連載
東京レトロゲームショウ2015:第14回「Rainbow Six」で今は亡き「プランニング」システムに思いを馳せたりする
自慢ではないが,筆者はこれまで,リアルでこの身に銃弾を浴びたことが一度もない。そのため,あくまで想像に過ぎないのだが,弾が当たるとたぶん痛いのではないかと思う。おそらく「いったぁい!」では済まないレベルの痛みに違いない。今後もできれば撃たれたくないなあ……。
というわけで,今回の「東京レトロゲームショウ2015」では,「撃たれないこと」に重きを置きまくった結果,とてつもなくピーキーな作品に仕上がってしまった特殊部隊モチーフのFPS(※)「Tom Clancy's Rainbow Six」(以下,Rainbow Six。関連作品も含め“Tom Clancy's”は省略)を取り上げよう。
ちなみにRainbow Sixは1998年の発売。「これはレトロなのか?」という疑念が湧いたので,デスクで鼻くそをほじっていた本連載の担当者,松本隆一に問うてみたところ,「いいんじゃない?(ほじほじ)」との回答を得た。つまり筆者の落ち度はゼロ。責めるなら,松本を責めてほしい。
※厳密には三人称視点への切り替えモードが存在するため,Rainbow Sixは純然たるFPSではない。とはいえ,操作難度の高さなどから,本作を三人称視点で遊ぶ人はまずいないと思われるし,書くのが面倒なのでFPSということにしておこう……いや,させてください。
クランシー氏はかつて米ボルチモアで保険代理店を営んでいたのだが,仕事の傍らしこしこと書いていたレッド・オクトーバーを追え(現題:The Hunt for Red October)がベストセラーとなり,小説家への道を歩み出すことなる。そして元々ゲームそのものにも興味を持っていた氏が,1996年にゲーム会社であるRed Storm Entertainmentをドカンと設立。その2年後の1998年に,このRainbow Sixが発売されたというわけだ。
ちなみにRed Storm Entertainmentは,2000年にフランスの大手ゲームパブリッシャであるUbisoftに買収され,現在は同社の完全子会社となっている。
Rainbow Sixはゲームと小説の同時展開が行われたタイトルであり,当然,両者で世界設定も共有している(日本国内でも小説「レインボー・シックス」が新潮文庫から発売)。タイトルになっているRainbow(レインボー)とは,冷戦後の国際テロに対抗するために設立された多国籍対テロ組織のコードネームのこと。Six(シックス)は,指揮官を指しており,原作小説で言うならレインボーをまとめる長官にして元CIA工作官であるジョン・クラークのことだ。
余談気味に付け加えておくと,このジョン・クラークは,クランシー氏が展開していた「ジャック・ライアン」シリーズにも登場しているキャラクターで,映画版「今そこにある危機」ではウィレム・デフォーがアロハシャツを着て怪演していたことが思い出される。鍛え抜かれた屈強な身体を持ち,CIA入局の前後を通じて数多くの勲章を手にしたクラークのイメージがガラガラと崩れ去さるというアハ体験ができるので,興味のある人は小説と合わせてチェックしてみるといいだろう。しなくてもいいけど。
さて前置きが長くなったが,Rainbow Sixというゲームはそんな特殊部隊・レインボーが活躍するFPSである。最大の特徴は,シングルプレイキャンペーンにおける,ミッション挑戦前の準備フェイズが充実している点だ。
一般的なFPSのシングルプレイキャンペーンは,ブリーフィングでミッションの目的を確認したら,はい,とりあえずいってみよう,という感じになる。
しかし本作でミッションに挑む場合は,“シックス”であるジョン・クラークから手厚いブリーフィングを受けて,ミッションの目的,場所,敵の情報などを確認し,精鋭揃いのレインボーから参加メンバーとその装備を選び,なおかつ突入する際のチーム分けや突入経路,建物内での行動などについて,あらかじめプレイヤーが決めることになるのである。特殊部隊のお仕事を,その準備段階から再現してみようというのが狙いであり,実に野心的なシステムだ。
プランニングで考えるのは,具体的には「突入計画」だ。
人質救出であれば,突入する建物の構造や,敵の配置,人質の位置などを確認して,チームメンバーがどのドアから侵入して,どのような経路で行動するかをすべて決める。下の画像を例にとると,青,赤,緑,金(黄色)が,BLUE,RED,GREEN,GOLD各チームの動きである。△っぽい形の矢印がWAYPOINT(ウェイポイント)で,プレイヤーがこれを一つずつ置いてやることで,チームはそのウェイポイントを辿る形で行動するのだ。
もちろんウェイポイント間を移動している最中の隊員の行動も,「ROE」(Rules of Engagement:交戦規則)と「SPEED」(移動速度)の2項目でそれぞれ決められる。ROEは「ENGAGE」(前進しつつ敵に遭遇したら交戦),「ADVANCE」(前進優先),「CLEAR」(制圧),「ESCORT」(人質誘導)の4パターン。SPEEDは「BLITZ」「NOMAL」「SAFELY」の3パターンで,後者になるほど移動速度が遅くなる代わりに射撃精度が上がる。行動の早さと安全性のトレードオフを考えて設定する必要があるのだ。
