勝手を向上させる「Windows Ink」や，Cortanaの改良，Windows 10の標準Webブラウザである「Microsoft Edge」（以下，Edge）の改良といったものが，デモを交えて説明された。

Anniversary Updateの主な新機能

　Windows Inkのデモでは，タスクバーに追加されたボタンから，簡単に呼び出せる新機能「Windows Inkワークスペース」を使い，画面をキャプチャしてそこに手書きで文字を書き込んだり，使い勝手の改善を施した手書き文字入力機能で，メールの宛名を入力したりする様子が披露された。
　アプリケーションの対応次第ではあるが，無理矢理ゲームにこじつけてみると，たとえばゲームプレイを録画した動画を作成するときに，強調したい場面で手書きの記号や文字を書き足したりすると，より強く視聴者にアピールするといった応用が効くのかもしれない。

会場にあったデモ機で，Windows Inkワークスペースを使ってみた。タスクバーの通知領域に新設されたペンのアイコンをクリックすると，画面右側にWindows Inkワークスペースが開く（左）。ここから，手書きの付箋をデスクトップに貼り付けたり，スクリーンショットに手書きで絵や文字を書き込める（右）

　WebブラウザのEdgeに関する改良点では，「拡張機能」（いわゆるアドオン）を追加するできるようになったことが大きなポイントだ。ただし，拡張機能はWindows 10の「ストア」機能からダウンロードする仕組みで，どれだけの拡張機能が登場するのかはまだ分からない。
　また，Windows 10の生体認証機能「Windows Hello」を，Edgeやストアといったアプリケーションからも利用できるようにもなった。Windows HelloのAPIは公開されているので，「Google Chrome」や「Mozilla Firefox」でも利用できるように，Microsoftは各Webブラウザの開発者に働きかけているとのこと。
　将来的には，ブラウザゲームのログインを指紋認証や顔認証で行うなんてことが，可能になるのかもしれない。

Edge対応の拡張機能である「マウス ジェスチャ」を使っているところ（左）。右写真は，ストアアプリでWindows Hello対応の指紋認証センサーを使おうとしているところだ

　説明会ではほかにも，Anniversary Updateで導入となった企業ユーザー向けのセキュリティ管理機能などがアピールされたが，個人のゲーマーが触れるようなものでもないので，こちらの説明は割愛する。

Windows 7（左）とWindows 10（右）のセキュリティ機能を比較したスライド。限られた機能しかなかったWindows 7に対して，Windows 10では標準で多数のセキュリティ機能を備えており，さらにAnniversary Updateで3つの機能を追加したとアピールしている

　先述したように，Anniversary UpdateはWindows 10にとって2回めの大型アップデートであるが，大型アップデートの提供は，今後も続けられる予定だ。具体的なスケジュールが明らかになったわけではないのだが，説明会で示されたスライドを見ると，2016年内には，テストユーザー向け配信（Windows Insider Program）で次期大型アップデートのテスト提供が始まり，2017年の中頃から後半に，一般ユーザー向けの提供を行うというプランとなっているようだ。

Windows 10のアップデート提供プラン。Anniversary Updateに続く大型アップデートも計画にある

　今後も一般ユーザーに役立つ機能が追加されることを期待したい。

Microsoft公式BlogにおけるAnniversary Updateの解説