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「夢100」「アカセカ」の開発秘話が語られたセミナー「女性向けゲーム制作のこだわり 女性の心を掴む世界観作りとは」をレポート
2018年8月4日,クリーク・アンド・リバー社とジークレストは,「女性向けゲーム制作のこだわり 女性の心を掴む世界観作りとは」と題したゲームクリエイター向けのセミナーを開催した。ジークレストといえば,「夢王国と眠れる100人の王子様」(iOS / Android。以下,「夢100」)や「茜さすセカイでキミと詠う」(iOS / Android。以下,「アカセカ」)といった女性向けゲームを開発・運営する会社としてご存じの人も多いだろう。このセミナーは,シナリオライター,イラストレーター,UIデザイナーなどのクリエイター向けに行われたものだが,特別に取材する機会を得られたので,女性向けゲームファンにとっても興味深い内容となった講演の模様をレポートしていく。
魅力的な男子(キャラクター)づくりについて
登壇者:西山葉月氏(「アカセカ」コンテンツプロデューサー)「アカセカ」の世界観,シナリオ,キャラクターなどのコンテンツ部分をプロデュースする西山氏は「魅力的な男子づくりについて」をテーマに講演を行った。
「アカセカ」には,歴史上の人物と同じ名前の「ツクヨミ男子」が多数登場するが,彼らは厳密に言うと歴史上の人物そのものを形にしたキャラクターではないのは,ゲームをプレイした人ならなんとなく分かるだろう。とはいえ,人々の中に根付いた“偉人のイメージ”は非常に大きいもので,歴史上の人物をモデルにするとなると無視できないものだ。
そこで「アカセカ」ではこうしたイメージを取り入れながら,作品独自の設定を持たせた恋愛対象になるよう,キャラクターを作っているという。例えば織田信長なら,「天下統一」「戦国時代のカリスマ」といったイメージが強いので,このイメージを残しつつ「恋愛でも独占欲を発揮するキャラクター」として設定を構築していくのだ。
また西山氏は,キャラ作りにおいて「最も重要な点は“理想”と“信念”を持っていること」と語り,イケメンはルックスだけではなく“己の信じるもの”を持っているからこそカッコイイとの見解を示した。プロフィールについても,史実を細かなところまで調べたうえでオリジナル要素と織り交ぜて設定を作る。作成した設定は,社内の“歴女”,つまりスペシャリストにチェックをしてもらうとのこと。ジークレストには女性の歴史ファンが多く,ニッチなところでは古墳時代に詳しい社員もいると明かしてくれた。
「アカセカ」では強烈な個性付けをしているキャラクターも多いが,ハネた(ぶっ飛んだ)個性を恋愛に活かせるようにするのもポイントの1つだという。例えば「アカセカ」に登場する徳川家光は,“ドクロマニア”という個性を持っているが,一見恋愛とは無関係に思えるこの個性も「危ない恋ができそう」「身体的な接触がありそう」など,遊び手の想像をかきたてるエッセンスになるという。家光はユーザーアンケートでも,ファンに広く受け入れられていると語られた。
「夢100」と「アカセカ」の造形(絵作り)について
登壇者:武田祐子氏(「夢100」「アカセカ」クリエイティブマネージャー)続いては,イラスト作りの現場ではどんな流れで制作が行われているかを,「夢100」「アカセカ」のクリエイティブマネージャー・武田氏が語ってくれた。
まずは,グラフィックスの視点から見た「夢100」と「アカセカ」の特徴と違いについて説明された。「アカセカ」は繊細さを感じさせるアナログな線で描かれているのが特徴で,キャラクターは8〜10等身ほどと,「夢100」よりも等身が高く設定されている。筋肉の表現や着物のなびき方など“たくましさ”を感じさせるような造形を,刀のような小物にいたるまでいくつもの案を出しながら作られているのだそうだ。また,筋肉の付き方については,すべてのキャラクターを細かく表に起こした資料もあり,過去のイラストと齟齬がないよう,社内でレギュレーションを共有しているとのこと。