チームは,GO-CODEの設定されたウェイポイントまでくると,いったんミッションを指揮する人間(つまりプレイヤーが現在操作しているキャラクター)の指示待ち状態となる。このタイミングで,プランニング時にあらかじめ設定したGO-CODEを伝えると,そのコードが自分のチームに向けて発せられたものであれば,当該チームは再び次のウェイポイントまでの行動を始める。
たとえば,建物に複数のドアがある場合,チームREDはドア1に,チームGREENは非常階段を上がった先にある2階のドア2の前に待機させておき,同時にGO-CODEを出してやることでそれぞれ同時に屋内へ突入することができる。こうすれば,敵兵士を分散させて,より効率良く,なおかつ隊員の死亡リスクも下げて任務を遂行できるわけだ。
というか,おそらく読者も,ドラマや映画などで特殊部隊の突入シーンを見たことがあるだろう。突入時は複数チームの連動が成否のカギを握るが,それを本作では指揮官の立場で計画を練ることができるのだ。
ただ,最初からすべてのプランニングをきっちり行ってミッションを攻略するのは,少し難しいかもしれない(トライ&エラーの手間が大きいと言い替えてもいい)。ブリーフィング時にプリセットのプランをロードできるので,まずは用意されたプランで突入を試してみて,兵士が倒れたり足止めをくらったりするといった問題のある箇所を見極め,当該箇所をカスタマイズする形で,プランニングのコツを掴むといいだろう。
ミッション開始後,プレイヤーはBLUEチームのリーダーとなって,実際に銃を持って事にあたる。プレイアブルな隊員は切り替えが可能で,適宜,ほかのチームのリーダーも操作できる。プレイヤーが率いるチームはプランニング時に設定したウェイポイントを無視できるので,ほかのメンバーへの指示出し以外は純然たるアクションフェイズであり,プレイヤーの腕でもって攻略することももちろん可能だ。
そんなアクションフェイズも,やはり昨今のFPSとは異なり,ヘッドショットでなくても銃弾一発で隊員が倒れていく仕様である。今ではすっかり聞かなくなった“リアル系”と呼ばれるFPSの緊張感を味わえるだろう。
アクションフェイズがシビアな作りだからこそ,プランニングフェイズの重要性が高い。レインボーのメンバーは,S.A.S.やGSG-9,Delta Forceといった各国の特殊部隊からの選りすぐりだ。そんな人達がパタパタと倒れていくのはものすごい損失であるうえ,そもそもゲーム内では,現在のミッションで倒れた兵士は,次回以降のミッションに連れていけない。人質も隊員も死なせない,実はこれがプレイヤーに課せられた使命なのである。
Rainbows Sixシリーズは,第1作が発売されたあとも,PC,コンシューマ機を問わず,多くの続編が制作されている。拡張パックを除いたマイルストーンとなるPC向けタイトルは,今回紹介した「Rainbow Six」のほか,「Rainbow Six Rogue Spear」「Rainbw Six 3」「Rainbow Six: Vegas」といったところで,ここに最新作となる「Rainbow Six: Siege」(日本国内ではユービーアイソフトが2015年10月15日に発売予定)が加わる形となる。
ただし,「Rainbw Six 3」を最後に,最大の特徴であったプランニングは,なんと廃止されてしまった。この舵取りのおかげで,Rainbow Sixは現在も作品がリリースされ続ける人気シリーズとなったのだとは思うが,このあたりはちょっぴり残念なところでもある。まあそんなわけで今回,プランニングフェーズのある第1作をあらためて紹介したわけだ。
さて実際に本作を遊ぶ方法だが,今回筆者はGOG.comで購入した。9.99ドルと価格もお手頃だ。古いゲームのせいか,マルチディスプレイの筆者の環境では起動時にトラブルが起きてしまったが,そんな場合はディスプレイの設定を変更するか,ケーブルを引っこ抜くなどして,単一のディスプレイを使う形にすれば解決しそうなので付記しておこう。
GOG.comの「Rainbow Six」紹介ページ
- 関連タイトル:
レインボーシックス シージ
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(C)2015 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Tom Clancy’s, Rainbow Six, The Soldier Icon, Ubisoft and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries.
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