また,繊細な髪の質感や着物の照り返しの影,日本画のような和紙っぽい表現をするためのテクスチャなども「アカセカ」の絵作りのポイントだ。スチル1枚とっても,目線などはピクセル単位でこだわっており,背景含めて一枚絵として成立させられる画力が求められるという。
一方の「夢100」は“王子らしさ”がテーマで,キャラクターは6〜8等身。「アカセカ」よりも少し華奢でスラリとした,理想的なモデル体型をベースにしているそうだ。王子らしさを引き立たせる衣装やポーズにもこだわりがあり,小物などの装飾は,「本当にこの装飾は必要なのか?」と徹底的に議論し,足し引きをしながら考えていくという。
それぞれのタイトルの特徴とともに,イラスト制作の過程では,ラフから線画,着色,仕上げにいたるまでに細かくリーダーがチェックしていくことで,おのずと個人では気づかないところも明確になり,イラストレーターとしての画力も上がっていくとも武田氏は話してくれた。
女性の心を掴む世界観設定とUI/UX
登壇者:佐藤和貴氏(リードUIデザイナー)この講演では,「夢100」「アカセカ」の世界観をより魅力的に見せるデザインやUIについての説明があった。
「夢100」は女性の理想とするファンタジー世界を作るのがコンセプトで,「上品さ」や「高級感」「繊細さ」に重点を置いているとのこと。女性は色に関する知覚が高いので,華やかさを意識しつつも一番ビビッドな彩度よりは少し落とし,ライトでいて綺麗めのファンタジーをイメージしているという。というのも,仕事や勉強に疲れて癒しを求めてプレイするときにも,目が疲れない色合いを心がけているからだそうだ。
デザインの具体的な手法として,「マルチカラー」が多用されていると佐藤氏は語る。いくつかの色を組み合わせることでリッチなイメージを表現できるとのことで,「夢100」では青〜紫〜ピンクなどのマルチカラーがテーマになっている。ボタンの彩色も一色ではなく,いくつかの色がグラデーションになっており,質感もガラスや金属を意識したデザインにし,繊細な高級感を演出しているそうだ。ゲーム内に登場するパズルのピースも,色や大きさなど,さまざまな工夫を凝らして今の形になったと明かしてくれた。
「アカセカ」は,“太陽が昇らなくなり空はいつも茜色に染まっている”という世界観のゲームのため,世界全体が夕暮れのように儚く切ないイメージがデザインに落とし込まれている。カラーは赤や黒,サーモンピンクを基調にしながらも,暗いイメージにならないよう制作されているそうだ。そのほかには花や蝶といったモチーフをよく使用しているが,リアルにしすぎないよう気を配っているという。
「キャラクター一覧」は鳥居の前で男子が並んでいるところをイメージし,「鍛錬練」は境内での特訓,「物語」は書物庫に見立てるなど,より世界観を感じてもらえるようデザインに落とし込んでいる。
デザインについては,実際のビフォー,アフターの図を交えながら説明がされていて,今の形に落とし込むまでの興味深い過程が明かされていた。
セミナーには,ジークレスト代表取締役社長の大辻純平氏も登壇し,女性向けゲームメーカーとして今後目指していく方向性や目標も語られた。また,合わせて紹介された社内環境や福利厚生などは非常に充実している印象で,ジークレストはものづくりをする会社として,クリエイターをはじめ社員全体が業務だけに没頭するのではなく,プロジェクト全体のコミュニケーション向上や働きやすさの環境を整えている姿勢が感じられた。既存サービスの動向だけでなく,女性向け市場への新しい挑戦についても注目していきたい。
「ジークレスト」ホームページ
「夢王国と眠れる100人の王子様」公式サイト
「夢王国と眠れる100人の王子様」ダウンロードページ
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「茜さすセカイでキミと詠う」公式サイト
「茜さすセカイでキミと詠う」ダウンロードページ
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